東方氷異伝   作:城が猫

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第十三話 氷争(紅魔 其の参

レミリアside

 

 

 

 

 とても不可思議な感覚が今の私を支配して

いた。

玉座に腰かけひじ掛けに肘をつき、頬をその

片手に預けながらそのことについて考える。

それは、力の湖の中に浸っているかのような

感覚で、とても心地よく、気分が良いが意識

が朦朧として、喋ることすら億劫になるよう

な無気力感だった。

それが全身を支配している。

しかし、そこに一度命令を投げ込まれればそ

れを何が何でも遂行しようとする謎の意思力

に満ちていた。

そう…待っているのだ、その時を。

そして……それはやって来た。

今まさに自身に下された指令は目の前に現れ

た者たちの抹殺だ。

正直、これほどの力があれば容易いだろうと

思う。

私は宙に浮かび、現れたものたちと対峙する。

そして、その抹殺対象のうちの一人が前に進

み出て、必死の形相で、どこかいで聞いたこ

とのあるような声で叫んできた。

そう、あれはどこだったろう…………

しかし、すぐにそんなことはどうでも良くな

った。

 

?「レミィ!!!私よ!!分からないの!?」

 

 今の私に届くのは、自身を支配する者の声

のみだ。

よって、どこかで聞いたことのあるようなそ

の声の主が誰なのか思い出すことは無かった。

 

 

 

チルノside

 

 

 

 

 パチュリーの先導で、レミリアのいる部屋

まであたいたちは辿り着いた。

 

チ「ありがとう…パチュリー。ここからはあ

たいと大ちゃんに任せて、あんたは咲夜の部

屋へ行って咲夜と藍、橙と合流して避難して

てよ」

大「案内、助かりました!ありがとうござい

ます!安心してください!必ずレミリアさん

を助け出して見せます!」

パ「そのことなんだけれど……」

チ大「「?」」

パ「……今の私が行っても足手纏いなのは

重々承知しているわ…でも、私も同行させて

貰う事は出来ないかしら」

 

 パチュリーは、あたいの目を真っ直ぐに見

つめてそう願い出て来た。

 

チ「……危険だよ?それでも行くの?」

大「そうですよっ!!そんな……っ」

パ「危険は承知の上よ……でも、私はもう

後悔したくない。あの子があの影のようなも

のに飲み込まれた時に、私は近づくことさえ

出来なかった、ううん近づくのを躊躇ってし

まったの…もちろん、だからと言ってその後

の結果に変化があったとは思わないし、そう

することで最悪私も取り込まれていたかもし

れない………それでも」

大「…………………」

パ「それでも私は例え一時でも保身に走った

…それが正しい選択だったとしても、私は自

分を許せ無いの…少しでもあの子の助けにな

りたいの……親友…だからね。……だから、今

度はその手を掴んで離さない……呼びかけて

少しでもあの子が戻ってこられるようにした

いの……駄目かしら?」

 

 そう語るパチュリーの目は非常に真剣なそ

れだった。

友を救いたいという切実な思いが伝わってく

る。

だから…………あたいの答えは一つだ。

 

チ「まったく……そう言われたら弱いね…そ

の気持ちは良くわかるしね……」

 

 言いながら大ちゃんを見る。

あたいだって大ちゃんが同じ様な目にあった

のだ。

例えこんな力が無くたってあたいは大ちゃん

のことを……

 

大「……うん、私にもわかる……パチュリ―さん

!…さっきはすみませんでした………私にも

親友を危険に飛び込んででも助けたい気持ち

があったのに………だから、私、全力でお手伝

いします!!」

 

 どうやら大ちゃんも同じ気持ちのようだ。

 

パ「いいえ、無理を言っているのはこちらな

のだし、さっきの事も私を守る為に言ってく

れた事だから……感謝こそすれ、文句なんて

あるわけないわ……でも、ありがとう」

チ「どういたまして」

大「必ず取り戻しましょう!!私たちのとこ

ろへ!!」

パ「ええ、そうね……必ず…!」

チ「それじゃあ、これが今回のラストターン

だね……」

 

 言いながら扉を開けるあたい。

その先には若干想像とは外れた、しかし概ね

その通りで、全くの予想通りの人物が玉座に

鎮座していた。

 

 

 

 

 

大妖精side

 

 

 

 チルノちゃんが扉を開け、その部屋の中に

入って行くのに私とパチュリーさんもついて

いく。

そして、その部屋の中のいわゆる玉座と呼ば

れるその椅子には一人の、背中に蝙蝠の羽を

生やした人が、まるでレミリア本人の輪郭を

真っ黒に塗りつぶしたような()()()()()のよ

うな姿でそこに腰掛けていた。

その人は入ってきた私たちをまるでなんとも

思っていないかのように、肘掛けに肘をつい

てその手に頭を乗せて尊大な態度を取ってい

る。

かと思えば、彼女は椅子から立ち上がり、宙

に浮かび上がった。

恐らく戦意を表しているのだろう。

……わかっていたことだが、どうやらやるし

かないようだ。

そんなことを考えていると、パチュリーさん

がその影の人に必死に、かけがえのない人を

取り戻さんと懸命に呼びかける。

 

パ「レミィ、お願いよ!!気付いて!!!」

 

 しかし、その呼び声虚しく……この紅魔館

の主にして、誇り高き「紅い悪魔」レミリア

・スカーレットは、只の傀儡(かいらい)としての行動を

私たちに取るのだった。

 

ミ「…………」

 

天罰「スターオブダビデ」

 

 彼女が手を広げると同時に弾幕が展開され

る、部屋全体にレーザーが展開、丸弾、リン

グ型の弾幕が打ち込まれてくる。

私はそれらがパチュリーさんに当たる前に座

標移動で二人一緒に移動する。

前ではすでにチルノちゃんがレミリアさんと

戦っている。

そこでふとパチュリーさんを見てみると悲痛

な面持ちで私に(いだ)かれていた。

それはそうだろう……自分の声が親友に届か

なかったのだから。

 

大「パチュリーさん………諦めないでくださ

い!」

パ「え……?」

大「一回でダメなら二回、二回でダメなら三

回……何度でも何回でも呼びかけましょう!

!その為なら私もギリギリまで近づきます!

!力になりますから!」

パ「でも、そんなことをすればあなたまで…

…!!」

大「私は大丈夫ですから!それよりもあなた

を守れるかが心配ですが……でも、私、頑張

りますから!!さぁ…もう一度!」

パ「ええ、そうね……お願いできるかしら!」

大「はい!喜んで!!」

 

 彼女は私の励ましに応えて元気を出してく

れた。(もちろん会話中も弾幕を避けている)

それから、私は自身の座標移動を駆使して何

とかギリギリまで近づきつつ、弾幕を躱す。

すると、チルノちゃんから声が上がった。

 

チ「バカなっ!?なんで躱されるっ!!!?」

 

 見ると確かに、チルノちゃんの攻撃は躱さ

れ続けているようだ。

私の目には最早、何も見えないくらいに速い

攻撃なのだが、それらを避けれているという

ことは分かる。

なぜなら相手が止まっていないからだ、何ら

かの攻撃が当たっているのならその分動きが

止まるはずなのにそれが一向に無い。

私の目では捉えられないので、もしかしら掠

ったりくらいはしているのかもしれないが、

少なくとも決定打にはなるような攻撃は受け

ていない。

 

大「(おかしい……確かに、凄い力を感じる

けど…チルノちゃんほどじゃないはずなのに

……)」

 

 それにおかしなことはまだあった。

さっきからちゃんと弾幕の射線を見て躱して

るはずなのにどういうわけか、気付くと躱し

た先に弾幕が待ち構えているのだ。

酷い時には躱して移動した先に弾幕が飛んで

来ていて危うく被弾しそうになってしまった

こともある。(私が、見切れていないといえ

ばそれまで何だけれど…………)

しかも、チルノちゃんがその弾幕をエネルギ

ーとして吸収しようとしても、弾のほうが微

妙にチルノちゃんを避けて行ってしまう……

これは流石におかしい………とそんなことを

考えていると、レミリアさんから放たれる弾

幕が変化した。

 

ミ「・・・・・・・・・・」

 

紅符「スカーレットマイスタ」

 

大「う、うわわっ……!」

 

 突如、弾幕のパターンが変わったことでま

たも被弾しそうになり、弾幕がすぐ横を掠め

ていった。

更に彼女はチルノちゃんへの反撃をも開始す

る……そこで私はとんでもないものを目撃し

た。

なんと、レミリアさんの攻撃がチルノちゃん

に直撃したのである。

 

チ「ッッッッ!?」

 

 横回し蹴りを脇腹に受けてチルノちゃんは

部屋の壁まで吹っ飛ばされてしまった。

……そこからは、なんとか受けやガード等で

凌いでいるものの、チルノちゃんは防戦を強

いられ、躱そうとすればそれはもれなくチル

ノちゃんへのクリーンヒットになってしまう。

 

チ「………がぁっ……!!っっ……でやぁ!!

……!?」

 

 そして、相手の打撃後の硬直を狙ってカウ

ンターを放っても何故か軽々と躱されてしま

う。

 

チ「ならばっ!!」

 

 その言葉の直後にチルノちゃんとレミリア

さんは、一瞬で部屋の端から端へ移動してい

た。

それは、弾幕がレミリアさんがさっき迄いた

ところから移動したところまでの間の弾幕が

一瞬で消えていたので時間停止だと分かった。

(妖力弾は時間停止中に止まっている間に吸

収したのだろう)

つまり、さっきの戦いでチルノちゃんが学習

した時間操作である。

しかし……それでも、レミリアさんには攻撃

が当たっていなかった……それどころかチル

ノちゃんが攻撃を受けていた。

 

チ「あの空間の中で動いた!?……というこ

とはまさか!!」

 

 そう、だとすればその答えは一つ。

驚くべきことに今の彼女も時間操作が使える

のである。

そこで、レミリアさんに絶えず呼びかけてい

たパチュリーさんがそれを一時中断して、チ

ルノちゃんに話しかける。

 

パ「気を付けてっ!!今思い出したのだけど

、今のレミィは恐らく、私の精霊魔法も操れ

るわ!!」

チ「なっ!?」

パ「それと、さっきからこちらが一方的に攻

撃を受けているのは……レミィの「運命を操

る程度の能力」によるものよ!!」

チ「っ!?…でもそれは、単に周りにいると

数奇な運命を辿ることになるとか、珍しいこ

とに出会う確率が高くなるってものじゃなか

ったっけ?こんな、戦闘特化な力じゃ無いは

ず何だけ、ど!」

パ「そのはずなんだけど、今のこの子はそれ

が強力になっているみたいね…操作力が桁違

い………なにより、こんなに身近な運命(もの)まで

操れるなんて……それが、元々持っていたも

のなのか、それとも付与されたものなのかま

では分からないけど」

 

 そこまでパチュリーさんが言い終えると、

レミリアさんはこちらにその精霊魔法を打ち

込みつつ、チルノちゃんには手に紅い槍を出

現させて、打ち合う。

 

木符「シルフィホルン」

 

パ「ッ!!あれはッ!私のスペルッ!!……

やっぱり、使えたのね……でも、これなら私

が避け方を知ってる!!」

 

 それを受けて私もパチュリーさんの指示

通りに弾幕を躱す。

躱し始めてから数秒後、今度は今のスペル

に重なるように、彼女自身のスペルが放た

れた。

 

夜符「クイーン・オブ・ミッドナイト」

 

パ「そんな………これじゃあ、避けきれない

……っ!」

大「それならっ…わかる方だけでも教えてく

ださい!!どうにか対処してみます!!」

パ「分かったわ…次は右よ!」

 

 どうやら彼女はチルノちゃんと戦いながら

もスペルを二つも重ねることで、密度を高め

て避けにくくするつもりらしい。

何とか、パチュリーさんの指示と自身の能力

と反射神経で躱していくが、いつまで持つか

分からない。

そして、ついに相手の目論見は功を奏するこ

とになる。

こちらに向かってきた妖力弾の射線を避けら

れずに弾が目の前まで来ていた。

 

大「きゃあっっっ!!………………?」

 

 その時、光弾による熱と衝撃を覚悟したの

だが、一向にそれが来ない。

恐る恐る目を開けると、この部屋に入る前に

チルノちゃんから渡された翡翠色の結晶が淡

く静かに輝いていた。

それを見て、この部屋に入る前のチルノちゃ

んとの会話を思い出す。

それは、パチュリーさんとお話をする前のこ

と……

 

チ「大ちゃん、これ……」

大「……?なに……?これ…なんか凄く、綺麗

だけど…」

 

 チルノちゃんはどこからともなく翡翠色に

淡く光る結晶を取り出して、私に手渡した。

私がそれをしげしげと眺めているとチルノち

ゃんが説明を始めた。

 

チ「一応…心配だから、それを渡しておくよ。

…それを持っていると熱と衝撃から守ってく

れるようになってるから、持っていれば例え

攻撃を受けても少しくらいは大丈夫なはずだ

よ」

大「へぇ~~……あっ!これってもしかして、

他にも人を探したり涼んだりできるのもある

……あれ?」

チ「うん、あたいが持っている十の結晶のう

ちの一つだよ」

 

 それには覚えがあった。

みすちーを一緒に探したり、リリーちゃんが

涼むのに貸してあげていたものとはそれぞれ

の色と役割が違うものの同じ結晶なのだろう。

そこまで思い浮かべるとチルノちゃんが先を

続ける。

 

チ「でもまぁ、絶対ってわけでもないし、あ

んまり頼りすぎると危ないと思うからお守り

程度に思ってくれたらいいよ。だから…あん

まりあてにし過ぎないように忘れててくれて

も構わないから……」

大「うん、わかった。ありがとね、チルノち

ゃん!!」

 

 そして、笑顔でそう答えたのだった。

その時、パチュリーさんはそんな私たちのや

り取りを温かく見守るような、それでいて自

分と同じものをみるような目で私を見ていた

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━…………。

 

 チルノちゃんはお守り程度に思っておいて

なんて言っていたけれどとんでもない。

結晶(これ)はそれ以上の効果をしっかりと発揮して

いた。

はっきり言って、単なるお守り以上だ、その

効果は覿面だった。

私もチルノちゃんの言葉を真に受けて、必死

に逃げ回っていたのだが、この結晶の効果を

見て、これなら多少突っ込んで行っても問題

はなさそうだと確信する。

しかし、頼りすぎるのも良くないというのは

分かる気がする。

確かに熱と衝撃からは完璧すぎるほどに守っ

てくれたが、その他に関してはまだ何とも言

えないのだ。

だから、そこは気を付けるべきだろう。

でもこれで、弾幕の嵐を気にせずチルノちゃ

んに加勢できる。

そう思うと手のひらで輝く、私の髪の色に似

た翡翠色の結晶がそれに応えるかのように微

かに瞬いたような気がした。

 

大「チルノちゃんてば……心配しすぎだよ…

でも、これで私も………君の隣に行ける!!」

 

 因みに私に傍観するという選択肢はない。

パチュリーさんには悪いけど、私は少しでも

親友の扶けになりたい。

それに、今私のもとに耐熱耐衝撃(この)結晶がある

ということはチルノちゃんの熱と衝撃に対す

る耐性が落ちているということになる。

今は熱はともかく衝撃をもろに受けるような

状況で━━レミリアさんは今、背後で操る、

飛王(フェイワン)の指示なのか、チルノちゃんに対して

は接近戦や格闘などの肉弾戦しかしてこない

━━それは拙いし、親友がそんな状態なのに

離れたところで見ていることなど出来るわけ

ない━━━さっき壁まで吹っ飛ばされた攻撃

だって、この結晶があればなんてことはなか

ったはずなのに、私に渡したままで………だか

ら、できることなら、側に行って力になりた

い!そんな思いを察してか、パチュリーさん

が私の背中を押してくれた。

 

パ「……私のことはいいから、行ってきなさい

!……あの子のこと…大切なんでしょう?」

パ「私は外で待っているわ……今…私の声はレ

ミィにはどうやっても届かないみたいだから

……」

 

 そんな風に悲愴感を漂わせながら言う彼女

に私は反論の声を上げる。

 

大「……っ!!そんな…諦めないでください

!!……それに、私から離れたらパチュリー

さんは弾幕に晒されることに……って…あれ?」

パ「そう、今は弾幕は止んでいるわ。恐らく

、さっきあなたに弾幕が効かなかったのを見

て無駄と判断したんでしょう…だから、私は

弾幕の雨に晒されることなくこの部屋から出

られるわ」

大「でもっ!それじゃレミリアさんのことは

どうするんですか!!」

パ「別に諦めるわけじゃないわ…それをする

のが今は私の役目ではないというだけ……そ

れならいっそあなたたちに託して、私はレミ

ィが帰ってきたときの為に備えておく方がい

いと思っただけよ」

パ「私は居なくなるけどその代わり…一応、

精霊魔法の一通りの知識をあなたに託してお

くわ。使う事があるか、わからないけれど…

今の私にできることはこのくらい……でも、

私は絶対に諦めない!だから、あなたも……

あの子(チルノ)を傍で支えてあげなさい

。そして、必ずレミィを連れ戻してきて」

大「パチュリーさん……」

パ「ふふっ……それに、私に諦めるなって言

っておいて自分はやらないなんて……そんな

こと……もちろんないわよね?」

大「……!!はいっ!もちろん…!!……パチ

ュリーさん…ありがとうございますっ!!!」

 

 そこで私は彼女から直接頭の中へ知識を与

えてもらうと、その場にパチュリーさんを置

いて急ぎ、チルノちゃんの元へと飛んだ。

 

パ「レミィ……今の私ではあなたに声を届か

せられなかったけれど、あなたに私の声が届

くようになったら、私が最初に声を掛けるか

ら…それで許して頂戴……」

 

 部屋の中の戦場で踊る友を振り返りながら

、切に祈るような謝罪の言葉は誰にも拾われ

ることなく虚空に消えていった。

 

 

 

 

チルノside

 

 

 

 相変わらずこちらの攻撃がすべて躱される

かいなされて、一向に相手に対して攻撃が入

らない。

それどころか、相手の攻撃はほぼ確実に自分

に入ってくるので、避けに転じればそのまま

相手からダメージを受けることになる。

なので、防戦一方ならぬ()()()()での戦いを

強いられ続けていた。

少しでも攻撃の手を緩めれば相手からの反撃

が飛んでくるという、とても際どい状況であ

る。

そんな、状況を耐え忍びながら戦闘している

と、覚えのある気配が近づいてきた。

 

大「チルノちゃん!」

チ「…大ちゃん!……っく!!」

 

 大ちゃんが危険を冒してまであたいに会い

に来てくれた。

それに応えようとしたが、どうやらその暇す

ら与えて貰えないらしい。

攻撃の手を緩めれば忽ち反撃が飛んでくる。

しかし、何とか相手に攻撃を繰り出しつつ、

大ちゃんに向けて声を張り上げる。

 

チ「大ちゃん!!来てくれたのは嬉しいけど

……ここは危険だから早く下がって!!」

大「そんなことできないよ……!私も一緒に

……!!」

 

 そんなやり取りを聴いてなのかは分からな

いが、相手はあたいを鍔迫り合いの末に遠く

まであたいを押しのけると、大ちゃんに向け

て手を出した。

そう、まるで自身の手の中にある相手の(最も緊張した部分)

()()()()()()とするかのように。

 

チ「(こ、これはまさか……!)大ちゃんっ!

!離れて!!」

大「え?……!!」

 

 大ちゃんは……一瞬遅れてそれに気が付い

たようだ。

だが、その間にもレミリアのその手は閉じら

れてゆく。

最早迷っている暇はなかった。

 

チ「(……大丈夫だ、あの能力(ちから)はちゃんと見

たじゃないか!いまならできるはず)………

!!」

 

 大丈夫だと自分を奮い立たせ、あたいは目

の前の敵の手を見据えた。

 

大「っ……!!・・・?・・・!」

 

 大ちゃんは自身に襲いかかるはずの破壊の

能力を目を瞑りながらじっと待っていた・・

・・・・が一向にそれが来ないことを不思議

に思ってか、目を開けて様子を見る。

……その瞳には、あたいが映っている。

 

 あたいは、レミリアがフランの「ありとあ

らゆるものを破壊する程度の能力」を発動さ

せる前にフランから(学習し)ていた、その破壊の

能力の本質である、その物体の最も緊張した

部分である「目」を自分の手に()()()()()

り潰すことができる力を使って、既にレミリ

アに移動していた大ちゃんの「目」をあたい

の手に移動させ、レミリアが大ちゃんを破壊

するのを防いだ。

そして、相手が手を握る瞬間にそれを発動し

て同時に相手に突撃し、相手を壁まで弾き飛

ばしたのだ。

レミリアが能力を発動させようとしてるのは

なんとなく勘で分かった。

嫌な予感がしたし、何よりフランがそうして

いたのと全く同じだったので、すぐに直感し

た。

 

大「チルノちゃん……」

チ「大丈夫?ケガはない?」

 

 一応、そう訊ねてから自身の手に移ってい

た大ちゃんの「目」を大ちゃんに戻す。

その時、まるで思い出したかのように敵が壁

が崩れた瓦礫を吹き飛ばして再び目の前に現

れた。

そこであたいは頭の中で一つの作戦を思いつ

いたのでそれを大ちゃんに告げる。

 

チ「ねぇ大ちゃん…ちょっと手伝って欲しい

ことがあるんだけどいいかな…」

大「!なに?なんでも言って?チルノちゃん!」

チ「あのね・・・」

 

 そこであたいが大ちゃんに耳打ちすると、

大ちゃんはうん!わかった!と力強く頷いて

くれた・・・そしてあたいと大ちゃんが話し

ていると、相手が紅い槍をこちらに構え、そ

して投げた。

 

チ「……ありがとう。……!!来るよ!大ちゃ

ん!」

 

 

 そして、相手の放った槍が届く前に大ちゃ

んの座標移動で躱す。

あたいは大ちゃんと一緒に移動した後、相手

の背後に回り込んで大ちゃんと挟み撃ちにす

るように陣取った。

そこで相手があたいに向き直り、槍を手元に

出現させて構え、そのままこちらに突っ込ん

できた。

 

チ「っ!!(まただ……「運命」の所為か反

応が遅れて、どちらに避けるかを迷ってしま

った!!)」

 

 その一瞬の隙を突くように…正確にはその

隙が現れるのを()()した上での突撃だった。

つまり、相手はただ突っ込んでいればそれで

隙が生じるように運命を操作したのである。

 

大「…っ!!やぁぁぁあああーーーーッッ!

!!」

ミ「―――!!……?」

 

 しかし、そこで大ちゃんの全力の飛び蹴り

が背後からレミリアに炸裂する。

蹴り飛ばされつつもそのことに驚くように全

身が真っ黒な影に覆われたレミリアは振り向

いた。

それもそのはず、あたいも正直なところ、上

手くいったことに胸を撫で下ろしている所な

のだから、、、

 

 あたいは大ちゃんにレミリアを倒す為にあ

ることを提案した。

 

大「なんでも言って!チルノちゃん!」

チ「それじゃあ大ちゃんは、レミリアの背後

、または正面に行って、あたいと挟み撃ちの

形をとって欲しい」

大「うん!分かった!……けど、なんで?」

チ「それはやったら大体分かると思う。それ

で、あたいとその形になったら、相手は多分

あたいを狙ってくるだろうから、そこを突い

てレミリアに攻撃を入れて欲しいんだ」

大「ええ!?でも、運命力で躱されてしまう

んじゃ……」

チ「そのことも、やって見れば結果はわかる

と思う。だから、取り敢えずその二つをお願

いするね?」

大「う、うん!わかった!任せて!」

チ「問題は精霊魔法なんだけど、あたいはそ

の手のエネルギーを吸収できるから関係ない

けど、その力だけはまだ持ってないから相殺

できないんだよね…どうしようかな・・・」

大「それなら…!私はパチュリーさんから精

霊魔法の知識を貰ってるからちゃんと躱せる

し、対応できるよ!」

チ「!そうなの?それなら……でも、気を付

けてね。大ちゃん……」

大「うん!チルノちゃんもね!」

 

 以上が先ほどの会話の内容である。

破壊の能力はあたいが何とかできるし、時間

操作は相手も使えるから意味がない。

後は運命と魔法をどうにかしなければならな

いが、それもこれで解消された。

何故かと言うと、精霊魔法に関して大ちゃん

がパチュリーから知識を貰っているし、運命

の方は今さっき、大ちゃんがレミリアに一撃

入れられたことで確信に変わった。

……あの運命操作は対面している相手、若し

くは認識している相手に最も効果があり、そ

の他では効果が薄いのだ。

その根拠は、相対していた自分がここまで追

い詰められたのに対して大ちゃんはちゃんと

躱してこれたことだ………とそこまで考えた時

、相手が大ちゃんに弾幕でない魔法を撃ち込

み始めた。

それも相克と相生等の関係をうまく使って攻

撃している。

まず、金属性の魔法を放ち、次に金と相性の

良い土の属性で攻撃するなど、考えて攻撃し

ている。

しかし、大ちゃんも座標移動を駆使して躱し

続ける……そのうちに、放たれる属性が一巡

し、全ての属性が場に出てきた。

一向に攻撃が当たらないのを受けて相手が大

ちゃんの周りを囲みに掛かる。

 

大「う、うわっ!」

 

 そこで、一つの水属性の魔弾が大ちゃんの

ギリギリ横を通り抜けていって肝が冷えたが

なんとか躱したのを見て安堵する。

そこで、また今度は火の弾が彼女を襲うが、

ここで戦局が変わり始める。

火の弾に追いかけられていた大ちゃんは水属

性の魔法の近くに来てギリギリで瞬間移動し

、火の弾幕を水属性の魔法で相殺した。

・・・その後も、木属性なら金で、水属性な

ら土と次々と躱しながら逆属性で相殺し、対

応していく。

その、まるで草が風に煽られるだけで一向に

抜けずそこにあるかのような埒の明かない展

開にレミリアは運命操作を強くかけて大ちゃ

んに弾幕を当てに掛かる。

 

チ「━━━はぁぁああっ!!そこだっ!!!」

ミ「━━━ッ!!?」

                              キィンッ!

 

               

 その瞬間を狙って、あたいはレミリアに突

撃を仕掛けるも、寸前で、運命の能力の対象

をあたいに変更した上で、紅槍で受け流され

てしまった。

 

大「━━━ああっ!惜しい!!……っと、う

わわ」

チ「大ちゃんっ!!」

大「大丈夫っ!!…これ、くらい、どうって

ことは……!」

 

 大ちゃんがあたいに心配かけまいと弾幕を

躱しながら、こっちに返答する。

そこで、レミリアがあたいと大ちゃんの包囲

から離脱し、壁を背にして戦い始めた。

そして今度は、精霊魔法以外の時間操作、破

壊の能力、運命操作、の三つをフルに活用し

て、あたいと大ちゃんに攻撃を仕掛けてきた。

…しかし、これを目にしたとき、あたいは悟

った・・・・・・もう、終わりが近いという

ことを。

 

チ「大ちゃん!ついに、追い込んだよ!」

大「え!?…チルノちゃん、それはどういう

……」

チ「・・・言葉通りの意味だよ。相手はあた

いたちをまとめて相手しなきゃいけなくなっ

たし、精霊魔法は意味をなさないと知って使

ってこない…だから、既に見切られていると

分かっていても他の運命操作と時間操作、破

壊の能力を使うしかなくなった。大ちゃんに

魔法は当たらないし、あたいには吸収されて

しまうからだ・・・だから、相手はもう手詰

まりなんだよ」

大「な、なるほど…それじゃあ、あとは……」

チ「うん!ここから畳み掛けるよ!!合わせ

て!大ちゃん!」

大「了解!!」

 

 だがここで、相手はあたいたち二人を認識

することで運命の能力を平均的にあたいたち

に掛けて対応しようとしているようだ。

その証拠に攻撃は躱され、こちらに攻撃が掠

めて行く。

だがそれは()()()()()()()()()()()()()()()

であり、これからする攻撃に対しては意味を

なさないだろう。なぜなら・・・・・・・

 

チ「あたいの進行方向に先に転移して、あた

いと一緒に転移してから離れるのを繰り返し

て!それで相手の攪乱と包囲を同時にする!」

大「はい!」

 

 そのあたいの指示に大ちゃんは身構える。

あたいは大ちゃんがギリギリ反応できる程度

のスピードで、相手の周りを飛ぶ。

そして、大ちゃんがあたいの移動先に先に転

移し、そこであたいと合流すると同時に別の

場所に転移する。

そこでまた分かれて同じことをする………これ

を繰り返し、レミリア(ひょうてき)を囲み、攪乱する。

すると、目論見通り相手は混乱しているのか

あたいたちを目で追おうと必死に体の向きを

四方八方に向かせ、首を忙しなく動かしてい

る。

━━━因みに時間操作は発動させた場合、大

ちゃんに持たせて

いる結晶とあたいを繋げて、あたいの時間停

止の発動に連動して発動して大ちゃんにも時

間停止の空間で動けるよう術式を組んでおい

た━━━

…………そして、相手があたいたちを捉え切れ

なくなった瞬間!!

 

チ「よしっ!!ここだぁっ!!」

大「うん!」

 

 レミリアはあたいたちを捉え切れず、それ

故、あたいたち二人に均等に掛けていた「運

命」が、効力を失う……その隙を突いて、あ

たいが大ちゃんに合図を送り、()()でレミリ

アに向けて突撃した。

しかし、そのままではレミリアの運命操作の

影響をまた、もろに受けてしまう……だが、

ここで大ちゃんがレミリアの前まで転移した。

そのことに驚いたような素振りを見せるも、

すぐに大ちゃんに自身の能力を掛け、更に紅

槍で貫こうとした……その瞬間にはもう大ち

ゃんは移動しており、あたいはそのすぐ後ろ

から大ちゃんが移動するのと同時に突っ込み

、相手の紅槍を避けて自分の槍を相手に届か

せる。

 

チ「いっけぇぇぇええぇぇぇっ!!!」

 

 相手はそれに気付いたが、その時にはもう

あたいの槍が届いていた。

もちろん、それは相手を貫くことはなく、周

りを凍らせて意識を奪うだけの槍だ。

━━━━━それが届いた瞬間、パキッぺキッ

などの大気のひび割れるような音が広い部屋

全体に響く━━━━━

そして・・・・・・影の傀儡となっていたレ

ミリア・スカーレットはその姿のまま氷漬け

となり・・・沈黙した。

 

大「はぁ…!はぁ……っ!ど、どうなったの?

……勝った、の…?」

チ「うん、勝ったよ…大ちゃん……お疲れ様」

大「はぁ…はぁ……よ、よかったぁ~……!」

 

 一気に緊張が解け、その場にへたこむ大ち

ゃん。

その姿を見届けて、あたいは部屋の入口へと

歩き出す。

 

大「……あれ?チルノちゃん、どこ行くの?」

チ「大ちゃん…忘れたの?…一緒に来た藍に

終わったことを報告に行かなきゃでしょ?」

大「あっ!!すっかり忘れてた!…私も行く

よ!」

チ「大ちゃんは休んでても……って言って

もついて来るんだよね…うん、いいよ。一

緒に来てもらった方が安心だし……」

 

 そうして、あたいたちは激しい戦いのあっ

たその部屋を後にして藍達のいる部屋へと向

かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっ……やっとだせた………今回はかなり期間が空いてしまいました……亀更新タグがなければ、即死だった……って奴ですね!ホント!!
しかし、紅魔編はこれで終わりかと思いきや、最後にちょろっとしたのが残っているのでそれが終わったら次の話に移行すると思います。さぁ~~て、今度は一日先か一年先か……。
……せめて一年先はないようにしたい……というわけで次回のお話でお会いしましょう!
サヨナラーーー!
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