リーリエ、カムバック!   作:融合好き

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ぶっちゃけピザは出前とかより冷凍の生地に適当な具を乗っけて焼く方が美味い。



ビーストを あばれさす とか ない!

最初に始めたことは、努力値の確認だった。

 

この世界がゲームの世界であったことは間違いない。この世界に生きる人間としては否定したくとも、ゲームとしてのこの世界が存在していたことに間違いはないからだ。

 

ならば、いの一番に確認すべきは「ゲームとしての要素」。その確認。しかし、わざの数や一部わざの命中率のような「明らかに現実となれば解禁されるであろう要素」を除き、これが非常に困難を極めた。

 

 

「………まあ、当たり前だけど、野生の頃のソレもカウントされるよねぇ」

 

 

捕まえた時点で一切の努力をしていない。そんな野生のポケモンが現実として存在するはずがない。

 

そこいらのコラッタ一匹にしたって、努力値カンストはもはや当然。そも、具体的な数値で現れるようなものでもないから、その判断さえできない始末。

 

加えて、「ある」、という事実のみはどうにか証明できたものの、だからといってゲームの通りの振り方をすれば強くなるわけでもないときた。

 

わかりやすい例で言うと、筋力に相当するこうげきのパラメーターがそれに当たる。例えばヤトウモリは高速特殊アタッカー向けの種族値をしているが、ゲームのように努力値をCS極振りしたりすると満足に走ることすらできなくなる。

 

それは何故か。決まっている。筋力不足だ。人間だとしてもそう。右手の握力が強いからと、そちらばかりを鍛えてしまえば、当然、生物としては歪となる。

 

ここはゲームの世界ではあるが、現実だ。つまり現実に即した要素は当たり前のように存在し、現実の重みとして『のしかかる』。

 

「私の求める理想とは、すなわちゲームとしての理想。アイツが求めた称号(・・)と同じ、致命的な部分で掛け違えている」

 

間抜けな思考だ。常識的に考えて、そんなことは当たり前だろう。

 

ここはゲームではない、現実だ。その名残があったとして、それを活かせるとは限らない。

 

厳密に言えば、そうでもないのかもしれない。しかし、私は。研究者としては、あまりにも致命的な欠点があった。

 

「………慰めているつもり?」

 

足元に『まとわりつく』、実験台(・・・)として捕獲したヤトウモリ。レベルアップによる強化で必要最低限の筋力(こうげき)を手にするまで、満足に走ることさえできなくなったポケモン。

 

群れの中でも殊更に『おくびょう』で、逃げてばっかで、私が捕獲するまで正真正銘まっさらだった例外中の例外。それを歪に鍛え上げたのは私なのに、どうしてか彼は私に懐いてしまった。

 

理性が残酷な選択を迫る。本能が余計な重荷を課す。つまるところ、私が愚かだったのだ。現実にゲームの知識を持ち込んで、良い気になって。結局効果が見られなかった努力値を下げるきのみのように、それが正しい保証もないのに。

 

ああ、鬱陶しい。獣臭い。可愛くない。憎たらしい。地味に熱い。微妙に重い。──でも、どうしてか見捨てられない。

 

ポケモンは、私たち人間が思う以上にたくましい生き物だ。この異様に弱っちろかったヤトウモリだって、何だかんだと野生で立派に生きていたじゃないか。

 

「…………」

 

さぁ、言え。言ってしまえ。お前は要らないと。役立たずだと。単なる実験台だったと。

 

既に証明は成し遂げた。歪な形であるとはいえ、その雑魚もお前が限界まで育て上げた。まず間違いなく、そこいらの野生ポケモンに負けるはずはない。

 

そうだ。ポケモンとは成長する生き物だ。もはやお前の足元にいるそいつは、巣穴の奥深くでプルプル震えていたあの臆病者とは違う。

 

大丈夫。何も問題はない。遠慮も配慮も心配も意味はない。お前がそいつを見捨てても、そいつは一人で生きていけるさ──

 

「………ふん」

 

足元に『からみつく』ヤトウモリを、まるでサッカーボールか何かのように足先で掬い上げ、胸元に(・・・)柔らかく収める(・・・・・・・)

 

本当に、愚かしいことだ。オスのヤトウモリなんか、育てたところで何になる。

 

理不尽な才能を凌駕するため、私は非情に徹すると決めた。しかし、その認識は甘すぎた。私には、彼を見捨てることなど出来やしない。そんなとても恐ろしいことは、小心者には重過ぎる。

 

「まあ、ありがとう。じゃあ、行くわよ」

 

ブフォン、とこれまた絶妙に小憎たらしくて割と普通に耳障りな鳴き声を奏でながら、ヤトウモリは手の内で大人しくなる。

 

傍目から見たその光景を想像して、何もかもが馬鹿馬鹿しくなってくるものの、どうしてか悪い気はしない自分に、また一つ自嘲するのだった。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

(……攻めきれない)

 

視線の先には、今まさに決闘を繰り広げている二匹のポケモンの姿。

 

ほしぐもが突風を思わせる奔放な一撃を放ち、そしてエンニュートが余裕綽々とそれを躱す。おまけとばかりに口元には嘲るような笑みを貼り付けて、だ。そんな光景が、先程から幾度も繰り返されている。

 

一撃でいい。たったの一撃を当てればそれで決着が付くと言うのに、それが叶わない。ほしぐもの攻撃は確かにチャンピオンのエンニュートを捉えているように映っても、それはあたかも幻影を打ち抜いているかの如くすり抜ける。

 

鋼鉄に勝る健脚から繰り出される一撃のスピードは、並みのポケモンでは反応することさえ困難なレベルだというのに、チャンピオンのエンニュートの俊敏な動きに較べれば、ほしぐもの動きはむしろ緩慢にすら映ってしまう。

 

「ギュウカク、右が薄くなってる。もう少し『ねっぷう』をお願い」

 

『ニュー』

 

「っ…! ほしぐも、『ハイパーボイス』!」

 

『ラリオーナ!』

 

広範囲の音波で『ねっぷう』を散らす。焼け石に水だが、やらないよりはマシだ。

 

時折視界に靄がかかる。眩暈ではなく物理的に。先程からちょくちょくチャンピオンがばら撒いているねっぷうが巻き起こす熱気と、フィールドに揺蕩うそれに充てられることによる伴う体温の上昇が、徐々にトレーナーの体力を奪っているのだ。

 

「くっ………ギュウカク、『ヘドロウェーブ』で迎撃!」

 

『ニュー!』

 

『『ラリオーナ!』』

 

幸いなのは、ほしぐもとエンニュートの相性が僕の想像以上に良かったことだろうか。

 

やはりというか何というか、ソルガレオも伊達に日輪の化身と呼ばれるわけではなく、水ポケモンなら既に干からびていてもおかしくない熱気の中でも、むしろほしぐもは活き活きと闘っている。

 

本来なら、鋼タイプであるほしぐもに炎タイプは弱点のはずだが、例外というのはどこにも存在する。目の前の非常識なエンニュートを筆頭に、生態や個体差によってタイプ相性が通じないことはままあることなのだ。

 

おまけに、鋼鉄の肉体を持つほしぐもは毒タイプの攻撃を完全にシャットアウトする。無論、鋼タイプさえ毒に侵す『ふしょく』という特性を持つエンニュート相手に油断はできないが、事実としてこちらが優勢なのは間違いない。

 

しかし、逆に言えば。それだけ優位に事を進めているにも関わらず、僕はあのエンニュートを捉えきれずにいる。対策としてわざわざ『ハイパーボイス』を覚えさせてもなおこれだ。彼女と一分一秒でも長く戦う度に、僕が旅の中で培ってきた自信とかプライドとかそういう感じのアレが、みるみる崩れ去っていくのを感じる。

 

それに加えて──。

 

「………ギュウカク。『お願い』」

 

『ニュー!』

 

「っ──」

 

(──っ、また………)

 

時折、チャンピオンの声に合わせて、エンニュートは不可解な行動を取る。

 

熱気による包囲網を崩すことも厭わずに、自慢のスピードでほしぐもの背中に飛び移るのだ。そして、何をするでもなく、ただ嘲弄して去っていく。

 

わざわざ指示をして行なっているのだからと、それが何かの布石なのかと短い時間で懸命に考えても、『ちょうはつ』以外の目的を見出せない謎の行動。かといって実際に『ちょうはつ』しているわけでもなく、こちらを揶揄っているだけにも見える。

 

狙いが読めない。今までのバトルとは一線を画す得体の知れない恐怖が、僕には嵐の前触れか何かのように感じてならない。過剰なまでにほしぐもから距離を置いて、ひたすら『ねっぷう』をばら撒いている現状もそうだ。しかしいつまでも思い通りにされるわけにはいかない。ここは多少強引にでも突破して──

 

「ほしぐも、『ハイパーボイス』!」

 

「──やっと、被った(・・・)

 

ギュウカク、『どくどく』」

 

「え……!?」

 

エンニュートの着地に音技を合わせ、衝撃で怯んだ瞬間に渾身の一撃を叩き込む──そんな想定で指示をしたわざを、どうしてかほしぐもは放とうとする気配すら見せず。逆にそのタイミングを待ち詫びていたように、エンニュートの毒手が深々とほしぐもに突き刺さる。

 

間違いない。今のは完全にタイミングを見計らっていた。でも、どうして。彼女は一体何を──

 

 

 

(どうしてほしぐもは、指示を────被る?

 

いや、そうだ。もしかして。さっきからやってたあれは、『ちょうはつ』なんかじゃ──)

 

 

 

「ほしぐも、『がんせきふうじ』!」

 

『ラリオォォア!!』

 

「な、早い……!? まず、ギュウカク、下がって──」

 

『ニュー……?!』

 

ひとまずの仮定を頭の片隅に置き、直感に従って指示を出す。

 

どんなトレーナーもポケモンも、攻撃時には隙がある。ポケモンが傷つくことを厭う僕には積極的には狙えない戦法でも、だからといって絶好の機会を逃すほど僕は甘くない。

 

ほしぐもに接近してきたエンニュートの逃げ道を塞ぐように、無数の岩がほしぐもの周囲に張り巡らされる。しかしそれさえも持ち前の俊敏性で逃れたエンニュートは、逃れる際に負った傷だらけの身体を庇うこともせず、堂々と僕たちを『にらみつけた』。

 

「『いちゃもん』、ですね?」

 

「正解。戦闘が冗長になると、どうしても判断が鈍る。同じことを繰り返していると、脳が負担を削減し、思考や視界が塞がっていく。結果、わざの対処がマニュアル化する。

 

そうなれば、しめたもの。『ねっぷう』に対して『ハイパーボイス』で対処するなら、こっそり『いちゃもん』を挟んでその後にまた『ねっぷう』を放てばいい。もちろん、違和感を持たれないようにすることが大原則だけどね」

 

そうして強引に隙を生み出し、着実に一撃を加えてそれを繰り返す。

 

ただでさえ熱気により体力が奪われているのだ。そこに毒まで付与されてしまってはたまったものではないだろう。

 

「誤算だったのは、ソルガレオの『たいねつ』性と、毒が効かない鋼タイプであったこと。

 

この戦法は基本、熱気よりも視界が悪くなる『スモッグ』でやってるんだけど、そもそも効かなかったら意味がない。いちゃもんはあくまで決定打を狙うためであって、本来は『すなあらし』や『ゆきふらし』とかと同じように削り目的だからね。

 

──ところで、悠長に喋っていていいの?」

 

「なっ…………ほしぐも、『あさのひざし』!」

 

『ラリオーナ!』

 

(時間稼ぎが目的だったのか………!)

 

やけにゆったりとした口調で懇切丁寧に手品のネタばらしを始めるから何事かと思えば、こんなところまで抜け目がない。

 

全身を徐々に侵食する『もうどく』は、その苦痛にいずれ回復が追いつかなくなる。必然、戦闘に時間がかかればそれだけ不利と化す。それに加えて──

 

「5つ目………つまり、範囲外だね。その程度の回復で、どうにかなるのかな?」

 

「………戻ってくれ、ほしぐも」

 

図星を突かれて、というわけではないけれど、毒での自滅を避けるためにほしぐもを温存する方向にシフトする。

 

ただでさえ慣れない戦いだ。ほしぐもが持つ唯一の回復わざも、範囲外のわざであるからには回復力が心許ない。ボールの中はコンディションが回復しないかわりに悪化することもない謎空間だ。Zパワーによる強化をリセットするのは非常に惜しいが、それで切り札を失うようではトレーナーとして不出来だと言わざるを得ない。

 

「でも、流石だね。いくらZパワーがあったとはいえ、掠っただけで致命傷なんて」

 

「え?」

 

ほしぐもがボールに収まるのとほぼ同時、気丈に僕たちを睨み続けていたエンニュートがその場に崩れ落ちる。

 

まさかとは思うが、気力だけで立ち上がっていたのか。敵であるほしぐもに背中を見せないために、ボロボロな身体に鞭を打って。曲がりなりにも伝説と呼ばれたポケモンがゼンリョクで強化したわざを受けながらも、なお。

 

「お疲れ様、ギュウカク。

 

じゃあ、仇を打って、アークス!」

 

感じた畏怖も一瞬。小さなボールから新たに現れた巨体の大地を踏みしめる振動が、『じしん』を起こしてフィールドを揺らす。

 

見上げるほどの大きさの巨岩。このポケモンを見たのは確か二度目だが、相変わらず凄まじい存在感だ。

 

ロトムが言うには、種族名をレジロック。ホウエン地方に伝わる伝説のポケモンで、この世界にいくらか伝わる国造りの伝承にその名を連ねているポケモンなんだとか。

 

どうして彼女がそんなポケモンを持っているのか。そもそもどこから見つけ出したのか。どんな経緯で連れてきたのか。この島に伝わる伝説のポケモンを保有する僕が言うのもアレだけど、気になるものは気になるのだ。

 

(………でも)

 

度肝を抜かれたエンニュートとは違って、あのポケモンは初見じゃない。またたったの一度きりだが、実際に突破したことだってある。奇跡でも偶然でもあるいは必然であろうとも、その一度を成し遂げることができたのなら、僕はただその道を進むだけだ。

 

「頼んだ、ジャラランガ!」

 

『ジャラジャランジャン!』

 

全身が光り輝く鱗に覆われた巨龍、ジャラランガ。

 

流石に彼女のレジロックには及ばずとも、恵まれた強靭な御体から放たれるかくとうわざは、巨岩どころか鋼鉄さえも打ち砕く。

 

まさしく大きくて強くて硬いを体現した巨大戦艦。だけどそれでも、相手の場にはそれ以上の弩級空母が居座っている。油断も慢心も厳禁。しかし、それで相手の力量を見誤るのはダメだ。

 

明らかな物理型であるレジロックの相手に、『てっぺき』の鱗を持つジャラランガの相性は悪くない。単純な力量だって、そう劣ってはないはずだ。だったら僕にもジャラランガにも、勝機は充分に──

 

「レベル7……あ。これ、まずい。きっつ。

 

アークス、ごめん。無理そう。『だいばくはつ』、お願い」

 

『……ざざ、ざり、ざ──』

 

「は──?」

 

耳を劈く轟音。辺り一面を覆い尽くす光に、何より建物全体を揺らす衝撃。

 

出落ちとかもはやそんなレベルでさえなく、あまりの唐突さと現実感の無さに逃避をしたくなるも、それで起こった事態が変わるわけでもない。

 

確かなのは、彼女のポケモンが爆発したことと、その衝撃が僕のジャラランガにも届いたこと。その結果として、両ポケモンがフィールドに沈んだという事実だけだ。

 

(いや、落ち着け──有利なのは確かなんだ。まさかいきなり自爆してくるとは流石に読めなかったけど、戦況としては間違いなくイーブンかそれ以上。

 

ジャラランガは僕のポケモンの中でも上位の力を持つけれど、居なければ戦えないわけじゃない。ここはアドバンテージを活かして、慎重に──)

 

「繋げてくれ、ミミッキュ!」

 

未だ捲き上る砂に紛れて現れるは、一見して可愛らしい黄色の小動物。

 

しかしてその実態は分厚い『ばけのかわ』を被った恐ろしきゴーストポケモンであり、皮を剥いで中を覗くと呪われたり酷いものだとショック死する、なんて逸話もある。

 

とはいえ、そんな分かっていて『げきりん』に触れるような真似をしなければ、ミミッキュは人に友好的なポケモンに過ぎない。何事も、捉え方一つで変わってしまうものなのだ。

 

「その子はもう見飽きてる。アナ、お願い」

 

対するチャンピオンが呼び出したのは、これまたアローラではなかなか見ない、見るからにくさタイプであろう綿毛のようなポケモン。

 

こちらは何度も見た覚えがある。種族名はワタッコ。草・飛行タイプ複合。飛行タイプ特有の綿毛のような外見に反する高い素早さに加え、草タイプらしい搦め手を得意とするポケモンだ。

 

嫌な記憶が蘇る。あのポケモンは火力が異様に低い代わりに、ひたすら嫌がらせに特化しているのだ。合間合間に呼び出して色々と嫌がらせを受けたから適用内のわざ構成も知っている。ねむりごな、とんぼがえり、やどりぎのタネ、ちからをすいとるの4つ。適用外については推測だが、わざの精度を高めるために完全に切り捨てている。

 

逃げ回りながら粉を撒き、隙を見せればタネを植え付け、仕事をこなせば手持ちへ帰る。火力を完全に切り捨てたためか地味に固く、加えて優秀な回復わざまで持っている。おまけに「ひかりのこな」という道具を持っているためか、動き回る度にチカチカして鬱陶しいのだ。そういう感情に疎い僕ですらそう感じるのだから、あのワタッコに相対したことのあるトレーナーは全員そう思うに違いない。

 

尤も、それは全て、あのヤトウモリを突破できたトレーナーが僕以外にもいたなら、という話になるが。

 

(でも、他でもないミミッキュなら、対抗策はある。問題は、ミミッキュがあのポケモンよりも早く動けるかどうか………)

 

先に眠らされてしまっては対抗策もクソもない。当然、僕のポケモンの中には催眠に対する対策をしているポケモンもいるにはいるが、あいつは基本搦め手に弱いから論外。できればここで、なんとしても仕留めておきたい。

 

「ミミッキュ、『みがわり』!」「アナ、『やどりぎ』」

 

指示は全くの同時。互いに牽制していたから当然だ。故に重要なのはここから。どちらも相応に時間がかかるわざを、どちらが先に行えるか──って、

 

「──なんてね」

 

「ちょっ──!?」

 

指示とはまるで(・・・・・・・)異なる行動をした(・・・・・・・・)ワタッコの姿に思わず声が漏れる。

 

確かに搦め手専門である分、行動を悟られないようにする小細工はあって然るべきではあったが、こう、如何にも搦め手で来ます!と思わせた端からこれとは。性格が悪いというか、狡猾と言うべきか。とにかく、あまり見習いたくはない。

 

『とんぼがえり』してミミッキュにぶつかりそのままボールに収まるワタッコ。まさに『当て逃げ』という言葉が相応しい一撃。みがわりを無事に創り出すことはできたが、同時にばけのかわを失ってしまった。行動の優劣は互角かやや悪い、その程度の差であろうか。だがそれも、全ては次に現れるポケモン次第だ。

 

 

(僕がこれまでに見たことのあるチャンピオンのポケモンは、ヤトウモリ、レジロック、ワタッコの三体。つまり次のポケモンは、完全に初見………)

 

 

加えて、最初に出したポリゴン2も含めて、ヤトウモリ以外はどこから捕まえてきたのかさえわからないような知識にないポケモン達だ。現れたのはいいが、それだけでは一切の情報が得られない、なんて可能性はむしろ高い。

 

彼女の一挙一動を見逃さないように目を凝らす。当然、これまでも十二分に警戒はしていたが、それ以上にだ。すると、彼女は懐から……懐? 何故か腰にあるホルダーではなく胸元から忘れるはずもないデザインのボールを取り出して、それを堂々と構えつつ告げた。

 

「それは、ウルトラボール……?」

 

「──切り札とは、決して惜しむものではなく、切り時を考えて使うもの。

 

初手からソルガレオとゼンリョクわざを使って私に優位を取ったヨウ君のように、使うべきタイミングで適切に用い、そして腐らせない。それが、トレーナーとしての腕になる。

 

その点、君は非常に優秀だね。ホント、優等生すぎて憎らしいほどに」

 

後ろに纏められた桃色の長髪を揺らしながら彼女は言う。褒められてはいるんだろうが、相変わらず感情がまるで読み取れないのと、場に張り詰めた緊張感のせいでまるで嬉しくない。むしろ糾弾されてるような雰囲気に、無意識のうちに腰が引けてしまう。

 

そんな僕の反応を当たり前のように無視して、チャンピオンは続ける。

 

「──私がウルトラビーストを持っている。それくらいは当然、想定していたでしょう?」

 

「………ええ。技術を提供したのが貴女なら、必然、貴女はその技術を保有していたことになる。

 

僕が驚いたのは、そのポケモンを、あの恐ろしいウルトラビーストを、貴女が切り札として扱っていることです」

 

普段から先手で使用し、メガシンカという名の進化を果たしたヤトウモリこそがそうだと僕は思っていた。伝説であるほしぐもを相手に繰り出し、あれだけ奮闘したポケモンだ。順当に考えれば、そのポケモンこそが最強なんだと勝手に納得する。

 

だが、違った。彼女の言葉が正しいのならば、真の切り札は別にいた。切り札とは、切るべき時まで備えて置くもの。必然、彼女の手持ちすら暴けなかった自分に、それを知る権利はない。

 

「コードネームはGLUTTONY。種族名を、アクジキング。ニックネームはドミノ。由来はまあ、君には絶対わからないだろうからどうでもいいや」

 

「アクジキング……?」

 

彼女の言葉に合わせたように、そのポケモンが意外なほど静かにフィールドへと着地する。

 

先に現れたレジロックよりもふた回りは大きい巨体。相対しているミミッキュと比べると、その質量差はまるで赤子と大人だ。そして、その姿は暴食を冠するコードネームの通り、悪食を具現化したような肥沃な大口。

 

──ルザミーネさんが従えてたそれと同じ、見ただけで異質だと確信できる怪物(・・)だ。

 

 

「っ………ミミッキュ! 『じゃれつく』!」

 

 

何かに突き動かされるように、現界の隙を狙ってわざを放つ。芽生えた感情は、勇気か勝機か絶望か恐怖か。感情に疎い僕には、自己の判断すら難しい。

 

 

「いくらこの子が鈍足と言っても、この距離、述べ50m前後もあれば、よほど遅いポケモンでもなければ、近接わざが届く前に何かしらの行動はできる。

 

そして、そっちから近づいてくれるのなら好都合。このわざはその性質上、近ければ近いほど威力が増大する。

 

──ドミノ、『バークアウト』」

 

『アクジキィィィイイイ!!!!』

 

 

アクジキングの無数の口から放たれる、捲したてるような怒声。ほしぐもの『ハイパーボイス』が可愛く思えるその衝撃に、僕のミミッキュは盛大に吹き飛ばされた。

 

「音技……!?」

 

「は、みがわりを貫通する。知ってるよね?

 

それで、次のポケモンは何?」

 

「っ………!」

 

側に倒れたミミッキュを抱き起こしながら、僕はチャンピオンの切り札を『にらみつける』。

 

這い寄るような絶望感と、それに伴う恐怖心を内心へと納め、僕は新たなポケモンを呼び寄せた。




なお、アナはANAと書きます。



フルだとやっぱり戦闘が長い。まだ初戦なのに、いつ終わるんだこれ。

ちなみに主人公の手持ちは御三家+ぬしポケモン。オリシュさんはアクジキングを除き各世代からタイプが被らないようにルーレット。

また、オリシュさんは普通に性格が悪いです。

続きは………まあ、こんな駄文を見たいという方がいらっしゃれば適当に。
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