外からは海鳥の鳴き声や小波が消波ブロックにぶつかる音、そして、艦娘の声が、美しい調べとなって聞こえてくる。窓から暖かい日が室内を明るく照らしている。初めは捗っていた書類仕事も、いつしか睡魔に邪魔されて、カリカリとならなくなっている。
こんな日にはボルマンに仕事を放って、愛しのウィーンを散策なんていいだろう。
ウィーンの芸術的な街並みも、今ではすっかり変わってしまっているかもしれない。
さぁ、ここからどうするか。呉の町並みも見て回ってみたいものだ。
そう、私がゆったりとした時間の流れに身を任せていた時だった。
「ハーーーーーイル・ヒッッットラァァァアアア!!!」
「ノックをせんか、まったく」
その時間を切り裂き、夕張が来た。以下、総統と夕張の他愛もない会話。
「どうしたんだ。何か用か?」
「いえ、何にも用事ありませんよ」
「そ、そうか」
「そういえば総統」
「なんだね?」
「在来線爆弾をつくりたい」
「なんだね?それは」
「使わなくなった列車に爆薬を詰め込んで巨大不明生物にぶち当てるんですよ」
「はぁ」
「わざわざ列車で行う必要はあるのか?線路を敷くって大変だぞ」
「確かに。80センチ列車砲とか大変そう」
「あれはダメだったな。夢だよ」
「確か線路四本いりますよね」
「そうなんだよ。整備用も必要だしな。あと、人も無茶苦茶必要でな」
「なんで軍はそんなん作ったんですかね」
「戦争には圧倒的な突破力が必要なのだよ。だからだ」
「海も陸もそれにはかわりないんですね」
「そうだな」
「私の上にもいっぱい乗せてましたし」
「兵装実験艦、だったか?」
「はい。おかげで、ドーラと同じく鈍足ですよ」
「いやー、ドーラよりは速いだろ」
「まぁ、それもそうですね」
乾いた夕張の笑いが通る。
「それはおいといて、在来線爆弾ですよ!」
「あー、そんな話だったな。自動車爆弾で良いのでは?」
「えー、なんかショボい」
「自動車だって高級品だぞ!」
「それは昔ですよ。今や、みんなの手の届く距離にありますからね」
「時代は変わったのだな。ドイツ国民は飢えているのか?」
「知らないけど、たぶん大丈夫ですよ。先進国ですし」
「そ、そうかそうか!それは良かった!」
「北半球のほとんどの国じゃ飢えてませんよ」
「そうなのか」
一瞬夕張が押し黙る。そして、ひとつ返事だけをした。私は腕を組み、ゆっくりと頷いた。
「ということは、在来線爆弾やりたい放題だな」
「ん?」
「え?」
「そういう話では無かったのか?」
「いや、そういう話でしたけど」
「海に向けて線路を敷いて」
「在来線爆弾を深海棲艦に」
「つまり」
「それは」
「「ミサイルでは!?」」
夕張と顔を見合せ、笑いあう。幸せな時間が流れていく。
こういうのも悪くない。たまには悪くない。