東方氷異伝   作:城が猫

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第十三話 氷争(紅魔 其の壱

 美鈴side

 

 私、紅美鈴は何時ものように、外敵という

外敵の来ない門の見張りをサボり、寝ていた。

この幻想郷に於いては害のある敵……という

よりも困った来訪者と言ったら、パチュリー

様の図書館に忍び込んでは、「借りてくぜ~

~!死ぬまでなぁー!!はっはっは!」とか

言いながら図書館の魔導書を盗んでいく黒白

の魔法使いぐらいのもので、あとは妖精など

がたまに来るくらいなのだ。

(それも只単に遊びたいだけである)なので、

それほど気を張って見張りをする必要はない

のだけれど、サボっているのを咲夜さんに見

つかるとナイフを投げられ、サボるな!寝る

な!と大目玉を食らうので、ちゃんと起きて

いなければならない(あのナイフは本当に痛

い)………ので、頑張って起きてはいるのだ

が睡魔に抗えずにこうして時々眠ってしまう

のだ。(そこを運悪く見つかってしまったり

もする)だが、だからといって門番として機

能していないということはないのだ。

なぜなら、紅魔館に害意のある敵が現れた場

合は即座に目を覚まし、紅魔館のどこから侵

入しようとしても分かるからだ。

それは私の「気を使う程度の能力」によるも

ので、紅魔館全方位の侵入してくる者の気を

読むことによって、その者がどこから入ろう

としているか、またこちらに害意や敵意があ

るかが分かるのである。

そして無論、その時にはすぐさま目を覚ます

………そう、たった今の私のように。

それに今は夜であり、そんな時間に訪ねてく

る人などそうはいないはず。

まぁ、この館の主は吸血鬼であり、夜の時間

帯こそが活動時間(大抵の妖怪はそうだが)

であることを考えれば、この時間にに来るの

は、正解なのだが……しかしそもそも目の前

の人物は何か良からぬ用事がこの後ろの館に

あるようなのだったし、人ではない気がもろ

に伝わって来ていた。

そして、その気には少し覚えのあるものが混

じっていた。

以前はよく紅魔館に遊びに来ていて、この頃

はめっきり来なくなった者の気だ。

まぁ、一度良く遊んだ者のよしみで一度くら

いは顔を見せに来ていたが………

 

 

紅美鈴=美

 

 

 

美「!!!………?…チル…ノ?…………いや、

あなたはチルノではありませんね……あの人

はこんな気を……こんな異様に、恐ろしい、

冷酷な気を放つような人ではありませんでし

た!それは、今のあなたのような容姿になり

、そのことの詳細を告げに来てくれた時もそ

うです……あなたは一体何者ですか!?」

 

 今は夜であり、満月が「今は私が主役だ」

と言わんばかりに輝いている。

そして、どこからともなく吹いた風によって

草木が不気味にざわざわと音を立てる。

まるでこれから起こることに対して、何者か

が陰口を囁いているかのようだ。そんな中で

、私の声など届いていないかのように、また

、私がそこに居ないかのように、目の前のチ

ルノの気と姿をした影は、私が門を守る紅魔

館へと向かうべく私に向けて足を進めてきた。

 

美「!!!…止まりなさいっ!!!これは警

告です!それ以上近づけば、問答無用で排除

します!!」

 

 その台詞とともに構え、臨戦態勢を取る。

だが、さきほどから歩みを止める気配が一切

ない。

まるで私のことなど眼中になく、地を這う虫

に大抵の者が無関心であるのと同じようなそ

れだった。

そのことに憤る自分が居たが、それ以上に、

目の前の者からはとても推し量ることのでき

ない力と機械のように無機質な冷酷さ、それ

に、自分の動きなど既に見透かされているよ

うな感覚が伝わってきており、無視された怒

りなどよりも恐怖が圧倒的に勝っていた。

現に今も、相手はこちらを見ていないにも関

わらず、私は蛇に睨まれた蛙のように身動き

ができないでいたし、先ほどから正体不明プ

レッシャーが私を襲い、冷や汗が止まらない。

その間にもその者はザッザッ、と足元の草を

踏みしめ近づいてくる。

 

(チルノ)「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 その者の姿が月光の下に晒され、露わにな

る。

やはり、見た目には前に自身に起きた事の報

告をしに来てくれたチルノのように、白と青

のラインの左腕の袖だけ長い着物姿だった。

しかしよく見るとその色は若干黒くくすんだ

色をしており、髪の色も黒みがかっていて…

現在(いま)のチルノをそのまま陰らせたような見た

目をしていた。

そして、そのチルノの姿をした何者かがもう

すぐ、私の間合いまで歩を進める。

相手との圧倒的な戦力差に自然と足が竦むが

、ここで食い止めなければ館の者にも被害が

及ぶ。

それだけはなんとしても避けなければならな

い。

そこでついに相手が間合いに入ってきた。

私は意を決し、左脚を踏み込んで右の拳を突

き出す。

 

美「…………っ!!」

 

 私は一瞬、何が起こったのか分からなかっ

た。

気が付くと相手は門を開けてくぐり、館の敷

地内へと進入していた。

私はと言えば、地面に横たえられ、ご丁寧に

氷で地面に縫い止められていた。

私の華人服とチャイナドレスを足して2で割

ったような淡い緑色を主体とした衣装と腰ま

であるストレートの赤髪が月光に照らされる。

その私の手や足には氷で出来た枷がついてお

り、その両手の間から延びる杭が地面に刺さ

り、完全に動きを封じている。

それは足も同様だった。

しかも、杭を抜こうにも返しでも付いている

のか、それとも無理な体勢だからなのか、一

向に抜ける気配がない。

氷を砕こうにもかなり頑丈でびくともしない。

つまり、今の私の体勢を説明すると地面に対

して横に向いて目の前に自分の手があり、そ

の両手は向い合せにされその中央に杭が直接

伸びて地面に刺さっており、足の方を見ると

少し足首をずらされた状態で手と同じような

物で拘束されているのだった。

そこで気が付き私は相手に向かって叫んでい

た。

 

美「まっ待ちなさい!!!……くっ…!!」

 

 叫びながら私は、無駄だと分かっていても

手錠を解こうと必死に動かす。

すると相手はこちらに気付いたようで、門の

向こうから私を振り返り、その氷のように冷

たい目で私を一瞥した後、何事もなかったか

のように、紅き悪魔の住む館へと歩みを進め

て行った。

 

美「……っ!!!………すみません、咲夜さ

ん……後を頼みます………申し訳…ありません

!!!……お嬢様……!」

 

 相手に一瞥されたときに途轍もない寒気(さむけ)

私を襲った。

余りに次元が違いすぎる……自身の手に余る

と嫌でも理解するしか無かった。

それを自覚すると途端に情けなさが込み上げ

てきたが、私はそれをどうすることも出来ず

ただ地面を転がったいることしか出来なかっ

た………

自分はこの紅魔館の門番を任されているにも

拘わらず、力量に天と地の差があるとは言え

……こうも怖じ気づくとは……!!

この頑丈な手枷足枷のせいでどの道動けない

が、例え(これ)がなくとも私は動くことなど

出来なかったことだろう。

その事実に、悔しさと主に対しての申し訳な

さとやるせない気持ちで涙が込み上げるが、

それで状況が変わるわけでもなくただ無情に

時が過ぎていた。

だが、あのお嬢様と咲夜さんが負けるはずは

無い………無いはずだと、信じるしかなかっ

た。

 

 

咲夜side

 

 

 

 カチューシャ(ホワイトブリム)と銀髪の

ボブカット、その髪をもみあげ辺りから三つ

編みにし、その先には緑のリボンが結わえら

れている。

その瞳は青みがかっており、服装は青と白の

二色からなるメイド服で

裾は膝丈、詳細は襟や肩にひらひらがあり、

カチューシャ、帯、前掛け(エプロン)は白で

、下に青い服を着ている。

そんな自分の姿が廊下に飾られた鏡の前を横

切った拍子に一瞬だけ写る。

私、十六夜咲夜は今日一日の仕事を終え、最

後に館の中を巡回している最中だ。

そんな私の顔には一日の業務を終えてホッと

一息つくような弛緩したものなどはなく、代

わりに、不安で憂鬱な表情が浮かんでいた。

それというのも、何故かこの頃お嬢様の体調

が優れず、原因不明なことが主な理由だった。

今朝もまだ体調が優れないようで、体の怠さ

や能力の不調などを訴えて居られた。

(近頃はたまに朝に起きて来られることもあ

る)因みにお嬢様とはこの館の主にして、紅

い悪魔の二つ名をもつ吸血鬼であられる、レ

ミリア・スカーレットお嬢様のことである。

この方の下で身の回りのお世話をさせていた

だき、仕えるのが私の仕事であり、生き甲斐

………なのだが……

 

 

十六夜咲夜=夜

 

 

 

夜「お嬢様……本当に、大事ないといいのだ

けれど…………それにしても、一体なにが原

因なのかしら……パチュリー様も手を尽くし

て調べておられるというのに一切分からない

だなんて……」

 

 その仕えるべき主の原因不明の不調が続い

ていることで、不安な日々が続いている。

と私がお嬢様の不調の原因のことを考えなが

ら歩いているとふと窓の外に目が行った。

 

夜「…………美鈴(あのこ)また門番サボったのかしら…

…まったく、こんな時に……」

 

 今、私が見た窓の外の景色には紅魔館の庭

と門が見渡せる位置にある窓だった。

つまり、この館の正面の窓である。

そこから見える門からこの館へと続く道を誰

かが歩いてきているのが見える。

今までも門番(メイリン)が仕事をサボって、何者かの侵

入を許してしまうことはあったし、今は夜な

ので眠いのは分かるが、それにしても……で

ある。

全く、今はただでさえ、お嬢様の体調不良の

ことで悩んでいるというのに、これ以上仕事

を増やさないで欲しいものだ。

 

夜「はぁ…………さて………と…最後の仕事は

()()()()になるか、それとも単なる道案内か

……どちらかしらね……」

 

 前者なら、この紅魔館に仇なす者なので抹

殺か排除。

後者なら、ただここに迷い込んできただけの

者なので、そのままお引き取り頂くか、私が

道案内を少しするだけとなる。

正直、今は後者の方であって欲しい。

それというのも後者の場合、美鈴がすんなり

門を通した(もとい寝ていた)ということは

この紅魔館に害意が無いものである場合がほ

とんどであるからだ。

それは彼女の能力が関係している。

そして最悪なのが、もう一方の害意や敵意が

あるにもかかわらず、それでも尚ここに侵入

できている……というパターンである。

それも正門から堂々と進入できているという

ことは、かなりの強者ということになるから

である。

何故なら、弾幕勝負なら光や音等で分かるは

ずなのにそれが無かった。

それにも関わらず、()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()となれば、相当の実力

があると見るべきだ。

弾幕勝負等ならともかく、対格闘で正面から

となるとかなり厳しいはずであるが、ここか

ら見た限り、余裕を持って歩いているように

見える。

しかしどちらにしても、相手の前に姿を現さ

ないことには始まらないので「客人」を出迎

えることにする。

自身の「時を操る程度の能力」で時を止め、

窓を開けて外に浮かぶように飛び、再び窓を

閉め空中で相手に向き直る。

その時に、窓越しでは見えなかった門の外が

、空を飛び角度が変わった事で視界に入る。

依然、周りの時は止まっていて全てのものは

私以外、静止している。

その中に門から()()()()()()()、横たわる美

鈴の姿が眼に映る。

そこまで飛んでいってみるとそこには、地面

に氷の錠で磔にされた紅魔館の門番が悔し涙

を流していることが分かる表情のままで静止

していた。

そして、後ろを振り返るとそこには門を抜け

て道の中ほどまで悠々進入している侵入者の

立体静止画の後ろ姿がある。

 

夜「ちょっと……冗談でしょ……?よりにもよ

って、最悪な方なの?………面倒なことこの

上無いわね……」

 

 しかし、これで美鈴のサボタージュの疑い

はとりあえず晴れたわけだ(この手の敵には

例え寝ていても気付くので完全ではないが)

………代わりに面倒事を片付けなければなら

なくなってしまった。

これなら寝ていた美鈴に説教するほうがよっ

ぽどマシである。

どうやら、本日最後の仕事は()()()()に決定

したようだ。

そこで侵入者の斜め前方まで飛んで移動する。

そこで誰にもともなく呟く。

 

夜「ふぅ……なんにしてもさっさと終わらせ

て、早く休みましょう」

 

 挨拶代わりに相手の足元にナイフを放ち、

それが相手のつま先の数センチ先の地面に刺

さる。

そこで指を鳴らし、それを合図に時が再び動

き始める。

そこで相手が地面のナイフに気付き、その出

所にあたりを付け前方を見上げる。

するとナイフを手に構える私と目が合う。

数秒間は睨み合いが続いたが、私が先に言葉

を掛けた。

 

夜「こんな月が綺麗な夜に人の家に押しかけ

てくるなんて無粋の極みね……そうは思わない

?侵入者さん?」

(チルノ)「・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・」

 

 言葉が通じれば、そのまま回れ右してもら

おうかとも思ったが、あいにくと相手は無言

を貫き通し、こちらの呼び掛けに答える様子

が無い。

言葉が通じないのか、それか聞く耳を持たな

いと言ったところだろう。

 

夜「そう…あくまでここを通りたい…と。な

ら、こちらとて容赦はしないわ!」

 

 その言葉と共に自身に対する周りの時間を

遅くして、高速で相手に近づいてナイフを振

るう。

が、それはいとも簡単に相手に片手で止めら

れてしまった。

 

夜「!!!(なっそんな……!これを受け止め

られるとは……!)」

 

 そしてそのまま空中に放り投げられてしま

った。

だが直ちに空中で体勢を立て直す。

 

夜「……なるほど…美鈴が倒されるわけだわ…

…久々に手ごたえのある……っ!」

 

 ある、と言い終わるや否や相手が氷の長刀

をこちらに飛びこみつつ振るう。

相手は既にもう目前にまで迫っていた。

 

夜「くっ……!間に合わないか……」

 

 相手の間合いから間に合わないと判断して

、即座に時を止める。

相手の長刀は自身の首から約1センチのとこ

ろで急に()()した。

目の前には、こちらをじっと見つめる相手の

姿が空中で固定されている。

そこで大量のナイフを相手の周りに逃げ道を

ふさぐように配置し、再び時を戻す。

その際相手から距離を取り、背後に回るのも

忘れない。

 

夜「スペルカード、幻世「ザ・ワールド」!」

(チルノ)「……っ!!」

 

 相手は突如現れたナイフに驚きつつも、そ

の剣技と常人離れした素早さで、ナイフを刀

で弾いたり、避けたりして捌くが、あまりの

数にさばき切れなかったナイフが次々とその

身に突き刺さっていく。

 

(チルノ)「…………っっ!!!」

 

 苦痛に歪み歯を食い縛る相手の顔が見えた

ときに勝利を確信し、念のため最後の詰めに

とナイフを構える……だが、同時に違和感も

覚えた。

何か見落としているような……そう考えたと

きに、不意に相手の口角が上がる。

 

夜「……何っ!!」

 

  途端に、相手から流れ出る血が透明の水

に変わり、相手の体も氷に変わって行く……

ナイフの刺さった氷には罅が入っていた。

その時、自身の頭上に気配を感じ、体を上に

向けると同時に…相手から前転の勢いの乗っ

た踏み蹴りを食らった。

そのまま姿勢で敵を見ると、さっきまで私が

いたであろう位置で足を下に突き出して地を

蹴るかのように構えていた。

どうやら今、空中で蹴落とされたらしい。

 

夜「がぁっ……はっ………(分…身……?一体

いつの間に……いや、まさか上に投げ飛ばさ

れたあの時にはもう!!?)」

 

 そう、私を投げ飛ばしたあの時にはもう相

手は氷の分身を私に頭上辺りに飛ばしていて

、下から隙を伺っていたのだろう。

つまりさっき感じた違和感の正体は私のとこ

ろに来るまでの時間差だったのだ。

蹴りの勢いがことのほか強く、地面に落ちる

のは免れなかったが何とか受け身で衝撃は和

らげた。

しかし、その時にはもう敵は目の前にまで飛

んできていた。

それに対し、再び時間操作を発動させようと

するがそれよりも先に顔面に蹴り上げられ、

仰向けに倒されるとすかさず氷のナイフで手

を貫かれてしまった。

 

夜「っ!!・・・・・・っ!!ぐっ……あぁ

ぁっ!!」

 

 最初に冷たい感覚が伝わり、その直後に痛

覚がやってくる。

貫かれた右手からは血が流れ出し、痛々しさ

を演出する。

更に氷のナイフはそれ自体が冷気を発してい

るからか、触れている傷口の周辺の血や血管

などを凍らせて行き、冷気が浸食していく…

……見ると流血が傷に近いところから血の赤

を湛えた氷となっていく所だった。

 

夜「……あああっっ!!ぐぅう、うあっ……

!!」

 

 想像を絶する痛みに能力発動の集中力がみ

だされ、とてもそれどころではなかった。

そのあまりの激痛に涙が流れ、思わずその手

を庇おうと左手を伸ばそうとするが、既に馬

乗りになっていた相手にその手を地面に押さ

えつけられる。

そのことに相手を睨みつけようと顔をそちら

に向けると何故か相手の顔が鼻と鼻が突き合

う程の距離にあった。そして・・・

 

夜「え?……っんっんむぅ………」

 

 一瞬なにがなんだかわからなかった。

何故か相手は私の口に自らの口を重ね……つ

まるところ、接吻(キスを)してきた。

それも舌同士を絡ませる深いもので、いわゆ

るディープキスという奴である……………

よって相手と自身の唾液が混ざり合い、交換

される。

何故そんなことをしてきたのかわからずに混

乱する上にその扇情的な行為にも関わらず、

そんな風に感じる余裕などは微塵もなく、手

の痛みと混乱とそして、()()()()()()()こと

に恐怖すら感じ、混乱は増す一方だった……

そうしてしばらくの間、私の舌を弄び体を密

着させていたかと思うと、(おもむろ)に私の口から

口を離した。

その時、ぷはぁっと息が漏れる……立ち上が

り様に舌なめずりをするその様子に背筋を悪

寒がなぞるゾワッとした感覚と右手の痛みを

気合いで押し退け、何とか時を止めた。

そうしてまずは自身の右手に刺さったナイフ

を引き抜く。

 

夜「………!!くっ……」

 

その時、激痛が走り、血が流れるが構わずそ

のナイフを相手に向けて投げる。(無論さっ

きの密接した状態から間合いはとっている)

すると、そのナイフが相手のすぐそばで静止

し、配置された。

更に時間を圧縮で、未来や過去のナイフを大

量に相手の周りに配置する。

 

夜「スペルカード!「咲夜の世界」!!……

…そして、再び時は動き……っ!!」

 

 再び時間停止を解除し、ナイフを相手にけ

しかけようとした……その時、信じられない

ものを目にしてしまったことで動きを止めて

しまった。

 

夜「なっ……なんで…………どうして動けるッ!

?」

 

 なんと目の前の敵は私の能力「時間を操る

程度の能力」による()()()()()に、さもそれ

が普通であるとでも言うかのように動き出し

たのである。

この空間の中で動けるのは私だけのはず……

そんなことを考える間にも敵は空間に配置さ

れたナイフをいつの間にか作っていた氷の双

剣で次々と弾き、双剣を消し、代わりに配置

されていた幾つかのナイフを手に取るとそれ

を私に対して投げ、それが空中で静止するの

を見届けると指を鳴らし、時間停止を解除し

た……解除されると同時に、数本のナイフ

が私に一斉に襲いかかり、月の輝く静かな夜

に一人のメイドの悲鳴が響き渡った。

 

 

 

パチュリーside

 

 

パチュリー・ノーレッジ=パ

 

 

 

 私はふと外が気になり、その方角を見るが

何もないのを確認するとすぐに読んでいた魔

導書に目を戻す。

このヴワル魔法図書館は紅魔館の地下に存在

するのだが、そんな地下にも月明かりが差し

込むような仕掛けがこの図書館には施されて

おり、今宵はその月光の明かりで、私は魔導

書を読みふけっていた。

(曇って月明かりのないときは燭台か魔法の

明かりで読む)

そんな私の恰好は月明かりに照らされて闇か

ら浮かび上がっていた。

先がリボンでまとめられた長い紫髪と、紫と

薄紫の縦縞の入ったゆったりとした服やその

上の薄紫の服、ドアキャップのような帽子に

は三日月の装飾、服の各所には青と黄と赤の

リボンのついた寝間着姿のようなそれが月の

光を受け、まるでそれ自体が光を発している

かのようだった。

 

パ「(それにしてもさっきのはなんだったの

かしら……外から何か声のようなものが聞こ

えたような気がしたのだけれど………まぁ、

また妖精が悪戯をやらかそうとして咲夜に撃

ち落とされたんでしょう……)」

 

 そういう事は往々にしてあった。

ついこの間も妖精がこの紅魔館に入ろうとし

て咲夜に見つかり弾幕で撃ち落とされたらし

いことをレミィから聞いたのだ。

実際、妖精などどこにでもいるし現にこの紅

魔館も妖精メイドを大量に雇っている(質よ

り量で兎に角大勢いるがあまり役には立って

はいない)。

そんなことよりも今はレミィ、この紅魔館の

主人であり私の友人、レミリア・スカーレッ

トを助けるための調べものをする手を止める

わけにはいかない…………

そう…先ほど(というより、ほぼ一週間前ほ

ど前からだが)魔導書を読み漁っているのは

、どういうわけか体調を崩し、能力も上手く

使えなくなっているその友人をどうにか回復

させる手立てを模索する為であった。

と、魔導書をいくらか読み進めたところで、

小悪魔が、頼んでおいた本をいくつか抱え、

パタパタと蝙蝠羽を忙しなく羽ばたかせなが

ら飛んで戻ってきた。

その姿は紅い長髪に頭と背中に悪魔然とした

蝙蝠の羽が付いており、服は白いシャツに黒

のベストとベストと同色のロングスカート、

シャツには赤いネクタイを締めている。

そして、今はその両手に一杯の本を若干、重

たそうに抱えてこちらに飛んできていた。

 

小悪魔=小

 

 

 

パ「ああ……こあ、ご苦労様。そこに置いと

いて頂戴…」

小「はい、了解です……っと、ふぅ……あの

、パチュリー様?」

パ「なにかしら?お茶なら、今はいいわよ?」

小「いえ、それもですが……少し休まれては

いかがですか?もう、()()も休まれていらっ

しゃらないじゃないですか……」

パ「そうね……休みたいところなのだけれど

、友人が謎の症状に苦しんでいるときに呑気

に休んでいられるほど薄情でもないのよね…

…」

小「それなら、永遠亭の医者に診せに行かれ

てはどうですか?」

パ「相談を受けた時点でそうレミィにもそう

言ったのだけれど……『こちらで手の施しよ

うがなくなったらそれも考えるけど、自己解

決も図らない内から頼るのはプライドが許さ

ない』らしいわ」

小「えぇーーっとー……それってもしかして…

……」

パ「ええ。確かにプライド云々というのもあ

るのでしょうけど……単に医者に掛かるのが

嫌というのも多分にあるんでしょうね……」

 

 言いながら私は遠い目をする。

そうなのだ、確かに紅魔館の主としてのカリ

スマ性溢れる、良き支配者(あるじ)なのだが、どこか

見た目通りの幼さもあるというのがこの友人

の困ったところであり、その為によく周りを

振り回すのも日常茶飯事だ。

まぁしかし、そこが憎めない可愛いところで

もあるのだが……今回のような場合には困っ

たものである。

おかげで、この図書館中の本を調べなければ

ならなくなってしまった。

といっても、

大抵の本の内容は覚えているので、タイトル

を見ただけでほぼ全ての内容を思い出せるこ

とも考えれば、それほど大変ではないかもし

れないが、ここの蔵書は幻想郷一であり、さ

らに弾幕勝負もできるほどに広大なので、全

て調べるにはやはり日数がかかってしまうの

は仕方のないことだった。

 

小「それでも、いや、だからこそ、パチュリ

ー様まで倒れられては、それこそ元も子も無

いじゃないですか!調べられる方が居くなり

ます!」

パ「その時はもう、私もレミィもまとめてあ

の竹林の医者に世話になることにするわ……」

小「でも…それじゃあ、手を尽くしたことに

はならないですよね?」

パ「……うーーん、そうかもしれないわね…

じゃあ、少しだけ休ませて貰おうかしら」

小「そうですよ!やっぱりそれがいいですよ

!……じゃあ、私はベッドの用意をしてきま

すね!」

パ「ええ、お願い」

 

 小悪魔(こあ)の説得に応じ、少し休眠を取ること

にした。

あそこまで私を説得したのは私の為もあるの

だろうが、自身も休みたかったのだろう。

用意しにいった時の顔がホッとしたものだっ

たので恐らくそうだと思われる。(まぁ、私

は病弱とは言ってもそこは膨大な魔力で補え

るので問題は無いのだが)思えば、私に付き

合わせて小悪魔(こあ)にも大分無理をさせてしまっ

ていたかもしれない。

………まぁ、私の使い魔なのだし、私に聞き

従うのは当然なのだが……

それにしても、ここ五日ほどは休みなくこの

大図書館中から本を取って来てもらっては読

み終わった本を棚に返して貰うという作業を

延々繰り返させたので無理もないとは思う。

……では私も束の間の休息を取ることにしよ

う。

そう思って、私は大図書館を後にし、自室へ

と向かった。

 

 

 

 

レミリアside

 

 

  

 おかしい……何かがおかしい…………。

私、この紅魔館の主であり、紅い悪魔(スカーレットデビル)こと

レミリア・スカーレットある悩みを抱えてい

た。

何故かつい一週間も前から体調が優れず、体

が重く、力を思うように出すことができない。

持前の身体能力や脅威的な回復力、魔法力な

ども落ちている。

片手で持ち上げられるのはせいぜい樹齢百年

の大木でしかできなくなり、人里ほどの距離

を駆け抜けるにも八秒台はかかり、一声で召

還できる悪魔も以前の半分ほどになって、そ

の悪魔も満足に操ることができ無いと来てい

る。

極めつけは自身の能力……「運命を操る程度

の能力」が弱まっていることが判明した。

その能力自体は不確定要素が高く、自力での

行使があまりできないのだが、その影響はよ

く周りで見受けられたので、存在は確かなも

のだと言える…………しかし最近、よくよく

思い返してみれば体調が崩れだした一週間ほ

ど前からその能力の影響が周りに現れていな

かったように思う。

普段は些細なことながら現れていたと言うの

に、ここ最近は()()その影響が見られなかっ

た。

パチェに調べさせても、いまだに原因が分か

らないし、(そもそも、得意分野ではないら

しかったので駄目元だったが)これはいよい

よ、あの竹林の医者(マッドサイエンティスト)に診てもらうしかない

かもしれない。

そろそろあの友人も、関連した文献や書物は

あらかた調べ終わるだろうし、それでも駄目

なら、諦めて行くしかない。

そんなことを考えながら自身の青みがかった

銀髪を弄り、時折自身の衣服に目を落とす。

帽子のナイトキャップと同じピンク色であり

、太い赤線が入りレースの付いた襟、両袖は

ふっくらと膨らみその袖口は赤いリボンで蝶

々結びにされている。

レースの服は真ん中をボタンでつなぎ止め、

一番上にはS字状の装飾が施されている。

踝まで届くスカートには赤い紐が通っており

、更に腰と帽子にも白い線の入った赤い紐が

通っていた……そんな自分の姿を確認し終え

ると、柄にもなく溜息を吐いた。

そこで、ふと窓から月を見上げる。

悩みのある自分とは裏腹に、今宵は満月(フルムーン)

しい。

 

 

 

レミリア・スカーレット=レ

 

 

 

レ「それにしても、一体どうしちゃったのか

しら………」

 

 とそんなことを呟いていると、そとからコ

ンコンとノックの音が聞こえた。

次いで、お姉さま?という声が聞こえる。

その声に対し、開いてるわよと答えると、徐

にそのドアが開き始めた。

 

 

フランドール・スカーレット=フ

 

 

フ「お姉さま、今、大丈夫?」

 

 そうして、扉から現れたのは我が愛しき妹

、フランドール・スカーレットだ。

ちゃんと一度、相手にたずねてから何かをす

るあたり、常日頃からの立ち振る舞いの良さ

が伺える。

以前は何か物をたずねる前に狂気に任せてそ

こら中のものを壊していたものだがとある異

変を経て以来、その狂気は鳴りを潜めている

ので、こうして外にも出している。

前は狂気が全面に出ていたため、地下に幽閉

せざるを得ず、心苦しい日々を過ごしていた

が、今はこうして普通に会話できていること

を幸せに思う。

それが、あの黒白の魔法使いのおかげもある

ということが少々複雑だが……それは贅沢と

いうものかもしれない、しかし、あの手癖の

悪さはどうにかならないのだろうか。

パチェもいい加減にして欲しいと泣きついて

来るほどなのに加え、当の本人は「これは盗

みじゃない。死ぬまで借りてるだけだぜ!!」

と開き直る始末………

全く、どうしたものか……対策を立てても警

備を強化してもまるで……と、自身のことと

は別の悩みに気を取られているとフランから

声がかかった。

 

フ「あの……お姉さま?」

レ「…あ、ああ!……なにかしら、フラン?言

っておくけれど、今日の分のお菓子ならもう

さっき食べたあれで最後よ?また咲夜に言え

ば作ってくれるとは思うけど…」

フ「いや、そうじゃなくて……最近のお姉さ

ま、すごく具合が悪いみたいだから少し、心

配になって……大丈夫?」

 

 なるほど、私のことが心配で様子を見に来

てくれたのか……なんて優しい子なのか……こ

れで、()()人格さえ出てこなければ、と思わ

ずには居られないが、この子自身もアレを出

したくて出しているのでは無い、それにアレ

も紛れも無いこの子の一面なのだ……それを

考えると、実に複雑だった。

 

レ「ええ、大丈夫よ……このくらい、大した

ことはないわ……だから安心して頂戴。直ぐ

に良くなるわ」

 

 そう(どこか不敵さを交えて)微笑みかけ

ると、安心したようにうなずくフラン。

 

フ「うん、そうだよね……うん、お姉さま

がそんな簡単にくたばるわけ無いよね!」

 

 輝かしい笑顔を私に向けてくれた。

それに笑顔のまま頷いて答えると、とても言

いにくそうに私にお願いしてきた。

 

フ「あの、それで…その……よかったら、こ

のまま一緒に居てもいいかな……なんだか

嫌な予感がして、不安で……だから朝は一

緒に寝て欲しいな…なんて…………だめ?」

レ「ええ!いいわよ!……こっちにいらっし

ゃい……一緒に寝ましょ♪」

 

 まったく、末恐ろしい妹である。

いつの間にこんなに相手の懐に入るのが(甘

え)上手になったのだろうか。

しかも余りに可愛いので、つい、頬が緩みき

りそうになってしまったではないか!

しかし、ここはたとえ肉親とはいえ姉として

の最低限の威厳は保たねば……ふっ、まさに

これは、姉としての威厳(ヘルメット)が無ければキュン死(即死)

だった……というやつだろか………何を言って

いるのかわからないだろうが、私にもわけが

わからない…もう頭がどうにかなりそうよ。

(現在進行形)

妹だとか萌えだとかそんなちゃちなものじゃ

あ断じて無い!もっと恐ろしいものの片鱗を

味わったわ………

さて、ここからは悩みも忘れてお楽しみの時

間と行こう。

ここからの描写は無いが、見ている者は好き

に想像するがいい……(読者(きさまら)妄想して(みて)いるな

!)

 

 

 

だが、この時はまだ分かっていなかった……

私たちの幸せを壊そうとする影の存在に……




はい、どうも!もう毎回前書きを書くのがメンドクサクなってしまった………城が猫です!
今回の話は一番長く続き、更に紅魔編は二部に分けました。つまりは異変に真っ向から突っ込んでいく話ということです。いや、それにしても、最初は紅魔編も一話だけにするつもり
だったのに、1万文字行っちゃったというね……本当はまだ書けるのですが……
でも一話が長いのはこちらとしては達成感はあるけど、読者の方は読みにくいだろうし避けたいので、区切らせていただきました。(それなら5千文字くらいにしろとは言わないで)
というわけで、次で紅魔編は終了になります。
で、その次は……勘のいい方ならわかりますよね?(でも勘のない方は分からないとは言っていない)
それでは!!次の話でお会いしましょう。
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