艦娘が大本営の命令で次々と帰投してきた。誰もが悲惨な表情と身体であった。彼女たちは私を見つけ、向き直ると、私の新たな任務です、あなたを守り抜きます。という旨を主張した。私が急いで車に乗り込もうとしたときであった。レニャが私を呼び止めた。
「ナァ、ヒトラー、電話、ナッテタゾ」
「こんな時に誰から!」
「大湊」
「北丸提督か…すぐいく」
私は私を制止しようとする艦娘にすまないと言って、司令室へ向かった。
そして、受話器を握る。
「なんのようだ」
「あ、ヒトラー遅いよ!わかば二本吸い終わっちゃってるんだからね」
「ふん、ヘビースモーカーの二本など一瞬ではないか。それで、なんのようだ」
「避難しないほうがいいんじゃないかなって」
「ほう、理由を聞こう」
「えー、だって、狙いはどうせヒトラー、君自身でしょ?ならその目標が東へ移ったらどうなる?」
「敵も東へ行くな」
「そう。だから君に与えられた日本平和への道はふたつ。生きてそこに残るか、ピアノ線で首を括るか、ね?」
「生きて残ってなんになる?」
「ぶっちゃけ西日本が崩壊することはこの際構わないんだよ。でもね?共産革命が達成できてない今、日本に滅んでもらっちゃ困るわけ」
「私にエサになれと?」
「違う違う。これは君にも利点があるんだよ」
「利点とは?」
「ヒトラー君。君は今まで何で成功してきた?」
「…演説、か?」
「その通り、演説と説得だ」
「それがなんだ」
「その武器、今使うべきじゃないかな?」
「深海棲艦に聞かせてやれと?」
「ザッツライト!正解さ!」
「貴様、正気か?」
「愚問だな」
「はぁ。もうどうせ逃げ遅れだ」
「ん?」
「もう音まで聞こえるよ」
「そうか。じゃあ腹を括るんだな」
「ははっ。首じゃないだけ簡単さ」
「そこはニュルンベルクじゃない。安心しな、ヒトラー。そこはミュンヘンさ」
「どこだって一緒さ」
「ところで、ものは相談なんだけども」
「ん?」
「当分は西日本がヒトラー、東日本が私のものってことにしないかい?」
「まるでポーランドだな」
「いやかい?」
「悪魔との取引は十八番なんだ」
「決まりだね」
「演説の内容を考えなくちゃならん。ここらで」
「あぁ、また五体満足で会えることを祈っているよ」
「ははっ、冗談を」
そうして電話は終わった。私は艦娘たちに舞鶴へ向かうように命令し、敵の到着を待った。レーベは私の命令を強く拒否し、この場に残った。
1時間ほど立った頃、呉鎮守府は崩れ落ちた。これは比喩でもなんでもない。ほんとうに崩れ落ちたのだ。つまり敵は眼前にいる。
黒煙が近づいて来る。もう彼女らを止めるモノは無い。
そして、その時がきた。
「ニドトフジョウデキナイ…シンカイヘ……シズメッ」
「はじめまして。私が、私こそがアドルフ・ヒトラー、その人である」