自分のことを不幸だと思ったことはあまりない。
より正確には、その自覚が薄いと言うべきだろうか。私の持つ価値観のまま私の境遇を客観視すると、私は不幸な部類に入る人間なんだと確かに思う。けれど私は、それでも自分がそうであるとは今ひとつ実感できずにいる。
だってそうだろう。私には記憶が、幸福の物差しとなるべき基準が存在しないのだ。不幸幸福など言ってしまえば個々人の価値観、相対的なものであり、幸福であった記憶を持たないのなら、不幸であるとも認識できない。
そもそも、私は比較的恵まれていた方だ。それがたとえ不幸中の幸いと呼ばれるものであったとしても、私は私が国際警察に所属した経緯を不幸と表現するつもりも、そうしたいとも思わない。
クチナシさんから提示された選択肢の中には、私が今後一切ウルトラビーストに関与することのない、いわゆる穏やかな人生を歩むためのものがあったはずだ。しかし私はその道を拒んだ。私と同じ境遇の人に少しでも貢献するため、無理を言ってまでこの場所に留まった。そのことに対する後悔は無く、無理を通してくれたクチナシさん、ハンサムさんには感謝の念しか覚えていない。
「ですが、それでも思うところがないわけではないんです。手の届く位置に手掛かりがあるなら、伸ばしてしまうのが人というもの」
「なるほど、それで私を。でも、それは見当違いというものよ。さっきのアレは私の勘違いで、貴女を貴女とよく似た人に見間違えただけだもの」
「それでも、です……!」
「………というか、それって嘘ですよね。前にリラさんのことを知ってるって言ってたじゃないですか」
「それは記憶違いよヨウ君。流石のチャンピオンも連日の捕獲で疲れが見えているみたいね。貴方は明日以降に備えて早めに休むように」
「リラさんの情報をウルトラボール10個分で購入します」
「お願いやめて。揺らぎそうになるからやめて。ちょっと後悔しそうになる取引はやめて。………ほらそこ、懐からウルトラボールを取り出そうとしない。それは必需品なんでしょう? いくら順調に捕獲が進んでるからってこんなところで無駄に消費するのはやめなさい。そっちも」
万が一にと忍ばせていたボールへと無意識のうちに伸ばしていた手を強めの口調で制される。
だが、しかし。思いがけない彼からの援護だったが、今のやりとりで改めて確信した。彼女はまず間違いなく私のことを知っていて、私の記憶の手掛かりとなる何かを持っている。元より知らないはずなのに聞き覚えのある肩書きで私のことを指し示した時点で疑ってなどいなかったが、これで一層やる気が増した。
彼女はここに来てまだ口を噤むつもりのようだけど、私の意思をその全霊と共に伝えれば考えを改めてくれるかもしれない。いや、一度の勝負で何かを得られるなどと高望みはしない。ようやく見つけた手掛かりだ。これから何十何百回と挑むうちに、いずれ彼女が気まぐれにそのことを話す可能性があるならそれで十分である。
「では、僭越ながら僕が審判を」
「いや、貴方は本当にいい加減休みなさい。リーリエちゃんに怒られるわよ?」
「………ハンサムさん、お願いしても?」
「う、うむ。わかった、ならば私が引き受けよう。それで、ルールは協会規定のものでいいのか?」
「そうね。変にルールを捻る必要もないでしょう。あとはまあ、あんまりダレるのもあれだし、使用ポケモンは3匹くらいでいいかしら」
「ええ、それで構いません。よろしくお願いします」
言い切ると同時、バトルフィールドとなった草むらに向かってボールを放り投げる。
中から現れたのは、私が先鋒として好んで使用するポケモン、フーディン。ヒトよりも遥か高みに到達するその知能からあらゆる戦況に対して臨機応変な対応を可能とし、何よりその強力なサイコパワーから相手に行動すら許さない。そんな頼れる相棒だ。
「…………さて、やりましょうか」
やがて観念したように深々とため息を吐いた彼女が、腰に下げたホルダーから一つのモンスターボールを取り出す。掲げたのはスーパーボール。店売りの少し高めモンスターボールで、そう珍しくもない一般的なもの。
そして現れたポケモンもまたなんの変哲もない普遍的なポケモン、ヤトウモリ。ヴェラ火山付近に多数生息しているのだったか。ウツロイドを捕獲する際に何匹も公園から退けたからよく覚えている。
だけど。
(
彼女のことを侮っていたつもりはない。あの非常識なチャンピオンが戦力として期待していたほどの人物だ。少なく見積もっても彼に惨敗した私よりも上、クチナシさんと同格乃至はそれ以上の実力を持つものだと思っていた。
しかし、実際に現れたポケモンのレベルは見たところ5割がせいぜいと言ったところ。無論、オープンレベルがそのままトレーナーの実力に繋がるわけではないのだが、非常に大きなファクターとなるのも事実。特に私が直前に勝負した実力者、ヨウさんのポケモンが桁外れの地力を秘めていたのもあるだろう。なまじ異様な弱さだったりと実力者という評価に反しない程度の絶妙な強さを感じただけに、どこか拍子抜けしたのは否定しない。
その一瞬の気の緩みが命取りだったのか。こうして振り返っている時点で全ては後の祭り、既にどうしようもないわけだが、その行為に意味がないわけではない。
物事において、復習というのは非常に重要な要素だ。ヒトは一日間を置くとその日覚えたことの70%以上を忘却してしまうと聞く。覚えたことを記憶として定着させるには、何事もおさらいすることが大切なのだ。
そして私の場合、加えて身体や思考、反応の癖に注意する必要がある。私はかつての事故で記憶を失ってはいるものの、全てがまっしろになったわけではない。身につけていた着衣やモンスターボールといった物品のみならず、かつて私が築き上げた経験も忘却しているだけで私の中に眠っている。
さあ、思い出せ。早く、早く。今、この私が無意識のうちに何をしたのか、何を成したのかその全てを脳に刻み付けろ。さもないと、私は──
「まずはお見事、とでも言っておきましょう。流石の私も、この展開は予想外だったわ」
「っ──」
毒に侵された
完全に惚けていた。よほど相手の虚を突くのが上手いのか、今となってもなお私はいつ彼女が行動していたのか思い出すことができない。そして、そんな彼女の『ふいうち』に私が対応できたのは、偏に私の身体がそういうことの対処に慣れていたからこそ。
(でも、だからこそ、彼女は私を知っている……?)
当てずっぽうだが、可能性として悪くない。サインを強請られたということは、少なくとも彼女は私にそれだけの価値を見出したということ。ただ人違いだの、国際警察のエリートだからだのといった理由よりかはよほど信憑性がある。
無論、考えても答えは出るわけがない。何故なら全ての答えを知る彼女は見るからに、私の内心の疑問など何処吹く風と言った風態の人物なのだから。
(フロンティアブレーン…………バトルファクトリー…………バトルフロンティア…………)
喉元で引っかかるような感覚がどうにももどかしい。とはいえ止まるわけにもいかない。元より答えは我が内に。本来ならば、教えを請う時点で間違っているのだから。
(そう、全てはこの勝負にかかっている。私を知っている彼女との戦いが、私に何らかの影響を及ぼすはず)
──咄嗟に反応することができた。その事実は、確かに私の心の導火線に火を付けた。それを絶やさぬように努力するのが私の役目、否、願望だ。我儘に付き合わせてしまった彼女のためにも、私はゼンリョクで事を成そう。それこそが、今の私にできる精一杯の贖罪だ。
「フーディン!」
悲鳴に近い咆哮と共に、キーストーンへと力を込める。穴だらけの私の身体に、唯一残されていた取り柄。そして、空っぽの矜持。
朧げに浮かぶ、天に聳え立つ鉄の塔。私がかつて失って、もう取り戻せないもの。記憶と共に無くしてしまった、私の一番大切なもの。いつか私のポケモンが見せた泣きそうな表情に報いるためにも、私はここで、私の全てを出し切って見せる!
(──いざ、尋常に!)
☆☆☆
超絶今更な話だが、私はいわゆる転生者というアレである。
どうしてこうなったのかは知らない。浄土宗と浄土真宗の違いすら碌に知らない似非仏教徒ではあれど、輪廻転生の概念が死生観の根幹として染み付いた日本人であったのが理由だろうか。とにかく私は死後に別の存在として生まれ変わり、こうして世界を隔ててまで無様を晒している。
「フーディン、『サイコキネシス』!」
「ギュウカク、『ヘドロウェーブ』!」
強力すぎて視認できる思念波を、毒の質量攻撃によって迎撃する。
わざやタイプの相性は悪くても、わざの威力そのものに変動はない。当たらなければどうということはない、という言葉もあるが、わざの余波によって体力を削られている現状では、その言葉も頼りないものだ。
(………三色パンチじゃないのね。まあ、フーディンはメガ進化したら確か筋力を失うみたいだし、物理わざは考慮する必要もないでしょう)
つらつらと今後の試合運びを見据えて思考する。
前世、と言っていいのかもわからないが、かつてのことはよく覚えている。否、刻み込まれている、というべきなのだろうか。表現そのものに拘りはないが、その事実は我ながら非常に興味深く感じている。だってそうだろう。記憶していないことを覚えている、なんて摩訶不思議な不条理が、確かな現実としてこの身に起こり得たのだから。
(しかも、ただ生まれ変わったわけじゃなくて、異世界、それもゲームの世界にだなんて)
そういう表現は良くないと理解してはいるが、もはや説明が不要なほど分かり易いのは否定しない。いくら好きだったゲームといえど、特に望んでいたわけでも何でもないのに。
(いけないいけない。次を考えないと)
戦況は明確にこちらの不利。相性的な問題もそうだが、何よりギュウカクの取り柄たる火力と敏捷ともに敗北していることが大きすぎる。相手が遠距離わざしか使わない……使えないのを前提に上手いこと誤魔化してはいるものの、このままではジリ貧だ。
(しかし、まさか『なりきり』で『ふしょく』をコピーするとかね。そんなの思いついてもやらないわよ。そりゃあ常識的に考えて、あくまで成り切っただけなら
ただでさえメガシンカしたら特性が『シンクロ』から『トレース』になるのに、範囲外だとしてもそんなわざにリソースを割く余裕があるのは凄い。とはいえ私も人の事は言えないし、そもそもフーディンなんてサイキネさえあれば普通に戦えるから、メイン一本で他を補助にしてもあくタイプ以外には大して困らないのだが。
(でもまあ、強いトレーナーっていうのはそういうものなのかしら?)
私は特定の状況を前提としたわざを好まない。アクジキングに覚えさせた『ぶんまわす』や『でんじふゆう』のように、それが如何にゲームの時には考えられない選択だったとしても、私なりの経験に基づいて狭い枠を割いている。
範囲内のわざ、適用わざ、常用のわざ、必殺わざに得意わざ、あるいは単にわざとだけ、各々が好き勝手に呼び表すそれは、間違いなくゲームのそれより奥深く、難しい。当然、それを補うための小手先の技術や、系統ごとにわざを分類するちょっとした小細工、私がギュウカクにやってるような切り替えなど、抜け道らしきものはいくつかある。
だが、しかし。その手の技法はあくまで可能性を広げるだけであって、実際に対応できるのかはそのトレーナーの腕に重く深く残酷に『のしかかる』のだ。
(…………仕掛けてみましょうか)
まずはお試し。小手調べ、というより彼女の意地の悪さから測るとしよう。初見のヨウ君はそれはもう面白いくらい踊ってくれたのだけど、さて。
「次、なるべく接近して『
『ニュー!』
「フーディン、もう一度『サイコキネシス』! ………、…………?
──っ、『みがわり』!」
「遅い。ギュウカク、『
対処が僅かに遅れ、フーディンが戸惑って行動するまでのほんの一瞬。範囲外なれどフーディン相手には致命打となりうる一撃が無防備な身体を襲う──その直前。
ちょっと尋常じゃない速度で、明らかに
(…………間に合った? そんな馬鹿な──)
「なら次。そのまま『
「無視して、『じゅうりょく』!」
(──っ、まずい)
彼女の迷い無き指示に合わせるように意識を切り替えて、次の段階に備えてタイミングを見計らう。
何に対してかはともかく、間違いなく何かを狙われている。ダメージ覚悟で動きを止めたのは、次のわざを万全の状態で放つため。そして、私の小細工によって予定通りとはならなかったものの、ダメージを前提として、つまりは体勢を崩されても問題なく放てる使い勝手のいいわざとなると、おそらく『でんげきは』あたりが──
「──フーディン、『めざめるパワー』!」
「ああ、そっち。──仕方がないわね、『なげつける』!」
座禅を組んだ状態のフーディンを中心に、全方位にへと放たれるエネルギー弾。地に沿うように奔るそれは、重力によって捉われたギュウカクでは避けることさえ叶わない。
『でんげきは』ならタイプ相性やわざの威力、ベノムトラップの影響でギリ行けなくもなかったが、放たれたわざを見た感じ到底私のヤトウモリでは耐えきれないと判断し、最終手段の
その道具は、単に『いんせき』と呼ばれており──ホウエン地方でマグマ団が使用したそれとほぼ同一の、ありとあらゆるエネルギーを無尽蔵に取り込み活性化させるという、間違ってもポケモンのわざに接触させるべきではない、即席にして強力無比な最終兵器である。
「なっ──!?」
大地に轍を遺すほどの衝撃波を一切の抵抗なく突き抜け、浴びたエネルギーによって更なる破壊力を秘めたいんせきが、フーディンへ衝突と同時に爆砕。しかしそれも一瞬、その際に生じたエネルギーさえも飲み込み、ズシャ、とおよそ投擲したとは思えない静かな音、まるで手のひらからそのまま零れ落ちたかの如く不自然にゆらりと大地に突き刺さる。
そんな、ちょっと卑怯……いや、普通に卑劣かつ無慈悲にして摩訶不思議な不条理の犠牲者となったフーディンは、最初に打ち込んだ毒やメガシンカ時に失われた筋力、要するに耐久性の無さが決め手となり、威厳溢れるその姿を地に晒す。
ヤトウモリのなんとも言えないチンピラ感も相俟って、傍目から見たら聖人に石を投げつけたようなアレすぎる光景だが、勝ちは勝ち。変にこだわって敗北するよりかはだいぶマシだ。
(そもそも、それを見越していんせきなんか持たせたわけだし……。勿論、使わないに越した事はなかったけど)
だが、これではっきりした。彼女のトレーナーとしての傾向はヨウ君と真逆、私に近い、“ポケモンではなくトレーナーを見るタイプ”。故に搦め手に強く、理不尽に弱い。多分ヨウ君と戦ったらボロ負けするんじゃないだろうか。
(ところどころがちぐはぐなのは記憶の損失の所為か、かつては経験していないわざだからかしらね。状態異常に対してあれだけ対処が早いのも、その怖さが身に染みているから。………流石ね)
やりづらい反面、ヨウ君対策で身に付けたカードを消費すればどうにかなる確信がある。当然、そんなことを続ければ戦う度に勝率が激減していくけど、どうせこの先関わる理由もない、この場限りのバトルだ。出し惜しみして負ける方が最悪極まる。
「むぅ、すまないが、ボス。審判としてフーディンを戦闘不能と判断させてもらう。もちろん、何か異論があるなら公平に聞くが……」
「…はい。ありがとうございます、フーディン。
──お願いします、カビゴン!」
その声と共に、彼女の姿が見えなくなる。消えたわけではない。彼女が新たに呼び出したポケモン、前方に現れた障害物の勇姿によって、彼女の身体が完全に隠れてしまったのだ。
黒と白を基調とした、細目と頭にちょこんと乗っている尖った耳が個人的なチャームポイントの愛嬌ある巨体のポケモン、カビゴン。初代から存在する代表的なポケモンで、ポケモンをやったことない人でも知ってるポケモンとして10位以内には名前が挙がるんじゃないだろうか。いや別に何の根拠もないけど。
(『どくどく』対策と、今の一撃を見ての耐久調整。流石に分が悪いかしら)
『あついしぼう』でも『めんえき』であっても、その生態から『ねむる』を範囲外でも万全に使えるカビゴン相手にヤトウモリでは厳しすぎる。
『じゅうりょく』の影響で動きが鈍っているのもある。積まれるにせよ攻撃されるにせよ、このままでは無駄にギュウカクを苦しめるだけだ。写されたどくもあるし、それならいっそ──
「ええと、審判。私もいいかしら?」
「──む? 構わないが、いいのか? わざ以外による途中交代は……」
「戦闘不能と同義、でしょう? まあ、公式戦なら無理をするけど、大して問題ないでしょうし、別に構わないわ」
「──聞き捨てなりませんね。それではまるで、『無理をしないでも勝てる』と言ってるようではありませんか」
「だから、そう言ってるのよ。貴女ごときにこの子が骨を折る価値はないわ。少なくとも、私にとってはね」
状況を利用しての露骨な『ちょうはつ』。これで彼女の気が逸ってゲームのように攻撃わざしか出さなくなれば万々歳なのだが、正直言って効いてはいてもそこまでの効果は期待できない。
それでも私の想像以上に彼女のプライドを刺激したのか、一気に険しい顔となった彼女は私を『にらみつける』。ああ、まったく心臓に悪い。どいつもこいつも強すぎて笑えない。楽しくもない、ただ辛くて苦しいだけだ。
でも、悪くはない。そも勝負とはそういうもの。勝負は過程、私が求めるのはその結果だ。終わりよければ全て良し。最後に私が気分良く相手を打ち負かすことができれば、それで全てが報われるのだから。
「出番よ、ニトリ」
『繧医≧繧?¥縺』
その無機質な返答を、私の耳が認識することはない。「了解」か「任せろ」か、はたまた「ふざけるな」なのか、単に電子音として処理されるのみだ。
ああ、最後にこの子を出したのはあの時のチャンピオン防衛戦だったか。なら、もっと口汚く罵倒されてるか、あるいは──
「──まあいいわ。つべこべ言ってないで、ゼンリョクで蹴散らすわよ」
『莉サ縺帙m縲√#荳サ莠コ』
意外と『ゆうかん』で『あばれることがすき』なこの子は、敵を殲滅するのを今か今かと待ちわびているのかもしれない。
胸元にぶら下げたネックレスではなく、腰にあるボールホルダーに取り付けられているアクセサリーを、否、
「…………え?」
いち早く状況を察知したのであろう彼女からの困惑した声。それはそうだ。道理を覆してこんなことをやってる私自身、こんな出鱈目が罷り通ってる事実に困惑することはある。
だがしかし、やってることはそう難しいことではない。回線も繋げず行使するのが理解不能なだけであって、やること自体はパソコンのアップデートとほぼ同じだ。ただし、かつて私がモーン博士と
「ああ、そうそう。ヨウ君?」
「…………え? 僕ですか? はい、なんでしょう?」
「唐突で悪いけど、あの時、チャンピオン防衛戦で、ヨウ君はこう思わなかったかしら?
そう、『このポリ公、随分と柔らかいなぁ』って」
「すみません、ちょっと何を言ってるのかわからないです」
「私の知ってるポリゴン2なら、あれくらいは耐えられたはずなのよ。はねるによる火力増強やレベル差があっても、134の100に3段階とレベルを1.5倍では鉢巻ガブのげきりん急所とそんなに変わらないし、ギリギリだろうけど、落ちることはなかったはずよ。リフレクターもあったわけだし、まず耐えられたでしょう」
「あの、もう既に言ってる意味が……」
「まあまあ。で、何故かって言うと、理由がこれ。ヨウ君には以前、見せたことがあったよね?」
「──メガストーン。それも、ポリゴン2の、ですか……?」
その言葉はヨウ君ではなく、対面していた彼女から聞こえた。メガシンカの存在を知っていて、自身がそれを主力としている分、より困惑が大きいのだろう。
そして、彼女の懸念の通り。戦闘中に使うとなるとこの手のメガストーンのみならず、持たせているあやしいパッチに特性であるダウンロードと、貴重な枠をいくつか消費こそしてしまうが、それだけの手間暇をかける価値が確かにある。
敏捷特化のヤトウモリ、耐久特化のレジロック、妨害特化のワタッコと、全体の水準を高く器用に仕上げたアクジキング。
ならば、ニトリの役割とは一体何か。それはきっと、すぐにでもわかる。
『繝偵Ε繝?ワ繝シ縲√d縺」縺ヲ繧?k縺懶シ、!、!、!』
「よし、完了。じゃあニトリ、カビゴンが動くまで『わるだくみ』で」
「ほ、本当に進化をして──ではなくて、カビゴン! 『ギガインパクト』!」
『カッビ、ッ──!』
やがてメガシンカ(笑)を済ませたニトリがいつ見てもぶっ飛んだデザインのその勇姿を震わせて自らの火力を更に高めていく。
あまりのことに唖然としていた彼女だが、腐っても廃人施設の象徴たるタワータイクーン。これを見過ごしては不利になることを瞬時に悟り、持ち得る限りの火力を以て対抗する──が。
「ニトリ、『はかいこうせん』!」
『谿コ縺 縲 谿コ縺呻 、 !!』
指示と共に、その名の通り全てを破壊し尽くす、ポケモンに携わる者なら誰もが知る最強のわざが放たれる。
──ポリゴンZ。役割は火力特化。努力値はAC極振りにして、範囲内のわざは『はかいこうせん』と『ギガインパクト』の2つ。他は幅広く補助わざを触り程度に一通り修めているものの、それらは全て確実にわざを当てるための布石に過ぎない。
つまりはまあ、何が言いたいのかと言うと。ニトリは、わざが当たりさえすれば耐えられるポケモンなど存在しない、文字通りの一発屋である、ということだ。
「か、カビゴン、戦闘不能………」
「そ、そんな──」
何一つ行動を起こせず大地に倒れ臥すカビゴンの姿に既視感を覚えながらも、私は努めて冷静に次のポケモンを警戒する。
しかし、その既視感より得られたあの時不発に終わった布石と、その時に感じた無念をどこか記憶の奥深くで思い出し、なんとなく不安を拭えなくなる私なのだった。
区切りはいいけど短いかな? と思ったけど他の小説見て冷静に考えたら9300字もあれば十分だって気づいた。というわけで投稿。
ミドキャスさん流行れ。ミドキャスはいいぞ。NP効率化け物だぞ。今なら無料だぞ。スキルマ割とキッツイけど。でもマーリン孔明スカディの壁に阻まれて誰もサポートには出してくれぬのじゃ……。