執務室前の青葉が気づけばレーベは既にいなかった。きっとドイツ艦娘を主体の戦隊にするだろうと踏み、とうとうあまりもの同士で組むことになったかと嘆いたふりを心の中でする。別に彼女にとって大した衝撃でもなかったからだ。
青葉はどうしたものかと考えた。ひとまず同じく売れ残りであり、古くからの友人を尋ねた。
「で、なんの用やねん、青葉」
「いやー、あの司令官が、演習するから戦隊組んでこいって。どうですか?龍驤さん、長波さん!」
「あたしは全然いいぜ!」
「ふぅ、ひとまずアンタがこの鎮守府にいる経緯を聞こうかな」
「あー、そうですねぇ」
青葉は視線を逸らし、悩むふりをした。
「で、なんでや?」
「んー、面白いことを求めてですか、ね」
「ふーん、ホンマか?」
「ええ、龍驤さんの出身が大阪であることと同じくらい自明の事実ですよ」
長波はその言葉に驚いた。喋り方は確かに関西弁ではあるが、出身は横浜のはずだ。長波は慌てて青葉に勘違いを提言しようとする。が、龍驤は左手で軽く制す。
「まぁ、ええわ。あと、うちも戦隊入るで。よろしく」
3人は、那珂を訪ねた。面倒くさそうなところから攻めたいという意思が3人の中で言わずもがなで一致した結果であった。
青葉は川内型の部屋をノックする。
「ども、青葉です!」
その言葉に真っ先に反応する那珂。すぐに扉を開ける。
「はーい、那珂ちゃんだよー!取材?それとも写真撮影ですか?」
「いやー、そうじゃないんですよね」
那珂は露骨に肩を落とす。でも、すぐに顔を前に向け笑顔であざとく首を傾げた。
「じゃあ、川内ちゃんか神通ちゃんに用事?ふたりはまだ帰って来てないよ?」
「いえいえ、那珂さんに用があるんですよ」
「へ?・・・あぁ、遠征先が決まったのね!」
「いえいえ、そうでも無く!」
「ま、まさか、解体・・・?那珂ちゃん何かやっちゃった?それとも何もしてなかったから?ど、どーしよー!」
「そうでも無く!戦隊組むので誘いに来ただけです!」
「ふぇ?那珂ちゃんを?」
「そうですよ」
「あ、ありがとう、ござい、ます」
驚きのあまり那珂は俯いて声を小さくする。龍驤がそっとその伏せられた顔からも見える位置に右手を差し出す。
「よろしゅーな」
輝かしい笑顔を見せ、ハイと頷き、那珂はその右手を両手で包み込んだ。
「それで、次は誰のところいくん?」
「うーん、雪風さんのところなんてどうですか?」
「いいんじゃねーか?」
「そうと決まればさっそく行こう!おー!」
ということで雪風の部屋に一同は到着し、青葉がノックする。
「雪風さーん」
すると可愛らしい返事とともに軽快にドアが開く。
「青葉さん。なんのご用でしょうか?」
「いやー、司令官が戦隊組めとの命を出したので、お誘いに来たんですよ。どうです?」
「そうなんですね!嬉しいです!」
そう言って雪風は賛同し、戦隊の加入を決めた。
「とうとう、最後の人ですね・・・」
そう言って龍田のもとへ。テンプレ通りにノックをし、名前を呼ぶ。そして、返事とともに扉が開く。
「だーれ?」
「青葉です!」
「ふーん、それでなんの用?」
「司令官が戦隊を組めと仰っているので、どうかなとお誘いに」
「でもぉ、私には天龍ちゃんがいるからぁ」
「そのーですね?天龍さんはですね、既に、もう」
「もう?」
「他の戦隊に加入なさってます」
空気が凍った。龍田が、普段表情が読めない龍田が分かりやすく苛立っているのだ。
「ふーん」
青葉は恐る恐る続ける。
「そ、それで、どうです?」
龍田は軽くニタリと笑った。
「フフフ、天龍ちゃんにはお仕置きが必要ねぇ」
「あ、ちなみにこの戦隊で演習もするそうですよ」
「へぇ、じゃあ、コテンパンにしなくちゃねぇ、フフッ。それじゃあ、よろしくね〜」
「よ、よろしくお願いします」
こうしてメンバーが全員揃い、一同は執務室へと足を運んだ。
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執務室に響くノックに返事をすると、個性がバラバラといえる艦娘達が入室してきた。すぐに彼女らが最後の戦隊だと気づき、私は戦隊名を考えた。
「これまた個性豊かな艦娘を揃えてきたな」
「あまりもの同士で集まっただけやしなぁ」
「えっ!?那珂ちゃんあまりものだったの!?」
「まぁまぁ、細かいとこは良いじゃないですか」
「そうよ〜。結局ここのみんなはあまりものに変わりないんだし〜」
「そうだぜ、那珂」
「雪風も平気です!」
ふむ、個性的であれど、まとまってはいるようだ。そんな宝石があっただろうか。いや、あるぞ。
「Achatだ。Achat戦隊なんてどうだ?」
「しれぇ、あはーととは?」
「日本語ではなんだったか・・・」
そう言って私は内線でレーベに確認をとる。
「あれだ、瑪瑙らしい。そう、瑪瑙戦隊だ」
「宝石なんて、アイドルにピッタリ!」
「洒落た名前やなぁ」
そうして、最後の戦隊、瑪瑙戦隊が編成された。