帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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49:第三段階“R-M計画”

 私は南方棲鬼に右手をあげる。彼女はそれにニヤリと笑みを浮かべながら私に返した。

 

「どうぞこちらへ」

 

 そう言って、私は彼女をテントの中へと案内する。すると彼女は軽く手を振りそれを断った。

 

「ココデ話ソウ」

 

「うむ」

 

 彼女の一語一語に後ろの艦娘たちが微かに反応するのがじんわりと伝わる。

 

「私の要求はひとつ。諸君らが私の傘下に下れ」

 

「ナゼ?」

 

「私が世界を変えるためだ。知っているだろ?」

 

「ドウシテ我々ガ貴様ノ傘下ニ下ルト思ウ?」

 

「その方が良いからだ」

 

「ナゼヨイノカ」

 

 彼女は苦笑した。

 

「私は諸君らを勝利へ導くことができる。そう確信しているからだ」

 

「フハハハハ、我々ガ何ト戦ッテルト思ウ?オマエタチダゾ?」

 

「いや、違うね。君たちが戦ってるのは我々ではない。我々は敵でない。なぜなら、私はまだ君たちから被害を蒙っていないのだよ」

 

「ソウカソウカ!他ノ人間ハドウデモイイトイウノカ!」

 

「あぁ、そうだとも。それがどうした?生物として、自身の生存を優先するのは至極真っ当では無いか」

 

「真ッ当カ」

 

「真っ当だとも。他に質問は?」

 

「勝利スル方法ハナンナノダ?」

 

「まだわからぬ。まだ、貴様らが傘下にくだらぬのでな」

 

「決マッテナイノカ。ヨクソレデコノ場ニコレタナ」

 

「来るのは簡単さ。度胸さえあれば」

 

「人間モ、ナカナカオモシロイナ」

 

 なぁ、みんな、と、南方棲鬼は後ろに手を振り、深海棲艦の群れの賛同を煽る。

 

「ヤハリ利点ガ無イ。ドウシタモノカ」

 

「では、利点をもうひとつ示そう」

 

「ホウ、ナンダソレハ」

 

「私の理想は我々が支配者となる新世界だ。その新世界の支配者側になれるのだぞ?」

 

「支配者カ、興味ガイマイチワカナイナ」

 

 まったく、化け物どもが。聞いて呆れる。余程人間の方が化け物では無いか。私の知っている人間は、もっと短絡的で、本能的で、性根が腐っている、悪魔のようなやつらだぞ。

 

「ふむ。では、貴様らは何を目的に戦っている?」

 

「目的?目的ナドナイサ」

 

「そうか、ならば目的をやろう」

 

「目的、カ」

 

「目的の為なら手段を選ばない連中が世の中にいるように、手段の為なら目的を選ばないどうしようも無い連中がいたっていいじゃないか」

 

「ホウ」

 

「私が生きる目的を、戦う喜びを与えてやろう。これは約束できると確信している」

 

「オモシロイ。貴様ガ我々ノ駒ニナレ。ソレヲ許ソウ」

 

「駒だと?」

 

 前方の群れから喝采が聞こえる。後ろからは唸る声が少しばかり気になる程度だ。その唸り声に私は賛成だ。私も何かの下など真っ平御免だ。

 

「貴様。私を愚弄するのもいい加減にしろよ?」

 

「オマエコソ、我々ヲ舐メルナヨ?」

 

 私は懐から銃を取りだし、自分のこめかみへと向けた。

 

「発言を取り消せ」

 

「取リ消サナイトドウナル?」

 

 私は深呼吸し、腹を括る。

 

「ここで死ぬ」

 

「ハハハハハ!オモシロイ!ヤハリ度胸ダケノヨウダ!」

 

 ニタリと笑う。

 

「ソノ度胸、ドコマデ続クカナ?」

 

「それはどういう意味かな?」

 

「死ンデミセロ」

 

 私は躊躇いなく引き金を引こうとする。その最中、ドンッと重い破裂音が響く。私の拳銃を握っていたはずの右手は消え去り、血を垂れ流し、右頬はグチャグチャに焼けただれた。

 何とか放った私の弾丸は私の額をかすり、どこかへ飛んで行ったようだ。

 熱い。右手が熱い。痛い痛い痛い痛い痛い。

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 私は思わず悲鳴をあげる。後ろを見れば、砲身をこちらへ向けている存在がひとり。レーベだ。

 私は恐怖のあまり、前にいる南方棲鬼を左手で払い除け、ヨタヨタと海の方へ走っていった。とたん、波に足を取られ前のめりに倒れた。

 

「あぁ、あぁあ、あああああ、、あ、ああ」

 

 無様に波打ち際をもがく。

 

 すると、不思議なことに痛みが引いていく。右腕をみると、既に皮膜がはり、止血されている。ただれた頬は元に戻り、額にはシワしか凹凸は存在しない。

 

 入渠ドックの成分は、海水に非常に近いと資料にあった。それを思い出し、理解する。

 

「…私も君たちと同じようだ。」

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