大本営、第三会議室。そこではヒトラーと対面するように5人の職員が座っていた。そこには、東條裕仁や佐世保の村田幸輝の姿もある。
そのうちのひとりが口を開いた。
「なぜ、このような場に呼ばれたか。自覚はありますか?」
「いえ、ありません」
「まず、無断外出したことについて…」
村田が口を挟んだ。
「愚直にいこう。深海棲艦との同盟関係。どういうつもりだ?」
「そんな事実は存在しない」
「知らぬ存ぜぬ通すつもりか?」
「また、仮に敵との和平話があったとして、それを断る方が今世では罪なのではないのですかな?」
「和平話は罪じゃない。英米仏露、みんなやってる。オーストラリアが一番躍起だよ」
「ならば、仮にもだ。仮にそんな与太話が事実だとするならば、なぜゆえ断罪さられねばならぬのか」
村田を頭をポリポリとかき、精一杯の作り笑いを顔に浮かべた。
「和平話ならな。お前らの同盟関係の目的が和平なわけないだろ」
「私を戦争狂とでもいいたいのかね?」
私はどしりと構えていた。
それを崩さんとしたのか、東條も口を開いた。
「そうだとも」
「それは失礼なことだ。私ほどの平和主義者はそういるものではないぞ」
「失礼?この場は結果ありきだ。つまるところ、貴様が敵と内通している前提のもとで尋問している。その場で知らぬ存ぜぬとは、そちらも大概失礼じゃあないか」
「この国では推定無罪なんじゃないのか?」
思わず村田は苦笑した。
「それは裁判の話だよ、ヒトラー。残念だが、ここは裁判所じゃない」
「そうか、それは残念だ」
数分の沈黙が続く。
宮地と書いたプレートを下げた男が口を開いた。彼は、一番最初に話を切り出したやつだった。
「言い方を変えましょう。これは推定有罪の尋問です。答えありきなのです。ですので、仮にここでなにも出なかったとして、次は強硬手段に出るしかありません」
「強硬手段、とな?」
「ええ、強硬手段です。鎮守府内を一斉捜索させてもらいます」
「ふむ」
極めて不味い。鎮守府内には5人の深海棲艦がいる。彼女達を隠すことも考えるが、限界がある。そこで発覚するのが一番不味い。私の立場も彼女達の命も、我々の夢さえも潰えてしまう可能性がある。いや、そうなる 。
ならば、捨て身の作戦でいこう、
「その前にひとつお話を」
「なんだね?」
「深海棲艦を拿捕した」
レ級の。
村田は思わずといった調子で笑い始めた。
「面白い。で、艦種は?」
「戦艦レ級だったかな」
「海域は?」
「そこまで詳細は覚えておらん、が、メラネシアのあたりだったかと」
「コンタクトは可能か?」
「可能だ。現在、我々の監視下にある」
「そうか、ならば連れてきてくれ」
「了解した」
私はもうひとつ、と付け加える。
「深海棲艦の拿捕に噂の尾ひれがついたのではないでしょうか、この騒ぎ」
村田はまた、苦笑した。
「んなわけわるかよ」
東條はこれを右手で制し、首を横にふった。
「ん、もういいよそれで」
「いいのですか?東條さん」
「いいったらいいんだ。だが、ヒトラー君」
「なんですか?」
「次は無いぞ」