外からは海鳥の鳴き声や小波がテトラポットにぶつかる音、そして、艦娘の声が、美しい調べとなって聞こえてくる。窓から暖かい日が室内を明るく照らしている。初めは捗っていた書類仕事も、いつしか睡魔に邪魔されて、カリカリとならなくなっている。
こんな日には今は亡きブロンディとボール遊びでもしたいものだ。・・・犬、飼おうかな。
そう言えば、日本にも固有の犬がいると聞く。シバイヌとか、アキタイヌとか、トサイヌとかいるらしい。今度、しっかり調べてみるとしよう。
さぁ、ここからどうするか。昼寝をするのもありかもしれない。
そう、私がゆったりとした時間の流れに身を任せていた時だった。
「「ハーーーーーイル・ヒッッットラァァァアアア!!!」」
「ノックをせんか、まったく。それで、なんの用かね?」
明石と夕張である。
「「私達が開発してた時なんですよ!」」
「明石さんが急に最強の艦載機が作りたいって言いましてね」
「そしたら、夕張が勲章を突っ込んだら、歴戦を潜り抜けたのが出来るんじゃ無いかっていいましてね」
「じゃあ、空軍の勲章にしようってなるじゃないですか」
「だけど日本には空軍が無い」
「じゃあ総統もいる事だしドイツのにしよう」
「優れた軍功に与えられるヤツにしよう」
「その中で一番良いヤツにしよう」
「それだったら黄金柏葉・剣・ダイヤモンド付騎士鉄十字章にしよう・・・ってなった訳です」
私は勢いに呆気に取られてしまっていた。私は一息置いて、尋ねるべきことを尋ねた。
「それで?何が言いたい」
「勲章を再現して、開発の材料にして、できたのがこのスツーカ!」
明石が高々と掲げるのは、『Ju87C改』通称スツーカ。
「何処か凄いのか?そのスツーカ、普通に見えるが?」
「え?スツーカは普通ですよ?」
夕張の思わぬ発言に唖然とし、希薄ではあるが怒りが込み上げる。
「では何故持ってきた!?」
「凄いのは、妖精さんなんです!」
「は?」
「艦載機を運転する妖精さんがですね、なんと!」
「なんと?」
「あの!」
「あの?」
「ハンス・ウルリッヒ・ルーデルだったんです!」
「はぁ、ハンス・ウルリッヒ・ルーデルか・・・・・・は?」
スツーカからちょこまかと顔を出す妖精は、確かにルーデルの奴にそっくりだった。
「Heil Hitler. Lange nicht gesehen. (ハイル・ヒトラー。お久しぶりです。)」
「驚いた・・・」
「〈総統閣下がおられるということは、この大和民族が言っていた通り、帝国は復活するのですね?〉」
「そのつもりだ・・・。そんな事より・・・なんて言うか・・・小さいな・・・」
「〈小さいですな。ですが若くもなっています。足も二本ありますし・・・。それこそ、私サイズの戦闘機さえあれば何時でも出撃できます。で、いつ出撃すれば?〉」
「・・・明石、夕張、集合」
「なんですか?褒めても何も出ませんよ?」
「茶化すな明石・・・。実はな・・・。ちょっとルーデル苦手なのだよ」
「というと?」
「私は20世紀最悪の独裁者とか言われてるんだよな?」
「まぁ、そうですね」
「そんな独裁者にも制御できない戦闘狂は、な?」
「えー・・・そんなになんです?」
「そんなにだよ・・・。後方勤務拒否ってなんだよ・・・。戦えないなら勲章授与拒否ってなんだよ・・・。言うこと聞いてくれよホントに・・・。人のこと言えた口じゃないけどさ。病院で大人しくしててくれよ・・・」
「うーん、でも、上手く使えたらめっちゃお得じゃ無いですか?」
「上手く使えるかなぁ」
私はルーデルの方を向き、敬礼をした。するとルーデルわその小さな腕で可愛らしく敬礼を返した。
私は仕方ないと開き直り、小さなルーデルと握手をし、彼を迎え入れることを決めたのだ。