戦隊ごとに並んだ艦娘を前に私は右手を掲げ、一言宣誓する。
「制限時間は5時間!諸君らの健闘を祈る!」
それに、ハイルと皆が二様の敬礼で後に続く。私はその一方のNS式で返答する。
私は寒々とした演習場を確認出来る場所へ移動した。そこにはいくつかのモニターがあり、そのモニターには演習を行っていない艦娘が発艦させた艦載機が撮影した映像がたれ流されている。
演習場は厳島近辺を除く、広島県の呉市から岩国市、八代島から倉橋島に広がる広島港を主に使用する。なんでも現在は海岸線沿いの人口は激減し、自衛隊の演習で利用してもあまり害がでないらしい。真珠戦隊は岩国市の三角州から、琥珀艦隊は屋代島の最南辺りから演習を行う。
時刻が14:00を回る頃、私は彼女らの準備が整ったと認識し、メガホンで戦闘開始の合図をだす。
私の声に続き真珠戦隊は琥珀戦隊のもとへ、先頭から夕立、天龍、川内、神通、夕張、加賀の順の単縦陣で直進する。いや、突撃と言った方が言葉としては正しいのかもしれない。塩水の飛沫をあげ、皆笑いながら突撃する。
対して琥珀戦隊は単縦陣でゆっくりと東へ前進しつつ、赤城が索敵を行う。王道、主流と言った戦い方だ。
突如、赤城が叫ぶ。
「妖精さんより伝達!真珠戦隊十一時の方向より急接近中!」
その言葉に戦隊の指揮を執るビスマルクが応える。
「了解した。戦隊、周囲に警戒しつつ攻撃準備!赤城は再び索敵!」
赤城は再び彩雲を発艦させる。波と無線機の音のみが聞こえる。赤城は彩雲からの伝達を待つ。
「赤城、真珠戦隊は?」
「少し待ってくだ、あ、彩雲発見されました!申し訳ありません」
「位置は!」
「十時の方向、距離10kmほど!」
「突っ切るわよ!目標は先と変わらず倉橋島と江田島の間!」
戦隊は返事の後に速度をあげる。が、既に遅かったようだ。プリンツが叫ぶ。
「九時の方向、敵艦載機目視!」
加賀の艦載機による降下爆撃が開始された。後方を進むレーベとマックスが被弾し、両者小破となった。隊列が崩れる琥珀戦隊。被害状況や敵位置の確認で二手目三手目に遅れが生じる。速力を保ちつつ、隊列を戻す。
対して真珠戦隊は隊列など気にしないで速度をあげる。加賀と夕張に大幅な遅れが発生しているが、互いにお構い無しといった感じだ。
「みーつけたっぽい!」
その言葉とともに先頭から速度をさらに上げていく。
だが、目視できる距離に入ったということはビスマルクの射程圏内ということでもあった。ビスマルクは少し速度を落とし、夕立に向かって砲撃する。爆炎と共に放たれたその砲弾は先頭二人の頭上を越え降下を始める。川内は限界まで速力をあげて回避。神通はヒラリと砲弾を避け、その左斜め後ろで水柱がたった。神通は散開の命令をだし、赤城の航空隊、及び、プリンツの第二射に警戒させる。
琥珀戦隊は赤城、ビスマルク、プリンツと、中距離から長距離にかけての攻撃手段が揃っている。対して、真珠戦隊は如何せん長距離攻撃手段が加賀による航空戦力のみである。つまるところ、加賀を除く5人の艦娘は接近しなければ戦闘に至ることが出来ないのだ。
真珠戦隊前方4人は重巡の射程内に入る。その時赤城がキリキリと弓を引き、発艦の準備をする。
「艦載機の皆さん、用意はいい?」
そう呟いた後、弦をより引いた。
「第一次攻撃隊、全機発艦!」
その言葉と共に矢を放つ。放たれた矢は空を切りながら、艦載機の姿へ。神通目掛けて急降下を開始する。神通は為す術なく爆撃の炎に飲まれ、憤りを露わにしつつ中破となった。
だが、それも構わんとして、夕立、天龍、川内は進む。プリンツの砲弾が夕立を狙うもそれを速度で躱す。
そして、真珠戦隊は遂に砲撃可能距離まで接近に成功した。
「うっしゃぁっ!」
「さあ、ステキなパーティしましょ!」
真珠戦隊の士気は高まる。
「砲雷撃戦よーい!撃てー!」
その川内の叫びを合図に前線を行く3人が一斉に砲撃を開始する。
もちろん、それに対抗するようにレーベとマックスも砲撃を開始。主砲副砲の花火が散り、プリンツが中破となった。
だが、そんな激戦は長くは続かず、前線を行く真珠戦隊の3人は、天龍、夕立が小破しつつも琥珀戦隊を煽るようにすれ違う。琥珀戦隊は攻撃しようにも同士討ちを恐れうまく撃てないでいる。そんな混沌を勢いよく突っ切った真珠戦隊は蛇行しながら、同士討ちの危険から開放された琥珀戦隊の砲撃を避け、射程圏外に出ると速度を落とす。
戦地となった海が自然の波音が聞こえるほどになった頃、遅れて真珠戦隊の後方3人が荒波をたて通過した。
ゆっくりと真珠戦隊が合流。
琥珀戦隊は目標地点へ着実に近づいていった。