帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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64:大湊警備府にて

 大湊警備府は、建前は諸外国からの違法入国者で構成される囚人たちの悲痛な叫びを除けば、平和そのものであった。

 

「あー、暇だ」

 

 大湊の北丸はそう言いつつタバコに火を付ける。彼女がフィルターを噛むと小さくパチンとカプセルの弾ける音がする。ふぅと大きく息を吐き、椅子にもたれかかり、天井を見上げる。

 そんな時、ノックがなった。

 

「どうぞー」

 

「司令官、おはようございます」

 

「ん、おはよ。吹雪」

 

 彼女の秘書艦、吹雪である。吹雪は敬礼し、資料を渡し、要件を話す。

 

「アリューシャン列島の米海軍が深海棲艦群を発見したようです」

 

「ほう」

 

「それで、進行方向から推測するに、オホーツク海方面へ向かっているようです」

 

「うちだねぇ」

 

「対応をお願いします」

 

「とりあえず警備府は厳戒態勢。ちなみに、大本営は?」

 

「アメリカと合同で海自が展開するようです」

 

「ふーん」

 

「どうします?」

 

「とりあえず様子見かな」

 

「わかりました!」

 

 吹雪が退出し、1分も経たないうちに警報音がなる。北丸はタバコに火を付けると、ここまでしなくてもいいのに、と呟いた。

 

 一方、吹雪はというとガングートと面会していた。

 

「北丸提督は静観するそうです」

 

「あの方はいつも呑気だ…」

 

「では?」

 

「その分我々が兜の緒を締める!」

 

「ですね」

 

「扶桑、山城、妙高、那智、足柄、羽黒で近海を守備。暁型四姉妹でアリューシャンまで偵察を出そう」

 

「了解です」

 

「あと、彼女は何を吸っていた?メビウスか?」

 

「はい。ですが、私が退出した後は違うものかと」

 

「なぜわかる?」

 

「ふらっと司令室の前を通ったときに、違う匂いがしたので…」

 

「匂い嗅ぎにいったろ」

 

「まぁ、そうなんですが」

 

「強いタバコか…。この事態をそこそこ重く考えていらっしゃるようだ」

 

「たぶん、斥候の海自は壊滅しますね」

 

「小型艇の準備もしておけ」

 

「それは憲兵がすでにとりかかってます」

 

「流石、はやいな」

 

「えへへ」

 

「で、憲兵は?」

 

「すでに半数は警備府を出立し、北海道の沿岸部を走り回ってます」

 

「そうか」

 

「ちなみに、ロシアは提督にひっきりなしに連絡を入れてます」

 

「だろうな。こちらに来るということはロシアも危ないということだからな」

 

「では、そろそろ」

 

「そうだな」

 

 彼女たちは立ち上がり、それぞれの持ち場に戻る。そしてガングートは扶桑ら10人を呼び出した。

 

「貴様ら、出撃の時間だ。いつも言っている通りだか、大湊に、提督の顔に泥を塗るなよ!」

 

 10人はウラーと一斉に返事をする。それを見てガングートはうんとひとつ頷くと、詳細な作戦を語った。

 

 暁型の4人が出撃し、いくらか警戒態勢をとっていたところ、煙を上げて撤退する海自の戦隊とすれ違った。それを暁は即座に警備府に連絡した。すると、ものの数分で扶桑らと合流する。

 

「はぁ、不幸だわ」

 

 扶桑の呟きに響は疑問を投げかけた。

 

「何が不幸なんです?」

 

「深海棲艦が、北丸提督に壊滅される。彼女たちが不幸だわ」

 

 山城はそうですねと言って笑う。

 

 いくらか護衛艦が垂れ流した油を辿って進むと、深海棲艦郡と衝突した。数は24隻、戦艦や空母が入り混じっていた。

 電は震えた声で扶桑に聞いた。

 

「勝てるのです?」

 

 その問いに扶桑は不敵な笑みを浮かべた。

 

「勝てるのではないですよ。勝つのです」

 

 その後の戦闘は圧倒されるモノであり、わざわざ記述されるようなことは起こらなかった。端的に言えば大湊の完全勝利である。

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