帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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55:大艦隊出現

 私がいつものように睡眠をとっている時。時刻としては、2時30分頃であったか。夜勤の川内から至急の訪問があった。

 

「総統、深海棲艦が現れたとのことです」

 

「なんだと?我々の管轄区に何故?」

 

「わかりません。しかし、数からして大規模。まっすぐ日本に向かってきています」

 

「は?何故だ?」

 

「わ、わかりません」

 

「仕方ない、大本営は?」

 

「すでに艦娘潜水艦隊および第4護衛隊、そして、潜水艦ちはやを出撃させたとのこと」

 

「ふむ。それで撃退できぬ数が来ていると。そうか、了解した。即座に総員叩き起こせ」

 

「は!」

 

 すぐに緊急のサイレンが鳴り響く。私は司令室へ直行した。司令室には各戦隊の旗艦の3人に、私の補佐であるレーベが眠り眼をこすりながら集結した。

 

「敵の数が先程大本営から正確なものが届いた。なんと驚いたことか、48人だそうだ。即座に琥珀と真珠は出撃、撃滅せよ。瑪瑙は呉近海を防衛だ。では出撃!」

 

「「「は!」」」

 

 彼女たちが散開すると、遅れてレニャが入室してきた。

 

「川内カラ誰ガ来タノカ聞イタ」

 

「ほう」

 

「オオヨソインド洋ノヤツラダ」

 

「インド洋、だと?」

 

「我々ハ南太平洋所属ダ。ダガ、アノ艦隊ハ違ウ。ダカラ、同盟ナンテオカマイナシサ」

 

「なるほどな。それがあれほど大勢で、わざわざここまで」

 

「余程コノ同盟ガ不服ナノダロウナ」

 

 レニャがふふっと笑う。

 

「まぁ良い。私の眠りを妨げたこと、後悔させてやる!」

 

 気づいたらレニャはいなくなっていた。

 

「大本営から連絡だ、なんだ?…60隻の大艦隊、だと?」

 

 

 

 一方、海ではすでに戦闘が開始されていた。以下、護衛艦さざなみの艦長、北村の手記に基づく。

 

 我々は完全に後手であった。防衛戦というものは後手であることは確かだが、今回の戦闘はそれを抜きにしても、酷いものであった。我々が到着したときにはすでに深海棲艦は完全に展開しており、潜水艦隊は近づく機会さえ失っていた。かがから空自の戦闘ヘリが次々に飛び立ち、制空権を取ろうと試みたようであったが、圧倒的な数の戦闘機、近寄ることを許さない弾幕による防空網によって、完全に行き場を失っていた。

 私は即座に呉基地に増援の要請を行った。確実に勝てる数ではなかった。呉基地ではそういった要請はすでにいなづまよりされていたらしく、大本営と協力し、呉鎮守府の戦隊を寄越している最中だと繰り返した。

 なぜ制空権を確保できないか。それが我々の当面の課題となるだろうと思われた。そんな時、戦闘ヘリからかがへ報告が入った。彼は笑っていたそうだ。

 

「中西艦長、良い知らせと悪い知らせがあるどっちから聞きたい?」

「なんだ、こんな時に!ふざけてるのか!早く報告しろ!」

「良い知らせは、制空権確保が困難な理由がわかった」

「悪い知らせは?」

「ははっ、基地が来てやがる」

「基地、だと?」

 

 大本営はその報告にすぐに答えをだした。港湾棲姫の存在である。そう、我々の目の前に、港湾が隆起したのだ。護衛艦隊は連絡をより密にし、高射砲の無制限使用、ハープーン発射の方向で合致した。制空権確保が困難なまま、ハープーンを発射することは危険であったため、艦娘の投入を待つこととなったが。

 戦闘機、戦闘ヘリが最寄りの空自基地から続々と登場したが、夜空が赤く染まるだけであった。

 

 呉から艦娘が到着し、事態は好転するかと思われた。

 

 結論から言えば、我々は後退を余儀なくされた。

 

 まず、現代における深海棲艦との戦闘というものは、護衛艦、空母艦娘による制空権確保、潜水艦による海中の安全確保を前提とした、艦娘の砲雷撃戦、白兵戦、掃討戦という一連の流れである。それが何一つとしてクリアできていないのである。

 

 着々と呉基地に近づくなか、私は絶望した。

 かがが護衛艦隊の先頭であった。一瞬、深海棲艦側の進軍が停止したかのように思われた。そして、空に数本の線が描かれた。かがの中西艦長はその時叫んだと記録には残っている。火があがった。次々に水柱があがった。黒煙が視界を奪った。轟々と燃えながら、かがは3つに割れた。我々は、艦娘たちは即座にそこから離れた。そして、かがはゆっくりと沈んでいった。多くの命を載せたまま。

 大本営はこの報告から、声を震わせながら、戦艦水鬼2隻の存在を認めた。

 

 やっと大本営は各鎮守府に出撃命令を出した。海自も第三潜水隊、第八護衛隊、第十二護衛隊を出撃させた。また、政府は在日米国海軍に救援要請を出した。

 

 だが、何もかもが遅すぎる。これでは敗北することは免れない。人類史上最悪の敗北となり得るだろう。

 

 挟み撃ちにするという作戦が発表されて数分後、佐世保からの増援、第八護衛隊が敵後方から到着し、攻撃を開始した。私は浅はかな思慮の中、勝てるやもしれぬと考えた。だが、その望みは砕かれた。空自の哨戒機から空自に、空自から大本営に、大本営から海自に、海自から呉基地に、呉基地から我々に報告がはいった。敵、30隻の増援を認める、というものであった。

 第八護衛隊は即座に散開、退避を余儀なくされた。

 私は、第八護衛隊を逃がすためにもハープーンの使用を許可、命令した。ハープーンが弧を描きながら深海棲艦の群れの中心にいる港湾棲姫を捉えた。一瞬、敵の防空網が薄くなったように感じた。そして、ハープーンが港湾棲姫に弾着すると思われた。あぁ、神よ。なぜ神はあのような化け物を生み出したのですか?港湾棲姫には当たらなかった。あの爆炎から、港湾棲姫を、戦艦水鬼の1隻が片手で笑いながら、守ったのだ。そして、アレはヘラヘラと笑って見せたのだ。

 

 我々は第二次世界大戦が生み出した怪物と戦っている。第二次世界大戦の怪物は鼠のように増殖し、獅子のように屈強で、象のように強大である。そう、第二次世界大戦の怪物。我々が戦っているのは深海棲艦では無い。あの時と同じ。我々は、私は、世界と戦っているのだ。

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