オーストリアの西部山地某所。黒い革の椅子に机を挟んでふたりの男が座っていた。
「大佐、日本のtwitterでネオナチと思しきアカウントを発見しました」
「どれ?ふむ、代表の名はレーベというのか。これがどうした?」
「レーベという名前は、レーベレヒト・マース、日本の自衛隊の艦娘と呼ばれる兵器の名であり、その所属組織の呉鎮守府の司令官のイニシャルがHというらしいのです」
「私に報告することか?」
「そ、そうなんですが、諜報部のほとんどが、このアカウントがヒトラーイズムの信奉者では無いかとの結論をだしました」
「根拠は?」
「ツイートの内容です。ぜひご覧になってください」
「うむ」
大佐と呼ばれた男はその内容を散見し、長考する。
「確かに、ヒトラーイズムに近い。我々のAIでも、同じ文言を叩き出すだろう。だが、所詮は猿真似ではないのか?」
「そこの司令官について諜報部が調べたところによると、彼のことが日本政府によって隠匿され、ほとんどのことがわからなかったようで、報告書は4ページしかありませんでした」
「たったのか。日本政府の他の国家機密でももう少しは集めているではないか」
「そこで、様々なメディアの解析をしたところ、この写真がみつかりました」
「白い軍服に身を包んだちょび髭のヨーロッパ系の男…。これは、彼に影響されただけでは無いのか?」
「はい。しかし、日本の軍部にヨーロッパ系の男が所属したということは無いようです」
「突如現れたと?」
「そうとしか…」
「もしや、諜報部は彼を本物のヒトラー総統だと言いたいのかね?」
「結論はそのようです」
「バカバカしい」
「何がバカバカしいのかね?」
「か、閣下!」
ふたりの男が起立し傾注する。ドアを開け、筆ヒゲを生やした中年が入ってきた。慌てて大佐は返答する。
「いえ、特に閣下にお話することはございません」
「本物のヒトラー、と聞こえたのだがね?なんのことかな?」
「そ、それは、諜報部の調査によるところ、なんでも日本にヒトラーイズムに傾倒する勢力が現れたと、そして、その代表がヒトラー総統では無いかとの結論を出したようで」
「面白い」
「面白い、ですか」
「本物のヒトラー総統が現れたのだぞ?心が躍るではないか!」
「確かにそうですが、なにぶん根拠が」
「根拠?見に行けばわかる話じゃないか。はやく日本人を送るよう手配しろ」
「は!承知しました!」
大佐ともうひとりの男は足早に部屋をでる。閣下と呼ばれた男は、机に広げられた資料を手に取りニタリと笑う。
「これは大変面白いこととなったな」