レーベは見知らぬ白い部屋の中、黒い靄と対峙していた。
『レーベレヒト・マースよ』
「なにもの!?」
『ふむ。私はアドルフ・ヒトラー、その人である』
すると、黒い靄が次第に晴れ、そこからひとりの男、アドルフ・ヒトラーが現れた。
『君は、あの男に、私に失望しているな?』
「そ、そんなこと!」
『あるさ。私にはわかる』
「総統のどこに失望する要素があるっていうのさ!」
『夢を語るばかりで実行力に欠ける。計画性の無い無茶な行動。極めつけはコミーとの祝賀会だ。違うか?』
レーベは押し黙った。
『私はアドルフ・ヒトラーであり、アドルフ・ヒトラーでない。私は君が作り上げた偶像に過ぎないのだ。つまり、真の意味で君の理想の総統だ』
「理想の?」
『私に全てを委ねろ。さすれば君は私を、いや、彼を超える、総統に…』
そこでレーベは目を覚ました。冷や汗を流すが、どこか気持ちの良い、スッキリとした目覚め。それと同時に、総統に失望しているという自覚が、なんとも言えぬ不快感として自身を縛り付けていた。
「はぁ」
ひとつため息をつき、時計を見る。時刻は5:12。まだ起きるには早い時間であった。レーベは静かに部屋を出て、夜勤の川内のもとを訪ねた。
「川内さん」
「ん?どうしたの?」
「いや、変な夢を見まして…」
「変な夢?」
レーベは自らが見た夢を事細かく説明した。川内はその話を聞いて、唸り声をあげる。
「うーん、よくわかんないなぁ」
「ですか…」
「ただ、ひとつわかるのは、レーベちゃんがヒトラーに対して心のどこかで不信感を抱いてるってことかな」
「そんなこと!」
「いや、あると思うよ」
「うぅ」
「一回ヒトラーと話してみたら?」
「はい、そうしてみます」
レーベは去り際にひとこと付け足した。
「川内さん、ヒトラーではなく、総統ですよ?」
ヒトラーの起床は遅い。10:00を超えることはほとんど当たり前であった。だが、今日は朝早くから執務室からは光が漏れていた。レーベは扉をノックした。
「ん?だれだ?入ってきたまえ」
「ハイル・ヒトラー!おはようございます。レーベです」
「こんなに朝早くからどうした?」
「いや、少し話したいなって思いまして」
「ふむ。そうか。とにかく座りたまえ」
「失礼します」
「なにか心配ごとか?」
「実は」
レーベは夢の話をしようとして、即座に飲み込んだ。この話は方の前ではしてはいけないと。
「どうした?」
「いえ!なんでもありません!」
「そうか」
「でも…」
「ん?」
「あ!僕も軍を指揮したいなって」
「どういうことだ?」
「えーとね?突撃隊とか親衛隊みたいなのが欲しいなって。もっと総統の役に立ちたいんだ!」
「そうかそうか」
ヒトラーは嬉しそうに笑った。
「いいぞ」
「ほんと!やったー!」
「副官に龍田を任命させる。好きにすると良い。名前はそうだなぁ。君の美しい銀髪からとって、銀色突撃隊なんてどうだ?」
「わぁ!いいですね!」
「うんうん」
「早速準備しますね!」
「頑張れよ」
レーベは考えた。彼がもし本当に夢を語るばかりで実行力に欠け、計画性の無い無茶な行動をするような方ならば、僕がちゃんとしないと、と。
レーベは銀色突撃隊の副官として任命された龍田のもとを訪ねた。
「レーベちゃん、こんにちは」
「龍田さん、こんにちは」
「なんの用かしら?」
「実は、銀色突撃隊という武装組織の設立をしようと考え、総統に相談したところ、龍田さんに副官を任命されたので、そのことのご報告と相談をと思いまして」
「そう」
「…どこから人を集めれば良いのでしょうか」
「やっぱりSNSじゃないかしら」
「ふむふむ、ありがとうございます!」
レーベは龍田から許可をとり、スマホを取り出し、早速twitterのアカウントを開設した。名前は銀色突撃隊。
「なんてツイートしましょう」
「うーん、そうねぇ。とりあえず、銀色突撃隊のモットーと募集要項、それと募集案内じゃないかしら」
「わかりました!」
「あ、でも、提督の名前は出さないほうがいいかもね」
「そうですか…」
「あなたが総統ってことでいいんじゃない?」
「え!?僕がですか?」
「そうよ」
「わ、わかりました」
レーベはポチポチと、時々唸りながら文章を作成した。
【銀色突撃隊の総統、レーベです。本団体は総統と政治結社の職員の護衛のために存在しています。モットーは全てを総統閣下に。私のために戦ってくださる方を募集します。私とともにこの腐敗した世界を変えてくれる方をは是非DMまで。】
「こんな感じでどうでしょうか」
「いいんじゃない?」
「そうですか?」
「うん」
「そうだ!総統に演説の文章を考えてもらって、それもツイートしていきましょう」
「それはいいわね〜」
その後、レーベはヒトラーのもとを度々訪れてはヒトラーの語ったことをツイートした。この時はこの行為が成功するなどとはレーベを除き、誰も考えていなかった。