手を引かれた私は、レーベレヒトと同じ格好をした赤髪の少女とドイツ国防軍を思い出させる格好をした金髪のスタイルの良い女性と彼女を少し縮めたような女性がいる部屋に連れてこられた。私が右手をあげると、皆、怪訝な顔をした。まぁ、無理もない。私は既に死んでいる存在なのだ。だが、ふと思うと彼女達の方が不可思議な存在である。なるほど、だからレーベレヒトはすんなり私を私だと認めたのか。
勝手にそんな解釈をしている時に、赤髪の少女がレーベレヒトにコソコソとなにかを言っている。すると、少女は驚いた後慌てふためきながら「Heil Mein Führer!」と右手をあげた。しかし、残りの2人は今だに状況が掴めていないらしい。だから改めて自己紹介する。
「Hitler.Ich bin ein deutscher Führer.」
「ホント」やら「ウソ」やら「ナンデ」やら言っているが、なにぶんなにを言っているかがわからない。まぁ、驚いているのだろう。私だって艦娘の存在を聞いた時驚いた。この世には摩訶不思議なことで溢れているようだ。いかに己が無知であったか思い知らされた。金髪の2人は納得するとすぐに慌てふためきながら私に謝罪し、「「Heil」」と敬礼した。そして、各々が私に自己紹介してくれた。彼女たちも艦娘というものらしく、赤髪の少女がマックス・シュルツ、金髪の2人がビスマルクとプリンツ・オイゲンだそうだ。
私が夢の話を、第四帝国の話をすると、彼女達は真剣に聞き、そして、笑ながら私に忠誠を誓った。そんな時、この部屋の扉がノックされた。そして、「レーベレヒト・マースさん!憲兵です!ドイツ人の男をはやく出してください!」と声がする。
「Feind?(敵か?)」
「Ja.(はい)」
ここで籠城するのもひとつの手であるが、そんなことをしていても第四帝国への道から遠のいてしまう。私は彼女達に命令した。私に付き従うならば、まず、目の前の敵を排除しろ、と。彼女達は一斉に「Ja!」と叫び、扉を開け、憲兵に殴りかかった。武器は使用しないのかと近くにいたマックスに聞くと、なんでも工廠で厳重に保管されているらしい。
憲兵ひとりは艦娘に比べれば弱い。どんどんやられていく。だが、なにかと数が多い。まるでソ連のようだ。これでは埒が明かない。
私はレーベレヒトを呼びつけ、工廠へ向かった。
工廠にも作業員がいた。それをレーベレヒトはボコボコにする。まだ年端もいかない女性が男達を殴り倒す姿はドン引きを通り越してもはや感動である。しかし、やはり憲兵よりも断然弱いようだ。レーベレヒトは自分と彼女達の武器、つまりは艤装というやつを探した。
彼女はそれを見つけると鍵を破壊し、それを取り出し、装備した。仲間の分も運ぼうとしたが、3人分は無理なようだ。流石はドイツ人、いや、ドイツ艦娘。合理的だ。すぐに諦め走って戦いへ戻った。ここでうだうだやっていても時間の無駄だしな。
私は工廠にのこり、そこで使えそうな武器を漁った。
基本的には艦娘用の艤装があるだけで、人が使うようなものは無かった。武器はなかったが、こんなものを見つけた。台車にシャベルがある。ならば戦うことはできるだろう。元ゲフライターの本気を見せてやろうじゃないか。
私は台車にレーベレヒトが外にだした他3人の艤装と思われるモノも乗っけて工廠をあとにした。途中、工廠に向かうマックスに会い、艤装を渡して台車を運ばせた。
戻ると、戦場と化した廊下は血まみれの憲兵が積み上がり床が見えなくなっていた。ただ、レーベレヒトが初めに言っていた通りここはなかなか上位な施設で働いている憲兵の人数は大本営の次に多いらしい。しかし、艤装をもった艦娘には歯も立たず、私の出番も皆無だった。艦娘の力はこれほどかと感心していると、憲兵達の奥から聞き覚えのある怒号がとぶ。まぁ、なんて言ってるかはわからんがな。
「テメェら よく聞け!こいつがどうなってもいいのか!」
憲兵達が廊下の壁に背中を向け一斉に敬礼して道を開ける。その調教された憲兵達の間を幼い娘の首を腕でがっちり締め上げ、こめかみに銃を押し付けた血眼の提督がたっていた。狼狽えるドイツ艦娘の姿を見れば人質が同僚や友人の類なことがわかる。子供は国の未来である。それをあの男はわかっているのだろうか。なんとも不運だな。両者とも。よたよたと提督が近づいてきた。人質を手に勝ったつもりらしいな。
だが、その人質に私が同情した場合の話である。ニタニタと笑う提督に私は3発発砲した。
頭を狙ったつもりが右胸に2発と1発は奥に並んでいた憲兵のひとりの左肩に当たったようだ。私がいくらWW1の時に一級鉄十字章を授与された軍人だからといって、所詮ただのゲフライターで、その上歳もとったのである。外したことは多めに見て欲しいものだ。提督は想定外のことがおこり、我を忘れて放心状態に一瞬陥った後すぐに「死ぬ!死ぬ!」と叫びながらうずくまった。
人質はプリンツが回収した。それを見て私は彼女達に命令した。
「Beschuss!(砲撃!)」
コンクリート製の壁が吹き飛び、床に散らばった死体は燃えながら吹き飛び、逃げ惑う憲兵達がバラバラになりながら吹き飛ぶ。誰も立ち向かってこない。死に物狂いで死んでいく姿はとても儚く、見苦しい。灰色の煙で視界がなくなり、彼女達の砲撃が止むと、その粉塵の奥に動くモノを確認することは不可能となっていた。
一級鉄十字章:最下級の二級鉄十字章の上位に位置する勲章。WW1では約16万人が受賞した。
ゲフライター:軍人の階級。一等兵の上位、伍長の下位にあたる上等兵。