「それで、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないかい?」
「………なにを?」
念願のチャンピオンとなってから丁度一月。同僚となったライチが唐突に切り出す。
しかし、私に返す言葉などない。当たり前だ。彼女の発言には、私が問い返したように主語が抜けている。彼女にとっては当然であっても、人の価値観とは個々人によるもの。彼女が幼少から気にかけていたという事柄も、私にとっては割とどうでもいいものだ。我ながら最低だとは思うのだが、こればっかりはどうしようもない。
「グズマが今更になってカプに選ばれた理由。アンタはもう、察しはついているんだろう?
じゃなきゃあの時、アンタはあんなこと言わないだろう。アタシは、あの高性能カミソリから『良い勝負だった』なんて言葉を聞くことになるとは想像だにしてなかったけどね」
「高性能カミソリ……?」
有らぬ方向に意識を向けながら、ライチは吹っ切れたように告げる。
というかなんだその渾名は。誰が付けたんだそんなの。そりゃああいつはカミソリみたいな性格だし、カミソリが人の言葉を喋ったら驚愕するだろうけど…………ではなく。
いきなり切り出してきたせいで一瞬惚けてしまったが、一度思い至ればあとは芋づる式だ。
グズマがカプに選ばれた理由。その答え合わせを彼女は求めている。忘れもしない私の分岐点に紡いだあの言葉の真意を、全てが解決したからこそ彼女は聞く。
とはいえ、実のところ、彼女もなんとなくならわかっているはずだ。横目も横目、目の端に映る断片的な情報でさえ、彼女の精神的成長は著しい。ましてこうして答えを求めてきた時点で、その答えが自身の望むものであるという確信を持っているのだろうに。
「なんて言ったんだったかな。要するに、グズマの本質は何一つ変わってないのに、どうして今更になってカプに認められたか、が聞きたいんだよね。
まあ、私はカプじゃないから、あくまで推測になるけど」
ポケモンは聡明だ。ともすれば人間よりも遥かに。なのに彼らはポケモンとしての価値観で動いている。
そんな彼らを私如きが評していいのかはわからないけど、数少ない友人がそれで納得するというのなら、そのくらいはまあ吝かでもない。面倒なのは否定しないけど。
「まず前提として、彼は勘違いをしていた。素晴らしいトレーナーとは、それ即ち常勝無敗のトレーナーであると、そんな思い違いをね。
勝てないのは自分が弱いから。強くないから認められないんだ。おかしいよね? 彼は成長して順当に壁にぶつかった時、そういう風に思ってしまった。
私は最初から、彼の勘違いを知っていた。だから、あんなことが言えたんだよ」
「………強いトレーナーが、素晴らしいトレーナーね。なるほど、あいつの態度はそういうことだったのか」
「環境も悪かったかもね。いや、彼は恵まれてはいたよ?
両親に恵まれ、自身の才能も申し分なく、更には優れた動体視力と体力、格の高いポケモンを従えることの出来る風格も持ち合わせ持つ。本当に、素晴らしいトレーナーだよ。
だけどあいつはきっと、最も欲しかったものに関してだけは、何一つ手に入らない環境に身を窶してた」
それは何? とライチが紡ぐ。その言葉は、興味というより困惑に近い。
より正確に言うならば、彼の意識次第ではそれを手に入れることはできた。彼の勘違いを正すことさえできたなら、あいつがもう少し自分以外に目を向けていたら、あいつは今頃キャプテンなりキングなりになっていたのかもしれない。だけどそれも、文字通り後の祭りだ。
「そして、皮肉なことに、スカル団なんかに転げ落ちてから、あいつはそれを手に入れた。
ここまで言えば分かるかな。そう、カプの本質は、そのままズバリ
スカル団を築き上げて、たくさんの落ちこぼれを拾うようになるまではね」
「それはまあ、アタシも薄々は察してたさ。でもだったら、あいつはスカル団にいた時点でカプに認められていたってことにならないかい?」
「ここまでが前提。ここからは、ポケモンとしての性質が重要になってくる。
といっても、簡単なことだけど。島を汚すような組織の長に進んで協力する神はいないよね、ってこと。要はタイミングが致命的に悪い」
「ああ………」
ライチの漏らした声は、様々な感情に満ちていた。
そう、考えたら簡単なことだ。ポケモンは聡い。人間なんかよりも遥かに。そしてポケモンは悪意に敏感だ。神様だろうとシステムではないのだ。条件を満たせばそれを達成できるわけでもない。
加えて、カプたちにも意識がある。カプ・テテフなんかは気まぐれで気に入ったトレーナーの手持ちに加わり、その人を破滅させる、なんて伝承があるくらいだ。もっと単純に「なんとなく気に入らない」なんてロクでもない理由でカプに認められなかった人だって、きっと過去にはいるのだろう。
だからこれは、単なるすれ違いだ。求めているものが、求めていたものが、互いに掛け違っただけ。これは単に、それだけの話である。
「ん? でもアンタ、スクールの時点でそれに気づいてたんなら、忠告くらいはできたんじゃ……」
「いやだって。あいつ強いから、改心なんかしちゃったら、チャンピオンになるにあたって、その、ね?」
「………アンタがカプに認められないのは、間違いなくアンタのそういうところだよ」
うん、知ってる。
☆☆☆
ひたすらに長い階段を、その一歩一歩を踏みしめるように歩く。
膨大な年月を経て風化した遺跡は、土台となる階段さえもあちこち風化してボロボロの状態になっているが、不思議と頼りなくは感じない。
それはこの太陽の祭壇全体が神秘的な雰囲気に包まれているからか、あの時から太陽の祭壇を守り続けている守護者がいるからなのか、僕にはわからない。
──ラリオーナ!
遠くで、神と呼ばれるポケモンの雄叫びが響く。厳かに啼くその声も、僕には既に慣れたものだ。
ほら、こうして一歩、祭壇に足を踏み入れれば、どこからともなくあの巨体が、かつてのように『じゃれつい』てくる。
『ラリオーナ!』
「ああ、ほしぐも。遊びに来たよ。元気そうだね」
元気そうだ、というより元気そのものだ。姿は立派になったのに、反応が昔と何一つ変わらない。正直言って僕は今のほしぐもの姿に違和感を覚えまくりではあるのだが、だからこそこうして反応を見ると安心するのだ。
(………でも、やっぱり戦わせたくはないなぁ)
今更だ。どちらにせよ隔日ペースで頻繁に遊びに来てはいるものの、目的ありきでこんなところまでやってきて今更何を考えているのだ。
それでも、と決心し、しかしそれでも微妙に切り出せずいつものようにじゃれあって、やはりそれでも伝えなければ始まらないとようやく決意し、数時間の無駄な時間を費やしながらも僕は告げる。
「戦力として君のことをアテにするのは、間違っているのかもしれない。その考え自体が、立派に成長した君を馬鹿にする行為なのかもしれない。どっちが正解なのかは、僕にはわからない。だから、用件だけを言うよ。
──君の力が必要だ。協力して欲しい」
『ラリオーナ!』
肯定と思わしき喜色満面の雄叫びが返ってきたので、安堵と感謝と喜びで胸がいっぱいになる。
そして同時に、ふとリーリエのことが脳裏に浮かび上がる。あの頑張り屋なお姫様は、今、どこで何をしているのだろうか──。
「成長した姿を見せようとリーグに挑んでみれば、そこにいたのは謎の女性。肝心のヨウさんは何をしているのかと思ったら、こんなところでほしぐもちゃんと遊び呆けている───兄さまではありませんが、流石にこれは、物申す必要がありますね」
不意に。
透明で、綺麗で、なのに力強くて。ありえないはずの声が聞こえた気がして、反射的に後ろを振り返る。
幻覚だろうと、最初は思った。次にポケモンのイタズラを疑った。しかし、幾ら目を凝らして確かめても、その人物は確かな重みと存在感を持ってそこにいる。
「リーリエ…?」
「母さまの意識が戻ったと聞きました。実を言うと、ククイ博士とは頻繁に情報のやり取りをしていたんです。博士には黙っていてもらいましたけど。
あんな酷い人とはいえ、大切な母親で、全てのきっかけとなった人ですから。一度ガツンと言ってあげなきゃ、気が済まなかったんです」
でも、とその声は続く。記憶に残る美しいものと寸分違わぬ聞き惚れそうな音質。確と目があって、だけどますます現実感が無くて、思わずほしぐもの方を見つめる。
ほしぐもは、当然のように僕と同じ方向を見つめていた。なら、やっぱりこれは、僕が生み出した幻覚ではない。
「そんなことよりもまず、私は、何より貴方に会いたかった。
この一年、貴方が生まれたカントーで過ごして、貴方と同じ冒険をして、貴方のようにジムに挑んで。貴方と一緒の舞台に登った。
知ってますか? ポケモンリーグの挑戦権は協会で規定されていて、別の地方のものであろうと8つのバッジがあれば大丈夫なんですよ?」
「──」
「カヒリさんに驚かれ、アセロラさんには抱きつかれて、ライチさんに背中を押されて、ハラさんと共に泣いて。
そうしてチャンピオン防衛戦に挑んだら、肝心要のヨウさんはいない! ………何事にもへこたれないこの私ですが、これには流石にショックを隠しきれませんでした。
しかもなんですか、あの人。曲がりなりにもハラさんを倒した私を6タテとか信じられないのですけど。
ああ、あの人ならと納得してしまった私が嫌になります。チャンピオンの座は、誰より貴方が相応しいものなのに」
そう言い放ち、あの頃より少し背が伸びた気がするリーリエは僕に抱きついてくる。
鼻孔をくすぐる柔らかな香り。絹越しに触れ合う優しい体温が、何かを言いたかったはずの僕の口の動きを、それきり完全に停止させた。
「──貴方は諦めない。そうですよね?」
耳元でそう囁かれる。疑問形でありながら、不思議ととても力強い言葉。あの時のリーリエと何一つ変わらない、僕のことを奮起させる一言だ。
「もちろん。その通りだよ」
「あの人は、本当に強いです。至らない私では、最初のポケモンすら突破できませんでした。それでも?」
「当たり前だよ。だって、僕は」
君の強さの証明として、ポケモンバトルが得意な君の友達の僕が、チャンピオンの座に居座っていたんだから。
続く言葉を、声に出すことはない。言葉に出すようなものじゃないし、今の僕はその言葉を達成できていないから。
「なら、もう少しだけ、待たせてもらいます。
貴方が再びチャンピオンになって、私がそれに追随して。二人きりで成長を喜び合って。
それまでの間、ほんの少しだけ。その時、私は貴方に、伝えたいことがありますから」
「うん。じゃあ、その時はよろしく。僕も、その時になったら君に伝えたいことがあるから。でも、まずは何よりも先に。
──おかえり、リーリエ」
「──はい!」
自然な笑顔が、僕を貫く。羨ましさより尊敬が先に出る、感情豊かで柔らかな表情。笑顔が苦手な僕には出せない、美しい絵画。
僕だけに向けられた、夕日という額縁に飾られて輝くその笑顔に、僕は自然と微笑むのだった。
☆☆☆
「愛の力でブースト済み。更には単純に戦力までも補強して、貴方はここまで駆け上がってきた。
記録は2時間。四天王はほぼ瞬殺。アローラでの最高記録達成だね、おめでとう。昨日今日でこんなにも違うなんて──いや、若さとは恐ろしい。素直にそう思うよ」
ちっとも驚いてるように見えない冷徹な表情と冷たい声で、チャンピオンはそう告げる。
しかし、事務的なこと以外はほぼ無言だった彼女が、こうして気安く語りかけて来ているというのに、まるで距離感が縮まらないどころか、むしろ致命的な溝が形成されたような気分に陥るのはどういうことなのだろうか。
「先発はそのポケモン。日輪の化身、ソルガレオ。察するに、あの実験体だったコスモッグの進化系かな?
ああ、覚えているかな。実のところ、日輪の祭壇から君を捕獲したのは私だったりするんだけど」
「それも、貴女が──」
「まあね。それなりに苦労はしたけど、そんなのはどうでもいいよ。
それで、私の先発は──君に見せるのは初めてかな? この子だから、よろしく」
そう言ってチャンピオンがボールから取り出したのは、赤と青の配色をした、やけに丸い形状をした鳥のようなポケモン。確かに僕はこのポケモンを見たことがない。というかアローラでも見たことがない気がするが、何というポケモンなのだろうか。
「ポリゴンって知ってるかな。カントー出身の人造ポケモンで、自然と共にあるアローラじゃあまり見ないポケモンかもね。この子はそのポリゴンの進化系で、種族名はそのままポリゴン2。ちなみに、ニックネームはニトリ」
「ポリゴン?」
ポリゴンのことは知っている。ポケモンボックスのセキュリティや管理などによく用いられるポケモンだ。
なんでも身体がプログラムで構成されたデータ上に存在する生き物で、姿を現実に投影することができるものの、その頻度はごく稀。野生で確認されることはほとんどないのだとか。
彼女が呼んだのは、そんなポケモンの進化系。言われてみれば、どことなく機械的な印象を受けるポケモンだ。しかし、それ以上に滑らかな印象が強すぎて、粘土細工か水飴が動いているようにも見える。
ポケモン図鑑を持つものとしては、未知のポケモンに対する恐怖心よりも、好奇心や興味が勝る。だが、今回ばかりは決してそうも言えない。あのチャンピオンが僕に対して初めて使うポケモンだ。タイミングからして単純に、伝説のポケモンさえどうにかできる力を秘めてると考えていい。
しかし。
「じゃあ、試合を開始するね。いつものように、あと一分でアラームが鳴るから、あとは適宜。それまでは待機で」
「わかりました」
チャンピオンが玉座の側にある端末を弄り、試合開始の合図を準備する。
その言葉に合わせて僕は、右手首に装着した輝く石を確かめるように少し撫でる。まさかチャンピオンがこの戦法を想定しているとは思わないが、ぶっつけ本番だ。緊張しないといえば当然嘘になる。
「3、2、1……。
ニトリ。『リフレクター』」
「ほしぐも!」
『ラリオーナ!』
試合開始の合図と同時、リングに力を込めてポーズを決める。
両手を突き出し、そのまま右下に。左手を左上へと掲げ、その状態で両手を肘から折り曲げ『Z』の字を形成する。
「いきなり、ノーマルZ……!?」
チャンピオンも気づいたようだけど、もう遅い。既に準備はできている。後は僕たちのゼンリョクパワーで、チャンピオンを討ち果たすだけだ!
「ほしぐも、『はねる』!」
『ラリオーナ!』
僕のゼンリョクに、これまたゼンリョクを以ってしてほしぐもは応える。ただでさえ溢れんばかりの力を持つ伝説のポケモンが、更なる力を高めるというカタチを以って。
「っ…! ニトリ、『のろい』を──」
「遅い!
ほしぐも、『メテオドライブ』!」
チャンピオンの指示がポリゴン2に届くよりも早く、ほしぐもの一撃が『リフレクター』ごと対象を打ち砕く。
ソルガレオのわざであるメテオドライブに壁を破壊する効果はなかったとは思うのだが、現に恐ろしくは伝説の称号。そんな猪口才な理屈など、そのオーラの前には通用しない。
「──お疲れ様、ニトリ」
ボロボロになったポリゴン2を、意外なほど優しげにチャンピオンはボールへと仕舞う。
尤も、僕には相変わらずチャンピオンの表情や感情を読むことはできない。だからこれは、あくまで想像だ。しかし、不思議なことに、彼女の印象にはそぐわなくても、これが正しくあるのだろうという確信はあった。
「──決めなさい、ギュウカク」
次いで彼女が呼び出したのは、彼女がいつも先発に出しているヤトウモリ。
未進化のポケモンだとは思えない火力と何より異様な俊敏性を持ち、初見の時はその速さに誰もついていけずたった一匹で戦場を蹂躙した恐ろしいポケモンだ。
でも、それでも。あのポケモンが進化前のポケモンであることには変わりなく、僕の力量が段々と上昇するにつれ、「耐えて反撃」という戦法で突破することができるようになった。また、当然油断はできないにしても、とてもじゃないがあのポケモンが今のほしぐもを突破できるとは思えない。一体、チャンピオンは何を考えて………?
「ねぇ。オスのヤトウモリがどうして進化しないのか知ってる?」
「え?」
今後の流れに意識を向けていると、不意にチャンピオンが語りかけてくる。
ポケモンの交代時、クールタイムや流れを変えるために無駄話をすることはトレーナー同士でよくあることでも、まさかそれをあのチャンピオンがやるなんて想像もしていなくて、僕は間抜けな答えしか出すことはできなかった。
「焦らすのは好きじゃないから答えを言うと、それはずばり
だから、ヤトウモリはビークインやエルレイド、ユキメノコといった『完全に特定の性別のみが進化する』ポケモンとは微妙に違うんだ」
「栄養、不足?」
「そう。ヤトウモリは本能的にメスに自身の全てを捧げる。当然、自身の成長に不可欠な餌もね。絶対数の少ないメスを守るため、らしいけど、それもどうだろうね。そっちは興味ないからいいけど、ここで大切なのは、つまり条件さえ整えば、オスのヤトウモリでも進化が可能だということだよ」
「へぇ……」
「とはいえ、それは現実的には役に立たない知識だと言っていい。実は研究によって栄養を整えればオスのヤトウモリも進化する、という結果が出ているんだけど、そうして育成されたエンニュートは、びっくりするほど弱いんだ。
当然だよね。メスを守る種族がそのメスを取り上げられたりしたら、力を高める意味なんてない。似たような結果では、メス単体のミツハニーが進化することがない、なんて例があったりもするよ」
確かに興味深い話ではある。ミツハニーというポケモンは知らないが、ヤトウモリの進化条件は知っている。もちろん、彼女ほど詳しくはなく、メスだけが進化する、程度の知識でしかなかったが、まさかそういう理由だったとは。
「でも、この世界には君のZパワーのように、ポケモンに力を注ぐ方法が存在する。
俗にメガシンカと呼ばれる力。私はこの力を、どうにかこの子に応用できないか奮闘した。
エーテル財団の研究には、全ての祖と呼ばれるアルセウスをデチューンしたポケモンがいてね。その技術を転用して、私は特別なメガストーンを作り出した。
言うなれば、ヤトウモリナイト。不足した栄養を、どうにか別の形で補おうと足掻いた結果。
ああ、わかっているよ。
つらつらと呟きながら、彼女は胸元から首にかけた石のネックレスを取り出し、利き手である右腕に巻きつけ、ヤトウモリの方へと向ける。
正直なところ、僕には彼女のいってることはその殆どが理解できない。しかし僕は、結果的にどうなるかを察せないほど愚図ではない。それは、つまり──。
「だけど私は、この子を捨てられなかった。こんな最低な私を、彼はそれだけ信頼してくれた。
ポケモンがいるからこそのトレーナー。だからこそ、私も。私なりに。この島に伝わるそれとは違う形で、貴方達をゼンリョクで打ち砕く」
見えない力の波動のようなものが、彼女の持つ石からヤトウモリに注がれるのを感じる。
やがてヤトウモリが光に包まれ、通常とはまるで異なるやり方で、通常通りの姿に変身する。プルメリさんが使用していたポケモンと同じ、しかし彼女のソレとは異なる
「オスの、エンニュート………!?」
「最強は私。それだけは、絶対に譲れない」
感情の感じられない声で静かにそう呟くチャンピオンの後ろに、巨大な壁が反り立つのを幻視する。
伝説の力を以ってしてもまるで底が見えないその壁に、僕は抑えきれない恐怖を抱くのだった。
風邪を引いて動けなかったのでつい続きを書いてしまいました。
我慢できずにフライング。しかしまだまだ先は長い。
独自解釈で無駄にメガシンカ枠まで消費しました。これできっと楽勝ですね!(白目)
続きは気が向いたら書きます。