帰ってきたヒトラーは鎮守府に着任しました。   作:たむがや

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66:レーベともうひとりのヒトラー

レーベは見知らぬ白い部屋の中、黒い靄と対峙していた。

 

『レーベレヒト・マースよ』

 

「なにもの!?」

 

『ふむ。私はアドルフ・ヒトラー、その人である』

 

 すると、黒い靄が次第に晴れ、そこからひとりの男、アドルフ・ヒトラーが現れた。

 

『君は、あの男に、私に失望しているな?』

 

「そ、そんなこと!」

 

『あるさ。私にはわかる』

 

「総統のどこに失望する要素があるっていうのさ!」

 

『夢を語るばかりで実行力に欠ける。計画性の無い無茶な行動。極めつけはコミーとの祝賀会だ。違うか?』

 

 レーベは押し黙った。

 

『私はアドルフ・ヒトラーであり、アドルフ・ヒトラーでない。私は君が作り上げた偶像に過ぎないのだ。つまり、真の意味で君の理想の総統だ』

 

「理想の?」

 

『私に全てを委ねろ。さすれば君は私を、いや、彼を超える、総統に…』

 

 そこでレーベは目を覚ました。冷や汗を流すが、どこか気持ちの良い、スッキリとした目覚め。それと同時に、総統に失望しているという自覚が、なんとも言えぬ不快感として自身を縛り付けていた。

 

「はぁ」

 

 ひとつため息をつき、時計を見る。時刻は5:12。まだ起きるには早い時間であった。レーベは静かに部屋を出て、夜勤の川内のもとを訪ねた。

 

「川内さん」

 

「ん?どうしたの?」

 

「いや、変な夢を見まして…」

 

「変な夢?」

 

 レーベは自らが見た夢を事細かく説明した。川内はその話を聞いて、唸り声をあげる。

 

「うーん、よくわかんないなぁ」

 

「ですか…」

 

「ただ、ひとつわかるのは、レーベちゃんがヒトラーに対して心のどこかで不信感を抱いてるってことかな」

 

「そんなこと!」

 

「いや、あると思うよ」

 

「うぅ」

 

「一回ヒトラーと話してみたら?」

 

「はい、そうしてみます」

 

 レーベは去り際にひとこと付け足した。

 

「川内さん、ヒトラーではなく、総統ですよ?」

 

 ヒトラーの起床は遅い。10:00を超えることはほとんど当たり前であった。だが、今日は朝早くから執務室からは光が漏れていた。レーベは扉をノックした。

 

「ん?だれだ?入ってきたまえ」

 

「ハイル・ヒトラー!おはようございます。レーベです」

 

「こんなに朝早くからどうした?」

 

「いや、少し話したいなって思いまして」

 

「ふむ。そうか。とにかく座りたまえ」

 

「失礼します」

 

「なにか心配ごとか?」

 

「実は」

 

 レーベは夢の話をしようとして、即座に飲み込んだ。この話は方の前ではしてはいけないと。

 

「どうした?」

 

「いえ!なんでもありません!」

 

「そうか」

 

「でも…」

 

「ん?」

 

「あ!僕も軍を指揮したいなって」

 

「どういうことだ?」

 

「えーとね?突撃隊とか親衛隊みたいなのが欲しいなって。もっと総統の役に立ちたいんだ!」

 

「そうかそうか」

 

 ヒトラーは嬉しそうに笑った。

 

「いいぞ」

 

「ほんと!やったー!」

 

「副官に龍田を任命させる。好きにすると良い。名前はそうだなぁ。君の美しい銀髪からとって、銀色突撃隊なんてどうだ?」

 

「わぁ!いいですね!」

 

「うんうん」

 

「早速準備しますね!」

 

「頑張れよ」

 

 レーベは考えた。彼がもし本当に夢を語るばかりで実行力に欠け、計画性の無い無茶な行動をするような方ならば、僕がちゃんとしないと、と。

 

 レーベは銀色突撃隊の副官として任命された龍田のもとを訪ねた。

 

「レーベちゃん、こんにちは」

 

「龍田さん、こんにちは」

 

「なんの用かしら?」

 

「実は、銀色突撃隊という武装組織の設立をしようと考え、総統に相談したところ、龍田さんに副官を任命されたので、そのことのご報告と相談をと思いまして」

 

「そう」

 

「…どこから人を集めれば良いのでしょうか」

 

「やっぱりSNSじゃないかしら」

 

「ふむふむ、ありがとうございます!」

 

 レーベは龍田から許可をとり、スマホを取り出し、早速twitterのアカウントを開設した。名前は銀色突撃隊。

 

「なんてツイートしましょう」

 

「うーん、そうねぇ。とりあえず、銀色突撃隊のモットーと募集要項、それと募集案内じゃないかしら」

 

「わかりました!」

 

「あ、でも、提督の名前は出さないほうがいいかもね」

 

「そうですか…」

 

「あなたが総統ってことでいいんじゃない?」

 

「え!?僕がですか?」

 

「そうよ」

 

「わ、わかりました」

 

 レーベはポチポチと、時々唸りながら文章を作成した。

 

【銀色突撃隊の総統、レーベです。本団体は総統と政治結社の職員の護衛のために存在しています。モットーは全てを総統閣下に。私のために戦ってくださる方を募集します。私とともにこの腐敗した世界を変えてくれる方をは是非DMまで。】

 

「こんな感じでどうでしょうか」

 

「いいんじゃない?」

 

「そうですか?」

 

「うん」

 

「そうだ!総統に演説の文章を考えてもらって、それもツイートしていきましょう」

 

「それはいいわね〜」

 

 その後、レーベはヒトラーのもとを度々訪れてはヒトラーの語ったことをツイートした。この時はこの行為が成功するなどとはレーベを除き、誰も考えていなかった。

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