冬木の聖杯戦争は本来正当な英雄しか召喚されない。第三次のとある出来事がきっかけで所謂、反英霊と呼ばれる存在を召喚出来るようになった。
ここで少し話は変わるが冬木の聖杯でアサシンを召喚する場合、余程の触媒がない限り基本的にハサンが召喚されるらしい。彼等は正当な英雄とは言い難く、どちらかといえば反英雄に近い存在である。
...1〜3次の時点で既に反英雄召喚出来ちゃってるけどそれで良いのか御三家。と言うかそもそもアサシン適性持ってる海外の英雄って殆どが反英霊なんですがそれは(正当な英雄で思いつくのはヘラクレスとか李書文ぐらいか?)。しかも全く汚染されてないであろうapo時空のルーマニア聖杯戦争に至っては英雄どころか真性の魔(に近いもの)である切り裂きジャックが召喚されてるしマジでどうなってんだ冬木聖杯。
まさかそんな訳ないとは思うが、聖杯戦争作った始まりの御三家ってとんでもねぇうっかり属性でも持ってて、それでなんか、ついうっかりアサシンに関しては反英霊も召喚出来ちゃう風に調整ミスしちゃったんでねぇの? って勘ぐってしまう今日この頃...
「しっかしまさか、知らなかったとはいえ英霊を倒す算段付ける様な命知らずに出くわすとは思わなかったぜ」
自分を助けてくれた事と初めて会った
何でも先程襲いかかってきたのは英霊と呼ばれる、過去に存在した英雄を魔力で擬似的に蘇らせた者らしい。例え記憶喪失であっても、普通ならばそんな荒唐無稽な話信じないが、先程の規格外な現象や試しに魔術を幾つか見せて貰ったのでとりあえずは納得した。
「(嫌...それ以前に、私は...?)」
何か、知っている気がする。先程屋敷で頭の中を何かが流れてる感覚が再び起こっている。ひょっとして前の自分はこの状況や彼等英霊に関わりを持っていたのではないか──
「オノレ…オノレキャスタァァァァァァァァァ!!」
──後ろから聞こえる叫び声で現実に戻ってしまう。もう少しで掴めそうだった事による落胆と、これ以上は引きずり込まれそうだったから引き戻されてよかったという安堵両方を感じながら、私は振り返った。先程捕まった黒い男(アサシンというらしい)がこれでもかと上半身を捩り暴れている。だが大英雄である青い男(キャスター:クーフーリンと本人は不服そうに言っていた)の魔術によって出現した木々の腕による拘束はビクともしない。だが余りにうるさかったのか、彼はアサシンの近くまで寄ってしゃがみこむ。恐らく目線を合わせる為だろう。アサシンはここぞとばかりに悪態を吐く。
「奪ッテヤル…
ぞっとするほどの殺気。だがそれに一切の怯みもせず、キャスターは静かに口を開く。
「黙りな。今回は
「潔ク…? 潔クダト? ックククククク、私ニハ無縁ノ言葉ダ。貴様ノ様ナ
吐き捨てるような笑いと共に言い放ったその言葉は、妙な説得力があった。敵であるはずのアサシンの言葉は妙に耳に残る。もし仮に自分がキャスターの立ち位置にいたら殺すのを躊躇しそうなぐらいの言葉だった。
「…そうか」
グチャ──そんな音と共に赤くドロドロとした液体が微かに私の所まで飛び散る。目を逸らす暇すらなかった。しかし、妙に慣れている様な感覚だった。力尽きた右腕はだらんと垂れ、輪郭が薄らとなっていく。消滅するのだろう。やはり、吐き気や恐怖よりも何故か、別の事を考えている気がした。自分事の筈なのに、他人事の様だ。
「っと、すまねぇな。見苦しいもんみせ──」
「嫌、大丈夫、だ」
間髪入れず、たどたどしくも私はそう答えた。人見知りとかコミュニケーションが苦手というよりかは、それ以外に言うことがあるはずなのにうまく思いつかなかった故のたどたどしさだ。無理をしているんじゃないかと、向こうはこちらの顔色を伺ったが生憎な事に私はまるで慣れているかの様な無表情だった…と思う。どうして自分はこうも残酷なのだろうか? 一体自分は何だったのだろうか? それすらも顔には出してなかった、と思う。
バシン! と、そんな音が背中の痛みと共に鳴り響いた。少しヒリヒリする。
「英霊に立ち向かった男が、そんな無理に作った様な辛気臭ぇ顔してどうすんだよ! 胸張ってけ」
そう言って彼は笑顔を見せる。彼なりの励ましなのだろう。私は深く考えるのをやめ、彼の様に口角を上げようとする。だがしかし、どうやら私は笑顔が苦手だったらしい。口元がどうも引きつってしまう。
それを見たキャスターが大声で笑い始めたので、ちょっとばかりムッとしたが、事実なので言い返せずそのまま首元まで来てた反論の言葉を呑み込む。なんというか、気が楽になった。背中を叩かれた時に何か悪いものでも出たのだろう。勿論比喩表現なので実際には何も出ていないが。彼は何というか…察するのが上手い。まるで慣れているかの様だった。もう一度、感謝の言葉を言う。
「何、テメェみたいな奴のお守りは慣れてんのさ。自分で勝手に悩む奴と何度会った事か」
自分みたいな野郎…か。自分に対して黒さ以外何も見出せない。果たして記憶喪失を除いてそんな人間が存在するのだろうか、と疑ったがキリがないので次の話へ進める。
「所で、先程言ってた生存者の件は本当なのか?」
「ああ。英霊避けかつスケルトン寄せのルーンを張らせて、今頃戦いの勘を少しでも得ようとしてるだろうよ。俺がここに来たのは、アサシンが妙な動きをしてそれを追ったわけだ」
成る程、だから妙に駆けつけるタイミングが良かったのか。ルーンによる英霊避けをしつつ索敵…魔術の一種とはいえそこまで万能とは。もしも機会があれば一つでも彼から教わろうか、何て事を私は考えていた。
会話の最中何故かしれっと杖に自分が括り付けられているのに目を背けながら。嫌、結局背けられず私は質問した訳だが。
「何で私は縛られている? そして何故投げる体勢に入っている?」
「投げて、上で受け止め、投げるの繰り返しをするだけだ。ちんたら歩くと時間かかるからな」
つまり私は人殺しのアサシンではなく大英雄のキャスターにこれから殺される訳か。普通だったら心の底から笑えるだろう冗談も、こんな状況では土台無理な話だ。まさかアサシン以上の恐怖を感じるとは思わなかった。
「というかさっきのルーンで何かもう少しマシな移動は出来ないのか?」
「そんなテメェに残念なお知らせだ。俺は師匠と違ってルーンが特別得意ってわけじゃねぇ。なぁに、アサシンに啖呵切ったんだ、もう一回根性見せろ」
私は覚悟した。同時に一つ学んだ。大英雄は確かに気持ちが良く豪快な人物なのだろう。だが、歴史に残る者というのは要するにその他に物凄く印象を持たれている人物だという訳で、早い話が色んな意味で突発的なのだ。
「ちょっと待て──」
過去の私よ、制止の声を行った所で生死に関する事はどうしようもないのだ。大きく振りかぶったキャスターは私を括り付けた杖をやり投げの如き構えで振りかぶり、息を吸う。その間数秒。ピタっと止まった彼は、凶暴な笑みを浮かべ叫びながら投げる。
「ゲイ・ボルグ!!」
英霊:クー・フーリンよ、これは槍ではない。杖だ。それも私という、規格外の英雄から見ればか弱い一般人付きの。槍兵ではなく魔術師として召喚されたのだから脳筋なアイディアはやめろ。やめて下さい。ひたすら心の中でそういった念仏らしきものを唱えたが起きた事をどうこうできるはずもない。
私は桁外れの空気抵抗に顔を歪ませながらもう目も開けられず口も閉じるしかなかった。メモ帳は一応厳重にポケットの奥に入れチャックで閉じたが、大丈夫だろうか。なんて心配すらできない状況である。記憶喪失なのでどういうものか全く知らぬ存ぜぬなのだが、きっとこれは世界一死にかける絶叫アトラクションの内の一つだと断言できる。時折失速して何かが掴んだ感覚のすぐ後に、ゲイ・ボルグ!という叫び声と新たな加速が始まる。だからそれは貴方の代名詞ではなく、か弱い一般人付きのただの杖だ。
「到着だ! 歯ぁ食いしばれ!!」
何回目だろうか。そんな声と共に衝撃と爆音が響く。大きさの割に自分の体に痛みが無かったのはキャスターが予め魔術で補強したんだろう。そうだと信じたい。
辺りはしん…としている。無理もない。いきなり空から凄い勢いで人が括り付けられた杖が墜落したのだから。私だってそんな現場出くわしたら内心でびっくりする。そこまで考えて私は視界が真っ暗だという事に気付き、恐る恐る瞼を開いた。
「…」
黒髪で私より少し低いぐらいの身長である少年。キャスターの言うことが正しければ、彼がカルデアのマスターだろう。
「…」
白がかった儚げな髪色で、必要最低限の黒い鎧に包まれた少女。多分彼女がそのマスターと契約しているデミ・サーヴァント。
「…」
彼女は…さっき言ってたことが本当なら、か弱い嬢ちゃんらしいが。どうも視線が他の二人よりキツい。まぁ無理もない気がすると、この時の私は思った。
気まずい空気が漂う。気を少しでも軽くしようと景色に視線を移す。地面には夥しい数のスケルトン。きっとキャスターの課した特訓でここまで倒したのだろう。だとしたら凄いことだ。もしくは先程の衝撃で全て吹き飛んだのかもしれないが。周囲は炎に包まれた街。不謹慎だとは思うが、今はこの景色が自分を落ち着かせる1番の光景だ。真後ろは直接見れないので無理矢理にでも体を捻らせると、私を投げ飛ばした本人が清々しい笑顔で杖の縄を解き、簡潔に言った。
「コイツはさっきアサシンを追ってたら見つけた生存者だ。いざって時の根性と行動力は俺が保証するぜ」
こんな紹介のされ方をしたのだ。何か威厳のあるセリフを言わなければと思い私は口を開くのだが。
「──っう!? すまない、少し席を外させてくれ」
心も体も正直だった。私はすぐさまダッシュで岩陰に向かい、出来る限り声を抑えて上半身を屈ませて出すものを出す羽目になった。先程アサシンの一撃をもらって吐きかけたのも後押しした様だ。いとも容易く酸っぱいものが出た。最悪だ。手段は最速かもしれないが、結果は最悪だ。
──次会ったら槍で心臓を突き刺してやる
カルデアと呼ばれる組織のマスターとの会合。
それすら満足にできず、皮肉にもアサシンが散々叫んでいた呪詛に近い言葉を私は一種の誓いとして立てたのだった。
「嗚呼、カルデアでクー・フーリンに対して妙に辛辣だったのはそういう…」
(by記録を読んでいる立香)
ルーンそこまで万能じゃねぇよ! キャスター(のキャラ)が死んだ! このひとでなし!! という方、本当すいません。こういう表現にせざるを得なかったんです。因みに記憶喪失の彼が会話の際敬語を使っていないのは、キャスターがタメ口で良いと要望したからです。決して、元から彼に対してムカついていた訳ではありません。最初の時点ではまだ敬意を抱いてましたし。