帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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ただの日常回


20:日本語を学ぶ

 私はインスタントコーヒーをひと口飲み、身体を温める。コーヒー香る執務室には私とレーベのみだ。最低限の職務も終わり、なにもしない、という時間が過ぎた。だが、それではダメだ。私が大ドイツ総統時代は、目標を達成する日まで休みは取らなかった。しかし、この場に拘束される身として、出来ることも同時に拘束されていた。さてどうするものかと考えていると、ふと、約束を思い出した。それに、それを習得しなければ何かと不便だ。

「〈レーベ、日本語を教えてくれ〉」

「日本語?いいよ」

「〈助かる〉」

 さて、それから日本語の授業が始まるのかと思ったが、レーベは使えそうなものを持ってくると言って部屋を出ていってしまったので、まだまだ時間がありそうだ。ぬるくなったコーヒーを一気に飲み干し、カップを机の隅へ追いやる。学びたい言葉はいくつもある。やはり、日本で活動するにあたって言語の壁は邪魔である。ムッソリーニがいれば別かもしれないが、ここには表に立って大衆を啓蒙出来るような天才がいるとは些か思えない。私がやるしかないのだ。もしかしたら、その他の言語を学ぶ必要があるかもしれない、そう思うと心配になってくる。暗記は何かと苦手なのだ。

「ただいま」

「〈あぁ、して、何か良い教材は見つかったか?〉」

「はい、夕張さんから漫画を借りてきたんだ」

漫画か。確か絵本のようなものだったか。確かに、子供向けの物語の方が教材としてはあっているのだろう。

「SSの残党兵も出てきて、総統にオススメだって」

ん?わけが、わからない。漫画とは、子供向けの書物ではないのか?ヒットラーユーゲントに向けて作られたものなのか?まぁ、読んでみるしかないか。

「〈H、E、L、L、S・・・?〉」

「ヘルシングだよ」

「〈ヘルシング?〉」

「あと、僕がここに来た時に使ってた日独辞書も置いとくね」

「〈あぁ、ありがとう〉」

「それで、何を教えようか・・・ひとまず、その本を読んでみたら?分からないことがあったら教えるよ」

なんと投げやりな、と思ったが、単語さえ出来てしまえば読める読める。日頃、日本語を聞いてドイツ語解釈しているためか、なんとなくの文法や最低限の語句は既に身についていた。

 いつの間にか自然光は太陽から月へと変化している。ついでにいえば、読み終えた。レーベは置き手紙を残していなくなっていた。

「〈ふぅ、なかなかに面白かった〉」

そう、誰に届けるわけでもない感想を呟き、私は再び1巻を開いた。

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