チルノside
幻想郷の空は…今起こっている事に関わら
ず、穏やかで静かだ。
それが逆に異様な不気味さを醸し出す。
道案内役の橙と藍を先頭に進むあたいたちに
飛行時に生じる風鳴りの音だけが耳を打つ。
ふと不意に先頭の二人が立ち止まる。
チ「どうしたの?」
藍「おかしい………気配が消えた?……それ
に……これは…」
橙「あ、あれ……?」
大「…?」
どうも、二人とも追っていた気配を見失っ
てしまっているようだ。
それは流石にまずいと、こちらから声をかけ
先を促そうとしたその時、藍が口を開く。
藍「くっ!見失った………だが代わりに……
複数の気配が同時に……」
チ「え?」
橙「う…うわわわわわ……たったくさんいま
すよっ!!?」
二人には影チルノの気配(若しくは
気配か)が……何故か複数確認出来るらしい。
いや、どうやら追っていた奴とは別の奴みた
いだが……
チ「どういうこと?」
藍「いや……追っていた気配が突然消えたか
と思うと幻想郷中のあちこちに似たような気
配をもつ奴が現れて……しかし、新たに現れ
たこいつらは最初に追っていた奴に比べたら
小さいな………」
藍が今の状況と敵の意図を計りかねている
のを見て発言する。
橙「い、いいえ藍様………た、確かに最初に
追ってた奴より、気配こそ小さいですけど…
……うっ…ぅぅうぅ〜……こ、こいつは……
…」
藍「?どうした?橙……」
橙「ら、藍しゃま……あ、新たに出て来た奴
ら………ぜ…全員……っ━━━」
━━━天界
━━━━某所………比那名居邸
天子side
………………………………………………………
…………………………………………………………
…………………………………………………………
…………………………………………………………
…………………………………………………………
…………………………………………………………
………………………………退屈だ…………………
…………………………………………………………
…………………………………………………………
…………………………………………………………
…………………………………………………………
…………………………………………………。
功績を認められ天人となることを許された
者はまだ良いだろう…生まれついての天人で
ある者もまた…………でも、私のような……
…偶々、偶然……功績を認められた一族に居
ただけの者にはどうも天界は退屈だ…………
それも、功績を認められたのは「名居」の一
族であり……私の一族はその部下であった為
に天界に住まうことを許された…タダのオマ
ケ……それでも、まだちゃんと仕えていた一
族の者は良いだろう……私のような者は働い
てさえおらず、ただその一族に属していたと
いうだけで天人となったのだ。
だから、今の生活のありがたみなどそもそも
わかりようが無い…………実際、それ故に私
は思い上がり、詰まるところの不良に育った
……天人へとなった際、元あった「
いう名から「
ことも拍車をかけたかも知れない。
だが、
つもりもさらさら無い。
私は私だ……この私以外にはあり得ない!!
周りの評価など知らん。
私は私のまま、今まで通り勝手気ままに生き
る!!
幻想の賢者に多少灸を据えられたからと言っ
て変えられるようなやわな性格はしていない。
……でも、やはり天界はやはり退屈過ぎるわ
…………
以前、余りに暇なので催事に使う仙丹を摘み
食いして天界を一時的に追い出されたけれど
、その時の地上のちょっとした騒動の方がよ
っぽど刺激があった程だ。
けど……それももう、終わったし……………
あぁ…………………………………………………
……………………今日も天界は、無駄に平和
ね〜〜………………………………………………
?「あぁ……総領娘様ぁーーっ!!」
比那名居天子=天
天「……ん?」
私がいつも通り、いつも通り平和で何も無
い天界に辟易しながら自宅で黄昏れていると
、如何にもダルそうに、私に仕えてる妖怪…
……永江衣玖が家の門から呼びかけて来た。
彼女はいわゆる竜宮の使いなんだそうだが、
まぁぶっちゃけ良く知らない。興味も無い。
私も私で、億劫そうに呼ばれた方へと首をひ
ねる。
すると、衣玖がこっちにスタスタと歩いて来
るのが見えた。
そして一言………
永江衣玖=衣
衣「まだ、こんな所にいらしたんですか……
いやまぁ、知らせてないので当然と言えば当
然ですが……」
天「は?私だってこんな所(天界)飽き飽き
だけど、居るのは当然でしょ?」
衣「まぁそうですがそういうことでは無くて
ですね……総領娘様に危険が迫っているので
お伝えに上がった次第です」
天「え……いや、明らかに今、パッと思いつ
いただけだったよね?もののついで…みたい
な」
衣「……まぁそうですね……否定はしません。
何せ天界に住まう全天人に伝えて回っている
最中ですし」
天「えっ何?そんなオオゴトになってんの?」
衣「えぇまぁ……天界に侵入者が現れたんで
すが……」
天「ええ!!? 何ソレ!面白そう!!」
衣「あの……最後までお話をお聞きください。
お願いですから」
天「あぁ、ごめんごめん…それで?」
私は衣玖の持って来た避難勧告に興味を持
ち、先を促す。
衣「あぁ…その侵入者というのがですね……
例の地上の鬼で…あぁ因みに、霧になれる方
です。その鬼は元々天界に分身を居座らせて
いたんですが……その鬼の少し様子が変なん
ですよね」
天「変って、どんな風に?」
衣「何というか…全身が黒く塗りつぶされて
いて、影がそのまま立ち上がったかのような
状態と言いますか……よくわかっていないの
ですが……」
ふむ、ここまでの話をまとめると…全身黒
タイツ風の地上の鬼、伊吹萃香が天人を襲撃
した……と
衣「いえ、全身黒タイツでは無いです。どこ
ぞの犯人ですか」
思考に直接ツッコミを入れられた!?と思
ったが、ただ心の声が漏れていただけだった。
天「でも、黒幕かどうかはともかく、ソイツ
が実行犯なのには違いないでしょ?」
衣「まぁそうですが………で、その下手人な
んですが触れるとその黒いのが触れられた相
手にも感染るんですよね……」
天「は!?何ソレ怖っ!!」
衣「とある天人の証言によると天人が一人…
その黒萃香に仙桃を囓って身体強化しながら
挑みかかったらしくて……それで発覚したん
ですが……」
天「マジ…?」
衣「マジです」
天「ゑゑ……(困惑)」
衣玖が、衝撃的な……というかかなり気持
ち悪い、避難勧告への経緯を聞いて思わず…
天「ソレ、誰か止める人いなかったの?」
衣「あぁ、もちろん止める人はいましたよ?
もちろん……」
なんで二回言った……大事なことなんだろ
うか…そこで衣玖が更に続ける。
衣「まぁ、汚らわしい…とか下賎な…とかと
いうありきたりな理由ではありましたが……」
天「あぁ……なるほど」
それも天人には珍しくもないことだ、かつ
て地上にいた者らでさえ地上の者どもを見下
すのだから……実際、私もそうだし……
天「で、初回だし?特に危機感も何もないも
んだから、ナメてかかってまんまと術中にハ
マった……と」
衣「ええ、もう…まるっきりお察しの通りで
す、はい」
流石にこんなん…正解したからって得意に
ならんわ……幾らなんでも……っていうかし
ょうもな………
衣玖も同感なのか、とても遠い目をしている。
天「で?流石に前例が出来たんだからしっか
り逃げ惑ったんでしょうね?」
それで私が皮肉混じりに問い返すと彼女は
言い難くそうに且つ、ため息混じりに
衣「あぁ〜……はぁ……それが、たった一人
とはいえ、同じ天人様が地上の存在ごときの
手に落ちたことに気分を害されたというか…
…気位を刺激されたというか……」
天「……は?まさか全員で向ってった……と
かいうんじゃないでしょうねっ!!?」
その時のは?を言った私の顔は自分で言う
のもなんだが、とても他人に見せられない顰
めっ面をしていたことだろう……
衣「それがぁ〜……えぇ、まぁはい……」
天「……っっっ!……ショボぉーーーっ!!
!!」
天「で、アレでしょ?『おのれ、地上の一妖
怪の分際でーーっ!!』……とかそんな感じ
でしょ?」
衣「まぁ中には『よくも我が同胞を……』云
々…という方もおられましたが……」
天「いやいや……それそんな変わんないから
……つか、何そのバリエーション」
天「……で、そのままみんな仲良く全滅した
…と」
……と、半ば呆れ半ば失望のため息をつき
ながらさっきまで自分が仰向けに寝そべり寛
いでたビーチチェアの
手繰るように…振る。
衣「いいえ? まだ、天人様は全滅されては
おりません……先程も申し上げました通り私
は天界中の方々にお伝えして回っている最中
ですので……」
天「…へ?じゃあこんな所で喋ってる場合じ
ゃないんじゃ……引き止めといて何だけど」
……というより……そもそも、今の話で生
き残りがいる?いやまぁ、そこは………まだ
事態を知らされてない人とか、素直に避難勧
告に応じた人とかいるかもだけど……前者は
ともかく、天界の住人(略、以下天人)の性
格からして後者はなぁ〜………………考えに
く……とか逡巡していると答えが返って来た。
衣「……お忘れですか?貴女様も天人様のお
一人であられることを」
天「……ってことはやっぱり、私一人を残し
て……」
衣「ええ、他の方々は漏れなく全員、一人残
らず……」
天「……………………………………・・・ゑゑ(困
惑)……」(再度)
天「よりによって、私が最後の一人でしたっ
てオチ?私のアトに誰か……」
衣「いません」
天「他に、しぶといお人が誰か……」
衣「いません」
天「え……いや、ちょっ……」
衣「貴方様が、この天界最後の希望でござい
ますっ!!」
コイツは一体…この上ない笑顔で何を言っ
ているのだろう……だいたい……
衣「あぁ…無論わたくし、ここに来る迄に、
僭越ながら、そして誠に微力ながら、尽くせ
る手は尽くさせていただいております」
だから、内心を先回りすんなっ!!怖いわ
!!
衣「あぁそれとですね……特攻でその尊いお
命を散らされた方にはこんな方もいらっしゃ
いました……『衣玖様……ここはお任せ下さ
い……それより、他の天人の方々に一刻も早
くこの事態を……それと…娘を…天子のこと
をどうか、お願い致します…』……以上、総
領娘様のお父上からの伝言でした」
天「…………ねぇ」
衣「はい」
天「人様の父親の必死の
ってくれるわね……ま、どーでも良いんだけ
どさぁ……」
天「…それとさぁ、誰の親が命を散らしたっ
て?……話を聞く限りじゃ、ソイツら全員
黒い何かが感染して操られてるだけじゃん…」
衣「そうですか?何も手立てが無いのでは同
じことでは?」
天「今の所は…ってのが抜けてるわよ?」
その反論に衣玖は深いため息のあと……言
い放つ。
衣「……仰っしゃられることも御もっともで
すが…それも、総領娘様の気力
ているということをお忘れ無く……」
衣「私はもとより、総領娘様のお父上より貴
方様を頼まれておりますので…尚のことでご
ざいます」
……と、先程の態度が鳴りを潜め、なーん
か急にしおらしくなる……が…。
天「いやいや隠さなくていーから…アンタは
他人になんか興味ないで……しょっ!」
そこで私は、さっき掴んでいたものを彼女
に投げて寄越す。
天「どうせコレでしょ?……………ここへ来
たお目当ては?」
……それは、私が寝そべっていたビーチチ
ェアの薄い天蓋となって日光を程よく遮って
いた羽衣だった。
━━━私は日差しにも強いので別にいらない
のだけどリゾート気分を味わう為に敢えてか
けていた━━━━
即ち、目の前の竜宮の使い…永江衣玖の持ち
物だ。
衣「……で、そうだったとして…それが何か
?」
天「いや別にィ?……アンタが親父に頼まれ
たからとか、ツマンナイ言い訳するからさ…
…」
衣「私は確かに、他人の行動やその他諸々に
ついて興味などありませんし………どうでも
良いのですが……それが今何か関係が?」
天「無いわね」
衣「私はただ命じられた通りに……使われた
通りに仕事をするだけです……」
天「ふ〜ん……じゃあそれさ……私でも使わ
れてくれんの?」
まぁ、コイツが自分の
は確定として……でも、それだけにしては…
……ふむ……
天「じゃあさ………ちょっと、手伝ってほし
いんだけど…」
衣「はい。なんでしょう」
天「……操られてる天人軍団と黒萃香………
ここまで連れて来て」
衣「………あぁ……それが……なんと言いま
すか……」
天「……なに? もしかしてもう地上に降り
ちゃったとか?」
衣「いえ……まさか総領娘様からそう言って
いただけるとは思っておりませんでしたので
………」
天「………もう、こっち来てるってこと?」
衣「……………はい」
なるほど……流石は衣玖、仕事が……いや
最早これは………
天・衣「「話が早くて助か(るわ!)」りま
す!」
まぁ…コイツがこんな時に長話なんて変
だとは思ったけど、私をつかまえとく為か…
……でも、ま……退屈凌ぎにはなりそう……
かな?
天「つ〜かさ…衣玖…あんた、誰の許可得て
こんな勝手してんの?ん?もし私が首を縦に
振らなくてもヤラす気満々じゃん……まぁ私
もヤル気があったから良かったようなものの
……親父の必死の言伝思っきし破られてるし
…((笑)) カワイソ〜〜っ!www」
衣「いえいえ、滅相も御座いません。私はち
ゃんと他の天人様方にお伝えしましたし、総
領娘様の御身もこの身に代えててもお守り致
します……ただ、兼ねてより常日頃から貴方
様が『退屈だ』と仰っしゃられていたので少
々気を回したつもりだったので、そのような
ことを言われるのは心外ですね」
天「いや、思いっきり独断専行じゃん………」
…などと話ている間に遠くの地平線(天に
あっても地平線と言うのだろうか━━どうで
も良いけれど)から黒い点のようなものが見
え始める。
ポツポツと現れ、こちらへと向って来る。
天「さて、と……じゃあ、ちょっと……遊び
相手になって貰おっかな?」
衣「えぇ。思う存分暴れて頂いて構いません
よ………」
天「そう……じゃあ遠慮なく。思いっきしや
るから頑張って合わせて頂戴!」
衣「了解しました」
そして、最後に会話を締めるように互いの
手どうしを合わせてパンッと鳴らす━━私は
左手、衣玖は右手だ━━そして……
━━地底
━━━地霊殿
はぁ……ようやく仕事が一段落しましたね…
私、地霊殿の主であるサトリ妖怪…古明地さ
とりはその日一日の業務を終えて、自身の書
斎で寛いでいた。
そこに、ドアの方から━━━
━━━〜♪ふ、ふふふふふーん…ふ、ふふふ
ふふ〜ん…ふ、ふふふふふーふ……♪……今日
はいつもより上手く淹れられたわ〜!さとり
様喜んでくれるかしら♪━━━
……と物理的でない声がドア越しに聞こえ
て来る。
そしてそれは自身の能力故であり、さとり妖
怪の本分でもある。
そうして数秒後、私の書斎の重厚な扉がコン
コン、とノックされる。
古明地さとり=さ
さ「入って良いわ。丁度仕事が終わった所だ
から」
私の声に応えながらドアが開かれる。
火焔猫燐=燐
燐「失礼しま〜す!さとり様〜!お茶をお持
ちしました!」
元気良くドアを開け、明るく返事をしなが
ら入室したのは、この地霊殿のペットにして
、怨霊の管理者でもある火車の火焔猫燐。
私はお燐と呼んでいる。(まぁ大抵の者から
そう呼ばれているのだが)
さ「ありがとう。お燐…ちょっと休憩にしま
しょうか」
私は執務机の前のソファに移動し、その目
の前のテーブルにお燐が淹れた紅茶が置かれ
る。隣にはお茶菓子など添えられている。
ソファにそっと腰掛け、用意された紅茶のカ
ップの取手に指をかけ、口元に運びカップを
傾ける。
紅茶の豊かな香りが口いっぱいな広がり、
疲れがすぅっと薄まるように消える心地だ。
しばらくそうして寛いでいると、そわそわと
落ち着かない様子てお燐がこっちを見ている。
そこで、サードアイをお燐に向けて“見る”……
━━うぅ……さとり様のお膝………………///………
いやでも……今は休まれてる最中だし…………
でもでも!もう、お夕飯の準備も終わってる
し………━━
さ「お燐、いらっしゃい……」
そんなお燐に微笑みかけ、膝を軽くポンポ
ンと叩き、乗るよう促す。
燐「……! は、はいっ!!! ふふ…♪」
すると彼女の全身が一瞬で炎に包まれ、包
まれたのと同じくらいの速さで炎が消えると
そこには先っぽに小さく火が燃えている、尾
が二本の黒猫がちょん、と座っている。
燐「にゃあ〜……っ♡」
猫に変身した(というより普段が人に化け
ているのだが)お燐が嬉しそうに鳴きながら
こっちに素早くかけ寄って来ると、ぴょんっ
と一気に膝の上に乗って甘える。
私が顎を撫でてあげると、お燐も気持ち良さ
そうに喉を鳴らす……と、そこでドタバタと
廊下を駆けてくる音が聞こえて来たかと思う
と唐突にドアが開かれ、悲痛な…しかし真剣
味にかけた叫びが上がる。
霊烏路空=空
空「あぁーーーーっっ!!ヤッパリ抜け駆け
してるーーーっ!!ずるいよ、お燐ばっかり
!!私も私も〜!」
その非難するような台詞は後半は甘えねだ
るような声に変わり、ばっ!と私に背後から
抱きつく。
さ「お、お空っ!……もう…しょうがないです
ね…」
と、言いつつも私もまんざらでも無いので
優しく頬を撫でてやる。
燐『あぁ〜〜……お空〜夕飯の支度おっけー
?』
空「もう!ひどいよお燐!私に任せて先に行
っちゃうんだもん!」
燐『えぇ……だってもうほとんど終わって、
やることとか特になかったじゃん…』
空「そうだけどさぁ〜……」
燐『だいたい、あたいだってさとり様にお茶
を淹れて持って行ってただけだし』
空「でも…自分だけさとり様と寛いでたじゃ
ん」
燐『……それは……まぁ……成り行きで?』
空「まぁ…もうそれは良いけど。私もさとり
様にかまって貰ってるしー!」
言いながら体を擦り寄せるお空。
さ「うん…別に忘れてたりサボっていたりは
無いみたいね……よしよし…」
右肩に顎を乗せてくるお空を右手で、膝に
乗るお燐を左手で撫でてやりながら、二人の
方へサードアイを向け、心の中を覗いて仕事
をこなしていたかを確かめる…無論、夕飯の
支度もすでに済んでいた。
……そこでふと、撫でていた手を止める。
空「さとり様?」
燐「?」
二人からの訝しげな視線を感じる。
だが私は急に感じた外からの異様な気配に、
館の外へサードアイを向けた。
さ「………お燐、お空……少し外の様子を見て
きます。ペットたちを一箇所に集めて待って
いてください」
燐「…!…わかりました……行くよお空」
空「うにゅ?」
さ「あぁ…それから、夕飯は先に済ませてお
いて下さい他のペットたちにも……頼みまし
たよ」
燐「…はい!」
そこで、私は自室のドアを開け、廊下に出
る。
そこからは飛んで、玄関口まで向かう……
廊下を右に曲がり、その先の階段を………
━━バリンッ……!!
降り……ようと廊下を飛行していたらいき
なり数メートル先の廊下の窓(壁も)をぶち
割り、気配の元凶らしき者たちがずかずかと
侵入してきた。
全身黒尽くめのそいつらはただ黙って私の進
路を塞ぐ。
だが私からすれば対処すべき問題がわざわざ
向こうから来てくれたわけで、進路を塞がれ
ていると言うのは語弊があるが、格好として
はそういう他無い。
それに………
さ「他にも気配が……これは、地底中に……
!?」
しかも、目の前の輩どもにサードアイを向
けても心を読むことが出来無い……
さ「あなた達には聞きたいことも言いたいこ
とも山とあります……が、今はそれどころで
はありませんね…」
言い終わらないうちにこっちから動こうと
した瞬間、相手も一気に間合いを詰める。
━━━━
戦闘
━━━━
〜とある異界〜
薄暗い部屋の中、中央にある巨大な鏡から
発せられている申し訳程度の光がこの部屋の
明度を辛うじて支えている。
その薄明かりを発する鏡には様々な場面や状
況が次々と映し出されている。
飛「さて…次なる手は……」
その部屋の中、一人の男がソファに肘を付
き、ひとり呟く。
その男の視線の先にはこの部屋の光源でもあ
る映像を映す巨大な鏡が鎮座している。
そこにはこの男の奸策する場所の各所が映し
出され途切れることなく流れている。
━━博麗神社……無名の丘…………三途の川
…白玉楼………天界……命蓮寺……輝針城……
……etc
それはその地に住まう幻想の者たちも例外では
なく、それぞれに困惑、混乱、対応に駆り出さ
れ奔走する様が映されている。
飛「萃めし夢……萃まりし想い……」
男は目を僅かに細め、次なる一手を口にする
。
飛「夢の通い路……永き夜の始まりだ…」
………鏡の仄暗い明かりだけが男の顔を不気
味に照らしていた。
━━博麗神社
紫side
………何かおかしい。 何か胸騒ぎがする
……
先刻、白玉楼にて幽々子についた影(コ)
を皆で協力して祓った後、一人スキマで神社
に帰った私は霊夢たちに事のあらましを聞か
せ持ち帰った氷漬けの影(コ)の封印を霊夢
に頼み、神社の縁側に腰掛けながら、周辺に
警戒網を敷いていた。
紫「静かね………」
あのとき……紅魔勢モドキ共が攻めて来て
以来、博麗神社には何も攻めて来る気配がな
い……
諦めたわけではないことは未だに博麗神社で
気持ち悪くくねっている影たちが証明してい
る。
でも、ようやく……敵の次の目的地が推測出
来た。
藍たちが向かっている方向からしてもまず間
違いは無いはず……
そう……奴らが紅魔館の次に襲撃したのは白
玉楼…これで、点は二つとなり点と点が繋が
り線となる……もちろん確定では無く推測に
過ぎ無いものの、これである程度の目星は付
く……そう……つまり……
紫「この異変は過去の異変を辿っている……」
よって……次は萃夢想……のはず………
紫「でもあの異変は幻想郷中に影響してた上
に異変の黒幕も神出鬼没だったのよねぇ……」
しかも、また嫌な予感がするし……それに
……
紫「この異変が推測通りだとしたらそれは…
……」
そこで、近づいて来る気配にふと顔を上げ
る。
魔「よっ!……今度はなに企んでんだ?……
いや、今は何考えてくれてんだ?かな……何
せ今は手を組んでるんだしな……」
紫「……まぁそうね……否定はしないわ」
魔「ほぉ、珍しく素直だな……槍でも降るん
じゃないか?」
紫「あなたの方は相変わらずの減らず口ね…
……まぁ良いですわ……それより本題に入り
ましょう……」
そこで私は今まで考えていた推測を話した。
魔「おいおい……それ、ちゃんとあいつらに
は話してあるんたろうな?それだけわかって
るだけでも大分違うだろ……」
紫「もちろん話しましたわ……まだただの仮
説の段階ということも一緒にね…」
そう、このことはもちろん既に伝達済み…
…だが……
紫「余計な先入観や固定観念は状況を悪化さ
せかねない……だから、あくまで参考程度に
と言うに留めましたけれど……」
魔「だけどよ………もしそうだとしたら……
…コレ……」
紫「ええ……そうね………」
もう、後手に回ってしまっているかもしれ
ない……相手がこちらに対してアドバンテー
ジがあるとすれば、その一つは狙いが何なの
か判明していないということ……もちろん、
おおまかな目的は膨大な力…であるのはわか
るものの…この幻想郷のどこから?または誰
から?………もしくは両方?それをどこから
どのように引っ張ろうとしているのかが分か
らない……………それは、可能性が全く無い
からではなく……寧ろその逆……何処からで
もあり得るから………可能性があり過ぎて絞
り込めない……例えば彼女、チルノの事をと
って見てもそうだ。
彼女は今回の異変の為にこの私が備えた存在
だが……その力を奪われることで逆に利用さ
れた。
幸いその力は半分程度しか奪取されずに済ん
だけれど、半分でも大き過ぎるし、それさえ
単なる足掛かりに過ぎなさそうな所を見ると
、何処まで計算済だったのかわかったものじ
ゃない……でも、私とてただ手をこまねいて
いた訳ではない……想定出来る範囲で手は打
たせて貰った……あとはそれらが吉と出るの
を祈るのみ…………いや、吉を出させて見せ
よう……例えどう転ぼうとも……全員の納得
のいく形で。
ここからが……正念場ね……
チルノside
これは……紫の言っていたことが現実味を帯
びて来たな……
あたいは白玉楼で聞いていた紫の仮説を思
い返していた。
〜回想〜 白玉楼某所にて
チ「ねぇ、話しってなに?」
紫「あぁ…来てくれてありがとう。まずはお礼
でも言わせて下さいな……ふふ……」
チ「いやさぁ……別にそういうのいいから。早
いとこ本題に入ってくれない?」
紫「ふふ……あらあら♪……つれないですわね
………」
チ「いや、これでもかなり付き合ってあげてる
つもりだけど?」
紫「…やれやれ……その表情…確かにもう既に
十二分にご迷惑をおかけしているようですわね
……」
チ「………で?何がわかったの?」
紫「……いくらなんでも話が速すぎませんこと
?その様子、もう内容を察していらっしゃるの
では?(汗)」
チ「さぁ?それはソッチから話を聞いてみない
ことにはわかんないよ……それがただの答え合
わせになるかどうかはさ……」
紫「それでは単刀直入に……この異変、今追っ
ている相手の行き先は……」
チ「過去の異変が起きた地をなぞっている?」
紫「…………やっぱりただの答え合わせじゃな
いの……(遠い目)これ、私がこの先を言う意
味ありまして?」
チ「……良いから続けて」
紫「では話を続けますけれど……これはただそ
の地を狙っただけもの……であるということで
す」
チ「まぁ、確かに今までのことを振り返っても
そうだよね……紅霧異変を…完璧とは言わない
までもある程度再現するなら、最低でも霧を出
させないと駄目だしね」
紫「ええ、今回の白玉楼においてもそれは言え
ること……異変の中心であるあの西行妖をそも
そも輪切りにしてしまっていますものね………
でも、どちらも異変の当事者が影に取り憑かれ
ているのは変わらない」
チ「それと、土地か……紅霧異変は紅魔館……」
紫「………(コクッ)春雪異変は白玉楼…そして
そのどちらも最低でもその異変の中心的人物
が狙われている……つまり、必ずしもかつて
の異変をやり直す必要は無く……ただその土地
……つまり場と当事者…ないし黒幕が揃えばそ
れで良い……と」
チ「ってことは敵の差し当たっての目標は幻想
郷巡りってことか………」
紫「ええ……私の推測通りならね……」
チ「……確かに、これまでのことを考えても迂
闊に決めてかかるのはヤバそうだよね…」
紫「……ふぅ…やれやれ、やはりあなただけに
話して正解でしたわ……」
チ「…で…どうするの?このことはみんなに…」
紫「まだ、ご内密いただけるかしら?」
チ「え?」
紫「言ったでしょう?私の推測通りなら…です
わ」
チ「でも、別に……」
紫「もちろん、話すかどうかはあなたにお任せ
します。タイミングについても」
チ「じゃあ、まだ話すなって釘刺す意味ないじ
ゃん……」
紫「いいえ……あなたなら藍たちと行動を共に
する中で時機を見逃さないでしょうし、軽率な
ことはしないだろうとの判断ですわ」
チ「……なるほど?……ならそこら辺の判断は
あたいがさせてもらうけど……」
紫「……ではこれで話しは終わりです。………
この幻想郷の未来の為……期待以上の働きを期
待していますわ」
……そして、紫はスキマを使って博麗神社へ
と戻っていった。
〜回想終わり〜
……ったく…期待がデカいよ…こんな……
ただの氷の妖精つかまえてさぁ……
あたいは黒い影の気配を追う藍と橙の反応
を見てほぼ確信する。
次の異変が『萃夢想』がターゲットなら、次
に影に取り込む対象は間違いなく萃香だ。
彼女の力は『疎と密を操る程度の能力』……
その力を使ってかつては幻想郷中の人妖の心
を萃め宴会を三日おきに開かせていた………
狙うべき異変の中心人物としては申し分ない
……その上、厄介な能力持ちだ………………
それは、己の分身を作り出したり、巨大化し
たり、逆に小さくなったり……変幻自在に自
身の姿を変えられる事……挙げ句、霧にまで
なれるという……まぁ能力の応用なんだろう
けど………
その中でも分身と霧が特に厄介だ……霧にな
られると捕まえられないし、一人と複数人と
ではその仕事量も段違いだ。
しかも相手は鬼……妖怪の中でもトップのパ
ワーと再生能力を持つ種族……おまけに萃香
はその中でも四天王の一角を張っている鬼だ
……もう、その強さは折り紙付きだろう……
藍と橙はそれぞれ、追っていた気配が消えた
と思ったら今度は追っていた奴より気配こそ
小さいが複数同時に現れた……と言っていた
……そして今、橙が
橙「ぜ、全員……とんでもない強さです!!
結構な距離のはずなのに……ここまでプレッ
シャーが……」
間違い無い……こんなことか出来るのはあ
の
そして、紫の推測通りならこれで萃夢想の標
的は半分は達成されてしまったことになる。
異変の中心人物……あとは異変の
藍「あぁ……しかも、いたる所……あちこち
から同じ気配が近づいてくる!!」
大「チルノちゃん……」
チ「………みんな下がって……あたいの背後
に……」
藍「そうは言うが………!?……なるほど…
…では、ここはひとまずそうさせて貰おう」
あたいは氷の分身でみんなの周りを固め、
接敵に備える。
……そして、遠くから見え始めた黒い点が
大きくなりやがて人で言う小さい子供ほどの
サイズになりその姿をあらわにする。
橙「う、うわわわわわわわわ………!!」
藍「なっ!!こ、こいつは……」
大「嘘………ッ!!」
小さな百鬼夜行……伊吹萃香の輪郭した…
黒い影が大人数であたいたちを包囲していた。