帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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60:四国・山陽戦闘記者会見

 あの惨劇から翌日、記者会見の会場では、多くの報道陣がカメラとマイクを構える中、大本営から東條元帥、海自から北村二等海佐、在日米海軍からオーガスト・デューイ海軍中将、日本政府から桂総理大臣と滝沢防衛大臣という、海の防衛に関しては錚々たるメンバーが顔を揃えていた。

 まず口を開いたのは東條であった。東條は淡々と文書を読み上げる。

 

「まずは戦果。無し。並びに被害。四国西部沿岸、広島南部沿岸、高松空港、松山空港、空襲および艦砲射撃により被害甚大。続いて海上自衛隊、護衛艦かが、潜水艦ちはや、轟沈。護衛艦3隻、潜水艦1隻、大破。護衛艦1隻、中破。続いて深海棲艦対策本部、艦娘7隻大破。4隻中破。11隻小破。呉鎮守府半壊。続いて航空自衛隊、土佐清水分屯、防府南基地、高畑山分屯、新田原基地、空襲により被害甚大。第5航空団…」

 

 東條が長々と語り続け、一息つくと、デューイが口を開いた。

 

「完全敗北であります」

 

 一斉にフラッシュがたかれる。それが一通り終わると、桂は話し始めた。

 

「今回、敵が撤退していったことは奇跡であります。我々は、西日本すべてを失うところでした。ですが、次に来たとき、現状では、我々が西日本を必ず守り抜くことができるかは不安であるわけであります」

 

 滝沢は小声で桂に国民が不安になることは言わんでくださいと注意する。

 一通りの説明が終わると、記者たちは一斉に手を挙げる。司会がそれを順々に当てていく。

 

「今回の敗戦はどうお考えでしょうか」

 

 東條は嫌そうにそれに答える。

 

「予測できていなかったとしか言いようが無いです」

 

「これは、政府の怠慢であったという認識でよろしいでしょうか」

 

「いや、誰も90隻の大艦隊を寄越すなんて予想できんでしょ」

 

 デューイはその言葉に続く。

 

「米国が記録している情報からみても、今まで世界各国で戦闘を行った深海棲艦群の最大規模の倍は存在した。これは、前例のない、類の見ない、大攻勢であったと考えております。それを予測するなど、世界の叡智を集結させた参謀でも、いや、世界最高レベルの人工知能でも不可能であると断言します」

 

 次の質問へ移る。

 

「今後の対策についてお聞かせください」

 

 滝沢は一度俯くと、眉間を強く抑えた。

 

「あー、そのことなのですが。対策は不可能です」

 

 報道陣がザワつく。

 

「それはどういう?」

 

「日本の総力を投入してやっと勝てる相手だと今回の戦闘を日米で分析しております。もしもそんな艦隊が連続して訪れたら?まず、この島国すべてを守り切ることは不可能でしょう。それに総力というのをすぐに用意することも困難極まりないですから。現在、最悪のパターンである、沖縄、九州、四国地方の喪失をも想定しておるわけですが、こうなってしまえば米国に頼るしか手はありません。もしも、日本を戦争状態にして、全成人徴兵したら話は別かもしれませんが…。それにです。避難のことに関しましても、海に囲まれる環境から、どこが安全かなど誰も保証できません。全国民を日本から逃がすのは、誰がどう考えても不可能でしょう?」

 

 絶望的な空気が流れる。デューイの言葉はそれをさらに加速させた。

 

「今回、米国の大統領はミサイルのスイッチに数時間触れていたそうです。これは、ただのミサイルではありません。あなた達が最も、いや、人類が最も恐れているであろうミサイル。核ミサイルのスイッチであります。もしも次にこのような艦隊が登場すれば、その場に核が落とされないことは誰ももう保証できないのです」

 

 ゴジラじゃあるまいし。そう、記者のひとりが呟いた。北村はそれに応えるようにぽつりぽつりと語った。

 

「ゴジラじゃあ無いんだよ。意思があり、集団だ。ゴジラなんかより余程恐ろしい。我々は、日本という国は、今、深海棲艦という国家と戦っているのだ」

 

 もう誰も話すことができない。そういう空気であった。そんな中、勇気をだして手を挙げる記者もいた。

 

「では、今回なぜ深海棲艦群を撃退できたのでしょうか」

 

「ハッキリと申し上げます。わかりません。不明です。現在調査中ですが、キーは呉鎮守府にあると考えております」

 

 その後、くだらない陳腐な質疑応答が続き、記者会見は幕を閉じた。

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