それでは本編です。
藍side
冥界の桜吹雪が舞い散る中、繰り広げられ
る激闘………その様子を眺めながら、ここに
至るまでの経緯を私は思い返していた……
橙「・・・藍さま?」
物思いに耽っていた私の顔を見て橙が心配
して声をかけてくれる……その声に応え、橙
の髪を撫でる……私たちに出来ることはもう
無くなってしまった………だからあとは………
藍「大丈夫だ……きっとなんとかなる…………
いや、何とかしなければ!」
目の前の不安げな瞳に向かって……或いは
己自身に課すようにそう言葉を吐き出す。
藍「頼んだぞ………チルノ」
大「チルノちゃん……」
チ「ぐ………っっ!!絶対に助けだすっっっ!
!」
私の問いに関係の無く氷精の咆哮が辺りに
谺する………
藍「くっ!!………本当に私たちにはもう何
も出来ないのか?」
何故私たちがこの場で何も出来ずに居るの
か………それは……相手の「能力」にあった……
今、チルノが相対しているのは、この白玉楼
の主…西行寺幽々子様……あの方の力は「死を
操る程度の能力」…そしてそれは今、チルノ
に対して向けられている……それはつまり、
幾度となく殺され、徐々に力が削がれて行く
ことを意味する……つまりどれだけ力を渡そ
うと無駄なのだ。
しかも、かなり強化されてしまっているのか
、あのチルノでさえ相対するのがやっとのよ
うだった。
戦闘に於いても足手纏いになる可能性が高い
以上、近くで見ていることしか出来ない……
しかも、こんな時に限って紫様への連絡が通
じ無いとは………!!!
無論、歯痒い思いをしているのは私だけでは
無かった━━━この場に居合わせている誰も
が己が至らなさを、非力さを、無力さを呪う
そして━━━━だが必ず勝機を見いだしてや
る……!
大「ごめん………!……ごめん………!!………
…チルノちゃん………………っっ!!!」
私の目には、大妖精が、親友の危機に隣で
共に戦うことが出来ずに居ることをこの場の
誰より悔やんでいるように見えてならなかっ
た━━━━……いや、まだだ!まだ何かある
はずだ……!今の所、チルノは気力も体力も
持ってはいるが、しかし敵の能力、『死を操
る程度の能力』をどうにかしないとチルノの
力と命が削られて終わる━━━━━
ざっ……ざっ…ざっ………
藍「!?」
どうにか現状を打開する
悩ませる私の耳に、白玉楼の玉砂利を踏む音
が滑り込んできた………自然、その方向に顔
を向ける……
すると相手の方から声をかけてきた。
妖「八雲藍…さん……でしたよね…?」
藍「………あ、ああ……如何にも。私が八雲
藍だ。魂魄妖夢」
妖「……………」
……私が妖怪だからなのかそれとも、私の
力が大きいせいなのかはわからないがいずれ
にせよ警戒されていることに変わりはない…
…………
そこで、私は諦め悪くもここに至るまでの経
緯を思い返すことにした。
そう………それこそ、目の前の
会う少し前ぐらいまで…………………
━━━数時間程前
朝焼けの空が広がる中を、私は橙と共に影
の気配を追いつつ、後ろの二人を先頭しなが
ら進んでいた。
何故そんなことが可能なのかを説明すると、
紫様曰く
持ちの悪いものであり、私や橙はその獣が変
化した妖獣であるが為に、
察知出来るからだという。
実際、確かに
分が悪くなるので、今はそれを利用して
素材に造られた存在である影チルノの気配を
追っているというわけだ。
この影の気配はその場にしばらくとどまり続
けるので、滴り落ちた水滴を辿るようにして
追跡する事が可能だが、時間が経つごとに気
配は薄まり最後には消えてしまうので、急が
なくてはならない。
そうして、橙と二人で捜索しながら進んでい
ると、前方になにやら細い柱のようなものが
建っているのが見えてきた。
藍「………? なんだ、あれは?」
妖怪としての視力で目を凝らして前方を見
る━━━━近付いていってることもあってか
、目を凝らして間もなくその正体が判明した
………
藍「な………なんだあれは!?」
橙「え……藍様、どうかしまし━・・・ん~
?………っ!?」
橙が私の様子に疑問を抱き、私の視線を追
い、その先を見て私と同じく驚いた。
チ「ん?どうかした?………っ!あれは!」
大「え、何々?どうしたの?チルノちゃん…
…え、何………あれ?」
後ろの二人も即座に私たちの様子に気付き
飛行速度を上げて私たちに並び、前方の柱を
見て各々感想を漏らす。
その反応を見るにチルノは何か気付いたみた
いだが、大妖精は私たちと同じ感想を抱いた
ようだ。
しかし、それが近づくにつれ私にも、その柱
が
の反応の意味を理解した。
━━いや、そのチルノの反応を見て感じた直
感が当たったと言った方が正しいかも知れな
い………何故なら、その天を貫かんとばかり
に聳え建つ氷柱から、先程説明した影の気配
をこれでもかというほど感じるからだ。
様…………」
藍「………っ!! ……………ん?……あ、あ
ぁ……すまない、橙…怖がらせてしまったな」
自分でも気付かないうちに表情が険しくな
っていたらしく、ちぇんを怖がらせてしまっ
た(怖がった顔も可愛い。今度やってみよう)
。やはり、何度味わっても中々慣れないもの
だ………と、隣の橙をふと見遣ると、先程ま
での怖がった様子が消え、代わりに不快感を
顕にしていた。
顔を顰め、如何にも機嫌が悪く、怒っている
ようだ。(うん、アリだな)
やはり、橙もこの色濃い影の気配にかなり気
分を害しているらしい……
……そうこうするうちに
トル(およそ十三尺)くらいまで近づいてい
た。
そこまで近づくまでには流石に全員、目の前
のものがなんなのか理解しており、これをど
うするかという話になるも、当然、大して支
障が無いのなら無視して先に進むべきでは無
いかという話の流れになった。(正直、私も
その場を離れたかった)
チ「いや、ちょっと待って………」
そしていざ皆がこの場を後にしようとした
その時、チルノから制止の声が掛かる。
その待ったに対し、今もある不快感と、そこ
から解放され損なった苛立ちと焦りから、少
々荒っぽい返しをしてしまった。
藍「っっ……………!!………どうした!チル
ノ!我々はこんな所で油を売っている暇は無
いはずだが?」
チ「………?ごめん。ちょっと誰かがこっちに
やって来る気配を感じてさ」
言われて周囲を見回すと共に辺りに気を巡
らす………と、確かに誰かがこっちに向かっ
ているようだ。
やがて、その者は肉眼でもわかるほどまで、
接近して来たかと思うと、あっという間にす
ぐ側まで飛んできた。
大「………って!アリスさん!?なんでここ
に?」
チ「……………」
ア「………いや、それはこっちの台詞よ……
あんたたちこそ、なんでここに?………って
いうか、なんか珍しい組み合わせね………」
普段魔法の森に住む人形使いであるはずの
彼女が何故こんな所に居るのか………疑問が
浮かぶ━━まさか、散歩というわけでもある
まい━━そしてそれは向こうも同じらしく、
こちらに質問を投げ掛けてきた。
ア「それで?あんたたちはこんな所に何の用
なの?まさか、皆してお散歩ってわけでも無
いでしょう?」
………考えが被った。
………まぁとにかく事態がややこしくなる前
にお引き取り願おう。
と、内心で思考が被ったことを若干気にしつ
つ、門前払いの決まり文句のような台詞を口
にしようとした所で如何にもな不機嫌さを隠
そうともしない橙の声が被さってきた。
藍「それをおm「ちょっと!相手に事情を聞
く前にまずは自分から話したらどうなのさぁ
!!」」
それにより、“それをお前に話す筋合いは
無い”という私の言葉は見事、空中で霧散し
た。
━━私の九本の尾が儚く風に揺れる━━
相手はその変な勢いに押されたのか全くその
通りだと納得したのかは定かでは無いが自身
のここに至るまでの経緯を説明するつもりの
ようだ。
ア「えっ?え、えぇ………わ、わかったわ…じ
ゃあまずは━━━」
話しを聞き終わった感想は、一言で言うと
“訳がわからない”だった。
話を聞く限りだと敵は彼女を誘い出したかっ
たという印象があるし、実際に彼女…アリス
・マーガトロイドはこうして出てきては居る
ものの、一度は家に戻ろうと思った所で考え
直して出てきているに過ぎ無い。
となると、誘い出し方が甘い気がするし、倒
そうとして止めたにしても不自然な点が見ら
れるなど不可解な点が散見される。
しかし、いずれにせよ、敵の狙いがアリスを
誘い出す事にあるのは間違い無い以上、この
まま彼女を関わらせるのは
最終的にそう結論付け、私はアリスに帰宅を
促すべく言葉を紡ぐ。
藍「話はわかった。だが、聞いた限りでは敵
の狙いはアリス……貴方を誘い出すことにあ
ると結論せざるを得ない。だから、後のこと
は私たちに任せて、家に戻り、警戒しつつ、
なるべく普段通りに過ごしてくれ」
ア「ちょっと待ちなさいよ!ここまで来て、
おめおめ引き下がれっていうの!?」
藍「ああその通りだ。悪いが、大人しくして
いてくれ!」
最後は少し語気が強くなったことが癇に障
ったのか、あちらからも強い口調で反論が返
ってきた。
当然、こちらも引き下がるわけにはいかず、
口論になる。
そうして議論に熱を入れている間にチルノは
一人、氷柱に近づき、調べるとあることに気
が付いた。
チ「あれ……?…!?これはっ!」
ア「それにそもそも、警戒しながらって時点
でいつも通りじゃな━━………?」
そこで突然、何かを見つけたかのように言
葉を切るアリス。
私たち二人の言い争いをどうして良いかわか
らず、あわあわと成り行きを見守っていた大
妖精もアリスの様子に小首を傾げる。
……私は何事か問い質そうと口を開いた。
藍「なんだ?どうした、何かあったのか?」
ア「あの………この氷柱の根元で、雪女……
のレティが、この柱に貫かれてるんだけど…
……」
藍「………………は?」
彼女の台詞を聞いた瞬間に私は自身の耳を
疑わざるを得なかった。
レティ?……レティとは、あのレティ・ホワ
イトロックか?(そいつしかいないが)なんで
彼女が?……等と俊巡していると、先に硬直
から回復した大妖精が口を開く。
大「た、たっ……たす、助けに、行きましょ
う!」
ア「……っていっても…どうするのよ?」
大「そっ…それは………」
橙「は、はわわわわわわわ………わわわぁぁ
ぁぁ…………」
藍「………」
大「え~~~・・・っと~~・・・「どうし
たの?」ぽんっ えっ…きゃあ…!………チ、
チルノちゃん………」
どうにか、
うとしていた大妖精に、氷柱を見終わったチ
ルノが、こちらにやって来て大妖精の肩を叩
いた。そして当の大妖精の方は、軽くとはい
えいきなり肩を叩かれたことで吃驚したが、
相手がチルノだと分かり、安心したようだ。
そこでチルノが”それで、どうしたの?”と再
度問い掛け、それに対しては私がこの柱の根
元でレティ・ホワイトロックがこの柱に貫か
れているのをアリスが発見したことを告げた。
チ「それなら、あたいが何とか出来るかも知
れない………とにかく行ってみよう」
その言葉に一同は驚きを隠せないでいたが
こいつに関してはそれこそ今さらだと、ここ
まで共に行動して来た私を含む者たちは気付
く……が、アリスは初見であるが故に無理も
無いがかなり驚いていたようで“えっ!嘘…
……何とか出来るの?”と口走っていた。
そんな彼女の驚きをよそに、取り敢えず現場
へと向かうこととなった…………といっても、
まあ、ただ下に降りていくだけなのだが……
そうして、下へ下へと降りて行くと、ものの
見事にというか、聞いていた通りというか、
想像通りの状態で………
冬の妖怪ことレティ・ホワイトロックは目
の前の柱にその身を貫かれていた。
その姿を改めて良く見てみると、やはりとい
うべきか、冬の妖怪らしく寒色系の服にスカ
ートにエプロンのような装飾と背中に羽のよ
うなものがあり、ウェーブのかかった髪型は
自身の主である紫様のご友人である所の幽々
子様を彷彿とさせる。
うむ、稗田家当主の幻想郷縁起で見た通り
の見た目だな。
私がそう一人で納得していると目の前の冬の
妖怪が目を にしながら━━これは予想外だ
った。主に、状況の割りにはあまりダメージ
を受けていなさそうな所が━━声を発した。
レティ「ぐ……く、く~~ろ~~ま~~く~
~~……」
一同「「「「「……………………………」」」」」
チ「なわけないでしょ」
藍「そうだぞ、無理をするな」
大「だ、大丈夫です!皆わかってくれます!」
ア「………何をさ」
橙「まさかの最終章!?」
レティ「ち、ち……がうわよ~~……私、は、
それっ…ぽい奴、……を見たって、言おう、
と………///」
チ「ハイハイ、わかったからあまり喋らずに
じっとしててねーー」
………そこはかとなく微妙な空気になった所
でチルノがレティを窘め、施術に入る……と
そこで初めてあることに気付く。
━━これは………太刀か?
レティの体のちょうど中心部に氷柱と同じ氷
で出来た太刀が刺さっており、そこを中心に
柱は広がっていた。
しかも、柱はどんど上に伸び、まるで……
せり上がっていた。
レティ「う、うあぁ……ッ!」
情報提供する程の余裕もなくなった彼女が苦
悶の声を上げる。
しかし、チルノがいとも簡単に彼女にかけら
れた術を解いたことで、その苦しみから解放
されることとなった。
チ「………よし、あとはこうして……………よ
っと」
そんな風に一人納得したような呟きが聞こ
えたかと思うと、チルノが手を翳している氷
柱の部分からちょうどチルノの手のひら大の
方陣が展開し、パリッ!と言う破裂音ととも
にさっきまであった影の不快さが嘘のように
消え、レティホワイトロックに刺さっていた
太刀から広がり伸びていた氷柱が下がり始め
た。
………………………つまり、柱が縮みだした。
これに関しては(他のことに関してもだが)
本当に脱帽せざるを得なかった。
私でも解くのに数時間は要するであろう術式
をものの数秒で解除せしめるなど、まったく
以て尋常ではない。
━━流石は紫様が…“霊夢に圧勝出来る”と太
鼓判を押されただけのことはある………
━━しかし……………………
………と、私がチルノの実力に舌を巻いて
いる間に、更なる進展があった。
………先程、氷柱が収縮していると述べたが、
それはまるで柱が刺さっている
には柱の中心にあった太刀さえも彼女の中に
吸収されていた。
つまり、さっきまでは彼女から吸い上げんと
伸びていたものが、今度は逆に力を
、みるみるうちに縮み、最終的に完全にレテ
ィ・ホワイトロックの中に
尚、今は苦痛から解放され、力も戻った安心
感からか、寝息をたてて安らかに眠っている。
そして、その様子を見守っていたアリスがこ
こでチルノをさして口を開く。
ア「ねぇ………さっきこの人のことをチルノ
って呼んでた気がするんだけど……聞き間違
い…よね?………だってチルノってあの氷精で
しょ?こんなに強いわけがないし………あの
………幻想郷縁起………だっけ?アレにもそん
なに強いとは書かれてなかったはず…………
よね?」
ああ、なるほど……まぁ私も最初に見た時
は途方も無く驚愕したものだし(正直まだま
だ吃驚はさせられているが)、これはもう
知らなくても仕方がないだろうな……………
………ま、見てもらった方が早いだろう。
と内心でこの件について自己完結させると他
の皆が、一体どこから説明したものかと考え
あぐねている間に、私は懐から一冊の………
……「
言でアリスに手渡した……………
そして、彼女が少し怪訝そうにしながらもそ
れを受け取ったところで話始める。
藍「実はな………」
アリスが本を開く。
藍「その、縁起なんだが………」
アリスがチルノの
藍「つい最近、改定があってな」
アリスがその項を見つけ、食い入るように
読む………すると五秒も経たないうちに目が
見開かれる………そこで私が遠い目をしながら
、一言。
藍「うん、なんと言うか………だな、その……
見ての通りだ」
その後、縁起を(チルノの項のみ)読み終
えた
ーーーっっ!!!!? と言う、驚嘆の叫び
声が辺りに響き渡ったのは言うまでもない。
………まぁ、無理もないというか、それが自
然な反応というか………いきなり、自称さい
きょーの氷精が事実上最強━━本人は否定し
ているが(何故だ……)━━に、いつの間に
か成っていると言われたら、誰でも驚きを隠
せないのでは無いだろうか………
ア「……っていうか、
貴方、よく見たらあのかき氷屋の店主じゃな
い!!」
チ「えぇ、そうですよ。今後ともかき氷処『
氷河屋』をご贔屓に」
ア「うん、そうね。あそこのかき氷美味しい
し………って違ぁ~う!! なんで、あんたみ
たいな滅茶苦茶な力を持った奴が人間の味方
で、しかも人里のかき氷屋なのよ!?」
そんな風にちょっとした錯乱状態に陥りな
がらされた彼女の質問にチルノはあっけらか
んと答える。
チ「それはだって、あたい、人里に住んでる
し……住んでる以上はご近所付き合いは重要
でしょ?」
ア「だから、なんで住んでるのよ………あなた
妖精なんだからそんな必要ないじゃない………」
チ「そんなのあたいの勝手でしょ?………でも
まぁ、その本にも書いてあるけど、今までの
悪戯の償い半分、そういう悪戯半分って感じ
で…味方させてもらってるよ」
ア「なんで、更に悪戯を重ねてんのよ…………
まぁ、良いわ………ねぇ藍……」
どこか疲れたような調子でアリスが尋ねる。
藍「なんだ?」
それに私が返すとチルノを指さしながらア
リスが一言。
ア「
てるなら私の出る幕なんて無いだろうし、こ
いつでも手こずるような異変に巻き込まれる
、なんてのはごめんだから………やっぱり……
…あなたの言う通り…ここは、大人しく家に
帰ることにするわ」
そして指を下ろしてから、先を続ける。
ア「まぁ、ここまで誘い出されておいてなん
なんだけど、やっぱり、その異変の首謀者の
思惑に乗るのも何か癪だしね」
と己の意見を表明した。その表情はどこか
諦めがついて吹っ切れたような……そんなも
のに変わっていた。
藍「そうか、それならば是非もない。なるべ
く早くこの異変を終わらせ、一刻も早く平穏
を取り戻せるよう尽力すると約束しよう……
………だからそれまで……」
ア「わかったわよ………自宅で引きこもって
れば良いんでしょ?せいぜい用心するわ」
藍「すまない………」
片目を閉じながらそう流す彼女に私は謝る
ことしか出来なかった。
彼女とてこの幻想郷の危機に助力できない事
がもどかしくて堪らない筈なのだ………そし
てその思いも本来ならありがたいものなのだ
が…………と私がやりきれない思いを抱えて
いると、ふと、チルノが指摘と提案をする。
チ「あのさ、そのまま帰るのは良いんだけど
………流石になんの説明も無しに帰すのは却
って危険じゃない? あと………そこで伸び
てる人の事も頼めたりしないかな」
チルノの視線の先には氷柱のダメージから
か、深く眠ってしまっている雪女の横たわる
姿があり、アリスに事情や事の顛末を簡単に
説明した上で彼女を保護して貰え無いかと言
う事らしい。
確かにそれなら安心だし、もしも彼女が目覚
めれば二人で協力して自衛にすることもでき
るし、彼女ほどの実力者ならレティの身柄を
任せられる。
そう、彼女とて、この異変に直接関わるとな
れば不足なだけであって、相当な手練れであ
ることは間違いないのだ。
私がアリスに今起きている異変の内容を話し
、レティ・ホワイトロックの身柄を任せられ
無いか聞いたところ、不承不承といった様子
だったが、了承してくれた。
ア「あ~~あ……追い返された上にお守りま
で頼まれちゃったか……でも、そんなことに
なってるなら放って置けないし……これでも
、まぁ異変に関わってるのには変わりないわ
よね」
と最後にはそう納得し、━━案外満更でも
なさそうだ━━この件は丸く収まった。
そして、アリスがレティを人形たちに運ば
せ帰路についたのを見届けると、私たちは再
び影のチルノを追う為、探索を再開した。
すると段々と、今回の目的地が露になってく
る。
………私たちはずっと
つまり………
藍「…………白玉楼、か………」
………咄嗟に決め付けてしまったが、しかし
何故ならこの先には、冥界とその中に存在す
る、“白玉楼”と呼ばれる建物とそこへと続く
長い階段がある。
そして、(いずれも縁起に載っていることだ
が、)その白玉楼には冥界の幽霊たちを管理
している主人、西行寺幽々子と言う亡霊が住
んでいる。
………何が言いたいかと言うと、前回のレミリ
アの件から察するに、敵は私たちの足止めの
為にその
込もうとするはず………となると、冥界に居る
者の中で最も強力な者とは即ち、「死を操る
程度の能力」を持ち、冥界に居る数多の幽霊
の管理を一手に担う冥界の主たる幽々子様を
於いて外に無い、と言うことだ。
━因みに、幽々子様は私の主である、紫様の
ご友人にあたる━
故に、行き先が冥界となれば、白玉楼以外に
あり得ないはずだ。
そして、気が付くと冥界に入っており、案の
定、追っている気配がこの先にある階段にま
で続いていたので、その事を皆に告げ、先を
急ごうと階段に沿って最速で飛行しようとし
たところで、私たちは異変に気付いた━━━
チ「ん………あれは…………」
藍「ん? 何だ……あれは」
大「……………?」
橙「ンニャ……?」
私たちの進行方向の……その目的地の通過
地点周辺で、何か
るのが見える。
そして、そこに近づくにつれ━━黒い物の正
体が明らかになる……
藍「おい………チルノ……」
チ「ああ、わかってる………」
橙「はわわぁ………」
大「あれって、まさか…………」
チ「うん、間違い無いよ」
藍「アリスが話していた奴らか……」
大「あ、待って!誰かあそこで戦ってるよ!」
その黒く蠢いている物体のように見えてい
たのは、先ほどのアリス話にもあった機械人
形の兵共だった━━━━━━━━
そこへ近づいていくにつれ、その中心では誰
かが人形共を相手にしているその様子が明ら
かになる………そこで大妖精が━━
大「早く助けに行こうよ!囲まれてるよ!?」
チ「………大ちゃんに賛成かな…また、話を聞
けるかも知れないしね」
藍「ああ!無論だ!」
橙「いっくぞー!!」
当然のように満場一致で助勢に行くことに
決まった。
よって、全員で黒い人形の集団に突っ込んで
行った。
妖夢side
……くっ! こいつら…切りが無い!
正面から鉤爪の敵が来たかと思えば、私の背
後から、更に左斜め後方と真横、真上からも
一斉に挑みかかって来る━━━そいつらを倒
して落としても、次から次へと……時に私の
死角、時には不意をついて真正面や正面より
やや上、完全に背後を狙って来るなど……あ
らゆる角度から攻撃を仕掛けてくる……
妖「こいつら、上手く私の……くっ…嫌いな
所を確実に突いてくる!………そして何より
……」
そう、さっきから控えめに言っても百体は
斬っている筈なのに一向に数が減らない……
恐らく、先程こいつらが出てきたような裂け
目が、目の前にいるこいつらの後ろで展開し
、兵を補充しているのだろう。
妖「………良いだろう……そっちがそのつもり
なら、私が倒れるか……そちらが尽きるか!
行き着く所までやってやる!!」
私がそう気合いを入れ直した所で、肩透か
しな事態が発生した。
妖「…………は?………退いていく………」
余りに突然な撤退に思わず面食らったまし
たが、これが額面通りにただ引き下がったと
捉えるほど弱い頭は持ち合わせていません。
妖「………?……何をたくらんで…………っ!?」
その時、下から上空へ、こちらに向かって
くる者の存在に気付いた。
妖「………?………………………ッッ!!」
その者に意識を向けた時、何故か背中に氷
でも入れられたかのような寒気と無機質な殺
気を同時に感じ、こいつを絶対にこの先に通
してはいけないと強く確信しました。
その灰色とはまた違った白が陰ったかのよう
な奇妙な着物の誰かは依然、まるで私の事な
ど見えていないが如くこちらへと飛ぶスピー
ドを緩めようとはしない。
妖「…………!」
そして、両者の距離が縮まり、そいつが白
玉楼への階段の踊場に足をかけるか掛けない
かの所で、先手必勝とばかりに自身の
切りかかった!!
妖「…………ッッ!…………ん?、なっ!何で
!!」
あ、ありのまま、今起こったことを話しま
すっ!!
私はたったいま、相手に斬りかかったと思っ
たら、目の前に相手は居らず、気配を感じて
振り返るとその相手は既に私が背にしていた
石段を登って行ってるところでした………
何を言っているのかは各人のご想像にお任せ
するとして……、これは予想ですが、恐らく
超スピードだとか、催眠術などというような
ちんけな代物では断じて無いことでしょう…
もっと恐ろしいものの片鱗を味わいました…
……………というか、今の感覚、どこか、で……
私が今のようなことを一瞬思い浮かべ、冷
や汗かいた後、敵をみすみす通してしまった
ことに気が付き、相手の後を追おうとした所
で、剣を持つ手に違和感を覚えて……更に戦
慄した。
妖「楼観剣が、……ない…!」
そう、手に持っている刀の本数が、一本足
りなかったのです。
まさか落とす訳は無いので、心当たりは一つ
しかありません…………まさか、あの時に!?
いや、でももうそうとしか考えられない…!
妖「これは………尚更あいつを追い掛け無い
と!」
と、石段を登って行った下手人を追おうと
した、その矢先……
妖「……………っ!こんな時に!………くっ!
邪魔を……するなぁーーっ!!!」
先程まで姿を消していた人形共が再びスキ
マのような裂け目から出現した……
藍side
近づいて行くにつれて敵の大まかなの数も
見えてきた。
およそ数百はいそうな勢いだ……そして、次
々と裂け目から出て来ることを考えれば……
藍「チルノ……あいつらを一時的にでも全滅
させられるか?その後は私たちで……」
チ「いや、その必要は無いみたいだよ……」
藍「?……!!」
チルノからそう告げられた後に再び前に
向き直ると人形共は自分たちがくぐって来
たであろう裂け目を戻って行く所だった。
……要するに撤退だ。
藍「まさか…足止めにもならないと踏んで
?」
チ「多分ね……さっきあたいに言ったよう
なことをされたら大損害だからって所じゃ
ない?」
確かに、チルノに兵を一瞬で…それも全
滅させられたらたとえ雑兵といえど、戦力
の大幅な低下は間違い無い……使える駒は
温存するということか……
チ「まぁ、それより今は…その対戦相手の
所に行こうか。 せっかく邪魔者が居なく
なったんだしね……」
藍「あぁ……そうだな、こちらの事情を説
明しなくてはならないし、あちらからも話
を聞かなくては」
そこで私たちは白玉楼の剣術指南役兼庭
師の魂魄妖夢と合流した。
最初はチルノの姿のこともあって警戒され
たが(奴が通ったのだ)、こちらの事情を
説明し、納得して貰った上で互いに情報を
交換した。
妖「なるほど、事情は理解しました。それ
ほどの方がいらっしゃると言うのなら、む
しろ心強いですし…正直、一人でアレを追
って対応出来るものかと悩んでいた所です
……とはいえ、たとえ私一人であろうと追う
つもりではいましたが……」
藍「ああ、……では行こう。時間がおしい」
そして、その道すがら、私は妖夢の話から
疑問を感じてふと質問をした。
藍「なぁ妖夢、先程お前は楼観剣を奪われ
たと言ったが、白楼剣のみでどうやって戦
っていたんだ?確かあれの切れ味は悪かっ
たはずだが……」
すると妖夢はことも無げに答えた。
妖「そこは、刀は使用者の腕に左右されま
すから…如何なる名刀であろうと素人が扱
えばなまくら同然であるように、単なる鉄
の棒であろうと達人が使えば違うのと同じ
理屈です。まぁ尤も、この白楼剣は別に鉄
の棒という訳ではありませんが……それに
……相手は所詮機械人形なので、幾らでも
やりようはあります」
妖夢が私の質問に答え、それに私が納得
する……なるほど、確かにそれほどの剣技
があれば可能か……流石は剣術指南役とい
った所だな…
私がそう一人頷いていると、不意に妖夢が
階段の先に視線を送る。
妖「…………っ!?………これは……っ!!
……幽々子様………!」
その妖夢の鬼気迫る表情にただならぬも
のを感じ、何事かと問い掛ける。
藍「どうしたっ!?何かあったのか!?」
妖「西行妖の封印が解かれました……」
藍「何っ!!」
妖「西行妖の封印が解かれると壊れる仕組
みの結晶石がついさっき壊れました……」
藍「まさか………幽々子様か………」
妖「はい……恐らく、先程の侵入者に対抗す
るべく、封印を解かれたのかと………」
それを聞いていたチルノが……
チ「ということは、それほど追い詰められ
てるっ…てことか……」
妖「ええ………━━幽々子様が危ない!!」
それだけ、言うと妖夢は目にも止まらぬ
スピードで上を目指し、飛んでいった。
チ「……っ!! 藍、大ちゃん、橙っ!あた
いは先に行ってるよ……妖夢を一人には出来
無いからね」
そう私たちに告げた時にはもう、居なく
なっていた。
大「ふ、二人を追いましょう!!私たちも!」
藍「ああ、そうだな……二人とも、しっか
りついて来いっ!」
橙・大「「はいっ!!」」
━━━━━━そして現在…………
くっ!!幾ら思い返しても有効な手立てが
………っ!
?「ら……ん…………ん…………………………さ
ん………………………さん………!………………
藍さんっ!」
藍「……はっ!……あ、あぁ…どうした?妖
夢?」
いつの間にか、深く考え込み過ぎていたよ
うだ……目の前の妖夢が私に呼びかけるのに
も気付かないとは……
妖「それはこちらの台詞です……急に何か考
えるように動かなくなって……どうかしたん
ですか?」
藍「いや、すまない……少し考えごとをし
ていた……」
妖「それはやはりこの戦いの……?」
藍「あぁ……そうだな」
妖「そうてすか……それで、まさにその事
でなんですが……折り入ってお話が……」
……その、話を持ち掛けてきた妖夢の腰
の刀を見る━━━━
藍「奇遇だな妖夢………私も、ちょうど、
たった今…
私は、妖夢のその白楼剣から目を離すこと
なく、そう告げた。
橙side
まずい………まずいよ~~!
今、チルノがあやつられた白玉楼の人と戦
ってる………だいぶ押され初めてるし、心な
しかさっきより動きがにぶくなって来てるよ
うな気がするし………いったいどうすれば……
…!
もう一度、弾幕でえんごしてみる?………。
それとも、一度、藍様に指示をあおぎに…
…?
橙「い、いや!いつまでも藍様に頼ってばか
りじゃ駄目だ!ここはもう一度、弾幕でえん
ごしてみよう!……でも━━━━」
言いながら弾幕を展開する……
橙「このことは、藍様に連絡する!」
そこへ、だいようせいも加勢しに来てくれ
た。
大「橙ちゃんっ!私も手伝うよ!どうしよう
か」
橙「う~ん…私、弾幕でえんごするのと藍様
に連絡もしなきゃだから……」
大「……!そっか!なら私は橙ちゃんを守り
つつ運ぶよ!」
橙「うん!頼んだよ!」
だいようせいが私を運んで、座標移動で飛
んでもらうことで敵の攻撃から守ってもらっ
てる間に、私は弾幕の展開と藍さまに連絡を
…………しよう……と思った所で逆に、藍さまか
ら、式のつながりを通じた念話が届いた。
藍「橙っ!!聞こえるか?橙っ!」
橙「藍様っ!?………えっえぇと~…あの、今
チルノをえんごするために弾幕を展開してて
……でも、ちゃんとお伝えするつもりで……」
藍「弾幕?……あぁ、こちらからも見えてい
るぞ。頑張っているな…橙」
橙「えっ?」
藍「そんなことより橙。その…頑張っている
所悪いのだが…大妖精も連れてこっちに来て
くれないか?場所はいまお前がいるそこから
……」
・・・藍様から集合場所を伝えられた時、
よく考えたら、それほど藍様と離れていなか
ったことを、いまさらながら、思い出した…
……
橙「さっきまでの私のかっとうって一体……
ってそうじゃないっ!藍様の所に向かわない
と……!だいようせいっ!いまから言うとこ
にとべる?」
大「うんっ!いいよっ!どこに
橙「うん、あのね……ここから………」
大「うん、了解!……それじゃ、行くよ~っ
!」
そこから、私たちはほどなくして藍様たち
と合流した。
妖夢side
目の前の式神、八雲藍に話を持ちかけ……
交渉は成立した…というより、話の内容を聞
いてみると、あちらもこちらの考えてること
にいたり、藍さんの方からも話を持ちかけて
きたという方が正確でしょうか………
まあいずれにしろ、賛成を得られたことには
違いが無いのですが…………………………………
藍「なるほど………やはり、それが最善手か
……」
妖「!!……ということは、藍さんも……?」
藍「ああ……どうやら、同じような事を考え
ていたらしい……」
妖「ならっ………!」
藍「いや待て妖夢……概ね、私もお前の話と
同意見だが、その前に付け足す事がある」
妖「?」
藍「なのでここからが、私が持ちかける話
という事になるかな……」
藍さんが私に新たに追加した用件を話した
後、自身の式である橙を呼び、その呼ばれた
橙とその橙を運んで来た大妖精が私たちと合
流した。
橙「それで……その、藍さま………私たちは
何をすれば?」
召集を掛けられた橙がおずおずと自身の主
に問いかける。
その事によって皆の視線が一つに集まり、そ
の注目の中、八雲藍が返答する。
藍「うむ……そこにいる妖夢とも話合ったの
だが……………………」
そこで一旦の間を置いた後、静かに言い放
つ。
藍「妖夢の白楼剣で幽々子様を斬りつけて貰
う━━━……私たちはその手伝いだ」
チルノside
くそ………突破口が見えない…………!
それどころか、徐々に追い詰められて行く
……………!
チ「くっ!!………歯が立たないっ!! 一
体どうすれば……」
時を止めようと、魔法を撃とうと、破壊
しようと、
…………いくら、氷を放とうと━━━━━
━━《死》には時など関係ないように………
━━万物の《死》はその存在の消滅である
ように………
……つまり━━━━
火の《死》は燃え尽きること………
水の《死》は蒸発、ないし凝固………
木の《死》は枯れ朽ち果てること………
金の《死》は錆び崩れ壊われること………
土の《死》は風化し、塵と消えること………
━━《死》は破壊出来ず、むしろ破壊の行き
着く先こそが《死》であるように………
━━そして、《死》は全ての
着点であるように……
━━更に、先ほどの水の《死》が蒸発して気
となるか、固まり
氷の《死》もまた溶解し水となるか、気化し
て空気となることであるように………
…………死を操る彼女の前には何もかもが消
滅してしまう………
チ「こんなの、一…体ッ!どうやって倒せっ
て言うんだッ!」
時を止めても動き回られ、魔法は撃っても
彼女の手前5mほどで消滅し始め、近づく程
に消滅が加速して…彼女の手元らへんで完全
に消え失せてしまうし、フランの破壊の力は
、最初から弱点である『目』がこっちの手に
移らないように対応されてしまっていて、運
命に関しては、まだ使い方が未熟なのか効果
があるのかも判然としない有り様で……だが
多分効いていないし━━━氷の力は魔法を無
効化している応用なのか、それとは別に付与
されているのかわからないが、(予想では両
方)全くダメだった…………
にもかかわらず、動きはあちらのほうが洗練
されていて、スピードも互角にまで底上げさ
れており、相手の『死を操る程度の能力』で
徐々にこちらの力も命も削られていっている
……………………………………………………………
……………………………………………………………
…………………………………
チ「…………あれ…?コレ……詰んでない?」
まぁ、
上げしたんだろうけど……
チ「これは……ちょっと拙いなぁッ!!」
でも流石に氷で武器を精製し、近づいて近
距離攻撃すれば相手まで刃が届くので、相手
方も躱すか受け流すかして、防がなければな
らないから何とか戦いにはなっているんだけ
ど…………………
これはもう、
…消費する妖力が多くなって減少が加速しか
ねないので、中々踏み切れなかたけど、もう
そんなことを言ってる場合じゃないし、そも
そも何でもっと早くしなかったのかまである
くらいだ。
チ「なんか、頭の悪いゴリ押し戦法っぽいけ
ど……むしろ、あたいにはピッタリか!!」
その一言だけ言って、あたいは周囲に集中
し始める。
すると、数秒とかからずにあたいと全く同じ
姿の氷の分身が出来上がる。
無論、この分身たちもあたいと同じ能力を使
用出来るが、既にどの能力も対策されてしま
ってるので、無意味に等しい。
なので、出来ることは一つだ。
チ「さぁ……一斉にかかれ!!」
その合図と共に(あたいが操作しているの
だが)分身たちが一斉に標的に殺到する。
しかし、ただ突っ込むだけでは直ぐに消され
てしまうので、相手の攻撃は躱すように気を
付けることは忘れない。(因みに妖力の消費
を抑える為に50体ほどにしている)
まず、先頭の分身が正面から突っ込み、相手
の右側を横切り様に一太刀浴びせる。
それに反応して相手が自身の刀で受け流す…
その隙に近づいていた他の分身二体が左右か
らそれぞれ挟撃する形で(あたいから見て)
右を槍を持ったのと双刀の分身が迫る。
(双刀の方は柄を逆手に持ちカマキリのよう
になっている)
それに対し相手も迎え撃つ態勢に入る………
が、迫っていた双刀の方が突然、剣を投擲す
る…敵方は慌てることなくあくまで冷静に、
上に逃れつつ、その
左から迫って来ていた槍の分身にぶつけ、且
つ敵全体を見渡して把握しようとしていた。
………なるほど、やっぱやるねぇ……でも、ま
だまだっ!
幽「・・・・・・」
……双剣を投げた本人(分身)は消え失せ、
代わりに彼女が躱した筈の投げられた双剣が
それぞれがあたいの分身に変わっており、自
分たちの足元の空間に氷の床を固定して足場
にし、槍持ちの分身を二体で手を組み合わせ
て乗せ、槍の分身が脚に力を込めて飛び上が
るのに呼吸を合わせ、二体の分身が上にその
槍の彼女を体全体を使って
……槍を自身の前、つまり相手のいる上方向
に突きだし、勢いを加速させる形で妖力を足
裏から解放する。
消費する妖力を必要最低限に止め、且つ相手
への効果的な打撃を与える動きだ………
しかし、どうやら相手の方が一枚上手だった
ようだ………
幽「━━・・・!」
槍の分身が(相手から見て)視界から消え
る程のスピードになるタイミングで体転換す
ることで体の位置を躱すと同時にそのままの
流れでその場で刀を横に向けながら回転した
………つまり、自身に向けて飛んできた槍を
持ったあたいの分身を逆に、横薙ぎに斬って
輪切りにした。
思わぬ反撃にあった槍のあたいは槍を半分く
らいの所で切断され、その身も刃が体の半分
以上まで達して切り裂かれ、形を保てずに氷
像となり、バァンッ!!と音を立て、呆気な
く砕け散った。
恐らく死を操る程度の能力も乗っていたんだ
ろう……そうでなくとも砕け散っていただろ
うけど…………………
チ「………………………………」
それなら、大多数を投入して囲み、様々な
方向から、一体に付き一刀ずつ浴びせていく
形に切り替えた。
その時、分身が三体くらい突っ込んだタイミ
ングで、離れた場所で順番を待っていた分身
が鞭で、その反対側の分身が鎖で幽々子の足
と手をそれぞれ捕らえた!
幽々子の死の能力があるので長くは持たない
が、その隙に他の分身が殺到する……
それもただ向かっていくのでは無く、ある者
は彼女の背後に回り、またある者は背後の分
身の大鎚に当てて貰うことで、その鎚の打撃
面を蹴って加速をつけて短刀で迫り、他にも
向かっている者の陰に隠れるなどして近づく
者などetc...が標的である彼女に突撃する
………しかし、彼女は動じずに静かに待ち構
える。
……まるで、すべての分身たちの動きを見抜
いているかのように……でも、これは見切れ
るかなぁっ!
チ「くらえぇーーーーっ!!」
あたい自身が真上から飛来し、彼女の周囲
に迫っていた他の分身を吸収しながら、加速
し、彼女の目を撹乱しつつ、死角である左斜
め後方から胴を狙って飛び込む。
……だがまたしても、動きを読まれ、受け切
られてしまった。
向こうはあたいが視界から消えていった大体
の方向と自分の死角から、大まかな位置を予
測して、更にその方向に対して気配を探り、
位置を特定した上で回避したようだ。
━━━しかも、回避されるだけならまだしも
、同時に反撃まで許してしまった。
その回避方法が空中で頭の辺を軸に宙返り、
あたいの肩に手を乗せて支えに、あたいの後
方へ飛ぶというもので、
の粒となって消え、再びその場に復活した。
だが当然、出していた分身たちは消える。
━━━━━━その後も、あたいは分身を増や
したり、分身同士やあたい(本体)との連携
で敵な迫るも、返り討ちに遭い、切り捨てら
れ、切断され、砕かれ、次々と撃破されるこ
とで、次第に、こちらが追い詰められていっ
た………
チ「くっ……………これでもダメか……!!
━━ッ!?」
それはあたいが空中に設置した手のひら程
の大きさの氷壁に反射させて氷弾を撃ち込み
、死を操る程度の能力の乗った幽々子の弾幕
に掻き消されていた時だった。
辺りを見ると、さっきまで止んでいた…………
これは、大ちゃんと橙の弾幕……?が、飛び
交っていた。
チ「………!ありがたい!」
そろそろ、力の補充が必要だと思っていた
し、これで幽々子の弾幕だけでも相殺できる
かも知れない。
早速あたいは幽々子が放ち始めた弾幕には当
たらない大ちゃん達の弾幕を吸収していく。
それ以外の弾幕は幽々子の死の能力が乗った
弾幕に当たり、打ち消されていく。
しばらくそれが続いたが、急にふと(大ちゃ
ん側の)弾幕の雨が止み、相殺されずに飛ん
できた死の弾幕が側を通りすぎる。
チ「うおっ!危なっ!?…………ってうわぁ!」
こちらの弾幕が止んだことで相手も弾幕を
止めるが、残った弾幕があたいに降りかかり
、それを躱している間に相手がこっちに向か
って来る!
そこから一転攻勢とばかりに打ち込み始める
幽々子。
……鞘に収まった状態から刀を一気に抜き放
ち、逆袈裟に斬り上げられた刀閃を上体を反
らすことで躱し、そのまま頭から落下させ、
飛行状態を一旦解除し、脚を畳んで回転しな
がら落下して逃れる。
……だが回転の途中で相手が刀を真っ直ぐ投け
てきたのが見えたので、自身の横に平らな氷
壁を作り、同時に氷で短刀を作り刀に当てる。
キィンっと音か響き、氷は死の力(と刀との
衝突)で砕け、霧散する…が刀の方も衝撃ま
では殺し切れず、空中で回転しながらやや上
へ飛ぶ……それをこちらへ降下しながら飛んで
きていた彼女が空中の刀を回収し、あたいへ
と振り下ろす。
それに対し、予め作っておいた横の氷壁を蹴
って横へ飛び、躱す。
蹴られた氷壁は跡形も無く砕けて消え、相手
に使われるのを阻止する……筈が、時を止めら
れてしまい、あたいと幽々子以外の時が止ま
ったことで、氷壁は辛うじて原型を留め、そ
れをジャンプ台として使われ、早くも追いつ
かれる。
相手が向かってくる勢いそのままに、鋭い突
きを繰り出す……しかしギリギリ、目の前に
正方形の立方体の氷塊を精製し、それを足掛
かりならぬ手掛かりに、足を蹴り上げて回転
して相手の頭上に逃れた。
同時に幽々子の突きはあたいが足場として作
った六面体の氷塊に突き刺さり、一瞬動きを
止める。
その隙を突いて氷の中に閉じ込めようと試み
るが……やはり失敗に終わる。
相手が一足早く、突きを外して刀の動きを止
められた時、既に自身の周囲に死を操る程度
の能力を展開しており、更にその力を纏った
弾幕まで展開してきた。
あたいは自身の作りだした正六面体の氷が水
に変わっていくのを見て、弾幕の展開より早
くその場から離脱する……しかし既に能力の
効果範囲内にいた為、幽々子から距離を取っ
た後、(ほとんどあって無いようなものだけ
れど)一回休みを余儀なくされた。
大妖精side
その場には私を含めたチルノちゃん以外の
四人全員が集まっていた。
橙ちゃんが藍さんに呼び出されたみたいで、
藍さんの居る位置に直接、座標移動して橙ち
ゃんと一緒に来た。
そこで藍さんからある作戦を告げられる……
その内容は………
大「よ、妖夢さんを援護……ですか? 妖夢
さんのその……白楼剣を幽々子さんに当てら
れるように…」
藍「そうだ、もう現状それしか方法が無い」
橙「で、でも大丈夫なんですか? 藍さまの
作戦をうたがうわけではないのですが……
妖夢さんのその刀で斬るだけで…本当に?」
橙ちゃんが不安げに藍さんを見つめて問い
かける。
藍「ああ、それについては………」
妖「藍さん、そこからは私から説明します」
藍「…ああ、よろしく頼む」
藍さんの言葉を引き継ぐ形で、妖夢さんが
説明に移る。
妖「この刀、白楼剣は切った者の迷いを断ち
切る刀、幽霊であれば成仏し、人に使えば痛
みの
幽々子様の間に
ます」
大・橙「「!!」」
藍「既に式神を紫様へと放ってある。この作
戦が成功して直ぐか、その前くらいには紫様
の元へ連絡が行き、スキマにて一瞬でこちら
に向かわれるだろう」
大「つまり、その差を利用して紫さんに境界
で影を離して貰うという事ですね!」
妖「ええ、しかし問題は……果たして亡霊
である幽々子様にこれを使ってどうなるのか
は私にもわからないところにあります……
亡霊の性質から言って、怪我をさせてしまう
ことも無ければ、成仏してしまうことも、恐
らく無いでしょうが……幽々子様の
、供養でもしてしまわない限りは……」
藍side
その説明をする妖夢の表情はしかし、苦々
しいものだった。
それもそうだろう……方法がそれしか無く、
それが主の為にする行為であろうと、それに
よって傷がつくことは無いだろうと思ってい
ても、己が主人に刃を向けるという行為には
抵抗が生じる。
……それが例え、本心から逆らっているの
では無く、むしろ主を救わんが為にするのだ
と理解していても……しかも、それによっ
て確実に救えるという保証もなく、悪くすれ
ば却って取り返しのつかないことになる可能
性すらある・・・・・・・・
私とて…もしも紫様が……そう考えただ
けで、いたたまれなくなる。
しかし、我々からすれば可能性が少しでも残
っているのであれば踏み切らざるを得ない。
現に、チルノも追い詰められて来ているし、
その上すぐにでも、その彼女の分身である影
のチルノを追わねばならない。
…これ以上、犠牲を増やす前に……
妖「……分かっています…このままでは幽
々子様も救われることは永遠にありえません
…たとえ、僅かにでも希望があるのならば、
それに賭けます。その結果、どのような事態
になろうと全ての責は私が負います。最悪、
この身に引き替えてでも幽々子様を
る覚悟もあります……だから、どうかお願
いしますっ!!皆さんの力を貸してください
っ!!」
そう言い切り、勢い良く頭を下げる妖夢。
……だが、そう頼まれなくとも皆の答えは
ただ一つだ。
大「顔を上げてください妖夢さん…私たちは
初めからその為にここまで来たんです。今更
引き返したり、逃げたり、ましてやただ茫然
と見て立ち尽くしたり、勿論断ったりもしま
せん!」
橙「わ、私は藍さまや皆がいるので…なにも
怖くありませんよ!!」
藍「大妖精の言う通りだ。私としてはむしろ
現状打破の糸口さえ提示して貰って、有り難
いくらいだし、その……一番辛いのはやは
り、妖夢…お前のはずなんだ…にもかかわ
らずその選択をしてくれたお前に、力を貸さ
ぬ道理などない」
皆の言葉を聞き終えた妖夢がその目に涙を
滲ませ、私達に感謝を伝える。
……その涙は皆からの温情の言葉故か、そ
れとも、これから己が主に行う仕業の故か…
……
いずれにしても、これから行うことに変わり
は無い…そういえば、チルノにはまだ説明し
ていなかったな………だが………
今、あいつに伝えにいってもこちらが足手纏
いになるばかりで何も伝わらないだろう。
ならば土壇場でこちらの意図を察して動いて
貰うほうが、まだ上手く行くだろう。
私がそんな風に思案している間にも幽々子様
とチルノの……目にも止まらぬ(というより
最早見えない)攻防が続いている。
さあ……そろそろ、この戦いに決着をつける
としよう。