帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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56:地獄

 大本営、佐世保鎮守府、呉基地、各戦隊からひっきりなしに報告、連絡がはいる。どれもこれも絶望的なものばかりだ。四国沿岸は空襲で焼け、航空基地も民間空港も関係なく黒煙があがり、護衛艦隊が壊滅的であるということが繰り返し、言葉を変えて報告される。

 

 テレビをつけると、その絶望的な光景がより鮮明に理解できる。自衛隊、警察、消防が懸命な避難誘導と救助活動を行っている。様々なサイレンが四方八方から響き渡る。泣き叫ぶ人間の声も僅かながら耳に届いた。アナウンサーは必死に現状を伝えていた。カメラは僅かながら揺れているように感じた。

 

「何という光景でしょうか!何という光景でしょうか!上空を球体の飛行物体が飛び交い、美しかった海岸が炎と煙をあげています!現在、警察、消防、自衛隊が避難誘導を行っています。近隣の住民は直ちに避難してください!身の安全の確保を最優先し、直ちに避難してください!非常事態です!直ちにひな…!」

 

 そう言い残し、場面は報道フロアへ変わった。

 

「これは…」

「悲惨ですね…」

「近隣の住民は直ちに避難してください。現在、避難指示が出ている区域は、土佐清水市、宿毛市、宇和島市…」

 

 これは戦争であることを誰もが自覚した瞬間であろう。誰もが戦争に恐怖した瞬間であろう。

 私でさえも、戦争のグロテスクさを思い起こしてしまう。

 

 刻一刻と脅威が迫るなか、大本営から電話がかかってきた。

 

「ヒトラー提督、避難しろ」

 

「なぜ」

 

「君もわかるだろう?奴らの狙いは間違いなく呉か君だ。どちらにせよ、西日本は終わりだ。政府はこのまま西日本を放棄して、近畿以東で立て直しを図るつもりだ。舞鶴を中心に極秘裏で最終防衛ラインを計画中だ。九州からの上陸作戦もアメリカとともに進める方向となった。もう政府も米軍も自衛隊でさえも諦めている。多くの人が死ぬだろう。佐世保は避難などしないと言い張っていたが、そんなワガママを聞いている暇はない。これは命令だ。避難しろ」

 

「くっ」

 

「虎の尾を踏んだな…」

 

 そう言って電話は切れた。私は思わず司令室から飛び出し、海岸へ飛び出した。海が、赤く燃えていた。ここから燃えているのが見える。それが何を意味するか。

 

「ここはベルリンでは無いのだぞ?…はは、ははははは、はははははははは!世紀の大敗北ではないか!ここはミッドウェーか?ここはノルマンディーか?なぁ、なあ?なあ!はははっ。もうすぐここも焼き払うつもりなのだろう!煌々と燃えさかる波がそう告げている。ははははは!なんたる光景か!こんなことがあってたまるか!はははははははは!」

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