「スケートボードってロマンがあると思いませんか?」
『僕はそう思いませんけど』『おはの〜む!』『とんでもねぇ、待ってたんだ』『おはのーむってなんだ……?』『興味ないね。』『やめなよ』『は?』『今日からプロ目指します』『オタクには関係ないぞ』『音がうるさくて嫌い』『犯人追うのによく使ってるぞ、ちな小一』『せやかて工藤!?』
思ったよりコメントの反応が良くないことに驚く。
スケートボードといえば、少年が欲しい乗り物ランキング一位常連ではないのか。
友達がスイスイと乗りこなしてるのを横目に、乗れずに諦めてキックボードに逃げるのが大多数の通る道だと思っていたのに……。
「それに、最近はスケボー通勤が流行ってるって記事を見た気がするんですけど…っ…!」
この『朝レースをキめてから出社してます!』ってマシュマロも全部嘘だったということ?
『嘘だぞ』『虚 構 新 聞』『農民を信じるな』『俺らを信じろ』『騙されてて草』『ワイ、高みからホッピング』『流行らせコラ!』『時代はセグウェイやぞ』『違う世界線では』『判断が遅い』『実はスケボーってなくて…』『思ったより凹んでて草』『強く生きて』『おい泣くな男だろ?』『そうわよ』
「──っでもノー民もきっと、内心では熱いストリートバトルを繰り広げたいと思っているはずなんですよ……」
皆まで言わなくてもわかる。
スマートに街を駆け抜ける、時に格好良い技を決める、空へ翔ぶ。
「──そう、この『skate+』ですっ!」
『(思って)ないです』『なるほどわからん』『ワイトもそう…思いません…』『人が飛ぶわけないだろ!』『紛う事なきバカゲー』『ヌケボーやめろ』『おっそうだな』『推しが楽しそうで何より』『実質スマブラ』『まな板同士惹かれ合うのか』『まだ面白そう』『これがe-sportsちゃんですか』
配信前に少し触っただけでも分かるほどに、このゲームは自由度が高い。
高低差のある広い街中を滑っていくだけでも楽しいし、難度の高い技を練習して高得点を狙うのも面白い。
物語からバトルに風景、ネタ要素までぎっしり詰まっていて夢中になること間違いなし。
ストリートバトルにも様々な種類があって運営の遊び心も伺える。
「スケートボードを使って派手に落下するほど高得点、みたいなモードもあるんですよ〜」
他にもこのゲームの遊び方として、壁にスケートボードを叩きつけることで反発力を生み出し、その勢いのまま超加速させるバグもあるんだとか。
運営も公認している……らしい。
『スケボーしろよ』『ドラゴンボールの世界かな?』『公認どころか公式が動画出してるぞ』『もはやデバッガーじゃん』『ワイもよくやる』『張り合うな』『安全対策ヨシ!』『MODなしでこれかよ』『警察のいないGTA』『楽しそうで草』『超次元スケートボード』『テニヌもしろ』
「今回は普通のストリートバトルなので技を競い合うだけですけど……、ほら、この華麗な連続ヒールフリップ!わくわくしませんか!?」
空中でかかとを使ってボードを一回転させるお洒落な技……らしい。
ボタン操作もそこまで難しくないので、お手軽に格好いい動画が作れるのも良い!
NPCも対抗して技を決めてくるが、連続技の加点を得たことで私の勝利。
最初はあまり興味のなさそうだったノー民も、このスタイリッシュなリプレーに魅了されているに違いない。
『いけるやん!』『バグを解放しろ』『トリプルアクセルッ!』『これ良くないですか!?』『いいですねッ!』『相手倒した方が確実に勝てるよ』『殴った方が早い』『ちょっと物理演算怪しくて笑う』『ボードがたがたしてて草』『生き物かな?』『もっとゲッダンしろ』『まだスケボー』『ママァ更に凄いの見せて』『はやく飛んで、どうぞ』
「……大技かぁ。最近始めたばかりなので失敗しても許してくださいね……」
基本的に、大技をやるためには急な傾斜を利用したり、高所からの勢いをつける必要がある。
そういう地形のエリアまで行ってもいいが、──折角なので私もバグを使った技に挑戦してみよう。
なだらかな登り坂に入る直前で、スケートボードに乗るコマンドを入力することで加速して前方に吹っ飛べる……らしい。
上級者さんの動画の通りに見様見真似で試してみるが……、物理演算バグ特有の体が痙攣したり、地面に埋まるだけで中々成功しない。
既に変な挙動にはできているので、あと少しっぽいのに……。
「こう、絵的にキツい……。というか動きがちょっと──気持ち悪いですね……」
操作しているキャラクターが斜面を登ったままスケートボードに乗ろうとして──全身を震わせながら転ける。
別に画面を隠すほどでもないが、この状態で穏やかな雑談をしたくない気もする。
もう1時間近く経過してるから、長く時間も取れないし……。
『もっと罵倒しろ』『もう一声』『助かる』『雑談聞きたい』『その気持ちを弾き語れ』『感謝します』『ノームの絵よりはマシ』『はーつっかえ!』『アリよりのアリ』『オレも蔑め』『何とかインチキできんのか』『簡単にクリアされたら悔しいから仕方ないね』『クリア(バグ)』
「後10分できなかったら今日の枠は終わ──っ、飛んだぁーっ!?速いっ高い高いぃ!!」
コメント欄に目を向けた瞬間だったので反応が遅れる。
先程の地味な絵面から一転したことで焦りと動揺が訪れる。
『飛んだぁぁぁ!!』『浮遊感与えちゃったかな』『重力の特異点さん!?』『ゲッダン☆』『桂ァ!今何キロ!?』『13kmや』『超電磁砲』『テーマパークに来たみたいだ』『加速するストレートや!』『マグヌスニキ!?生きていたのか!?』『スケボーってなんだ…?』
「そうだ!技です!ここでノーフットを出しながら回転するとドリルみたいな挙動をするんですよ……!」
空中で両足を離す大技、それも連続技の判定を受けるので凄く得点が高いのだ。
上級者だとここに縦回転も加えるんだとか──確かに奥が深い。
この技最大の難点は着地で、地面との角度を間違えると地面に叩きつけられる……とのこと。
地面にぶつかる瞬間にスケートボードを投げることで受け身をとるのがキモなのだ。
「──えっ、て刺さったーっ!?……ち、地上に戻ってこれないんですけど!ゲーム止まってないのになんで!?」
『ボードは添えるだけ』『今北何これ』『うんうんそれもまたスケボーだね』『通勤中に試すかぁ』『天を創るドリルだ!』『L2とR2連打しすぎ』『ガチャガチャ聞こえて草』『これが全身つのドリルですか』『直角で地面に入ると稀にそうなる』『無限に沈んでいって草』『無限ドリル編』『コ無ゾ』『お客様の中にデバッガーはいませんか!?』『ならこんなゲーム売られてないんだよなぁ』
地面を貫通して画面外まで回転しながら落ちてってる!
普段なら途中で謎の反発力によって地上に引き戻されるのに、回転がそれを防いでいる……っぽい?
──何にせよ元に戻る気配はない。
「……きょ、今日はこのくらいにして、終わっておきますが──っほら、自由で良いゲームだと思いませんか……?」
……そう、バグを使うなら自己責任ってことですよね。
ラストちょっとミスったけど外で遊びたい欲も発散出来たし。
面白いゲームの紹介をして、その自由度の高さまで見せられて完璧な配信ができたと思います。
だからその『??』でコメント欄を埋めるのをやめてもらえませんか……っ。