東方極楽伝   作:一向一揆

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約半年ぶりの投稿です。
色々とすいませんでした。

今回は今後の展開へのつなぎ程度なので短めです。

毎度の如く修正が入ると思いますが…(諦めの境地)


第九・五話 其々の動き

  Side 信孝

 

 

 美濃国(現在の岐阜県南部)東部 某所にて

 

 

 房前たちと再会してから既に100年近く経過し、武智麻呂・房前・宇合・麻呂や息子の信等も50年以上前に鬼籍に入り、俺のことを記憶している人間は既にいないも同然となったことで漸く俺は人目をあまり気にせず行動できるようになった。

 これまではあまり人に会わないよう山奥で自分の力を確かめるための修行ばかりしていたから、そろそろ人肌も恋しくなってきたというのもあるが・・・。

 

 

 ・・・そう言えば信等の臨終の際、俺があいつに対し「最後に父親らしいことをしたいから何でも願い事を言ってくれ」と言ってみたら、あいつは、「先日母上も来てくださり、父上もこの場に来ていただけただけで私は幸せ者です。」と言ってくれた。

 相変わらずいいこと言ってくれる奴で、本当に俺にはもったいないくらいの息子だった。

 

 

 しかし、慧音もやっぱり息子の最期は看取りに来ていたんだな…。

 

 

 

信等の死後、俺は本格的に妹紅や慧音についての情報収集のため、現在の都である平安京に出入りし、宇合行きつけの情報屋の子孫(やっぱり代々情報屋を営んでいた)から情報を仕入れていた。

 

 その中でも最大の収穫は、「長い銀髪の若い女性が、村々に悪さをする妖怪を討ち滅ぼしながら『蓬莱山輝夜』という名前の女性を探して諸国を放浪している。」ということだろう。

俺があの事件に巻き込まれたから約150年の旅の中で、初めてとなる妹紅の情報であった。

 

 この情報は、今から2ヶ月前の下野国《しもつけのくに》(現在の栃木県)の那須の地から発信された噂であり、時間が経っていることから既に妹紅はそこにはいないだろうが、それでも貴重な情報だ。

 

 もしかしたら何か痕跡でも残っているかもしれないと思い、俺は一路下野国へと歩を進めた。

・・・目の前に立ちはだかるアルプスの山々という現実から目を背けながら。

 

 

 

 

 そう言えば、さっき結界っぽいのを破ったような感触があったんだが…、一体あれは何だったんだ?

 

 

 

  信孝 side out 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  Side 妹紅

 

 

 

 越後国(現在の新潟県)北部 某所にて

 

 

 

 

「これで止めっ!」

 

「ギャァァァァァァァ!!!」

 

 私の妖術で作った炎によって、目の前の妖怪は断末魔をあげて焼け死んだ。

 

 

 

 

 私が妖怪によって撒かれた妖気や瘴気を処理すると、村の村長がやってきた。

 

「ありがとうございます旅のお方! これで村の若者たちが死ぬことはなくなります!」

 

「いやいいんだよ。 私が好きでやっていることなんだから」

 

 

 力の弱い人たちが傷つけられるのを何よりも嫌った信孝だって、生きていたらきっと似たようなことをしていただろう。

 

「村長、あんたに聞きたいことがあるんだが、「輝夜」って名前の女知らないか?」

 

「? いいえ、存じておりませんが、あなた様の探し人ですか?」

 

「…まぁ、そんなもんだ」

 

 やっぱり…か。 輝夜の奴、ホントに月に行っちまったのか?

 

 今の私では空を飛ぶことは出来ても、月まで行くことは出来ない。

 

 だからこうして各地を地道に渡り歩いて行くしかないな…。

 

「では、私はそろそろお暇するよ」

 

「待ってください! せめてお礼くらいさせてください!」

 

「いいよ、そんなことするくらいなら村のみんなで宴会した方がいい」

 

 そう言い残して私はこの村を去った。

 

 都に向かうという選択肢もあったが、父上、信孝、武智麻呂、房前、宇合、麻呂、慧音、信等達がいない場所に行ってもあまり楽しくないだろう。

 

 だから私は都には寄らず、各地を放浪しているのだ。

 

 

 

 

 

 ホントに輝夜の奴、どこにいるんだか…。

 

 

  妹紅 side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  Side 輝夜

 

 

  唐の国北部 某所にて

 

 

 

 私は今、従者の永琳と一緒にこの山奥の地でひっそりと暮らしている。

 

 何故月に帰らず、この地にいるのかというと・・・

 

 

 

 

 

 ~回想~

 

 

 信孝達と別れることとなったあの事件の後、月の従者のリーダー格である男の腕の治療がなかなか進まなかったため、妹紅のいる日本を離れ、唐の国の山奥に身を隠して治療することになった。

本当は永琳が治療すればもっと早く治るのだけれど、何故か永琳は治療にはあまり関わっていない。

そのことが、あの男の苛立ちに拍車を掛けているようだ。

 

「くそっ、あの女め! 次会ったら嬲り殺してくれる!!」

 

 どうやら妹紅のことをかなり恨んでいるようだ。 自業自得のくせに・・・。

 

 とりあえず、私は永琳に今後について相談することにした。

 

「永琳…」

 

「どうしました姫様?」

 

「私…、月には帰りたくはない」

 

「…姫様!?」

 

 やっぱり永琳も驚くわよね。

 

「私は、あの場所で出会った信孝、妹紅、慧音達がいたあの場所が好き。 出来ることならあの地で暮らしたい」

 

「…」

 

「そのためにはあの男が邪魔になるわ。 もしそのままあの男が月へ帰ったら月は地上へ進行し、妹紅の家族や、信孝の忘れ形見は殺されてしまう。 そんなのは嫌なの・・・!」

 

「…それが姫様のお考えですか?」

 

「ええ。 これが私の本当の想い」

 

「…分かりました。 後は私にお任せください」

 

 そう言って永琳は男のいる屋敷へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は気になって永琳の後を追いかけた。

 

「お、永琳か。 ちょうどいい、お前早く俺の腕を治せ! お前なら出来るだろう!」

 

「…残念ながらそれは出来ません」

 

「何…?」

 

 -ザシュッ-

 

「がっ・・・!?」

 

「貴方は此処で死ぬのですから」

 

 永琳が隠し持っていた短刀で男の心臓を突き刺した。

 

「永琳…貴様、我々を裏切る…気か!? それに…他の……奴等は?」

 

「彼らはすでに私の手によって冥府へ旅立ちました。 私は姫様の家臣。 姫様が月に帰りたくないと仰ったのならば、私はそれに従うまで…」

 

 そして永琳は短刀を抜いた。

 

「がっ…!? 貴様ら……を…月は……決して…許さぬ…ぞ……!!」

 

 そう言い残して、男は事切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「永琳・・・・」

 

「姫様、申し訳ありません。 ですが、こうするしか私には思い浮かばなかったもので」

 

「いえ、私のためを思ってくれたのならばいいわ」

 

「・・・ありがたき幸せにございます」

 

 

 

 

 

 

 

 ~回想 終~

 

 

「ねぇ、永琳? 私、もう少し各地を回ったらまたあの国、日本に行こうと思うの」

 

「…姫様にとって思い出深い地だからですか?」

 

「ええ、もうあれから150年くらい経ってしまったけど、信孝の墓前にすら行ってないもの。 それに、彼の一人息子の子孫がどうなったのかも知りたいし」

 

「…分かりました」

 

「ありがとう、永琳」

 

 そう言い残して私は永琳の部屋から退出した。

 

 

 

 

 

 永琳は輝夜の想い人であった藤原信孝について、一人思案していた。

 

(あの藤原信孝という人物、私は少し見ただけなのだけど、遥か昔どこかで見たことがあるような気がするのよね。 一体何処だったかしら…?)

 

 

  輝夜 side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  Side 慧音

 

 

 大和国(現在の奈良県)南部 某所にて

 

 

 私が都を離れてからもう150年ほど経ってしまった。

 

 既に武智麻呂さま方藤原4兄弟や、私の愛した息子織田信等も既に亡く、1人信孝(この150年の間に、なぜか呼び捨てで呼んでしまうことに慣れてしまった)の後を追っていた。

 

 ただ、どういうわけか信孝とはどうも会う機会に恵まれていないような気がする。

 

 

 不比等さまの臨終の際にも、私はこっそり見舞いに行ったものの、私が去ってから3日後に信孝が見舞いに来たと宇合殿から聞いた時には私は自分の間の悪さに軽く絶望した。

 

 さらに、天然痘が大流行した際にも気になって都に来たら、久しぶりに再会した信等から「一昨日初めて父上に会い、私にこの刀を授けていただきました!」などと言って、かつて私に見せてくれた信孝の愛刀「宗三左文字」を誇らしげに持っていた。

 

 後で武智麻呂殿方4兄弟の皆さんに確認したところ、4名とも信孝にあったと仰られ、私はまたも信孝に会う機会を逃してしまった。

 

 さらに、信等の今際の際にも、私が来た翌日に信孝が来るという始末。

 

 …運命の女神というのは私のことが嫌いなのだろうか?

 

 

 

 しかもここ最近は、妹紅の情報は偶に入ってくるようになったものの、信孝の情報はここ50年一切ない。

 

 やっぱりあの人たちが亡くなって、最大の情報源を失ってしまったのが痛かったな。

 

 

 

 今私は、この地で私塾を開き、子供たちに勉学や歌について教える傍ら、暇を見つけては信孝を探す旅に出ている。

 

 この塾はかつての私の教え子である空海が開いたものだが、彼が亡くなった際、私にこの塾を残していてほしいと頼まれ、こうして私が講師としている。

 

 だが、いずれ見た目が変わらない私に対して疑問を持つものが出てくるだろう。

 

 持ってあと5年から10年だろうか…?

 

 そうなったらこの塾は教え子の誰かに譲って、私は再び旅に出るとしよう。

 

 それに、妹紅は今も信孝は死んでいると勘違いしたままだ。

 

 彼女に会えたらその誤解も解かないといけない。

 

 

 

 早く会いたいな、信孝…。

 

 

  慧音  side out

 

 

 

 

  Side 紫

 

「はぁ~、厄介な奴等を間引けたと思ったらここまで深刻な戦力不足になるなんてね…」

 

 あの月面出兵から既に50年が経とうとしているのにも拘らず、失った戦力を取り戻せていない現状に私は思わず溜息を吐いてしまった。

 

 漸く私の理想の地である幻想郷が完成したは良いが、そこには力は上級の癖に矢鱈と反逆心が強い連中がわんさかいたため、そいつ等を間引くため50年前に月面戦争を仕掛けたのだ。

 

 月の連中の強さを考えれば間違いなくそいつ等は全滅すると考え、事実そうなったのだが、50年経ってもその戦力をまるで取り戻せていないとは予測すら出来なかった。

 

 勿論私も戦力低下は織り込み済みであり、戦争終結後は天魔や鬼等の不参加組と共に才能はあるが若い妖怪たちを鍛え上げて50年ほどで4割程度の戦力は戻せると見込んでいた。

 

 しかし、彼らは才能はあったが揃いも揃ってヘタレか自由人ばかりであり中々成長が見られず、50年経った今で1割程度しか戦力が戻っていないのだった。

 

 

 特に鴉天狗の射命丸文は、若手の中でも特に才能はある癖にこの地にいるのが稀な状態なのでここ50年まるで成長していないのが珠に傷だ。

 

 彼女が天狗の幹部になれば戦力の大幅増強が見込めるのに、何でこうも上手くいかないのよ…!!

 

 

 そしてもう一つ、私の頭を悩ます種がある。

 

「この文珠…、相変わらず解析不能なのよね…」

 

 

 そう、100年前にある少年からもらった貴重な霊具であるこの文珠をどうにかして劣化版でも量産できないか河童たちと共に研究を重ねているのだが、まるで構造が解析できないのだ。

 

 下手に分解して破損や使用でもしたら、もう二度と手に入らない可能性が高いので、おいそれと刺激を与えれないのだ。

 

 

「…やっぱりあの時、彼に詳しい話を聞けばよかったわね」

 

 思わず私はかつて一度だけ出会った彼…藤原信孝の姿を思い出し、後悔の念に苛まれた。

 

 

 

 まさか彼が20歳にも満たない年齢で世を去るとは思わなかったし、彼の子孫である現在の織田氏や、親族である藤原四家にも文珠に記録については全く伝わっていない。

 それに、過去の文珠使いの記録も文書に残っていないので全く分からないという手詰まり。

 

 

「はぁ、こうも成果が無いt…!?」

 

 

 

 問題山積みな現状に溜息を再びつきかけた時、何者かが幻想郷外縁部の結界を破った感覚が伝わった。

 

(莫迦な…、あれは急拵えとはいえ簡単に破れるようなものじゃないわ。 それに、人間一人分だけ器用に破いて他のところは影響が全くないなんてあり得ないわ!!)

 

 私が作ったあの結界は、強度に不安は残るがそれでもかなりの強さでないと破れないし、何処かが破れたら急造故に他の部分にも確実に影響が出るような状態なのだ。

 それをこんな綺麗に破くなんて…、確実に危険な相手ね!!

 

 状況的に藍では荷が重いと判断した私は、直々にその結界破壊地点へ急行した。

 

 

 しかし、そこには結界を破った存在は何処にもおらず、徐々に修復されてゆく結界があるだけで周囲にも特に異常は発生していなかった。

 

 こうして、私の頭を悩ませる案件がまた一つ増えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やばいやばい。 なんか変な結界無意識で破っちまったよ。 バレる前にさっさと逃げよ」

 

 その結界を破った当事者が私の頭を悩ませる案件に関わる重要な人物だったと知るのは、それからはるか未来の話であった。

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