男女比に差のある世界のTS配信者   作:熊猫パンダ

8 / 32
まずは連日の日刊1位、ありがとうございます。

感想にて、主人公の新嶋碧の絵を頂きました!
書いてくださった「コレステロールお化け」さんありがとうございます。

了承が取れたら貼らせて頂こうと思います。


1万人記念、台詞配信

初配信から2週間しか経ってないにも関わらず、予想以上の人がチャンネル登録をして、配信を見に来てくれている。

チャンネル登録者数はおよそ8700人、もう1万が見えてきている状況だ。

更に人数の増加は加速する一方なのが恐ろしい。

 

私の計画だと、この時期に500人超えるか超えないか、くらいだと思っていた。

現状に胃は痛くなるが、そのお陰で予定より3週間も早く投げ銭機能が開設された。

 

投げ銭機能とは読んで字の如く、配信中にお金を配信者に渡せるシステムのことで、これから私の財布の紐を握ることになるものだ。

何割かは配信サイトに吸われるが、決して少なくない額が残る。

 

1万人記念に、投げ銭機能の解禁でお金に多少の目処が立った。

……今こそバイノーラルマイクを買うタイミングだろう。

 

前から音質が良くないのは自分でも気になっていた。

声を武器にしていて配信も雑談メインなら、マイクを一番に改善すべきなのは間違いない。

 

 

『ペースを見るに、明日チャンネル登録者が1万人を突破します!その記念配信としてバイノーラルマイクを使って、台詞配信をしようと思っていますっ。台詞のリクエストはここでやっています→https.//serifu.form.jp』

 

『下ネタまで言ってくれるってマ?』『ノームに呼ばれるために本名晒すわ』『音質上がるの嬉しい』『1万まではっや』『台詞の仕分けが大変そう』

 

『たぶん下ネタは拾いませんっ!!スルーしますっ』

 

 

宣伝も終えたのでバイノーラルマイクを買いに電気屋さんへと向かう準備をする。

いつも、必要なものは大抵○mazonで購入して自宅に届くため、外出はほとんどしない。

だが、高いマイクを買うなら自分で音の確認をしたい。

 

 

コンタクトで紺色の光彩を黒くして、注目されないように。

シークレットシューズで身長を底上げして、男性でもおかしくない程度に見せる。

厚着にマスク、眼鏡、帽子を着用して少しでも女性らしさを隠し、外では絶対に声を出さないし、目も合わさない。

変装して、かつここまでしないと不安で仕方ないのだ。

 

女性というだけでも目立つのに、更に私は親元から飛び出して独り暮らしをしている。

見つかったら連れ戻されるかもしれない。

――父は未だに私を探しているだろうか。

外に出ると近くまで来ている気がして、怯えて逃げている私が嫌になる。

 

良さそうなマイクを選んで即購入、帰る。

20分かけて外出の準備をして、外出時間は約20分。

この世界で外出することは本当に時間の無駄だ。

 

 

 

「あー、あー。こんにちはー、ノームです。もうバイノーラルマイクを使ってるんですが、わかりますか?音質も良くなったと思うんですけど……」

 

『左から聞こえる!』『更にクリアボイスやん』『ヌけるぜ。』『マイクに息吹きかけてほしい』『耳かきして♡』『ほーん、ええやん』

 

マイクの音質について、コメントでは下ネタも見受けられるが、概ね好評でよかった。

外に出た甲斐があったな。

 

「たくさん台詞が来て、目は通したんですが、全部は返せないのでご了承くださいっ。後、下品な台詞は読みません。送った方、残念でしたー。」

 

『投げ銭ついてるやん!【3000円】』『ノームちゃんが台詞選んだんかな』『目を通してくれたなら成功』『ま?投げれるやん!【5000円】』『彼氏面オタクです【30000円】』『彼氏面するな【50000円】』

 

大体のコメントの後ろに数字がついている。

 

「――ごまっ!?皆さん!投げ銭の設定しといて何ですけど、無理はしないでくださいね……!?こう……気持ちだけでいいのでっ。――頑張って台詞読みで返していこうと思います!」

 

お金に対して変な発言をするのも怖いので、その分配信で返していこうと思う。

視界の端に映る数字が怖すぎる。

 

『気になるならコメントの設定で、投げ銭とコメント分けれるよ』

 

私のビビり具合を見かねた人の優しいアドバイス。

速攻で変更させていただきます。

 

 

 

「次の台詞リクエストは君島浩太朗さんから頂きました。……本名ですかね……?『浩太朗さん、毎日仕事お疲れ様ですっ。夜勤も頑張って下さいねっ!』……現代の闇ですね。体調に気を付けてください。」

 

『浩太朗、名前覚えたからなぁ……』『本名は草』『社畜ニキ死なないで』『ノームちゃんに闇を見せるな』『ワイも仕事しないと』

 

 

「続きましては……、一揆の民さんからカウントダウンのリクエストです……?10からお願いします、最後に0を繰り返してほしい、とのことです」

 

危なそうな台詞は前段階で没にしている。

これも台詞と言えるのかは分からないが、問題ないしリクエストに答える。

 

「0……0……ぜろ。で良いんですかね?せっかくのリクエストに元ネタが分からなくてごめんなさい。勉強しますっ」

 

『やめとけー!』『これが無知シチュですか』『満ち足りた』『エッッッ』『ノー民失格だろ』『話しちゃいーけなーいー』

 

あ、コメントの反応を見るに拾ってはいけなかったようだ。

地雷を踏みたくないので次のリクエストに逃げる。

 

 

「お次はポニーさんより。『お兄ちゃん、おかえりなさいっ』……このリクエスト、他の人からも多数頂きました。これくらいなら恥ずかしがらずに言えるようになりましたよっ!」

 

『ノームの成長』『成長日記書きたい』『もう噛んで逃げるノームはいないんやな』『恥ずかしがれ』『喜んでるのすこ』

 

 

 

ほぼ2時間。

休みなしで台詞リクエストを読み続けた。

コメントの盛り上がりを見ると、危ないのもいくつかあったみたいだが、読んじゃいけない物はなかったようだ。

まだ半分程度しか読めていないが、残りは他の雑談配信中にでも消化していこうと思う。

 

「……こほんっ。口が疲れたので、そろそろお開きにさせていただきます!本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございましたっ。ノームでしたーっ」

 

 

2時間で投げ銭総額43万、――気が遠くなりそうだ。

もらった以上のものを、配信という形で返せるだろうか。

 

……厳しくないか?




知り合いに書いてるのがバレたのが辛い。
ノームより先に身バレ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。