帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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57:上陸

 艦娘が大本営の命令で次々と帰投してきた。誰もが悲惨な表情と身体であった。彼女たちは私を見つけ、向き直ると、私の新たな任務です、あなたを守り抜きます。という旨を主張した。私が急いで車に乗り込もうとしたときであった。レニャが私を呼び止めた。

 

「ナァ、ヒトラー、電話、ナッテタゾ」

 

「こんな時に誰から!」

 

「大湊」

 

「北丸提督か…すぐいく」

 

 私は私を制止しようとする艦娘にすまないと言って、司令室へ向かった。

 そして、受話器を握る。

 

「なんのようだ」

 

「あ、ヒトラー遅いよ!わかば二本吸い終わっちゃってるんだからね」

 

「ふん、ヘビースモーカーの二本など一瞬ではないか。それで、なんのようだ」

 

「避難しないほうがいいんじゃないかなって」

 

「ほう、理由を聞こう」

 

「えー、だって、狙いはどうせヒトラー、君自身でしょ?ならその目標が東へ移ったらどうなる?」

 

「敵も東へ行くな」

 

「そう。だから君に与えられた日本平和への道はふたつ。生きてそこに残るか、ピアノ線で首を括るか、ね?」

 

「生きて残ってなんになる?」

 

「ぶっちゃけ西日本が崩壊することはこの際構わないんだよ。でもね?共産革命が達成できてない今、日本に滅んでもらっちゃ困るわけ」

 

「私にエサになれと?」

 

「違う違う。これは君にも利点があるんだよ」

 

「利点とは?」

 

「ヒトラー君。君は今まで何で成功してきた?」

 

「…演説、か?」

 

「その通り、演説と説得だ」

 

「それがなんだ」

 

「その武器、今使うべきじゃないかな?」

 

「深海棲艦に聞かせてやれと?」

 

「ザッツライト!正解さ!」

 

「貴様、正気か?」

 

「愚問だな」

 

「はぁ。もうどうせ逃げ遅れだ」

 

「ん?」

 

「もう音まで聞こえるよ」

 

「そうか。じゃあ腹を括るんだな」

 

「ははっ。首じゃないだけ簡単さ」

 

「そこはニュルンベルクじゃない。安心しな、ヒトラー。そこはミュンヘンさ」

 

「どこだって一緒さ」

 

「ところで、ものは相談なんだけども」

 

「ん?」

 

「当分は西日本がヒトラー、東日本が私のものってことにしないかい?」

 

「まるでポーランドだな」

 

「いやかい?」

 

「悪魔との取引は十八番なんだ」

 

「決まりだね」

 

「演説の内容を考えなくちゃならん。ここらで」

 

「あぁ、また五体満足で会えることを祈っているよ」

 

「ははっ、冗談を」

 

 そうして電話は終わった。私は艦娘たちに舞鶴へ向かうように命令し、敵の到着を待った。レーベは私の命令を強く拒否し、この場に残った。

 

 1時間ほど立った頃、呉鎮守府は崩れ落ちた。これは比喩でもなんでもない。ほんとうに崩れ落ちたのだ。つまり敵は眼前にいる。

 

 黒煙が近づいて来る。もう彼女らを止めるモノは無い。

 

 そして、その時がきた。

 

 

 

「ニドトフジョウデキナイ…シンカイヘ……シズメッ」

 

 

 

「はじめまして。私が、私こそがアドルフ・ヒトラー、その人である」

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