帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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51:大本営の動揺

 佐世保に青葉から一報がはいる。

 

『えー、青葉です。たった今ですね、呉鎮守府は南太平洋の深海棲艦と軍事協定を締結しちゃいました』

 

「は?」

 

『あ、総統。写真とりましょう!ではまた』

 

 そう言って電話は切れた。

 

「は?」

 

「青葉はなんと?」

 

 大淀がキョトンとした顔で問いかける。

 

「深海棲艦とヒトラーが手を組んだって」

 

「は?」

 

「これは不味い。青葉から聞かされて、無断外出も知っていた。深海棲艦とコンタクトをとろうとしていたことも、もちろん知っていた。だが、本当に成し遂げるとは誰も予想できんだろ」

 

 村田提督は息を整える。

 

「即刻大本営にこの事実を伝えろ」

 

「はっ」

 

「くそぉ、早速人類裏切るとか、何考えてんだよ」

 

 村田は思わず愚痴をこぼす。

 大淀が電話から帰ってきた。動揺が未だ見え隠れしている。

 

「大本営へ至急集合せよとの連絡です。提督だけでいいと」

 

「了解」

 

「あぁあ、めんどうなことになった」

 

 村田はいつにもなく落胆をしたのだった。

 

 場所は変わり大本営。

 そこでは、報告を受けた東條元帥が会議室の端から端へと足を鳴らして右往左往していた。

 

「村田め、あの楽観主義者にはいつも困らせられる」

 

 続々と大本営の幹部たちが会議室に集合する。それでもなお、彼は彷徨くことを止めなかった。

 

「クソッタレ、クソッタレめ」

 

「閣下、今回の件の対策を行うメンバーが全員揃いました」

 

「あぁ、わかった」

 

 東條は腰を下ろす。

 

「皆様、お集まりありがとうございます。単刀直入に言いましょう。あのヒトラーが深海棲艦と手を組みました」

 

 会議室がざわめく。幹部どもは事前に聞いていて、その事を知っている。しかし、彼らの動揺はまるで、真新しいことのような感覚を覚えさせた。それほどまでに信じ難いことなのだ。

 

「それで、どうするのだ?」

「尋問はするとして、今後は軟禁でもするのか」

「国民への説明責任はどうなる?」

 

 東條は溜息をつきつつ、深く椅子に座り直した。

 

「どうするよ、まったく」

 

 東條の後ろに控える、副官の宮地は堂々と提言する。

 

「対処プランは放置、尋問、強制捜査かのいずれかかと」

 

 そのリズムに続いて、会議は踊り始める。

 

「ならば強制捜査でよろしいかと」

 

「何を言っている。名目が不確定な状況だぞ」

 

「だからこそですよ、だからこそそれを確定させることを最優先に」

 

「ならば放置でもいいかと」

 

「それはなぜ?」

 

「不確定を不確定として、無いものにしてしまえば問題は無くなる。第一、今回の件、問題が問題たる所以があやふやすぎる」

 

「その通り。万が一にもそれが本当だったとして、ヒトラーの言う通り奴らが動くとは考えにくい」

 

「ならば尋問はどうだ?」

 

「奴が簡単に吐くか?」

 

「北丸にでも任せておけ」

 

「それは些か危険すぎるだろ」

 

「では放置は?」

 

「放置するには重すぎる問題では無いだろうか」

 

「ならば強制捜査を」

 

「法的根拠が無さすぎる。ましてや、犯罪を犯した訳では無いのだぞ」

 

「確かに、分類上彼は一般市民だ」

 

「ならばどうする」

 

「これは尋問しかないのでは?」

 

「尋問も相当な行為だぞ」

 

「だが、それ以外に無いといえるだろう」

 

「やはり尋問がベターかと」

 

「尋問になるか」

「そこに落ち着くな」

「それしか無いのか」

 

 そのようになって会議は緩やかに終わりの兆しを見せる

 

「はは、これが民主主義か」

 

 東條は嘲笑を浮かべる。いつにもなく、彼は、彼らは落胆するのであった。

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