ド一ノレズフ口ソトライソ   作:MIA

7 / 7
 どうせ誰も待ってない。いやきっと俺が待っていた。

 【リアクション・トゥ・コンタクト】、完結です。

 ふと「続き書こ」って思って何も考えてない状態から2,3日ぐらいでできました。その割にはなんかめっちゃタイピングする手が進んで楽しく書けたと思います。


リアクション・トゥ・コンタクト 4

 先頭を歩くUZIの足が止まる。

 

「こちらUZI(ウージー)、地下へのエスカレーターを見つけたわ」

 

 視界の端に映し出された一枚の画像を一瞥してUZIが言った。それは先ほどUZI達が見つけたショッピングモールの簡素な見取り図だった。視界をスクリーンショットし、オートトリミング機能で余計な部分を切り取ったマップ画像。本来モール内の各店舗への案内であるため、建物の構造を把握するには少し情報が足りないが、ないよりはマシだった。

 

『そこへ向かうのは1階のクリアリングを済ませてからだな』

 

「了解」

 

 1911達の戦闘が行われた後、部隊は各回の索敵を行っている。1911とG3は三階の索敵、そして非常階段から突入したM4は二階を索敵していた。

 

 M4A1は肩にストックを当て、銃口を少し下げた状態(ローレディポジション)で銃を構えつつ歩を進める。

 

 つい先ほど屋上で戦闘があったにも関わらず屋内は酷く静かなものだった。聞こえるのは、足を覆う強化外骨格と一体化したヒールブーツと、自身の衣服や装備(ギア)の布がこすれる音。それが三人分。屋上の奴らと違い、屋内の鉄血共は勇んで戦いを仕掛けてくることはないようだった。

 

 先頭をダミードール。そのすぐ後ろに、ダミーを盾にするようにメインフレームが追従する。もう一体のダミーは他方向の警戒だ。

 

 上階への視認性や誘導といった観点から吹き抜けとなっているこの建物は、店の仕切りに隠れているかもしれない敵だけでなく、上階からの攻撃も予想される。散開して各階を索敵するのは、これを防ぐのにちょうど良かった。

 

 各階をクリアリングしながら、戦術人形たちは着実に敵へと迫っていく。

 

 モールの突き当りにある少し広い店(だったエリア)にたどり着く。残るはここだけだった。品物の代わりにゴミや埃を並べた陳列棚が点在する。遮蔽物としては心もとないが、グリフィンの人形(てき)から姿を隠すだけなら都合が良い場所だった。

 

 ダミーと分かれ、散開してその部屋のクリアリングにあたる。散開してもなお広く死角の多い場所だった。

 

 空き缶の転がる音がした。それは部屋の奥へ到達し、引き返すと共に最終確認を終えようとした時だった。それはM4A1たち(じぶん)が発した音ではない。

 

「ッ!」

 

 M4は音がしたと思われる方向に銃口(しせん)を向ける。少し離れた場所にある陳列棚。その陰に音の発生源はありそうだった。

 

 その通りと言わんばかりに、音の発生源と見込んだ場所からわずかな赤い光が漏れた。それに続くように、似た光が点々と部屋のいろんな場所に現れ始める。

 

 思い浮かべた敵の姿と、そいつの普段との振る舞いの違いに、思わずM4の顔に苦笑が浮かんだ。

 

「―――こんなことするんだ」

 

 固いものが何度も床を叩く音と、モータの駆動音。そして危険を意味する赤い光が広がっていく。

 

 戦闘用にしては小さい四角いフォルム。ボディの上部にはミニレールガンが搭載されている。赤く光る大きなモノアイと簡素な四本足のせいでどこか愛玩用ロボットにも見える鉄血の兵器【ダイナゲート】。

 

 巧妙にクリアリングから逃れていたダイナゲートの群れが、一斉にM4A1へと襲い掛かってきた。

 

「コンタクトッ!!」

 

 M4は近くに現れたダイナゲートの赤い光に銃口を向ける。引き金を絞り、フルオートで数発弾丸を叩き込む。

 

 小さく素早いが、耐久性は低い。当てれば壊せるし、当てられない彼女(M4A1)ではない。

 

 だけど塵も積もれば山となる。

 

(数が多いっ……!)

 

 接近してくるダイナゲート共を処理しきる前に、距離を詰められ取りこぼしに攻撃を受ける可能性が高かった。

 

 敵の有効射程に入る前に踵を返し、距離を取るべくダイナゲートに背を向け駆け出す。

 

「嘘っ……!」

 

 だが反対側からも、同じように数匹のダイナゲートの群れが襲い掛からんと距離を詰めてきていた。

 

 M4は即座に周囲を確認、速度を緩めず走り続ける。そのまま走り続ければ一秒と経たない内にダイナゲートの射程に入り、ミニレールガンの雨が猛威を振るうことになる。

 

(ちょっとびっくりしたけどまだ道はある……!)

 

「上っ!」

 

 しかしM4は床を蹴り、側にある陳列棚に足をかけてさらに飛び上がり、空中へと飛び上がった。正面にいたダイナゲートたちのミニレールガンから弾丸が放たれるが、突如上へ回避したM4には当たらなかった。

 

 それだけで彼女のターンは終わらない。ダイナゲートの群れを飛び越えると身をひねり、百八十度空中で回転する。黒髪と腰に巻いたジャケットが靡き、弧を描く。

 

 空中でライフルを構えホロサイトを覗き、戦闘処理の中でも射撃統制の処理(FCS)を一時的に優先。彼女は一定時間、通常より効果的に銃撃を与えることができる(火力集中T発動)

 

 刹那の世界。EOTechホログラフィックサイトがダイナゲートを捉え、空中にいるM4A1の照準は一匹のダイナゲートへ定められた。

 

 M4A1の引き金が絞られる。撃針が雷管を叩き、ガンパウダーに火をつける。もたらされる燃焼ガスが弾丸を押し出すと共にボルトを後退させ、次弾を薬室に装填。それらの行程を毎秒十発前後のペースで行い、鉛の雨が放たれた。

 

 戦術人形という"機械"による正確なガンコントロール。空中でフルオート射撃しているにも関わらず、弾丸は無駄なくダイナゲートの群れへと飛び込んでゆく。

 

 時間が止まった世界で、彼らだけが動いているかのように、弾丸の雨は空気を裂いて敵の群れへ飛翔する。

 

 鉛の雨はダイナゲートのボディにめり込み、弾丸とそれが纏う衝撃をもって中の配線や基盤をぐちゃぐちゃにかき回して突き抜けていく。レールガンの銃身をいともたやすくへし折り、赤く光っていた(一部の人にとっては)愛らしいカメラレンズを叩き壊していった。

 

 M4がジャンプして着地するごく短い間に、挟撃しようとしていた片方の敵の群れは全滅していた。M4は着地と同時に銃撃を一旦止め、セミオートにセレクターを切り替える。地に足ついた立射姿勢による堅実なダブルタップで二発ずつ叩き込み、次々とDinergate(ヘイタイアリ)を刺し殺す。セミオートによるダブルタップだが、速さは熟練のシューターやインストラクターに匹敵するか、それを超えていた。

 

 残る一匹のダイナゲートが、先ほどのM4の真似をするように陳列棚へ飛び上り、そこからM4へと飛び掛かってくる。

 

 難なく今までと同じように屠ろうと引き金を絞るが、カチカチと音を立てるだけだった。銃を傾け、ボルトキャリアを一瞥。後退したまま停止している。弾切れだった。

 

 リロードよりも、飛び掛かってくるダイナゲートのミニレールガンが吠える方が速い。既にこちらを向いているレールガンの銃口を見てそう判断し、M4は回避に専念。

 

 経験から狙ってから撃つまでのタイミングをあらかた把握していたので、かわせる確率は高かった。上半身と首を傾けると、レールガンの銃声とほぼ同時に耳元で風切り音。残像を描くように追従する黒髪の波に、小さな穴が空く。

 

「ふんっ!!」

 

 そして乙女の髪を傷つけたなと言わんばかりに、黒髪の美少女は空中のダイナゲートへハイキック。強化外骨格に覆われた、タクティカルドールの膂力による少女の強烈な蹴り。金属同士の衝突音がガンと鳴り響く。

 

 ダイナゲートは思いっきり壁に叩きつけられた後、床に落下。蹴られた部分がへこみ、カメラレンズにはヒビが入っていた。

 

 M4は左脚を戻し、空になったマガジンを自重で落下させる。チェストリグから新たなマガジンを取り出し、装填。親指でボルトキャッチを押し、薬室に一発目を送り込んだ。

 

 そして瀕死のアリに一発。とどめを刺す。

 

 銃声はまだ止んでいない。ダミードールもまたダイナゲートと交戦中だった。M4はダミー(じぶん)の援護へ向かうべく駆け出す。

 

 

 

 

「地下に向かうぜ」

 

『了解』

 

 M4の交戦より少し前。M4達より早くクリアリングを終えていたAKとUZIは、1階の索敵を終え地下へと向かっていた。電力の供給を失いただのボロボロの階段となり果てたエスカレーターを降り、AKとUZIの二人、もとい五体の人形は地下へと降り立つ。

 

 広い空間に等間隔にならぶ太く四角い柱。その間を所々埋めるように、陳列棚や冷蔵ショーケースだったものが並んでいる。昔は食品売り場だったようだ。

 

 AKとUZIは銃を構え直し、いるであろう敵に備える。UZIは左右の手に銃をそれぞれ持ち、トゥーハンドスタイルに切り替えていた。

 

『コンタクトッ!』

 

 M4の声が無線に流れる。

 

『ダイナゲートか。M4なら単体で処理できる。他は各自行動を続けてくれ』

 

 冷静かつ、人形に信用を置いた指揮官の落ち着いた声が続いた。それを耳にしつつ、UZIは自分たちが置かれている状況の違和感に思わず疑問が口に出た。

 

「ねぇ……ここ"電気通ってない"んじゃなかった?」

 

「そう見えてた……いや見せてただけみてぇだな」

 

 地上階の照明やエスカレーターはとっくに機能してなかったにも拘わらず、地下は照明によって照らされ、その全貌を見せつけている。流石に施設の劣化もあり光らないライトもあるが、視界の確保に困るほどではない。

 

 広すぎず狭すぎず、遮蔽物に恵まれ、おまけに灯りもついている。()()()()()()()()()()()()。UZIもAKも、戦闘中継を見ている指揮官も同じことを思ったその時、

 

「時代遅れのジャンク二挺だけとは、ずいぶん余裕だな。グリフィンの人形共」

 

「鉄血のボス……!」

 

「どこにいやがる……」

 

 ショッピングモールの地下(バトルフィールド)で反響する女性の声。人形越しに聞いたその声を、指揮官は知っていた。

 

『ハンターか』

 

 指揮官は全体の状況を思い出す。G3と1911は3階のクリアリングを間もなく終える。M4は先ほど敵と交戦していたが、ダイナゲートの群れだ。M4の戦闘能力なら切り抜けられるし、増援が必要なのはここよりも地下だ。

 

『1911、G3。直ちに地下に向かいUZI達の援護』

 

『了解!』

 

『はい』

 

 彼女たちにとっては頼もしい指示だが、援護が来るまで鉄血のハイエンドモデルを相手に戦術人形二人で持ちこたえなければならない。

 

『回避最優先だ。それでも撃つ時は制圧射撃か援護射撃。狙わなくていい』

 

「そのつもりよ」

 

「バラまくのはあたしも得意だぜ」

 

 UZIとAK(ふたりとさんにん)は互いに背中を預け、死角を作らないよう全方位を警戒する。遮蔽物が視界の邪魔だが、同時にこれは彼女たちの盾でもある。

 

 二丁拳銃と高い機動力を武器とするハンターにとって、遮蔽物の多い室内というのは最適なフィールドだ。位置を特定し追い詰めたように思えたが、同時に敵の"狩場"に誘い込まれていた。

 

ハンター(あいつ)ST AR-15(フィフティーン)を人質に取られた時倒したことがある。しかし今回は真っ向からのガンファイト。最新の人形(ハンター)と比べてスペックは劣っていたとしても、こっちも経験を積んだ部隊だ。みんなが合流さえすれば勝てる戦いではあるが、それまでは……二人を信じるしかないな)

 

「ハンティング開始だっ!」

 

 ハンターの声がした直後、二種類の銃声がまくし立て合う。お互いに敵を確認したAKのダミーとハンターが同時に撃ち合ったのだ。

 

「くそ、かすった。UZI!」

 

「ええ!」

 

 ダミーのダメージを確認しながら、AKはUZIに制圧射撃を要請。二挺のサブガンがパラララと吠え、タイミングを読ませない不規則なフルオート射撃でハンターのいた場所をふさぐ。

 

『回り込ませるな、散開してAKも制圧射撃』

 

(攻撃する時にわざわざ喋るたぁ……これ完全にナメとるね)

 

 指示をしながら指揮官は敵の煽りに内心不快感を覚えていた。彼の煽り耐性はカスだ。

 

 AKはUZIと分かれ、回り込まれないように位置取りをして複数の方向をダミーと連携してカバーする。顔を出すようならすぐさま弾丸をブチ込む構えだ。

 

「店の中は……走るなっ!」

 

 UZIはそう言い放ちながら、ポーチから取り出した焼夷手榴弾のピンを引き抜き、投擲。直線に近い放物線を描き、ハンターが走り回っているルートの一部に落ちる。目的は移動の妨害だ。

 

(店でサーマイトぶちまけるのもイカンでしょ)

 

 邪魔になるので指揮官は心の中でつぶやいた。

 

 落ちてすぐ、テルミット反応により缶から放出された光のように眩しい炎が噴出。投げられ床を転がっていた手榴弾は周囲に熱と光と煙をぶちまける。

 

「こざかしいことを……!」

 

 狙い通りハンターの動きを妨害するのには成功したが、彼女の怒りにもまた火をつけた。ハイエンドモデルの膂力を持って床を蹴り、床をスライディングしながら遮蔽物を飛び出して二挺の銃を突き出す。今狙えるのはAKのダミードールだった。制圧射撃は所詮制圧射撃であり、勢いよくスライディングして飛び出してきたハンターに弾が当たる確率はそう高くない。

 

 鉄血公造のハンドガンから放たれる複数の刺突攻撃。次世代の強力な弾丸が、金髪の少女の胸部と腹に吸い込まれるように突き刺さっていった。

 

「あーやりやがったチクショー!」

 

 対応が一瞬遅かったAKのダミーは撃ち返すこともできず、無残に人工血液と部品を背中にできた射出口からぶちまけながらあおむけに倒れる。バイタルサインはかろうじて残ったが、戦闘は不可能だった。

 

「ダミーやられた!」

 

『あと少し耐えて』

 

『G3たちがエスカレーターの前に来た。援護できるか』

 

「リロードッ!」

 

 ハンターがスライディングで飛び込んだ柱へ二方向から制圧射撃を加えるべく、UZIは走りながらリロードを行う。

 

 1911がやっていた要領で両手の銃を右手だけで保持。それぞれのグリップの下部にあるマガジンキャッチを人差し指の第二関節と親指で押しながら、空のマガジンを引き抜き放り捨てる。

 

 指で挟んだ新たなマガジン二つをマグポーチから引き抜き、マグウェルにあてがう。半ばまでマガジンを挿入し、底を掌で叩いて確実に装填。

 

準備できた(レディ)! G3ッ!」

 

 位置を変え終えると同時にリロードも完了。AKに合図しながら、UZIはハンターの隠れている柱へ向けて拳銃弾を遠慮なくばらまく。

 

「ひっこめッ!!」

 

 ほぼ同じタイミングでAKも制圧射撃を再開。リロードを終えたダミーも加わり、二挺のライフルと四挺のサブマシンガンが、敵を柱へ釘付けにした。

 

 マイクロウージーの軽い銃声と、AK-47の重い銃声が間断なく轟く。味方とすれば頼もしいが、わずか数秒の盾だ。

 

 攻撃が来ないそのわずかな隙に、1911とG3がエレベーターをドタドタと駆け降りる。

 

『G3、回り込んで横から撃て。1911、UZIとAKの近くでスタンバイ。いつでもカバーできるように』

 

「ええ」

 

「はい!」

 

 柱の間を駆け、G3はハンターがくぎ付けになっている柱の側面へ回り込む。1911はUZIと同じカバーポイントへ移動。隣の柱には制圧射撃を続けるAKがいる。

 

 だがやられっぱなしのハンターではない。UZIの弾が切れ、ダミーと攻撃を交代しようとする一瞬の隙を狙い、多少の被弾を覚悟の上で大きく姿を現す。腰を低くし、二挺拳銃を連射。

 

 古い火器の銃声ばかりが轟いていた地下空間に、次世代弾薬と拳銃による()()()()銃声が混じる。

 

「ぁあっ、ウソ……!」

 

 被弾したのはUZIの本体(メインフレーム)だった。隠れようとしていたため胴体は無事だが、左腕と左脚に数発被弾。二の腕の真ん中を突き破り、人工筋肉は著しく破損。左脚には太ももや膝などに数発銃創が生まれ、黒いニーソックスに人工血液が染みていく。こちらも筋肉やフレームが損傷し、自力で歩くのは不可能になった。

 

 姿勢を崩して敵の攻撃範囲へ倒れそうだったが、ダミーに自分を引っ張らせて柱の陰に倒れる。

 

『先にメインか……! UZI撤退だ! ダミーに運ばせろ!』

 

「スモーク投げる!」

 

 1911がスモークグレネードをハンターへ投擲。敵の視界を遮り撤退の援護。

 

「また手榴弾……!」

 

 鬱陶しい煙に顔をしかめ、ハンターは乱射を続ける。応戦するように1911も煙に向かって45口径弾を放つ。二挺拳銃同士による牽制のし合い。

 

 敵の視界が塞がれている内に、UZIは自身のダミードールに運ばれエスカレーターを上り戦線離脱。

 

 回り込んだG3は遮蔽物から一瞬だけ顔を出(クイックピーク)して覗き込み、ハンターを確認。ポーチから榴弾を取り出すと、銃身下部に装着されているグレネードランチャーに装填。露出面を抑えるべく左肩にストックをあて、再び銃と共に顔を出す。

 

 喰らえ。そう口だけを動かしながら、G3はランチャーの左側面にあるプッシュレバーを親指で押す。ぽんっという気の抜けた音と共に、榴弾がハンターめがけて飛翔。

 

 だが爆発はG3の想定した位置では起きなかった。

 

「火に煙に爆発か、派手な戦いが好きだな」

 

 1911の発煙手榴弾と違い、榴弾の煙はそれほど場には残らない。煙の向こうに薄く見えたのは、不敵に笑う狩人の銃口()だった。

 

「うそでしょ……?」『ウッソだろお前……』

 

 G3と戦闘中継を見ている指揮官の声が重なる。

 

 寸での所でG3の存在に気づいたハンターは、片方の銃をG3へと向け迎撃態勢を取っていたのだ。G3の銃口や視線の向きから瞬時に弾道を予測。タイミングを合わせ、自分に被弾する前に爆発させた。無論ある程度の爆風は喰らったが、ハイエンドモデルの戦闘用ロボにとってさほど脅威ではなかった。

 

『グレネード空中で撃ち落としやがった』

 

「クソッ!」

 

 左手で横からハンドガードを握り、その場でしゃがむ。しゃがんだG3のメインフレームの後ろから、ダミードールが立射で姿を現し銃を構えた。

 

 グレネードをミスを埋めるかのように二挺のG3が吠える。ガバメント、そして鉄血の最新ハンドガンの銃声に続いて、重い発砲音が演奏に加わった。

 

 ハンターはG3から姿を隠しつつ、二挺拳銃をそれぞれG3とガバメントの方向へ向けて牽制射撃。今だ彼我を煙で遮られている分、1911の側に姿を晒す方が安全だった。

 

「あたしも前出ていいか!?」

 

『お前はそこを守れ。奴のルートを限定する』

 

 今ハンターは壁際に追い込まれ、G3と1911からの攻撃を受けている。そこから逃れようと位置を変えれば、AKの攻撃範囲に入る。今のハンターにとって有効な手段は、あえて(1911)側に突っ込むこと。そう判断するのも遅くなかった。

 

 素早く煙から現れて至近距離からの奇襲。百五十年以上前の骨董品(アンティーク)で前線に出る愚かなM1911(ブロンド)相手に負けるはずはない。敵の包囲網から逃れるついでに一体仕留めてやる。

 

 ハンターは銃撃を止め、身を低くして駆け出し白い煙の中へと突っ込んだ。

 

「ッ!!」

 

 実際、ハンドガンの戦術人形ごときで鉄血のハイエンドモデル一体を倒すことはほぼ不可能。それはハンターの慢心ではなくマシンスペック等の事実に基づいた冷静な判断だ。

 

 煙を抜けた先でハンターは見た。次の得物と定めていた、骨董品を構えたブロンドを。しかしそれ以外の人形も視界に入っていた。

 

「攻撃……!」

 

 透き通るような少女の声を、二挺のM4A1による近距離フルオート射撃が轟音をもって塗り潰した。

 

 部隊と合流したM4A1による迎撃。指揮官の指示に従い、ここで待ち構えていた。ダイナゲートの奇襲によりダミードール一体は戦闘不能になったが、まだ彼女に戦う力は残っている。

 

 わずかに体を前に逸らして反動に備え、ハンドガードを横から保持するCクランプ。機動力のあるハンターを相手取るのに適した構えだ。おまけにダミードールと共にFCS処理を優先(火力集中T)している。現状で彼女が出せる最高火力を、近距離かつ真正面からハンターへとぶつけていた。

 

 リロードを終えた1911も、ついでと言わんばかりに攻撃に加わる。

 

 2062年の廃墟の地下に、古き名銃二つの声が轟く。

 

 静寂が訪れ、申し訳なさそうな金属音を立てて空薬莢が転がる。彼女たちの目の前に()()のは、かろうじて人型だったと判別できる、無数の弾痕を刻んだスクラップだった。

 

 

 

 

 ダンデムローターによってもたらされる轟音が、その空間を包み込んでいる。細長い小さな部屋のような空間の壁には、十人の少女がいた。彼女たちは壁に備え付けられた椅子に座っており、今自分たちが乗っているものが仕事を終えるのをじっと待っていた。

 

『もうすぐ到着だ。降りる準備しておけ』

 

 パイロットが無線で伝え、座席に座る彼女たちが装備しているヘッドセットに音声が届く。それを聞くと、彼女たちは同時にほっと息を吐いた。

 

「美味しいトコだけ持ってくとか言ってたけど、持ってくどころか手足持ってかれちゃったわ……」

 

 出撃時の発言を思い出し、ヘリの座席に座るツインテールの少女は自嘲気味に笑った。人工血液の流れる戦術人形でも患部は人間と同じように止血され、包帯が巻かれている。UZIの負傷した腕は布を使って首から吊っている。人間と違う所があるとするなら、細菌などにさほど気を遣わなくていいことだろうか。

 

いつも通りの任務(EASY DAY)かと思ったが、存外ギリギリな任務になってしまったな』

 

 申し訳なさそうな声音で指揮官の声が無線を通じて彼女たちの耳に届く。

 

「それがあたしらのいつも通りだろ」

 

 AKはそう答えてふっと口元に笑みを浮かべた。

 

「……ええ」

 

 窓の外の空を見ながら、M4はそう同調する。その表情に笑顔はないが、生への安堵は確かにあった。

 

「……とんでもない日常ね……」

 

 天井を仰ぐUZIの口からは、大きなため息と共にそんな言葉が漏れていた。




 フィクションにおける物語を伝えるにおいて時としてカットされがち(憶測と偏見)な、”いつも通りの戦い”みたいなものをあえて書いてみたかったんだと思います。

 "Reaction to Contact"も、「接敵したときの反応」みたいな意味で、タクトレ動画のタイトルで見かけてこれや! って感じでノリで決めました。戦いの基礎の基礎、当たり前の動き。そういうベーシックでプレーンな感じと”いつも通りの任務”みたいなノリってなんか相性良くない?

 次何書くかなんてまだ考えてません。今度こそ失踪するには綺麗なタイミングですね。ほな、また……。
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