帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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34:演習場外戦?

 演習の傷が癒えた日のこと、つまりは先の演習の翌日である。いつも通りに見える鎮守府の廊下では、いつもと違うピリピリした緊張がクラウチングの姿勢をとっていた。

 

「ふふふ、神通さんじゃないですかぁ〜。先の演習はお疲れ様でしたぁ」

「あら、龍田さん、お疲れ様でした。それで、なんの用ですか?」

「天龍ちゃんがお世話になったので、お礼をと思いましてね~」

「お礼・・・ですか。」

「何か?」

「いえ、お礼と言っても、お礼参りする勢いの殺気が漂っていましたので」

「出してるんですよ、ふふ」

 

 その瞬間、龍田の薙刀の刃先が神通の足元をかする。丈夫な床からサクッというなってはいけない音がなっていた。緊張が綺麗なフォームで走り出す。

 龍田はニヤリと笑い、神通はため息をついた。

 この廊下は、運が良いのか悪いのか、司令室からそこそこ離れていて、ヒトラーがうるさいと怒って出てこない。

 

「龍田さん、ダメですよ廊下に傷をつけちゃ」

「当てなかっただけ善しだと思いますけどねぇ」

 

 神通は龍田の薙刀の柄をしっかりと握り、床へ強く突き刺す。

 

「それもダメだと思うんですが~?」

「正当防衛のようなものですよ」

 

 目に見えぬ攻防が一進一退であることを両者の目が語っていた。

 龍田が切り出す。

 

「なんで私がこれ程怒っているかわかりますか~?」

「わかりますよ。私も同じ立場なら、さらにこれが実戦だったのなら、怒り狂いあなたを殺していたかもしれません」

「なら」

「しかし、それが戦争ですからとしか言いようが」

「まぁ、確かにそうねぇ・・・、だけど、逆の立場なら死んでいたのかもしれないのだから」

「やっぱり、殺されても仕方ないですよね」

 

 緊張でさえ逃げ出すその空気を邪魔したのは天龍であった。

 

「おい龍田、なにやってんだ?」

 

 すると龍田は振り返り、微笑んだ。

 

「天龍ちゃん。復讐はエゴの為に行うものよ」

「な、なにいってんだ?」

 

 だが、それでもその空気はなおも拡大していく。

 

「ねぇ!」

 

 一人の声が空気を切り裂いた。

 

「神通ちゃんと龍田さん、なにやってるのかな?」

 

「「那珂ちゃん!」」

「那珂」

 

「で、なにやってるのかな?もしかして揉め事?」

 

「そ、そうな「違うわ!」んだ、え?」

 

 天龍の呼び掛けに神通は割って入った。

 

「神通ちゃんさー、血気盛んなのはいいんだけど、揉め事はやめて欲しいかな?」

 

 天龍は後にこう語る。那珂はいつものように笑い、いつものように明るく、いつもと違う恐ろしい声色であり、それは那珂ちゃんでは無く、さながら、那珂さんであった、と。

 龍田は後にこう語る。天龍ちゃんがちょっとチビっていた、と。

 

「わかったわ!やめる!ご免なさいね、龍田さん!」

「え、えぇ、良いわよ。私も大人気なかったわ~」

 

「フフ、怖い」

 

 後々天龍たちが神通に確認すると、神通がこうも怯える理由がよくわかった。川内と神通はよく手をあげる喧嘩をするらしい。それもそのはず、両者とも戦闘の中で育っているからだ。強い方が勝ちというのが、手っ取り早いのだ。

 だが、那珂だけは護衛の中で育ってる。下らない争い事を嫌う。身内の争い事はもっと嫌う。そんな優しい性格の彼女と、だとしても戦争の、激戦の中をくぐり抜けた猛者としての彼女の両方をあわせ持つ。その瞬間の喧嘩を止める那珂が最も強いのだと。

 

 後日談として、見事に話し合いで仲直りできたそうだ。ヒトラーの執務室で、那珂の仲介のもと。

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