横浜の大本営。村田の嘆き声とひとつのノックが響いている。
ノックの主は慌てふためき、不格好な敬礼を見せた。
「報告です!深海棲艦と思わしき船団が南東より四国に急速接近中」
「数は!」
「空自によれば、20隻確認されています」
「艦種は?」
「駆逐がほとんどですが、戦艦や空母も確認されています」
村田はぶつぶつと副司令官の大淀に呟く。
「よりにもよって呉方面かよ。佐世保に厳戒態勢とるように指示を。水雷戦隊つくって牽制、本土に近づけるな」
「編成は?」
「北上、大井、朧、曙、漣、潮」
「かしこまりました」
「追加は現場の判断に任せる」
滝沢は立ち上がり秘書に荷物をまとめさせる。
「すぐに内深対を召集」
「かしこまりました」
東條は指をくるくるさせながら、副官に仕事を与える。
「空自は索敵始めてるだろ?さっさとその部隊の指揮権奪ってこい。法律上の条件はどうせすぐ満たす」
「はっ!」
残った司令官連中は一点に集まり、坂井の投げ掛けで会議が始まる。
「呉地方隊の管轄区、つまり今回に限っては佐世保の出番というわけですが」
「敵さんの数は多そうだよね」
「これ、呉も参加させた方がいいんじゃないかなぁ」
「確かに」
「佐世保の艦隊で遊撃、呉で護衛か」
「呉の戦隊どうしますか?」
「加賀、夕張、川内、神通、天龍、夕立の真珠戦隊」
「お、村田。お疲れ」
「ども。なんか、演習で3つに分けたっぽいよあの人。あと海自のきりさめ、すずつきも出しとこう」
「で。作戦名は?」
「呉方面作戦でよいのでは?」
「三年前とかぶってる」
「じゃあ、ヒトハチ作戦で」
「あ?ヒトハチってなんだよ」
「アルファベットのAとH」
「面白い、採用」
「了解」
「それでいくよう、滝沢さん、よろしくお願いします」
部屋を出ようとしていた滝沢が一瞥する。
「うむ」
内閣府では深海棲艦出現自に政治的判断を行う内閣府深海棲艦対策会議室(通称:内深対)が開かれようとしていた。
「みなさんお集まりかな」
「総理がまだだ」
一時間とも感じられた数分の後に、内閣総理大臣桂 文麿が入室した。桂と滝沢の形式上の会議が始まる。
「お待たせ」
「総理、いつも通り駆除の方向で」
「嗚呼。敵の数は?」
「20だと聞いてます」
「作戦は?」
「佐世保の艦隊による遊撃で各個撃破。それを呉の艦隊と海自の第八護衛隊のきりさめ、すずつきで援護、他の敵艦隊の牽制を行う作戦です」
「そうか」
「総理、出撃と攻撃の許可を」
「民間船は付近に認められるか?」
「無いとの報告です」
「民間への被害規模はどの程度と予想される」
「ほぼ無いと」
「うむ、・・・では、出撃及び攻撃を許可する」
防衛大臣は勢揃いしている事務官に連絡させる。
「伝達してくれ。出撃許可が出た。直ちに出撃せよ」
深海棲艦対策本部の第一会議室に電話が鳴る。それをワンコールも待たずに東條が出た。彼はひとつ返事をして、電話を切る。
「出撃許可が出た。ヒトハチ作戦を開始せよ!村田大将、佐世保艦隊に出撃命令を出した後、即刻呉へ向かえ。ヘリを使ってだ」
「はっ!」
「大口中佐、海自呉地方隊に第八護衛隊のきりさめ、すずつきの出現命令を」
「はっ!」
「深海棲艦にはお帰り願おう!」
「「「はっ!」」」