ブラック・ブレットー伊熊将監に転生した男ー   作:赤沢錦

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初めまして!将監さんをつい気に入ってしまい書いてしまいました。暖かい目で斜め読みして頂けますと幸いです。


プロローグ~ありとあらゆる全ての始まり~

東京都某所。何処にでもあるようなマンションに、何処にでもいるような一人の少年が住んでいた。特に際立った才能があるわけではない、勉強も運動もそれなりにできて、運動の方がすこし得意な、何処にでもいる少年だ。

 

だが少年は読書、取り分けライトノベルを好んで読んだ。活字と言う媒体の中で躍動する少年少女達に、心奪われたのだ。

 

そんな彼を周りの人間は忌避し、軽蔑したが、少年は気にしなかった。そんな事を気にしている時間が惜しかったのだ。作品の中の技を再現したいと体を鍛えていたことも、それによって周囲の人達が明確ないじめを行うことが出来なかったのも少年がそう考える理由の一端だった。

 

とは言え彼も人間である。人並みに悩み、誰かを気遣い、誰かの為に怒り、誰かの為に涙した。

 

少年は高校生になり、青年へと成長をはじめた。元々頭はそう悪く無いので、それなりの数友人を作り、時に誰かと敵対して、充実した生活を送った。

 

その頃、彼は真剣に自らの夢、なりたいものは何かと考えた。今まで漠然と小説の編集者になりたいと思っていたが、それで食べて行くのは難しいと言わざるを得ないだろう。いつかは社会に出て働かねばならない。とは言え、自らが決めた仕事でなければきっと長続きしないだろう。そこで少年は、自らが愛するライトノベルに携わる仕事に就きたいと考えた。

 

大学を出て、心も体もすっかり大人になった彼は、遂に念願であった電撃文庫の編集者になった。少年の熱意が人を動かした瞬間だった。

 

しかし、ここで神は残酷な審判を下す。

 

徒歩で事務所に向かう途中、何度も横断歩道を渡る事になる。その途中で、黄色い帽子を被った幼稚園児程度の男の子に向かって、猛スピードでトラックが突っ込んできたのだ。

 

「危ない!」

 

青年は男の子を突き飛ばし、そのまま自らも逃げようとした。が、トラックはその凄まじいスピードのまま、青年をボールのように吹っ飛ばした。天と地が急速に入れ代わっては元に戻る。堅い地面が迫るのを感じつつも、青年は男の子の安全を確かめ、優しく微笑んだ。

 

ぐしゃり。人体が発するとは思えない音を立て、青年は死んだ。潰れた蛙のようなその屍が、心優しき未来ある青年の末路だった。だが・・・・・・・・

 

気が付くと、何か会社らしき場所で、青年はパイプ椅子に腰掛けていた。自分は男の子を庇って死んだはずでは・・・・・・と目を白黒させていると、奥の扉から一人の男性が現れた。

 

「いやいや、すいませんね、急にこんなとこに来て、びっくりしてるでしょう?ですがこれもちゃんとした手続きでしてね、我慢して下さい」

 

中肉中背、七三に分けた黒髪。一見、と言うか何処からどう見てもサラリーマンだ。てきぱきとこちらに書類を差し出してくる姿も、契約書にサインをしてもらうサラリーマン以外の何者でもない。

 

「あの・・・・・・・ここは?俺は事故で死んだんじゃないですか?」

 

「はい、そうですよ?ですから今のあなたは魂だけの存在、かなり不安定な状態です。・・・・・・ああそうそう、これを渡し忘れてました。私、天国転生部部長のミカエルと申します」

 

とんでもないことを口にされた。どうやら目の前にいるこの七三のサラリーマンは、信仰の対象にすらなっている大天使の一人らしい。

 

「と言う訳でして、貴方に転生して頂きたいのです。はっきり言いますと貴方の死は因果部のミスでして・・・・・・・まさか貴方が運命に割って入るとは思いませんでしたよ。そのお詫びと言うことで、今の貴方の記憶を引き継いだまま転載させて頂きたます。そうそう、特典はどうします?ある程度の運命はこちらで『設定』出来ますが」

 

「・・・・・・おいアンタ。さっき運命に割って入ったなんて言ったが・・・・・・あの子は死ぬ運命だったのか?」

 

「察しが良いですね。その通りですよ。貴方のおかげで、あの子の運命は変わりましたがね。」

 

がたっ、と思わず立ち上がりそうになる。だがミカエルはやれやれと肩を竦めると

 

「申し訳ありませんが、私達は神(うえ)の命令に従うだけなので」

 

「なら、俺が望む運命は俺の大切な人を守れる力を手に入れることだ。それ以外は、何が起ころうと構いやしない。」

 

怒りに震える手で何とかサインを済ませ、転生部部長ことミカエルに連れられて部屋を出る。これまた会社の廊下にしか見えない通路を歩いた後、階段を降りてエントランスに辿り着く。さしずめ時空の狭間にでも存在しているのだろうか、ガラス製らしき自動ドアの先には大きな何かが渦を巻いていた。

 

ミカエルは自動ドアの隣にある機械にカードキーを通すと音も立てずに扉が開く。

 

「それでは、良き人生を」

 

「あ、ありがとうございます」

 

固く握手を交わす。青年の新しい人生が、今再び始まろうとしていた。「そう言えば、俺の転生先ってどこです・・・・・・うわぁぁぁぁぁ!?」外の渦に吸い込まれて行く青年を見送り、大天使は溜め息を突く。

 

「はぁ、これであの世界が変わってくれると良いんだが・・・・・・」

 

次に目を覚ますと、転生し赤ん坊になった青年は、驚きのあまり卒倒した。転生先の赤ん坊・・・・・・この伊熊将監の存在が、この世界の全てを変えていく。

 

三歳から前の記憶はきれいさっぱり消し去った。転生した彼は自らが伊熊将監に転生していること、つまりこの世界がブラック・ブレットの世界であると言う事に早々に気付き、後に握るであろう剣のために剣道を初めていた。閉鎖的な流派であるはずの天童流が将監を弟子に取ったのは、一重にミカエルの言う『設定』のおかげだろう。あくまで推測に過ぎないが、このままでいれば、自らが民警になる事も、千寿夏世がパートナーになる事も設定されているだろう。そう考えた将監は、どうにか言い繕って天童助喜与の元で竹刀を振っているのだ。その程度で天童流の道場に潜り込めたことには、流石に『設定』の凄まじさに感嘆するばかりだった。

 

「うむ。大分基本になれて来たな、将監よ。」

 

天童助喜与師匠は立派な顎髭を撫でながらにかっと笑う。彼が自分の頭を撫でるやり方は激しかったが、同時にとても心地よかった。

 

「失礼」

 

ふと、太く芯のある声が響いた。足袋を履き、音一つ立てずに滑らかに移動する壮年の男。姿を見間違えるはずがない。天童菊之丞だ。

 

「助喜与殿。実はこの子にも戦闘術の手解きをしてくれんかな?」

 

そういって彼は後ろに手を伸ばすと、隠れていた男の子をそっと前に出した。・・・・・・・それが、変質したブラック・ブレットの世界での、伊熊将監と里見蓮太郎の出会いだった。伊熊将監七歳、里見蓮太郎六歳の時である。ガストレア大戦が勃発する、ちょうど半年前のことだった。




超の付く不定期更新ですが、頑張って書いて行きます!
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