帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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52:ヒトラーの尋問

 大本営、第三会議室。そこではヒトラーと対面するように5人の職員が座っていた。そこには、東條裕仁や佐世保の村田幸輝の姿もある。

 そのうちのひとりが口を開いた。

 

「なぜ、このような場に呼ばれたか。自覚はありますか?」

 

「いえ、ありません」

 

「まず、無断外出したことについて…」

 

 村田が口を挟んだ。

 

「愚直にいこう。深海棲艦との同盟関係。どういうつもりだ?」

 

「そんな事実は存在しない」

 

「知らぬ存ぜぬ通すつもりか?」

 

「また、仮に敵との和平話があったとして、それを断る方が今世では罪なのではないのですかな?」

 

「和平話は罪じゃない。英米仏露、みんなやってる。オーストラリアが一番躍起だよ」

 

「ならば、仮にもだ。仮にそんな与太話が事実だとするならば、なぜゆえ断罪さられねばならぬのか」

 

 村田を頭をポリポリとかき、精一杯の作り笑いを顔に浮かべた。

 

「和平話ならな。お前らの同盟関係の目的が和平なわけないだろ」

 

「私を戦争狂とでもいいたいのかね?」

 

 私はどしりと構えていた。

 それを崩さんとしたのか、東條も口を開いた。

 

「そうだとも」

 

「それは失礼なことだ。私ほどの平和主義者はそういるものではないぞ」

 

「失礼?この場は結果ありきだ。つまるところ、貴様が敵と内通している前提のもとで尋問している。その場で知らぬ存ぜぬとは、そちらも大概失礼じゃあないか」

 

「この国では推定無罪なんじゃないのか?」

 

 思わず村田は苦笑した。

 

「それは裁判の話だよ、ヒトラー。残念だが、ここは裁判所じゃない」

 

「そうか、それは残念だ」

 

 数分の沈黙が続く。

 宮地と書いたプレートを下げた男が口を開いた。彼は、一番最初に話を切り出したやつだった。

 

「言い方を変えましょう。これは推定有罪の尋問です。答えありきなのです。ですので、仮にここでなにも出なかったとして、次は強硬手段に出るしかありません」

 

「強硬手段、とな?」

 

「ええ、強硬手段です。鎮守府内を一斉捜索させてもらいます」

 

「ふむ」

 

 極めて不味い。鎮守府内には5人の深海棲艦がいる。彼女達を隠すことも考えるが、限界がある。そこで発覚するのが一番不味い。私の立場も彼女達の命も、我々の夢さえも潰えてしまう可能性がある。いや、そうなる 。

 

 ならば、捨て身の作戦でいこう、

 

「その前にひとつお話を」

 

「なんだね?」

 

「深海棲艦を拿捕した」

 

 レ級の。

 

 村田は思わずといった調子で笑い始めた。

 

「面白い。で、艦種は?」

 

「戦艦レ級だったかな」

 

「海域は?」

 

「そこまで詳細は覚えておらん、が、メラネシアのあたりだったかと」

 

「コンタクトは可能か?」

 

「可能だ。現在、我々の監視下にある」

 

「そうか、ならば連れてきてくれ」

 

「了解した」

 

 私はもうひとつ、と付け加える。

 

「深海棲艦の拿捕に噂の尾ひれがついたのではないでしょうか、この騒ぎ」

 

 村田はまた、苦笑した。

 

「んなわけわるかよ」

 

 東條はこれを右手で制し、首を横にふった。

 

「ん、もういいよそれで」

 

「いいのですか?東條さん」

 

「いいったらいいんだ。だが、ヒトラー君」

 

「なんですか?」

「次は無いぞ」

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