演説の後、私は執務室で枯れかけた喉をミルクで癒していた。ちょび髭の先を白く染め、私は窓の外を見た。
「ふぅ、今日も今日とて素晴らしい日だ」
普段から使おうと意識していると、ふとした一言も日本語になるものだ。なんて事を考えながら、ゆっくりと流れる雲を目で追っていた。久々に絵でも描こうか。そう言えば復活してからまだ一度も、落書きさえも描いていない。腰を上げ、紙とペンを探そうとした時、ノックがした。
「ん、どうぞ」
勢いよく扉が開き、それぞれ各々の6種の敬礼が飛ぶ。
「で、用件は?」
私がそれを尋ねると、こちらは各々の表情であったが、一貫した主張であった。
一人は焦るように。
「はやく戦わせろよ!」
一人はねだる子供のように。
「そうそう、はやく戦いたいっぽい!」
一人は待てを主人にさせられている犬のように。
「はやく夜戦、夜戦!」
一人は狂気に染った純粋無垢な目をして。
「バラしたいの!はやく深海棲艦をバラしてみたいの!」
一人はそっぽを向き、興味が無さそうに。
「流石に気分が高揚します。いつ出撃できますか?」
一人は頬をほんのりと赤く染め、恥じらいながら。
「演説を聞いてから身体が火照ってしまいまして・・・いつこの想いを発散できるかと思うと」
要するに戦いたい。闘争を求めているのだ。突撃隊のように。獣のように。なんと利己主義的な闘争心であろうか。だが、それで良い。軍人はそれで良い。
「出撃したい気持ちはわかる。だが、大本営から出撃命令が下りてこない。最低限の軍規、もとい法律は守らねばならぬ」
私の前で落胆する彼女達。しかし、私は法治主義者であり、政治家だ。規則は守る。特に軍規は破ると後に響く。厳密な上下関係が瓦解し、軍全体に無秩序が蔓延してしまうからだ。私が訝しげな顔をする中、神通が口を開いた。
「提督、軍規なのは分かっております。しかし、このままではいつか必ず内乱が起きます」
その言葉には重みがあった。軍人の統制は戦争が1番楽なのだ。彼らの本職は戦争に他ならないのだから。それに・・・
「貴方が提督になった時、少し調べました。過去にも同じ様な経験があるのでは?」
突撃隊の事だ。なかなかに痛いところを突いてくる。現在時点で粛清を行うには、まだ組織が小さすぎる。それをわかった上での進言だ、否、脅しだ。神通はやり手だ。下手に逆らえば直ぐに私は失脚させられるだろう。しかし、飼い慣らせば強大な戦力だ。まだ、様子をみるべきだろう。
私はため息をひとつつき、折衷案を出した。
「わかった、よし、演習をしよう。そこで、諸君らの能力を見させてもらう。5、6人の隊をつくるのだ。隊ができたら報告にこい。3組出来次第総当りを行う。以上、散開!」
三者三様の返事があり、嬉しそうに皆、散っていく。
静かになった部屋で私はコーヒーを入れた。