クロップ計画開始から5日後、日時と場所を指定した書簡を載せた小型艇5隻が出発した。
それから3日後の指定日、指定場所にて。今ここには呉の全艦娘が集合して、各々艤装の整備等をしている。
「いやー、大丈夫だろうか」
私のそんな弱気なため息に、とてとてと雪風が近づいてきた。
「しれぇ!しれぇなら絶対大丈夫です!」
「そうか?そう思うか?」
雪風がそういうと、何か分からないが元気と自信が湧いてくるような気がした。さすが幸運の女神がついていると、心の中で感心していると、龍田がやってきた。
「作戦とかあるのかしら?」
「もちろん、あるにはあるかな。役に立つかは分からんが」
私は無意識のうちに懐のワルサーを撫でた。
「君たちは、睨み合うだけでいい。あくまで睨み合うだけだ。艤装を許可なく向けることも許さん」
「えぇ、わかっているわ」
「ならば、他の連中にも伝えておけ。再三の忠告だ」
「了解したわ」
睨み合うだけでいい。撃てばここは地獄と化す。それは避けなければならない。我々が捨てる命はひとつでいい。そう、ひとつで。
「なぁ、レーベよ」
即座にレーベが登場する。少し不安そうだ。私の不安な気持ちが伝染したのだろうか。
「どうしたの?総統?」
「私がいなくなっても、艦娘の帝国は完成させてくれよ」
「もちろんだよ、ヒトラー総統」
レーベはぐっと強く拳を握った。
海は騒がしく荒波を立てている。海岸に設置したテントは限度を知らぬ海風にギシギシと悲鳴をあげている。
定刻まであと少しだ。
ゆったりと海は穏やかになっていく。
私自身、心の整理が着いてくる。もう、やるしかないのだ。
「レーベ」
もう一度彼女の名前を呼ぶ。
「どうしたんですか?」
「私には出来ないことはない。達成できないことなどない。不可能などない。そうだろ?」
「そうだね、その通りさ」
加賀が間にはいる。
「まるでナポレオンね」
「そうだな」
「失敗しなければいいけど」
「うっ、わ、私を信じろ。大丈夫だ」
「どこからくるのかしらその自信。でも、信じてるわ。信じるしかないもの」
もう一度、レーベに声をかける。
「大丈夫だ、私を信じておけ」
「ヤー、もちろん」
私は腕時計を確認する。
「総員!準備に入れ。そろそろ来賓のおでましだよ」
みな、少し不安そうだ。そりゃそうだ。敵と顔を合わせて話し合いなんて正気の沙汰じゃない。
「安心しろ。お前らの指導者を誰と心得る。アドルフ・ヒトラー、その人だぞ?」
定刻になると、海の方からぞろぞろと深海棲艦がやってきた。そのうちの南方棲鬼と思わしきひとりが陸にあがる。
「サア、話ヲシヨウジャナイカ、人間」