白色のワゴン車にのって男が帰っていくのを私は窓から眺めていた。少し経ってからそれを追いかけるように死んだ憲兵のひとりが利用していたらしい青色の車が出ていく。その後に前司令官のバイクにまたがった龍田が出ていく。私は彼女らに期待を込め、マックスのお古の日本語の教科書を開いた。
・・・・・・
『───あ、あの?龍田さん?なんで私前の車追いかけさせられてるんですか?』
車にのる夕張は私にインカムで素朴な疑問を投げかける。
「前の車の男がこの鎮守府の内情を知っているから、身辺調査するため〜」
『こ、声が怖いですよ。ってかなんで私なんですか!』
「他に車運転出来る子いる〜?」
『・・・理解しました』
白色のワゴン車はグングン進む。ただ、動きが不審ではあった。ウインカーをつけずに急に角を曲がり、つけたと思ったら反対方向に曲がる。完全にまこうとしている。私は夕張に帰っていいという旨の指示を出し、バイクでつけた。
夕張がいなくなった途端運転は通常走行に戻っていた。
少しばかり運転していると、白色のワゴン車はなんの変哲もないビルの地下駐車場へ飲み込まれていく。少し離れた場所にバイクを停め、私はそのビルの中へ入っていった。呼吸を軽く整え、谷口事務所と書かれた扉を開ける。
「誰や嬢ちゃん」
黒革の椅子にドッシリと座った
「え?私?」
「ハハッ 嬢ちゃんおもろいこと言うなぁ。それで、誰や」
乾いた軽い笑い声の後に、野太く重い声が響く。
「タキザワって言うんですけど、ビル間違えちゃったみたい」
「そうか」
私は振り向き、帰ろうとする。ヤクザ者に絡んでも得がない。扉を開けるとそこには黒い鞄をもった黒い軍服を着た男がニヤつきながら扉を開けようとしていたところだった。
「おっとすんません、嬢ちゃん」
「い〜え」
私が出た後、その男の声は弾んだ。
「いやー、聞いてくださいよ!海自に呼ばれて行ってみたら国家主義革命したいとか言っとるアホと出会いましてね。何故か怒られて帰ってきましたわ。ほんでな、なんか憲兵の数少なかったんで軽く小火器くすねてきました」
「盗んでも大丈夫なんか?」
「あいつら隠蔽大好きなんで、大事にはしませんて。安心してください。それに、九州では良くあることらしいですって」
扉を開け、駆けて行った。そして、思いっきり軍服男の後頭部の下側をぶん殴った。さらに、男が広げていた自衛隊の小火器を手に取った。
「ふぅ」
「貴様!なんのつもりや!」
「この銃、返して貰いますよ〜」
「じゃかましいんじゃ、ボケがっあ、ふぁ、ひぃ」
銃声とともに怒鳴り声が止む。
「ひぃ、ひぃ、嬢ちゃん、絶体絶命やで。皆の銃口お前に向かって伸びとるで」
口元から息を漏らしながら訴える。それを無視して私は鞄に小火器を詰めていった。すると、何回もの破裂音が響く。その発生源から放たれる弾は私に少なからずのダメージを与えた。
「お、おい。なんで死なへんのや!」
「まさか、お前艦娘か!」
「なんやて!」
「あら〜。バレちゃったかしら〜。まぁいいわ。この銃持ち帰っていい?抵抗する子はどこかしら。うふふ♪」
艦娘という人知の外の存在を前に誰も動けないでいた。私はそれを確認して、銃を軍服男の鞄に詰めて、事務所を出た。
バイクに跨り、鎮守府へ向かう。鎮守府に到着したらすぐに司令室に結果を報告しに行った。
・・・・・・
ノックの後に鞄を持った龍田が入室する。私はすぐさま中身を聞くと、なんでもこの鎮守府から盗まれた銃器らしい。彼らにはいつか報復しなければならないと心に決めたと同時に、気づかないうちに私の敵が内部に侵入して来ているのではないかという不安に駆られた。