先の演習から2日後、今回最後の演習が行われることとなった。すっかり冷え込んだ風は、私の身体を痛めつけるが、モニタールームに入ってしまえば関係ない。岩国市に琥珀戦隊と、屋代島に瑪瑙戦隊は既に位置についている。
時計の文字は13:00を刻む。私はそれにあわせて演習開始の合図を出した。
合図とともに両者とも定石通り偵察機で相手の位置をうかがいながら移動する。
瑪瑙戦隊は北方の江田島市あたりの沿岸を目指しているように見えた。対する琥珀戦隊は慎重に東へ進む。それで、同じ方へ進んでいることがわかる。
14:30を回った頃、瑪瑙戦隊が倉橋島を通りすぎる。そのおおよそ10分後、琥珀戦隊が同所へ行き着く。その時、琥珀戦隊の索敵機が瑪瑙戦隊を確認したと赤城に一報が入ったようだ。北へ転進し、瑪瑙戦隊を追う琥珀戦隊の構図がうまく出来上がった。と、思ったときだ。
瑪瑙戦隊が全速で展開し、琥珀戦隊にたいして丁字有利をもぎ取ったのだ。きっと索敵機に気づいて無視していたのだろう。知略に長けている。
「全艦、撃ち方始め!死にたい船はどこかしら、ふふふ」
「えい!」「どっかぁーん!」「ぽい!」「ってぇーい!」
「やるわね・・・!」「きゃぁっ!」「うわぁっやられた! でも、まだ…!」「おっと」「うっ」
ビスマルク、赤城、プリンツが小破する。赤城に関していえば、中破を免れたという表現が正しいだろう。
攻撃を仕掛けた瑪瑙戦隊は反転して再び追いかけっこの態勢にはいる。
琥珀戦隊は速度が落ち、圧倒的な不利へと陥った。
「赤城、艦載機は発艦できる?」
「えぇ、ギリギリ。ですが、ギリギリです。なので、逃げられる前に全て」
赤城は弓を引き絞り、そして放つ。さらに、二射目、三射目、四射目と、全てを放った。
予期せぬ弾薬の雨と魚雷の波に回避が遅れる瑪瑙戦隊。
「艦載機間に合わへんで!」「回避!」「大丈夫ですか!?」「きゃあっ」「ぽいぃ!?」「ぁあ!な、なんてザマ…」
那珂、夕立が小破。長波が直撃して大破する。
琥珀の艦載機は旋回し再度襲撃をせんと接近したが、龍驤の戦闘機とその他多数の機銃に阻まれ、赤城のもとへ帰っていった。
これにより、両戦隊とも少なくない損害を被ったことになる。特にそれぞれ、赤城の小破と長波の大破が痛手だろう。総合的な速力、攻撃力は桁外れに下がってしまったに違いない。
距離を取ろうと瑪瑙戦隊が出せる全速で移動を始めた。琥珀戦隊はそれを追うことは無かった。