帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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作者は百合も薔薇も大好きです。


54:百合の夜事件

 夕刻、私は普段通りコーヒー片手にレーベと執務室にこもっていた。

 

「総統、コーヒー飲みすぎじゃないかな」

「・・・いいだろ別に」

「カフェインの摂りすぎは身体に悪いんだから」

「・・・タバコよりマシだ」

 

 篭もりっぱなしの生活は私にとって苦痛というほどでは無かったが、多少のストレスを身体に抱え込んでいた。

 

「総統、散歩にでも行ってきたらどうかな?」

「・・・そうさせてもらおうかな」

 

 私は散歩に出た。鎮守府をぐるっとまわるつもりだった。だが、それを途中で辞めるはめになった。なぜなら私の目の前に、ベンチに座り、キスをする2人が現れたからだ。

 

「赤城、加賀、お前たち、、、」

 

「て、提督!?」

 

 私は動揺を隠せなかった。日本にキスをする文化は無い。つまり、恋人同士と考えるのが妥当だ。

 

「お前たち、どういうつもりだ?」

 

 加賀が前に出る。

 

「提督、私たちは付き合っているんです」

 

「見たらわかるよ。ちょっとすまない、すまない」

 

 私はくるりと振り返り、来た道を引き返した。私は許せなかったのだ。優等種と認めた艦娘が、生物として反する行為に及んでいることが。同性愛は病気だ。何とかしなくては、この病気が伝染する前に何とかしなくては。私はそのことで私は頭がいっぱいになっていた。

 

 私は執務室に帰ると、レーベにこのとこを報告した。すると、ケロッとした顔でそんなことみんな知っているよと言った。

 私は思わずレーベを叩いた。

 

「すまない、レーベ」

 

「い、いいんだよ総統。総統の考えあってのことでしょ?」

 

「あぁ」

 

 私は決めた。癌を早急に取り除くことに。

 

「レーベ、赤城と加賀を執務室に呼んでくれ」

 

「ヤー」

 

 それから日は落ち、レーベが呼びに行ってから十数分が経とうというとき、ノックが鳴った。赤城と加賀である。私は一言入室を促し、入ってきた2人を見つめた。

 

「ふたりはなぜここに呼ばれたかわかっているか?」

 

「い、いえ」

「わからないわ」

 

 赤城と加賀はそう答える。レーベは気まずいのかそっぽを向いて、いかにも退出したそうだ。

 

「ふたりは交際していると聞いた。それが同性同士で行われていることを、どう考えている」

 

 加賀が口を開く。

 

「どうもこうも、提督にとやかく言われる筋合いは無いわ」

 

 赤城もそれに小さく小さく頷く形で同意を示した。私は深くため息をついた。

 

「同性愛は病気だ。なにもすべて君たちが悪い訳では無いとも思う。この、鎮守府という環境がそうさせたと考えてもおかしな話では無い。そうだろ?」

 

 その言葉に加賀は思うことがあったのだろう。拳を強く握り、抵抗せんと口を開いた。

 

「お言葉ですが提督。今の時代、恋愛は自由なものなのです。それを病気だなんだと決めつけるのは宜しくないかと」

 

 赤城もそれに続いた。

 

「そうですね。今の言葉は少し、いえ、とても頭にきました。撤回してください」

 

「それをお前らは本気で言っているのか?」

 

 赤城は右手を前に差し出し、反抗する。

 

「提督こそ、本気でそんなことを言っておられるのですか?」

 

「クソッタレ。お前ら!」

 

 レーベは慌てて止めに入る。

 

「提督!落ち着いて!」

 

 私は夢中になって懐から拳銃を取り出した。それを見たレーベはもっと慌てて止めに入る。具体的には、拳銃を握る私の右手を左手で掴み上を向けさせ、右手を私の腰あたりに添える形だ。私の憤怒に驚いているふたりは両手を前に突き出し、私との距離を詰めたり遠のいたりを繰り返している。

 

「ここには私の敵しかいないのか!ここにも!あそこにも!私の周りには敵しか、裏切り者しかいないのだ!」

 

 レーベが叫ぶ。

 

「提督!落ち着いて!深呼吸!」

 

 私が我に返り、拳銃を懐へとしまい、深呼吸をしていると、なんだなんだとゾロゾロ野次馬が執務室へ入ってきた。

 

「何があったんですか?」

 

 夕張がそう尋ねる。レーベが事情を簡単に説明すると、みな、慌てふためいた。

 

「レーベ、もう落ち着いた。大丈夫だ」

 

 私は落ち着きを取り戻した。そこで、私はみなに問いかけた。

 

「このふたりの交際、どう思ってる」

 

 すると、私の予想に反し、みなの答えは好意的、肯定的なものだった。

 

「同性愛は生物として罪深いことだぞ!?その自覚があるのか!」

 

 その問に、龍田は当たり前でしょ、というふうに答えた。

 

「私たち、生物じゃないわよ」

 

 その場にいる全員が、唖然とした。確かにそうだ。人じゃない。生物かも怪しい。

 

「なんか、すまんな」

 

 赤城はクスリと笑った。

 

「分かってくれればいいんですよ」

 

 これでこの件は一件落着というように野次馬たちは解散していった。残った赤城と加賀にもう一度謝罪と祝福をいれ、ふたりには帰ってもらった。

 

 後日談である。

 私は赤城は敵にしまいと、いな、敵になったらすぐに殺そうと誓った。あの、クスリと笑う目の奥に冷ややかな冷徹な視線を感じた日から。

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