男女比に差のある世界のTS配信者   作:熊猫パンダ

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実は文字数3000を越えたのは、この作品では初めて。
上手くまとまらなかったとも言う。


ギャルゲー配信

「私に関して保護者の許可は要りません、まず縁も切れてます。その要求通りにさえしていただければ、何の問題もありません」

 

『ですが万が一が起きたときに、当社では責任を取れません……!突撃してくる人も一定数いると思われますし……』

 

「というか、私もそこまで参加したいわけでもないですし……、別に私一人に無理する必要もないですよ?」

 

『いえ!ぜひとも参戦してほしいんです!!――わかりました。何かあれば僕が責任を取ります!お願いします、参戦してください!』

 

「……っ、急に大きい声を出さないでください。……じゃあ要望通りお願いします」

 

『本当ですか!ありがとうございます!――すみません、声が大きかったですね。警備は完璧にして見せます。行き帰りだけ気を付けてくださいね』

 

「それについては当てがあるので大丈夫です。こちらこそよろしくお願いします……」

 

電話は疲れる。

その相手が偉そうな肩書きをつけている方だと余計にだ。

……そんな相手がこちらに頭を下げてきていると無下に断るのも申し訳なく、流されてしまった気がする。

企業の後ろ楯ができるかも、とポジティブに考えたいところだ。

 

これから配信もあるのだ。

――無理矢理にでもテンションを上げなくては。

後に配信を予定していた自分に後悔も感じるが、陽気そうなゲームを選んでおいて良かったとも感じる。

まあ、ソリティアでもやって気持ちを落ち着かせるか。

 

 

 

 

「宣言通り、ギャルゲーをやります。『好きドキラブストーリー!2』について詳しくはないですが、名作と聞きました。チャルさんからもらったので間違いありません」

 

この世界のギャルゲー、気になってはいたものの性別的にも年齢的にも躊躇っていた。

しかし、配信で使うという尤もらしい理由ができた。

じゃあやるしかないだろう。

 

私は記憶は薄れても元男、変な選択肢さえ選ばなければハッピーエンドかトゥルーエンドにはいけるはず。

チャルさんが長いけど名作、と太鼓判を押していたしホラゲーの二の舞もない、安心だ。

 

「名乗りがまだでしたね、ノームです。ギャルゲー自体随分久しぶりですが、問題はないと思ってます。できれば一人は落としたいですね」

 

『ベタ甘』『なんでエロゲー?』『ノームの住所チャル知ってんのか』『ほーん、ええやん』『王道を征く』『好ドラスは良いぞ』『配信でやる気ならオススメしなかった!』『良いセンスだー!』『なーんでチャルネキ……』『R-18で草』『BLやれ』『チャルネキおるやんけ!』

 

お、コメント欄にチャルさんがいる。

ネタバレをしないように、とだけ先に注意を促しておく。

 

 

どうやら主人公は冴えない男の子。

高校に転校生がやってくる、という二年の始業式からゲームスタートのようだ。

まず名前入力、RTAをするなら『ほも』にすべきかもしれないが、生憎普通にやる予定だ。

無難にノーム、と。

 

フルボイスでサクサク進んでいく。

ちなみに使われている女性声優は2人、攻略できる相手は8人。

やっぱり大変な世界なんだろうなあ。

 

まずは通学路で――何かとぶつかる、見ると車。

……車?

 

『おーっほっほっほ!そこの下賎な方、おどきなさい!』

 

「……この世界ではリムジンで通学どころか、男ばかりの高校に行く女性はいませんよ?私も家庭教師でしたし」

 

『【悲報】ワイ、絶望する』『マ?マ?』『おいコルァ免許……女やし許すわ』『やっぱ中卒が正解やね』『jkはどこ……ここ……?』『ノームは希望だわ』『せやで』『ウソダ!ドンドコドーン!』『マドンナって架空だったのか』『俺もノームに教えたい』

 

あら、結構な数の人を傷つけたようだ。

母校にいなかっただけで学校に通っている女の子もいる、そう信じている人がこんなに多かったなんて……。

 

そう考えると制作者の意図を読めるか不安になってきた。

イメージと現実がかけ離れすぎでは?

 

ツンデレっぽい先輩、甘えたがりの後輩、硬派な教師など女がどんどん出てくる。

女の私ですらこの世界で16年、初めて話した女性がチャルさんなのだ。

こんなポンポン女性がいたらもっと生きやすかった。

 

大体の出てくる女性が色白黒髪なのも気になる。

女性と言えばこう、というイメージの反映が強すぎるし、バリエーションの問題とか大丈夫なんだろうか。

 

 

とりあえず正解の選択肢が分かりやすいツンデレの先輩、司さんを落とすことにしようか。

落としやすさで選ぶ辺り、女としても男としても枯れてるな……。

 

この先輩、主人公と委員会が同じだったという設定だ。

放課後に逢瀬を重ねて親密度を上げていく。

 

『べ、別にあんたのことなんて何とも思ってないわっ。……でもいないと困るわ、嫌いじゃないし』

 

「デレまで早すぎませんか!これ本当にツンデレですか」

 

ツンデレが10分程度でデレていいのか。

0から100まである親密度が既に30まで上昇している。

この早さだと1時間くらいで落とせる気がするんだが。

 

「ちょっと聞きたいんですが、これ本当に長編なんですか?結構サクサク進んでいるんですが……。チャルさんに騙されたりしてます?」

 

『チャルネキェ……』『落としてから長い』『1人狙いやからや』『ベタ甘夫婦ルートまでいけるで』『純愛派です』『結婚式が無駄に長い』『ハーレム目指すと急に長くなるで』『ママを騙すな』『女同士の絡みがええんよ』

 

ハーレムにはあまり興味はない、時間もないし。

女の子を落として終わりというわけでもないらしい。

製作陣の女の子とこんなことがしたい!というのが詰まっているように感じる。

というか結婚式まであるのか。

 

 

主人公は先輩とプールや祭りへ向かっている。

……女の子がそんな場所に行ったら、もっと場は混乱するぞ。

なのに声をかけるほどの勇気がないから、囲まれて奇異な目を向けられるだけ。

ソースは私、あの頃は未熟だった。

 

うーむ、女性が外に出てこないのは恥ずかしがり屋だから、と思われているのか……。

 

 

雨の日の放課後、場所は一転して図書室。

いつもは元気な先輩だが、どこかしおらしい。

――もしや告白イベント!?

親密度も70を超えていたし、いつ来るのか楽しみにしていたのだ。

女性の告白はどんな風にイメージされているのか、気になる。

 

急にテキストが少なくなり、たくさんカットインが入る。

まずは服がはだける。

――その後に二人が抱き、合って……?

 

「んにゃっ、濡れ場じゃないですか!!こんなの配信に載せれません……!BANされる!あ、ソリティアっ。ソリティアで隠さなきゃっ!」

 

配信前にやってたソリティアが残ってて良かった!

 

『えっっっろ』『慣れてねえな(確信)』『かわE』『アタシを許してくれ』『罪悪感と背徳感よ』『付き合う前に突き合ってる』『恨むぞチャルゥ(建前)!ナイスゥ!(本音)』『は^~』『ソリティア手詰まりで草』『ノーム敗北シリーズ』『……ハアハア、敗北者?』

 

――はあ。

まさか付き合う前にそんなシーン入るなんて思わなかった。

コメントでチャルさんが謝ってるのが見える、……許さないからなあ。

喘ぎ声やBGMがおさまったのを見計らってソリティアをどける。

よし、終わってる。

 

「これが続いたりしませんよね……?まず本当に不朽の名作と呼ばれているのかも心配になってきました」

 

『続くゾ』『純愛ならこれ』『先輩ルートなら後3回な』『まじで名作よ』『他はもっとヤバい』『エロないのとかないやろ』『ノーム、愛してるぞ』『うーん、アウト!w』

 

「嘘っ!じゃあこれ配信できないじゃないですか!……うぐぐ、撤退します!今日はここでおしまいっ!」

 

調べなかった自分が憎らしい!

だってギャルゲーにエロシーンがあるなんて思わないじゃないか、それも配信友達から貰ったものに。

1度くらいなら知らなかったでいけるが、何度もやる勇気はない。

 

不満の声が多いので、後日エロシーンを消したものを動画で投稿することを約束して配信を切る。

結局やらないといけないのか……。

 

うげー、ほんとに恨むぞチャルさん!




フェス、こしあん

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