帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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遅くなりました


26:闘争難民

 演説の後、私は執務室で枯れかけた喉をミルクで癒していた。ちょび髭の先を白く染め、私は窓の外を見た。

「ふぅ、今日も今日とて素晴らしい日だ」

普段から使おうと意識していると、ふとした一言も日本語になるものだ。なんて事を考えながら、ゆっくりと流れる雲を目で追っていた。久々に絵でも描こうか。そう言えば復活してからまだ一度も、落書きさえも描いていない。腰を上げ、紙とペンを探そうとした時、ノックがした。

「ん、どうぞ」

勢いよく扉が開き、それぞれ各々の6種の敬礼が飛ぶ。

「で、用件は?」

私がそれを尋ねると、こちらは各々の表情であったが、一貫した主張であった。

一人は焦るように。

「はやく戦わせろよ!」

一人はねだる子供のように。

「そうそう、はやく戦いたいっぽい!」

一人は待てを主人にさせられている犬のように。

「はやく夜戦、夜戦!」

一人は狂気に染った純粋無垢な目をして。

「バラしたいの!はやく深海棲艦をバラしてみたいの!」

一人はそっぽを向き、興味が無さそうに。

「流石に気分が高揚します。いつ出撃できますか?」

一人は頬をほんのりと赤く染め、恥じらいながら。

「演説を聞いてから身体が火照ってしまいまして・・・いつこの想いを発散できるかと思うと」

要するに戦いたい。闘争を求めているのだ。突撃隊のように。獣のように。なんと利己主義的な闘争心であろうか。だが、それで良い。軍人はそれで良い。

「出撃したい気持ちはわかる。だが、大本営から出撃命令が下りてこない。最低限の軍規、もとい法律は守らねばならぬ」

私の前で落胆する彼女達。しかし、私は法治主義者であり、政治家だ。規則は守る。特に軍規は破ると後に響く。厳密な上下関係が瓦解し、軍全体に無秩序が蔓延してしまうからだ。私が訝しげな顔をする中、神通が口を開いた。

「提督、軍規なのは分かっております。しかし、このままではいつか必ず内乱が起きます」

その言葉には重みがあった。軍人の統制は戦争が1番楽なのだ。彼らの本職は戦争に他ならないのだから。それに・・・

「貴方が提督になった時、少し調べました。過去にも同じ様な経験があるのでは?」

突撃隊の事だ。なかなかに痛いところを突いてくる。現在時点で粛清を行うには、まだ組織が小さすぎる。それをわかった上での進言だ、否、脅しだ。神通はやり手だ。下手に逆らえば直ぐに私は失脚させられるだろう。しかし、飼い慣らせば強大な戦力だ。まだ、様子をみるべきだろう。

 私はため息をひとつつき、折衷案を出した。

「わかった、よし、演習をしよう。そこで、諸君らの能力を見させてもらう。5、6人の隊をつくるのだ。隊ができたら報告にこい。3組出来次第総当りを行う。以上、散開!」

三者三様の返事があり、嬉しそうに皆、散っていく。

 

 静かになった部屋で私はコーヒーを入れた。

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