私、ヒトラーは何故か大湊警備府に呼ばれていた。
「北丸大将、なぜ私はここに呼ばれたのかね?」
「いやー、我が艦隊が見事勝利を収めたのでね」
「それは解っているとも。だが、私が呼ばれた意味がわからぬ」
「そりゃパーティーは人数がいたほうが楽しいからではないかな?」
「ははは、そうか。だが、酒とタバコはやらんぞ」
「そういうと思ったよ。まぁ、1杯だけでも…」
「まぁ、1杯だけなら」
そして差し出されたのは透明な液体の入った小さなグラス。私は乾杯とひとこと言って、それをグイッと飲み干した。
「ぐぇっへへへはぁあ!おぇ、ぐぉへ、な、何だこれは!」
「はははははっ。フィンランディアだよ!」
「あぁあ、喉が痛い、頭がくらくらする…」
「美味しいだろ?」
そう言って、北丸はグラスをゴクリと飲み干した。
「不味いわ…」
「そう?ほら、あっちを見てみてよ」
北丸が指をさす先には、透明な瓶をほぼ垂直に傾けてゴクリゴクリと中に入った液体をまたたく間に減らしていく女性たちだ。飲み干すと、思いっきり瓶を床に叩きつけて割っては、また新たに蓋を開けるのだ。
「な、なんだあれ…」
「うちのカワイイガングートちゃん、千代田ちゃん、千歳ちゃん、那智ちゃんと響ちゃんだよ」
「うん、そういう意味じゃない…」
飲んではガハハと笑い、また飲んではガハハと笑う。ハッキリ言って品が無い。
「おーい!ガングート、おいで!」
「んぁ?なんだ、貴様!私うへぇ、を、を、よ、呼び出すとは!」
「あなたの提督だよぉ!」
「んなっ!?北丸ちゃーん!」
ガングートと呼ばれた艦娘は思いっきり走ってこっちへ来た。
「なになに?」
「いやー、ヒトラーがお酒飲んでくれないんだよね」
「は?おい、何を言って…」
「千代田!千歳!抑えろ!」
「待て待て待てま、んぐっ!」
二人の艦娘に身体の自由を奪われ、瓶を口に突っ込まれた。これは、し、し、死ぬ!
「まぁ、それ水なんだけどね」
「お前!北丸お前!ふざけるな!」
「ふざけるよそりゃ。酒の席だぜ?ヒック」
気がつくと北丸の足元には5本の空になった瓶が転がっていた。
ガハハガハハと下品な笑い声が響いていたと思うと急にその場が静かになった。そして、私はむせた。理由は明白で、この場のほとんどの人間がタバコに火をつけたのだ。
「ゲホゲホっ。酒のんでタバコ吸って…。頭おかしいのか!?」
「頭はおかしいよ。私には心があっても頭は無いからね」
「クソッタレが!」
すると、よたよたと響がこちらへ近づいてきた。
「ん?どうしたのかね?」
「そ、総統、あの、実は…」
響は顔を真っ赤にしてうつむいた。
「なんだ?」
「う、うおぇぇぇえええ。ぐぉへぇ。おぇ、おぇっ」
私ははじめ、何事かと理解ができなかった。しかし、耐えきれぬ臭いと染み込む生暖かさで、嫌でも気づくこととなる。この小娘、私の軍服に吐きやがった。
「こいつ!」
私は思わず手を上げた。北丸は私の腕をぐっと強く握り、首を横にふった。
「響!トイレ以外で吐くなっつったろ!響は3日禁酒!」
3日だけか!?私は驚愕した。だが、本人である響は目をうるうるさせ、顔を真っ青に染め上げた。ガングートは3日も…といったふうに衝撃を受けた表情を浮かべていた。
「大湊、頭おかしいよ」
私はそばにあった缶に手を伸ばし、ジョッキに注いだ。
「この祝賀会、飲まずにやっていられるか!」
私はビールを飲み干した。
「いい飲みっぷりじゃん!総統!」
「飲まないだけで、飲めないわけじゃあないんだよ!」
「もう一杯!もう一杯!」
それからの記憶はもう無い。私は気がついたら呉鎮守府の医務室で目が覚めたのだった。はぁ、頭痛い。気持ち悪い…。