帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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5:人質(view.響)

「テメェら よく聞け!こいつがどうなってもいいのか!」

私は狂った司令官の人質となっていた。だが、もっと狂っていたのは辺りの光景である。私は心の底から恐怖した。軍人として、軍艦として幾度となくグロテスクな光景に出会ってきたつもりでいたが、そのどれもを確実に超える赤と黒の世界。一方的に憲兵達が殺され、無惨に転がっている。床は死体で埋まり、壁は血が染み付き、空気は吐き気のするような死臭で充満している。

 しかし、1番恐怖したのは目の前にいた男の目かもしれない。その目には喜びが宿っていた。だが、それ以上に、私への私怨を感じざるを得なかった。会ったことは1度もない。ただ、明らかに敵意を感じるその目はまるで母親の仇と言わんばかりのその目はまさに悪魔であった。

 

───そして男による3発の発砲があった。

 

 私に当てなかったのは理性からだろうか。それともただ単に外したのだろうか。司令官は狼狽えて手を緩めた。そして「死ぬ!死ぬ!」と叫びうずくまる。私はすぐに離れた。

 プリンツさんが私を庇うように優しく抱き抱えて助けてくれた。

 その時、ほっとして緊張がとけて気絶してしまった。

 

 翌日、新たな司令官が着任したとかで、挨拶があった。他の艦娘からは辛かったら休んでいてもいいと言われたが、昨日のことがあったから余計に気になった。

 集会場に整列して待っていたが、新司令官は5分たってもやってこない。それなのにドイツ艦娘達は皆イライラするわけでも慌てるわけでもなく、これが普通、それどころかこれを待っていたと言わんばかりの笑顔だった。

 7分後、新司令官が登場した。白い軍服に薄汚れた赤い腕章をはめた、昨日も見たちょび髭の男だった。

 そして、彼は挨拶という名の演説を始めた。

 その時私はやっと気づいた。あの私怨のこもった殺意は私が改造した時にロシア艦娘、もといソヴィエト艦娘となることを知られたからか、と。きっとあの男は直感でそう感じたのだろう。ならばはやく逃げなきゃ。私は列を離れて外に出ようとすると、さっきまで男の立つ講演台の裏にいたはずのレーベに話しかけられた。

「どこへ行くの響?」

「どこへって・・・」

「いや、素晴らしい演説中なのに、どこへ行くのかなって」

レーベのその眼差しはもはや普段のそれではなく、講演台の男さながらの狂気とそれに伴う熱意のあるモノだった。

「あれだよ、ちょっと気分が悪くて・・・」

「昨日の今日だから疲れているのかもね、お大事に」

レーベはそれで納得したようにどこかへ消えていった。

 

 演説が終わったらしく、相部屋の暁達が帰ってきた。

「どうするみんな、彼についてく?」

「私はここに残りたいわ!」

「電は?」

「私は出来れば戦いたくないのです・・・。だから、移動したいなって思うのです」

「途中からいなくなっちゃってたけど、響は?」

「ふぇ!?わ、私は出ていくよ。例え暁達が残ろうともね」

「でも昨日助けてくれたんじゃないの?」

「何言ってるんだ雷!あれはそんなモノじゃないんだ!」

「ご、ごめん」

「あ、うん、私こそ急に怒鳴ったりして」

「え、いいのいいの」

沈黙が続く。それを破ったのは暁だった。

「響がそんなに嫌がるならみんなで大本営に行きましょ!」

皆が頷く。もちろん私も少し遅れて。

 

 そして私達暁達の4人は他の出て行く艦娘と共に大本営へ向かった。

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