ド一ノレズフ口ソトライソ   作:MIA

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 45口径は正義。


M1911との安易なイチャつきのようなもの

「しっきかーんさまー! ただいま戻りましたよー!」

 

 穏やかな鈴の音の音圧を上げたような声と共に、勢いよく自室の扉が開けられた。

 

「ぁーいガバちゃんおかえりー」

 

 眺めていたノートPCの画面から、視線を扉の方へと移す。そこにいたのは、肩にかからない金髪(ブロンド)をした、十代半ばに見える女の子だった。

 

 白いシャツと白いミニスカート。上からは涅色の半袖ジャケットを羽織っている。豊かな胸元には、星条旗をモチーフにしたネクタイが二つの双丘に挟まれていた。

 

「もーその呼び方やめてって言ったでしょー? そろそろホントに怒るよー?」

 

 扉を閉めながら、その少女は口をとがらせて言う。

 

「わかったわかったごめんて」

 

「そう思ってるなら行動で示してくださいっ」

 

 こちらへ向き直るなり、彼女はぷいとそっぽを向いてしまった。

 

「はいはい。おかえりナインティーン、後方支援おつかれ」

 

 コルトM1911(ナインティーンイレブン)。だから彼女のことは、愛称としてナインティーンと呼んでいる。俺はガバメントと呼んでいたが、どうも彼女には不評らしくそう呼ぶことは少なくなった。言うても1911=ガバメントという脳内の等式はなかなか崩れないので、ついガバメントと呼んだりもするが。

 

 まぁガバちゃんと呼んだのはほぼ悪意だけどな。

 

「ただいま、ダーリン」

 

「んんんんん……その呼び方もやめてくれっつったろォ?」

 

 出会ってそう間もないうちから、ナインティーンは俺のことをダーリンと呼んでくる。かわいい子にダーリン呼ばわりされるのは悪い気はしないが、恥ずかしさ等諸々の事情もあってそう呼ぶのはよしてほしい。

 

 ナインティーンは俺の要望を聞きつつ、来客用のソファに座った。

 

「えーいいじゃないですかあダーリン♡」

 

「いや普通に恥ずかしいんで……あと一応僕立場上なんでぇ」

 

「そんなお堅いこと言う人じゃないクセに~」

 

 本音と建前を逆にした上両方とも包み隠さず伝えてみるが、あまり意味はない。

 

「あーうるさいうるさい」

 

「だーりーん♡ だーりんだーりんだーりんだーあーりーん♡」

 

「リンダリンダうるさいなブルーハーツかお前はァ」

 

「むー、指揮官様にこそ愛の意味を知ってほしいですね」

 

「そんなん脳内の電気信号と化学反応が生む幻じゃい」

 

「わ、女の子前にそんなドライな発言しますぅ?」

 

「世の中なんでも幻みたいなもんやし。だからさっきから終わんねぇ部隊の再編成も幻なんや……全部ウソやねんこの世界」

 

 そう言って再びノートPCに向き直る。そこにはG&KPMCが保有している戦術人形たちの名と顔写真が表示されていた。社の人形保有数の拡大に伴い、部隊の再編制が必要になっていた。だからこそ、ナインティーンが帰ってくる前から部隊の再編制に頭を悩ませているのだが、意外と思うようには進まなかった。

 

「何トチ狂ったこと言ってるんですか? もー……」

 

 ナインティーンのその言葉の後、コツコツと彼女のレザーブーツの足音が近づいてくる。彼女に限らず、G&KPMCが保有している戦術人形たちはパーソナルスペースを容易に超えてくる。少し距離を詰められる程度なら、意識しない限りはあまり気にならなくなってしまっていた。

 

「ファッ!?」

 

 すると不意に、右耳に暖かい風が吹きつけられると同時に、むず痒い快感が全身に広がった。思わず肩が縮こまる。

 

「これも幻ですか?」

 

 右耳のすぐそばから、ナインティーンの甘く囁くような声が発せられる。どうやら側に来たナインティーンが右耳に息を吹きかけてきたようだ。

 

 自律人形なんて呼び方をされてはいるが、彼女たちはあらゆる面で人間に近い。"暖かい息を吐ける"ことも、高性能さに拍車をかけている。これじゃまるで人形やアンドロイドというよりレプリカントだ。

 

「……浮かびかけてた編成が今ので全部吹き飛ばされたぞ」

 

 恥ずかしさをごまかすように言い、肩を縮こまらせたまま彼女の方を睨みつける。

 

「えへ」

 

 クソッかわいいじゃねーか。

 

「ヘッヘッヘッヘ」

 

 ナインティーンの小悪魔スマイルに対抗して小悪党スマイルを浮かべつつ、両手を彼女の両の頬へと持って行き、つまむ。

 

「む゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

 

 そのままぐりぐりとつまんだ指を動かす。

 

 マリオ64のオープニング画面よろしく好き勝手に動かした後、ぶへっと彼女の頬を内側へ押してフィニッシュ。

 

「つーか帰ってきたばっかなんだからまず休めよ……」

 

「そんなに疲れることじゃないもの」

 

 ナインティーンはほっぺを両手で撫でつつこちらをジト目でにらみつけている。

 

「フーンそんなもんなんすか」

 

「そんなもんなんです」

 

 と、頬を撫でる彼女の手を見てふと気づいたことがあった。

 

「なあ気になったんだけど、ちょっと銃貸してくれない?」

 

 ハンドガンを使用する戦術人形たちは、その携帯性を十分活かし常に己の得物は携帯している。ナインティーンは任務時二挺持ち(トゥーハンド)で用いるが、常に持つのは一挺だけだ。

 

「…? いいですけど」

 

 ナインティーンは慣れた動きで右腰のホルスターから黒いガバメントを引き抜く。マガジンキャッチを親指で押して、左掌にマガジンを落とす。中指から小指の三本指と、ガバメントのグリップでマガジンを挟み、保持。銃を傾けてスライドを素早く引き、薬室に収まっている一発の45ACP弾を排出。飛び出した弾丸は重力に従い、ナインティーンの左掌に収まった。

 

(いつ見ても戦術人形たちの銃捌きは惚れ惚れするな……)

 

 戦術人形として、銃に関連する操作やテクニックは一通りインプットされている。それに機械の正確さと素早さが加われば、十代半ばの見た目をした女の子がプロ顔負けのタクトレムーヴをしている様を見ることができる。まぁ今の動きはタクトレムーヴとは少し違うものだが、それでも見ていて気持ちのいいことには変わりない。

 

「はい、どーぞ」

 

 ナインティーンは弾丸とマガジンを胸のポケットにしまう。空撃ちして弾が入ってないことをしっかり確認し終えると、銃身を握り、グリップをこちらへ向けてガバメントを差し出した。

 

「ん、ありがとう」

 

 手元にあるこの自動拳銃、M1911。通称ガバメント。開発されてから100年、いや150年以上経ったにも関わらず、今こうして実戦に用いられている1挺が手元にある。上位互換のクローンがいくつも開発されているが、この基本のモデルも今なお人気だし、現役だ。

 

 アメリカ人のために作られたこれは、日本人にとっては少し大きい。ましてやナインティーンのような、十代半ばの外見をした女の子にとってはなおの事だ。

 

 ナインティーンの右手を引っ張り寄せ、ガバメントを持たせてみる。手の正中線と、銃の正中線を一直線にさせて握らせようとすると、どうしても指は満足な位置にならない。

 

 拳銃の握り方として、"銃と腕の正中線が一直線になるように持つ"というのがある。だが銃と手の大きさが合わないと、そういう持ち方ができないという弊害が起きるのだ。

 

「し、指揮官様……?」

 

 男が両掌の中で自分の手に銃を握らせているのだ。そらそんな戸惑いを見せるわな。ちょっと嬉しそうなのがなんか癪だけど。

 

「あぁ、いや。ナインティーンって二挺持ちしてるけど、手の大きさとか問題ないのかなって気になってさ」

 

 ガバメントを机に置くと、今度は自分とナインティーンの右手を重ねて大きさを比較する。やはり実戦に赴く彼女の方が、銃を満足に扱うには少し大きさが心もとなかった。

 

「なるほど。確かに手の大きさは小さいですけど、特に問題ないですよー。正中線を意識した持ち方をしなくても、戦術人形としてのスペックとプログラムがあればリコイルコントロールも簡単なんです♪」

 

「へぇーなるほど。謎が解けたわサンキュー」

 

「いえいえ、ダーリンのためならお安い御用です」

 

「ハハァ……。そんでさぁ」

 

「はい」

 

「そろそろこの、握った手を離していただけると……」

 

 何気なく手を重ねたのが間違いだったのだろうか。そのままナインティーンは俺の指と指の間に自分の指を絡めてきたのだった。さながらそれは、俗に言う恋人繋ぎと酷似している。

 

(わたしぃ)、さっきダーリンの謎を解いてあげましたよね?」

 

 "ギブアンドテイクだ。逆らうな"。そんな言葉が脳内で勝手に続いていた。

 

[GRKR]Xx_C0MM4ND3R_xX:f***

[CoLT]H4ND_C4NN0N1911:deal with it

 

「はい、というわけでこっちも」

 

 と、左手を差し出してきた。

 

 ナインティーンに限らず、彼女たち戦術人形はたしかに見た目は可愛い。正直ドキっとする時もあるけど、所詮彼女たちは資源さえあればいくらでも量産可能なロボットだ。

 

 しかし、俺は黄金時代の文化に育てられてきた人間だ。人とロボの友情を描いた作品はたくさんあるし、実際共感や納得できる部分は多い。スカイウォーカー親子にとってのR2-D2のように、自律人形たちが人間の頼もしい相棒になっていることは間違いない。

 

 かといって恋愛対象になるかと言えば、未だ世間では賛否の別れるところだ。生殖ができなかろうと恋人になっている者も一部はいるし、その人の価値観も十分に尊重できるものではある。とはいえ自分がそうなれるかと言えば、悪いがそうは思えない。のだが……。

 

 俺はあきらめたように首を振り、左手を差し出してナインティーンと指を絡めた。

 

「まるで相思相愛ですね」

 

「あーゆーきでぃんみー」

 

 中身が臓物だろうと機械だろうと、やはり可愛いものは可愛いと思ってしまうのがオタクの性というか業というか。

 

 揺れ動く天秤が止まる日は、まだまだ遠そうだ。

 

「待て待て待てちょっと待て、ちから、ちからつよいって。何近づいてきてんだよお前よォ」

 

「このままぁ、相思相愛らしくぅ……」

 

 握られた両手を強力な握力と腕力で後方へと押され、身動きが取れなくなる。せっかくローラーのついている椅子くんも、背後にきっちり固定されたデスクと挟まれて動けなくなっていた。

 

 そして"してやったり"といった感情に満ち溢れたナインティーンの顔が、じわじわと視界を埋めていく。

 

「力づくの時点で相思相愛じゃねーじゃねーか!」

 

「"らしく"なので多少の誤差はスルーでオッケーです!」

 

「バカおまえマジでやめ……n……!」

 

[CoLT]H4ND_C4NN0N1911 TakeDown [GRKR]Xx_C0MM4ND3R_xX

[GRKR]Xx_C0MM4ND3R_xX:NNNNNNNNNNNNNNFUUUUUUUUUUUUUUUUUUU

 

 




冷静に考えると力づくで××(なんか)してくるロボって普通にホラーですよね。

そして果たして次回はあるのか。
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