帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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62:なんでもない日

 私はレーベといつものように執務をこなしていた。司令室は大破しており、天井も壁も無い。私は応接間にいる。カリカリとペンの走る音、カタカタとキーボードの叩かれる音、カチカチと時計の秒針の進む音。そして、時折、応接間のソファーに溶けているかのように横になっているレニャと夕立のあくびが聞こえてくる。

 

 レニャがふと目を覚まし、夕立を起こした。

 

「ナァ、夕立。オ前ハコノ同盟ドウ思ッテルンダ?」

 

「ん?どーも思ってないっぽい?」

 

「ソーカ」

 

 そして夕立はまた眠りについた。レニャは私を見た。

 

「仕事、オワッタカ?」

 

「あと少しだ」

 

「一緒ニ補給ダ」

 

「飯か、良いぞ」

 

 隣でレーベがムスッとしている。私はレーベの方を向き、レーベも一緒にどうだ?と誘った。すると、レーベはぱぁっと明るく笑い、はい!と元気の良い返事をした。

 執務を終えた私は夕立も誘い、4人で飯を食べに食堂へ向かった。

 

「今日の担当は誰だったか」

 

 レーベが私に答える。

 

「確か、赤城さんと加賀さんですよ」

 

「そうかそうか。彼女たちも美味い飯をつくる。量が多い気もするが、楽しみだ」

 

 夕立が私の腕を引き、駆け足になる。

 

「はやくいくっぽい!」

 

「はは、腕を引っ張るな」

 

 レーベが私に質問する。

 

「ねぇ、総統?いつも思ってたんだけど、総統って前は相当美味しいものを食べてきたんでしょ?艦娘の料理で満足できるの?」

 

「あぁ、できるとも。私が認めよう。君達の料理は美味い」

 

「そ、そうなんだ。へへ」

 

 和やかな空気の流れる中、あっという間に食堂に着く。

 

「A定食をくれ」

 

「A定食をおねがいします」

 

「Cっぽい!」

 

「Bヲクレ」

 

 席につき、ガヤガヤと姦しい中、食事を始める。

 

「なぁ、時にレニャよ」

 

「ナンダ?」

 

「もう、ここの生活には慣れたか?」

 

「アア、慣レタゾ。艦娘ドモモ案外優シイシナ」

 

「はは、なら良かった」

 

「レーベ、夕立、レニャたちとの生活で困ったことはないかね?」

 

「ないですよ」

 

「ないっぽい!」

 

「そうかそうか。なら良いのだ。我々は仲間だ。日々協力し、互いにいい関係を築くのだぞ?」

 

「はい」

「ぽい!」

「オウ」

 

「それにしても、先の戦闘は大変だったな。戦地は地獄だったと聞く」

 

「かがとちはやが沈んだっぽい」

 

「確かに大変だったね」

 

「アソコマデ本気デ攻メテクルノハソウイナイゾ。大激怒ッテ感ジダッタナ」

 

「でも、あれは八つ当たりだと思わないか?」

 

「なんで?」

 

「だって、確かに南太平洋の艦隊は我々の傘下に下ったよ。しかし、だったら、下った艦隊に対して攻撃しないか?普通」

 

「確かにそうっぽい!奴ら許せないっぽい!」

 

「確かにそうだよね」

 

「マァ、味方同士デ戦ウノハ嫌ナンダト思ウゾ。人間トチガッテ」

 

「人間は人間同士で争うからな。愚かしい」

 

「代表例ガナニヲイウ」

 

「私は平和のために戦ったにすぎないよ。ユダヤ人や赤共とは違ってな」

 

「ハハ、ソウナノカ」

 

「まぁ、今は人間ではない。ノビノビと戦争させていただくよ」

 

「ドコト戦争スルンダ?」

 

「まずは日本だな。今回の件で、90の艦隊で西日本のみなら制圧できると考えられる。ただ、アメリカ軍本軍の到着が怖い。よって、九州に上陸し、電撃的に北上するのが良いと考えている」

 

「ブリッツクリーク…」

 

「その通りだ、レーベ。上陸後は陸自との戦闘になる。だが、艦娘なら大丈夫だろう」

 

「そんなことはないっぽい」

 

「どういうことだ、夕立?」

 

「白兵戦で簡単に勝てるほど、陸自もヤワじゃないっぽい」

 

「そうだよ総統。なにしろ、僕達艦娘に白兵戦を教えているのが陸自なんだよ」

 

「なんと、ならば他の作戦を考えねばならぬな」

 

 私がうんうん唸っていると、夕立が元気よく手をあげた。

 

「はいはーい!やっぱり、挟み撃ちが良いと思うっぽい!」

 

「挟み撃ちか、確かに良いかもしれないな。だが、それだと倍の戦力を我々が所有している必要がある。そういえば、南太平洋艦隊は何人で構成されているのだ?」

 

「ンー、詳シクハワカンナイガ、300ハイルトオモウゾ」

 

「200投入すれば可能か」

 

「エー、デモソレジャア背中ガガラ空キダゾ」

 

「確かにそうか。それでは南太平洋の制海権を奪取されかねん」

 

「資源地帯モナントカ抑エテルンダ」

 

「優秀だな。逆に言えば、それなのにあの大艦隊を寄越したインド洋艦隊は頭おかしいんじゃないか!?」

 

「ソウダトモ」

 

 夕立が少しばかり俯いて、震えた。

 

「勝てなかったのは悔しいっぽい」

 

 恐怖で震えたのではない。興奮でだ。

 

「今度、インド洋にでも行くか。手土産でももって」

 

 レニャは笑った。

 

「コノ前殺サレカケテイタ身ガ何ヲイイダスカ」

 

「いいだろ?別に。きっと次は明るく出迎えてくれるさ」

 

「ドウダカ」

 

 夕立が手を合わせて立ち上がった。

 

「ごちそうさまっぽい!またね、提督!」

 

「あぁ、また」

 

 私は思わず笑う。

 

「夕立を見ていると、ブロンディを思い出すよ。昔飼っていた犬だ」

 

「犬なんだね」

 

 レーベが苦笑する。

 

「優秀で、賢く、それでもって元気の良い犬だった」

 

「そうなんだ」

 

「また犬飼おうかな」

 

「いいんじゃない?」

 

「戦争ニ支障ガナイナライイゾ」

 

 どうするかと、またうんうん唸っていると、レーベとレニャがごちそうさまと小さく呟いた。

 

「あぁ、私もはやく食わねばな」

 

「ああ総統!急がなくていいよ!」

 

「そ、そうか?」

 

 そう言われても、幾分かペースがあがる。

 そして、私も食べ終わり、ごちそうさまと言った。そして食器類を片付け、応接間へ帰った。

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