東方極楽伝   作:一向一揆

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第七話 主人公はログアウトしました

  Side 信孝

 

 

 

 輝夜が今夜月へ帰ると宇合から聞いた俺と妹紅は、急ぎ輝夜の屋敷へ向かっていた。

 

 

「くそっ! 宇合の馬鹿野郎、そういう大事なことは早く言えっての!」

 

 

 

 

 よりによって今日の夜が帰還する日だとはな・・・。 

 何故それをあいつが知っていたのかは疑問に残るが、・・・・・・まぁ宇合だからで納得できるな。

 

 

 

「どうする信孝!?」

「もう満月が上り始めているから、そろそろ輝夜は発つと見ていいだろう。 俺たちに無断で故郷に帰りやがるあいつが発つ前に、嫌味の一つでも言っておかないと俺の気が済まない」

「それは私もだ。 クソッ輝夜の奴、家族ぐるみで仲が良かった私達にまで黙っていることはないだろ!?」

 

 妹紅も黙って帰ろうとする輝夜に対して怒っているな。 まぁ、無理もないことだが・・・

 

 

 

 

 待ってろよ輝夜、勝手に帰るんじゃねえぞ!

 

 

 

 

  信孝 side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  Side 輝夜

 

 

 

 

 今夜が私の月に帰る日・・・・・・か。

 蓬莱の薬を飲むという禁忌を犯しながら、地上への流罪期間が2年足らずとは、一体月夜見様は何を考えていらっしゃるのかしら・・・?

 

 

 でも、かつてあれほど望んでいた月への帰還なのに、今の私の心は冷え切ったままだ。

 

 月から追放されて地上に降り立ち、途方に暮れていたの頃の私ならひょっとしたら喜んでいたかもしれない。

 けど今は・・・、

 

 

「信孝、妹紅、藤原家の皆・・・・・・」

 

 

 世話になったおじいさんやおばあさんとの思い出に浸っていた中で、ふと地上で仲が良かった藤原一族の皆の顔が思い浮かんだ。

 

 彼らは私のことを「一人の少女、蓬莱山輝夜」として見ていてくれた。

それに、(武智麻呂を除く)彼らの案内であちこちを歩き回り、自分の足で冒険する楽しさも初めて知った。

 

 正直に言うと、月での変わり映えのしなかった永い時と比べ、こちらでの2年にも満たない短い期間ながらも、日々新しい発見と楽しい一時に満ち溢れていた地上での生活の方が遥かに価値のあるものだった。

 願わくばこの地で終生過ごしたいと思える程にまで、私はこの土地と人々のことが気に入っていたのだ。

 

 

 勿論、彼らは蓬莱人とは異なり唯の人間だから、数十年でいなくなってしまうだろう。

 しかし、だからこそ限られた短い時間を懸命に生きようとする彼らの姿は眩しく、そして魅力的なのだと思う。

 

(もし仮に、月の使者のトップが私の家庭教師でもあった八意永琳│《やごころえいりん》ならば、永琳を説得して私が此処に残ることを提案してみることもいいかもしれない。

 たとえそれが無理だとしても、藤原一家が生きている間だけでもこの地に留まることが出来るよう説得してみよう。)

 

 しかし、この私の考えが悲しい出来事の引き金となってしまい、長きにわたって続く妹紅との対立の切欠になるとは、この時の私は予想だにしていなかった。

 

 

 

 

 

 それからいくらかの時間が経ち、私が月へ帰るという噂が広まったことで貴族や皇族、さらには天皇や側近の藤原不比等までこの屋敷にやってきて、周囲が人で溢れかえるようになったその時、夜空に輝いていた満月の光が一際明るくなり、月から一筋の光が道となって私の目の前へと連なった。

 そして、いつの間にか現れた牛車がその光の道の上を進み、しばらくの後私の目の前へと降り立った。

 

 

「・・・来たようね」

 

 

 

 周りの群衆が呆然と光の道と降り立った牛車を見守る中、目の前に降り立った牛車の戸が開き、中から北斗七星を模した柄と赤と青の2色を用いた特徴的な服を着込んだ女性が降り立ち、私の元へと歩を進めた。

 

 

 やはり貴女が来たのね・・・八意永琳。

 

 

 

「永琳、迎えの使者はやはり貴女だったわね」

「ええ姫様。 お久しぶりでございます。 お迎えにあがりました」

 

 折角の再会にも拘らず、あくまで事務的に私に応対する永琳。

 仕事中の永琳は私情を持ち込まない人間だとは知っていたけど、ここまで事務的に対応されると上手くあの話を切り出すことが出来ない。

 そんな永琳の瞳を見る限り、私が説得しても受け入れてくれる可能性は低いわね。

 

 

 それでも、この程度で諦めるわけにはいk「おい永琳、さっさとこの姫さんを連れて帰るぞ! 全く、地上の空気は穢れているわ! このような穢れた土地なんぞ居るだけで害悪でしかないわ!」・・・・・・喧しいわね。 一体誰かしらこんな品のない暴言を履き散らす奴なんて?

 

 

 そう思い、私は大声で喚き散らしている男の方を向いた。

 

 

 ・・・確かこいつは月の最高幹部の一人の息子ね。 永琳がこの一団の長だと思っていたけれど、どうやらこいつが団長のようね。

 月にいた頃から親の権力を使って問題行動を頻発させていた憎たらしいと思ってたけど、久しぶりに会うと前以上に憎たらしくなっているわね。

 

 

 

 だけど、こいつが団長ならばいくら永琳を説得してもこいつが決して受け入れないでしょう。

 

 

 

 

「あなたに指図される云われはないわ。 姫様、こちらへ」

 

 

 

 そう言って永琳は私を牛車の方へ導いた。

 

 ・・・思ったより権限あったのね永琳。 あの団長の意見をバッサリと切り捨てることができるなんて恐らくこの場では貴女だけよ。

 

 

(でも、永琳に大きな権限があるならばさっきの計画にも希望が出てくる。 要は永琳さえ味方にすればあとは永琳がうまく丸め込んでくれるでしょうし・・・。 そうと決まれば、永琳に早いところ話をしておかないといけないわね)

 

 そう思い立ち、永琳に話を持ちかけるために近づいた時、それは起こってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「輝夜っ!」」

「えっ!?」

 

 

 

 私が声のした方を向くと、信孝と妹紅がそこにいた。

 ・・・何で「これから」ってところで現れるのよアンタ達!? 計画が狂いっぱなしじゃない!!

 

 

  輝夜 side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  Side 信孝

 

 

 

「「輝夜っ!!」」

 

 ・・・何とか間に合ったみたいだな。

 宇合からの情報が無かったら、間違いなく気付かなかっただろう。

 

 

「輝夜、幾らなんでも俺たちに一言も告げずにさよならってのはひどくないか?」

「輝夜、わたしとお前の仲はそんなに安っぽいものなのか?」

「私だって今朝来た文で知ったのよ!? 寧ろ何であなたたちが来れたのか分からないわ!?」

「こっちには宇k・・・もとい優秀な情報屋がいるからな。 そのおかげで今日お前が帰るって知ったんだ」

「・・・情報屋だと?」

 

 輝夜に事の真相を話したところ、輝夜含め従者らしき変な格好の女・・・もとい永琳や迎えに来た一団の連中も唖然としていた。

 

 納得いかない話だと思っても無理はないことだと思う。 あいつの情報量はあり得ないほど多いからな・・・。

 正直なところ、アイツがキリスト神話の真実や邪馬台国の正確な位置と卑弥呼の墓所の在処を知っていたとしても俺は決して驚かない。

 

 

 

 世界と時代が違ったら藤原一家は全員封印指定されていただろうが、その中でも宇合は最上級に危険人物扱いされていただろう。

 それほどまでに扱いが難しい野郎だからこそ、輝夜の月への帰還という情報を鵜呑みにすることが出来たくらいだ。

 

 

 

 

 ・・・話を戻そう。

 

 それでも輝夜がまだ何か反論してきそうな雰囲気を出しているのが若干気に食わない。

 ここで一気に畳み掛けて輝夜を封じ込めた上で、おっちゃん達と一緒に月の一団相手に無双乱舞すれば

 

 

 ・・・それと、先程から妹紅が輝夜に対し言いたい事があるような雰囲気でウズウズしているな。

 

 折角だしちょっとバトンタッチでもしてみるか。

 

 

 

 

 

 信孝 Side out

 

 

 

 

 

 

 

  Side 妹紅

 

 

 

(・・・ってこの状況で私視点に移るのか!? もうちょっと場の空気読めよ!!)

 

「・・・何慌てているんだ妹紅?」

「(誰のせいだ誰の!)・・・何でもない」

 

 全く・・・、信孝は普段は良い奴なんだけど時たまこうやって無茶振りするから怖いんだよな・・・。 其れさえなければ私も安心していられるのに、勿体無い奴だ。

 

 

 

 ・・・いっ、言っておくが別に変な意味で言っているんじゃないからな!?

 

 

 

 

 

「・・・話が逸れちまったな。 改めて聞くが、いくら連絡が急だったからとはいえ、一言もなく帰るってのは幾ら何でも酷過ぎやしないか?」

「・・・信孝の言う通りだ。 それに輝夜お前、本当に私たちに黙って帰るつもりだったのか・・・?」

 

 私が輝夜にそう尋ねると、輝夜はどこか諦めたような笑みを浮かべて言葉を紡いだ。

 

「・・・・・・私が今日帰るのは既に決定されたことであり、もう覆らないわ。 何も言わずに帰ろうとしたことについては申し訳なく思っているけど、こうして最後に貴方たちに会って話が出来て良かったわ。 それと、最後に貴方たちにこれを渡すわ」

 

 

 輝夜は袖の中から小壺を取り出し、それを私に手渡した。

 

「何だこれは? 見たことがない文様みたいだけど・・・?」

「・・・骨壷か? 輝夜、お前って中々洒落たもの妹紅に渡すんだな」

 

「骨壷じゃないわよ!! ・・・それは蓬莱の薬と呼ばれ、3錠飲めば不老不死となれる薬よ。 それを飲むか処分するかは貴方たちに委ねるわ」

 

 そう言い残し、輝夜は牛車の方へ歩いて行った。

 ・・・あいつ、このまま帰る気か!?

 

 

 

「待てよ輝夜! こんな餞別だけ渡して『ハイさよなら』で済ます気かよ!?」

「・・・今の私に出来ることは此れくらいしかないもの。 元々罪人としてこの地に流されたのだから、私に出来ることはあまりに少ない。 それは私が出来る精一杯の感謝の証よ」

「輝夜・・・」

 

 

 

 

 一度だけこちらを振り返り、潤んだ目で語りかける輝夜の姿を見たらこれ以上反論が出来ない。

 あいつの雰囲気だけで、これがあいつが出来る精一杯の誠意の証だと気付いてしまったのだから・・・

 

 事ここに至っては、私達は輝夜が月へ帰るのを笑って見送るしか出来そうもない。

 だから、私は涙でくしゃくしゃになった顔からなんとか笑顔にして輝夜を見送ろうと思った。 それが今の私に出来る精一杯のことなのだから・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・でも、そんな私の願いは、一人の男の手で壊されてしまうこととなってしまった。

 

 

 

 

 

「おっと待てよ、姫さん」

 

 

 突然、使者団の上役と思われる男が、今まさに牛車に乗ろうとしている輝夜を止めた。

 

 

 

「・・・何よ?」

「今回の任務は、姫さんを月に連れて帰ることだけじゃねぇんだよ」

「・・・・・・え?」

「それはな‥‥‥‥‥‥、これだよ!!」

 

 

 

 そう叫んで、男は私の方に何かを向けた。

 ・・・あの黒く光るモノは何だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――パシュッ!!――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「・・・え?」

 

 

 ・・・何かが炸裂したかのような音がした後、いつの間にか私を覆い隠すようにいた信孝が胸から、大量の血を流して私の前で倒れ込んだ・・・。

 

 

 

  妹紅 side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  Side 信孝

 

 

 

 

 

「それはな・・・・・・・・・」

 

 そう言って、あの男は懐から何かを取り出した。

 あれは・・・・・・、まさか銃剣か!?

 

 

 ※銃剣:17世紀のフランスで発明された、銃身の先端に刃を取り付け、銃としても短槍としても扱える遠近両用の銃。

 

 

 

 何であんな物がここにあるんだ!? 月の科学力ってのはそこまで凄いものなのか・・・・・・!?

 それ以前にあんなデカイ代物どうやって懐から出した!? あの服の懐は四次元○ケットか何かか!?

 

 様々な考えが頭の中を過ぎり、冷静になろうとしても中々落ち着くことが出来ない。

 そんな俺をよそに、男は銃剣を躊躇いもなく妹紅の頭の方に向けた。

 

 ・・・・・・マズイ! この時代に銃がどんな物か理解している奴は皆無に等しい! 現に妹紅もあれが何か全く分かってないし、このままだと妹紅がヘッドショットをくらって即死する・・・!!

 

 

 

 俺は反射的に妹紅を庇うように妹紅の前に出たのと、男が銃剣の引き金を引いたのはほぼ同時だった。

 

 

 

 

――――――――――――――――パシュッ!!――――――――――――――

 

 

「・・・・・・え?」

 

 

 

 

 

 

 

 発砲音が聞こえたのと同時に、俺の左胸から焼けるような猛烈な痛みが広まった。

 

 ・・・・・・どうやらあの男の銃の腕前はそんなに高くはなかったみたいだな。

 それと、俺の心臓が普通の人間と違い右胸にあるおかげで何とか心臓は外せたが・・・。 それが唯一の救いってやつかな・・・。

 

 

 ・・・そう言えば・・・俺、折角・・・・・・気とか魔力を付けてもらったんだから・・・それで防げば良かったのか。

 

 

 

 ・・・・・・ははっ、今更思いついても時すでに遅しってやつか・・・?

 

 

 傷を・・・治そうにも、血が・・・抜けすぎたのか・・・意識が朦朧として・・・力が・・・全然入らねぇ・・・。

 

 

 

 此処・・・で・・・・・・俺は・・・・・・、死ぬ・・・・・・の・・・か・・・・・・・・・

 

 

 

 

  信孝 side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  Side 輝夜

 

 

 

「信孝!? おいしっかりしろ信孝!!」

 

 妹紅が血に濡れていることなどお構いなしに、銃弾で貫かれ倒れた信孝に必死で呼びかけている。 でも信孝は幾ら呼びかけても全く反応しない・・・。

 

 

 

 私は逆上して銃弾を放った男に喰ってかかった。

 

 

「ちょっとあんた! 何で信孝を刺したのよ!」

 

 

 しかし、男はさも当然といった風体で私に向けて話し始めた。

 

 

「今回はあんたを連れて帰ることの他に、近いうちに我々が地上へ進行するための情報収集や拠点となる地の確保も兼ねているのだ。

 そして情報を集めた結果、藤原不比等、藤原房前、藤原宇合、藤原麻呂、藤原信孝、藤原妹紅、高市皇子、以上の7名は我々の計画の障害になる可能性があるとして抹消対象と定められた。

 そして、ここに来たら対象人物である藤原信孝と藤原妹紅がいたので殺した。 ただそれだけだ。

分かったのなら其処を退け。 もう一人の抹殺対象である藤原妹紅を殺さなければならないんでな」

 

 

 

「な・・・!? なんでそんなことになったのよ!」

 

 

 

「・・・分かってねえな。 原因はあんたにもあるんだよ姫さん」

「え?」

 

 ・・・私に原因ってどういうこと・・・?

 

 

「あんたは追放された身だ。

 それなのにこいつらと仲良く遊ぶとは、罪人としての自覚があるのか? ・・・ないだろうな。

 そのため、本来はもう少し後に実行する予定だったこの計画を前倒しして、見せしめとしてあんたの目の前で対象を殺すことを上の方々は決定されたんだよ」

 

 そんな・・・! わたしのせいで信孝に妹紅達藤原家の皆が・・・!?

 

 

 

 

 

 

 

「・・・す・・・・・・」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「殺す! 輝夜も貴様らも殺す!!」

「妹紅!? 今の貴女じゃ無理よ!」

 

 

 

 幾らなんでも、銃剣を操る相手に生身の人間は勝てないわ!!

 この時代の日の本に銃なんて代物存在しないから、対処方法も分からないでしょうし・・・。

 

 

 

 ・・・それならどうして信孝は銃剣が危険な物だと分かったのかしら? 引き金を引いた時には既に妹紅を庇うように立っていたことを考えると、もしかして信孝は銃剣の存在を知っていたとでも言うの・・・・・・?

 

 

 

 

 

 

「五月蝿い! 信孝の仇だぁぁぁぁx!!」

「ぐがあっぁぁぁぁぁ!?!?」

 

 妹紅があの男に向かって拳を振りろうとしたその時、妹紅の拳が突然炎を纏った。

 突然のことで対処できなかった男は、妹紅の拳を顔面に受けて大きく後ずさった。

 

 

 

「まさか、能力の発現か!? くそっ!! 藤原妹紅、能力が発現した以上貴様はここで確実に抹殺せねばならぬ! 我ら月の地上侵略計画に仇なす可能性が少しでもあるものは此処で殺す!!」

 

 

 

 

 そう告げて、男は妹紅の頭部に向けて銃弾を発射した。

 

 

 

「妹紅っ!」

 

 銃弾が額に直撃し、崩れ落ちる妹紅に私は急いで駆け寄った。 すると・・・・・・、

 

 

「・・・・・・私は死ねない。 あいつの・・・信孝の仇を取るまで死ねないんだよぉ!!」

 

 

 頭を銃弾で撃たれた筈の妹紅が再び立ち上がり、身に纏った炎で男の右腕を焼き尽くした。

 

 

「があぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 貴様ァッ!!?」

「まさか妹紅、貴女蓬莱の薬を・・・!」

「ああ、飲んだよ。 貴様らを殺すという私の目的のためになぁ!」

 

 

 そう妹紅が言った通り、彼女の足元には蓬莱の薬が入っていた壺が空となって転がっていた。

 

 

 

 

「くそっ! 高貴なる俺の右腕を焼くとはいい度胸だァ!! 者共っっ、この身の程知らずの女を殺し尽くせぇ!!!」

「「「「はっ!!」」」」

 

 

 男の号令を受け、武装していた団員が一斉に妹紅へ向けて銃を構えた。 しかし、

 

 

 

「邪魔を・・・するなぁっ!!」

「「「「ぐわぁぁぁっ!?」」」」

 

 

 

 

 妹紅の炎が銃弾を発射するよりも早く彼らを襲い、炎に包まれた彼らは炎を消すことに手一杯となってしまった。

 

「・・・くそっ! 対炎装備を持ってこなかったことが失策か! 者共っ、ここは一旦引くぞ!」

「「「「ははっ!」」」」

 

 

 

 男の号令を受け、使者団は私や永琳を牛車に押し込み、屋敷から飛び立った。

 

 

「待てお前ら! そのまま逃げるつもりか!?」

 

 

 妹紅も当然私達を追いかけてくるものの、流石に空を飛ぶことは出来ないらしく、屋敷の入り口で立ち止まり、私たちのことを睨んでいる。

 

 

 

 

「勘違いするな! 俺の目的はあくまで貴様らの抹殺と姫さんの連行だ!! 態々貴様に有利な場で戦うなど愚の骨頂よ!! 藤原信孝の死体ごと貴様を此処で消し炭にしてやるわぁ! 火遁『紅蓮の劫火』!」

 

 そう言い残し、男は火術で私の屋敷ごと周囲の人間を焼き尽くした。

 突然の炎に屋敷の周囲にいた人間はパニックを起こし、多くの者がその炎に身を焼かれていった。

 

 後から知ったことだけど、最終的にこの惨劇を生き残ったのは、「この程度の炎、我が筋肉の前には無力なり!!」と叫びながら棍棒を振り回し、どういう理屈かその風圧で炎を消している藤原不比等と、彼に守られている天皇や皇族、一部の貴族・庶民のみであった。

 

 

 

 

 

「信孝ァァァァ!!! 輝夜ァ! 貴様もそいつらと共に殺してやる!!」

 

 

 そして、炎の能力を発現した事と蓬莱人となった故この炎に身を焼かれても死なない生き残りの一人である妹紅は、私を含めた月の一団に対し、持てる限りの恨みを込めた叫びを上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 妹紅、ごめんなさい・・・・・・。 私のことを恨んでくれても構わないわ。 

 

 こんなこと言う資格はないけれど、あなたに幸あらんことを・・・。




改訂作業が思った以上に進まない・・・。
其のくせこんな残念な出来に絶望した!
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