帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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63︰映画な一日

 暇だ。大変暇である。呉鎮守府改修工事の影響で、応接間から出ることができない。しかも、執務は昨日のうちにすべて終わらしてしまっている。そこで、私はレンタルビデオなるものを利用してみることに決めたのだ。明石、夕張、青葉に遠征を頼み、オススメの映画を借りてきてもらうこととした。

 

 3人が帰投し、それぞれの借りてきたビデオを確認する。明石が「帰ってきたヒトラー」、夕張が「JOKER」、青葉が「1984」である。

 

 まず、帰ってきたヒトラーを見ることとした。気づけばレーベにビスマルク、川内が遊びに来ていた。

 

 話の筋はこうだ。突如生き返った私が、新聞屋で無能な若き監督と出会い、政治ドキュメンタリー動画を撮影していく。その中で演説の才が発揮され、テレビに出始める。そして、そこで様々な苦難を乗り越えていく、といったものだ。

 それを見た私の第一声はこうだ。

 

「素晴らしいプロパガンダ映画だ…」

 

 それにレーベが頷く。明石は満足気だ。

 

「なぁ、青葉よ。これ作れないか?」

 

「作っても、二番煎じになるのであんまりオススメしませんよ」

 

「本物なのに…」

 

「まぁそんなに落ち込まないで」

 

「しかし、よくできているなぁ」

 

「ですよね!いやー、提督ならわかると思ってました!」

 

「なぜ明石が自慢気なのか」

 

 ビスマルクが目を輝かせていた。

 

「これ!すごく良い映画だわ!」

 

 思わず自分も自慢気になってしまう。

 

「やはりそう思うか!そうだよな」

 

「提督って意外と慕われてるんだね」

 

「川内、意外とはなんだ、意外とは」

 

「意外でしょ。だって、ただのオジサンじゃん!」

 

「まぁ、そうなのだが」

 

「やっぱり、大衆は独裁者を求めてるということなんですかね」

 

 青葉がふぅとため息混じりに言った。

 

 次にJOKERを見た。だいたい、精神疾患者の道化師が社会の荒波に揉まれながら悪人になるといった話だ。

 

「うむ。面白いとは思うぞ」

 

 夕張はその私のセリフに不満なようだ。

 

「なんか不服そうですね」

 

「不服、というわけではないのだが、なんと言うかな」

 

「なんというか?」

 

「主人公に共感できない。キャラクターに共感できないのだよ」

 

「そうですか?みんな、自分もジョーカーになり得るって話題になったんですけど」

 

「彼はただの精神疾患者だ。それに共感できるとは、そいつらは自身をジョーカーだと思い込む異常者か青二才だ」

 

 みなが押し黙ったが、私は続けた。

 

「彼は、社会が、政府が抹殺すべき対象だ。そうしないからあのようなモノが出来上がるのだそれに、彼は最後、悪のカリスマかのように讃えられるが、その捉え方は間違いだ。ほんとうにただの偶像にすぎない。中身が無い人形として頂点に据え置かれたにすぎないのだ」

 

 ふむふむと頷いたり、首を傾げたり、彼女たちの反応は様々だ。

 

「それに、悪のカリスマというのは、私のことを言うのだろ?」

 

 そう、最後に笑ってみせた。夕張も笑った。

 

「確かにそうですね。アドルフ・ヒトラーに見せたのが間違いでした。ナチスは悪すぎる」

 

「だろだろ?」

 

 レーベは待ったと間にはいる。

 

「違うよ!正義のヒーローだよ!」

 

 私は敬愛されていることに思わず笑みをこぼす。

 

「ははは、冗談だよレーベ」

 

「うー…」

 

 我々は最後に1984を見た。話は、なんとも説明しづらいもので、ディストピアをえがいた作品としか言いようがない。

 

「わからん」

 

「えー、わかんないですか?」

 

「わからんよ。後味悪すぎるだろ」

 

「そこが良いんですよ!」

 

 青葉以外、誰もこの話についていけなかったようだ。

 

「あれだな。監視できるあのテレビは画期的なアイデアだな」

 

「えー、それだけですか?」

 

「それだけだが?」

 

「んー、予想と違った」

 

「なんだ?予想とは」

 

「なんでもないですよ」

 

「そうか」

 

 こうして、我々の映画鑑賞会は幕を閉じた。

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