帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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31:真珠と琥珀の演習(後編)

 素晴らしい。真珠戦隊の突撃はまるで雷撃だ。琥珀戦隊は常に冷静な対応を心がけ続けた。共に戦争に必要な要素を分かっている。両者とも戦争に必要だ。優秀な軍を手にしている喜びに私は感動したのだった。

 

 静かな時間が流れる。琥珀戦隊は手堅く一次目標に移動、真珠戦隊は速度を落とし後方部隊と合流しつつ大きく周り東へ進む。二度目の戦闘は琥珀戦隊有利に進みそうであった。

 

 海はゆっくりと空と共に赤みを帯び始めた。

 

 琥珀戦隊は江田島市と呉市の間に陣を敷く。真珠戦隊は岩国市、大竹市、厳島、廿日市市を左に見ながら琥珀戦隊が陣取る地点へ移動する。

 

 真珠戦隊が広島市の近辺を通ろうとした時だ。

 

「上空、敵艦載機!対空射撃よーい!」

 

 神通の警告で、数機の対空砲が唸る。上空から弾丸の雨が振る中で、加賀は前にでて艦載機を発艦させ、必死の抵抗をみせる。

 しかし、足も遅く、大きな甲板を手に持つ加賀は飛行隊の格好の的となり集中的に攻撃され、何とか敵飛行隊を半壊及び撤退させたものの、苦痛の声とともに大破に陥る。

 

 しかし、夜がくる。加賀はそれがわかっていたのかも知れない。空母が動けない夜が来る。夜戦での挽回に賭けたものだろう。

 

「まだ、日は落ちてませんが、夜戦好きの皆さんなら大丈夫ですよね?」

 

「あったりまえだぜ!」

「夜戦なら任せて!」

「ぽいぽーい!」

「お任せ下さい。真珠戦隊に恥じぬ戦いをお見せしましょう」

「まぁ、私は別に夜戦好きって訳じゃ無いですけど・・・頑張ります!」

 

「赤城さんの艦載機は東の江田島市の方へ戻っていきます。きっと彼処が決戦の場となるでしょう」

 

 互いに頷き、大破した加賀に合わせるようにゆっくりと琥珀戦隊の待つ場へ向かい始める。

 

 

 一方琥珀戦隊は、陣を敷き、常に戦闘に備えていた。

 

「夜がきます。申し訳ありませんが、私はここまでみたいですね。ご武運、お祈りします」

 

「赤城、まるで死ぬみたいじゃ無いか。心配するな、勝つさ。勝てるさ。なぁ、プリンツ」

 

「ビスマルク姉さまの言う通りです。それはそうと、レーベ、電探の様子はどう?」

 

「うーん。今のところ近くにいないかな」

 

 日は既に落ち、代わって満月や星が海面を照らしだした。

 

 ビスマルクは緊張の中で陣を敷いてから6回目の問いかけをする。

 

「・・・静かね。レーベ、電探は?」

 

「全然反応無し」

 

「こっちに来てないんじゃないかしら」

 

「まさか・・・迷子?」

 

「それはあるかもね」

 

「皆さん、慢心はいけませんよ・・・とはいっても遅いですね」

 

「でも、天龍さんとか迷子になってたりして」

 

「マックス、それは失礼だよ!」

 

 琥珀戦隊はピンと張り詰めた緊張の糸がゆっくりと伸び、弛み始める。

 

「ねぇ、今日は月が綺麗ね」

 

「何?マックス。日本流の愛の言葉?」

 

「プリンツさん!からかわないでください!」

 

「でも、本当に綺麗だな・・・」

 

「ええ、まったくですね」

 

 緩んだ緊張は布陣を緩ませる。そんな時だった。緩んでしまった糸を無理矢理引き伸ばすこととなったのは。

 

「・・・ん?あれ、魚雷じゃない?南西より魚雷接近!魚雷接近!各自厳戒態勢に移ってください!」

 

「レーベ、何処から来る!」

 

「なっ!?電探に敵影は無かったのよね!?」

 

「あったらすぐに伝えてるさ!」

 

 無理矢理糸を伸ばせば、切れやすいのもまた事実。すぐに琥珀戦隊内の統制は揺るぎ始めた。

 ビスマルクは自身へ向かう魚雷が放つ気泡の暗闇に目を見開いた。何も見えぬ虚空に目を見開いた。そして、唇を噛み締め、呆気なく、大破した。

 

「ビスマルク姉さまッ!」

 

「大丈夫よ、プリンツ」

 

「姉さまッ・・・。レーベ!?ちゃんと見てたの!?」

 

「見てたに決まってるじゃないか!」

 

「ならなんで!?」

 

「僕だって分からないよ!」

 

 まとめ役の大破は組織全体の混乱を大きく引き起こす。この混乱はより大きな敗北をもたらす。

 そんな中、大破したビスマルクは叫ぶ。

 

「我々に不毛な争いをしている暇はない!第二次攻撃に備えつつ、敵影発見し次第撃滅せよ!」

 

 皆が耳に雪崩込む勢いに黙り込み、顔を見合わせ頷いた。周囲に目を配り、主砲を握る。

 

 一時の沈黙。

 

「Feuer!」

 

「なっ!?」

 

 少しの波音の変化があった先にプリンツが砲撃、天龍の左側面が明るく照らされた。

 

「至近弾!左にずらして!」

 

「プリンツ、わかったわ。・・・・・・Feuer. 」

 

 マックスの放った弾は天龍の左脇腹辺りに直撃。天龍は中破する。

 

「クソがっ!・・・いい腕じゃねぇか、褒めてやるよ」

 

「天龍さん、敵の腕褒める暇があったら早く反撃してください。背中から撃ちますよ?」

 

「ゲッ、神通」

 

「ふぅ。今奇襲作戦はビスマルクの大破をもって成功とせり。只今より、砲雷撃戦に移行する。今奇襲作戦は成功せり。砲雷撃戦に移行する。・・・お疲れ様でした、姉さん」

 

「もう、目が疲れちゃったよー。ま、余裕だけどね」

 

「突撃!」

 

 神通の叫びと共に、加賀を除く全真珠戦隊が突撃を開始した。

 レーベとマックスは魚雷による攻撃を行う。

 その魚雷を夕立は綺麗に飛び越え、川内と神通は華麗に避ける。

 夕立は更に加速し、焦るマックスの横っ腹に砲口を突きつけ、引き金を引いた。轟音と共に、マックスは大破し、その場に崩れた。

 レーベは接近した夕立にすかさず砲口を向け、応戦。夕立は近距離で避けきれずに大破。

 夕立を撃った身体は背後から現れる川内の砲撃で中破。

 少し離れた場所からプリンツが川内に向かって発砲、掠めた後に、後方の夕張に至近弾。

 夕張は少しバランスを崩し、レーベはすかさず魚雷をぶち込む。

 夕張は鈍足が災いして魚雷の格好の餌食となって大破・・・。

 

 戦局はめくるめく変化を見せつけ、気付けば後数分で5時間という時が経つこととなっていた。

 

 私はマイクを手に取り、撮影用艦載機に取り付けられたスピーカーと接続させる。時計の秒針を目で追う。私はひとつ深呼吸をする。

 

「演習終了!演習終了!

 琥珀戦隊、損害、大破、戦艦1駆逐艦1、中破、巡洋艦1駆逐艦1空母1。

 真珠戦隊、損害、大破、空母1巡洋艦2駆逐艦1、中破、巡洋艦2。

 今演習は、引き分けとする!」

 

 

 嗚呼、素晴らしい闘いであった。これは他の組み合わせの演習が楽しみだ。

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