帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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32:瑪瑙と真珠の演習(前編)

 日はまたぎ、現在時刻は13:57、瑪瑙戦隊と真珠戦隊は定位置へ移動する。

 

 

「瑪瑙戦隊、三角州到着したわ」

 

「真珠戦隊、準備は大丈夫よ」

 

 

 龍田と加賀からそれぞれ一報がはいる。そして、時計の針は14:00を指した。それを確認し、メガホンで開始の合図を出す。

 

 

 真珠戦隊は先の演習と同じように突撃を敢行していた。対して瑪瑙戦隊は動かない。演習開始の指示が通っていないのかと、私の周囲はザワつく。

 そんなことをよそに、彼女らは動かない。動かずに空ばかり見上げてる。

 そんな中、雪風が双眼鏡を覗きだし、モニター用艦載機を指さした。

 

「あっ!見つけました!」

「あらあら、案外ちゃんとわかるものねぇ。なんでみんな見ないのかしらぁ」

「これホントにアリなのかな・・・」

「那珂さん、何か気になる事でも~?」

「な、なんでもないよー?」

「では龍驤さん、あちらへ偵察機を」

「了解や!」

 

 龍驤の放つ偵察機は真っ直ぐ真珠戦隊の方へと飛ぶ。数分後、真珠戦隊を観測した偵察機はゆっくりと大回りな迂回により龍驤のもとへ戻る。

 川内はそれに気づき、手信号を仲間に送る。追尾の合図であろう。

 

「龍田の望み通り、偵察機観測されたで」

「では那珂ちゃん、2時の方向、雷撃よ〜い」

「う、うん」

「3秒前、2、1、発射」

「魚雷、どっかぁーん!」

 

 私は唖然とした。目視できるかできないか、その瀬戸際の距離。そこから出てくると分かっていないと撃てない距離。その上、そこから直進するという前提が必要となる位置に。そこへ魚雷を放ったのだ。しかし、真珠戦隊はその方へ直進している。上空の真っ直ぐ遠のく偵察機に気を取られ、海底から真っ直ぐ近づく酸素魚雷に気づけていないのだ。

 

 

 

 神通が何らかの違和感に気づいたようだ。状況の考察、事態の確認、そして違和感を確信に変更。急いで回避行動を伝達する。

 

「進行方向、魚雷接近!散開!散開!!」

 

 一瞬の硬直の後、即座に各自散開するも、魚雷は目前であり、加賀の小破、夕張の中破は免れなかった。

 水柱の轟音を聞いた龍驤の偵察機は、本隊に命中の通達を行い、それに伴い今は無き水柱の元へ移動を開始する。

 

 この攻勢により態勢が崩れた真珠戦隊は立て直しのための数分を余儀なくされ、偵察機の追尾も止めざるを得なかった。加賀と神通は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、大きな舌打ちをした。その舌打ちにビビる天龍の姿に、私も皆も共感を覚えるほどに。

 

「頭にきました」

「してやられちゃいましたね・・・」

「神通さん」

「ええ、分かってますよ加賀さん」

 

 神通の電探は既に向かってくる瑪瑙戦隊を捕捉していた。息を整え、一言放つ。

 

「・・・反攻作戦を開始します」

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