現在、呉鎮守府の正門では夕立が門番をしていた。そこへ、ひとりの男が訪ねてきた。
「どうもこんにちは」
「こんにちはっぽい。どなたっぽい?」
「私は中西圭司。ヒトラー総統と面会したく訪ねました」
「所属は?」
「あいにく、私は大本営や、ましては日本政府の者ではございません。私はただの信徒でございます」
「信徒?」
「えぇ。私はヒトラー総統の信奉者です。ただの信徒にすぎません」
「でも、ヒトラーなんてうちにはいないっぽい」
「いますよね?白い軍服に身を包んだヒトラー総統が」
「と、とりあえず上司に相談するっぽい!」
夕立は受話器をとり、ヒトラー本人に確認を取る。ヒトラーはひとつ唸ると、信徒、という言葉に惹かれ、承諾をした。
「入っていいっぽい。でも、案内がくるまで待つっぽい」
「承知しました」
数分後、ビスマルクが正門へやってくる。
「ビスマルクだ。司令官のもとへ案内してやるからついてこい」
「ありがとうございます」
特に道中は会話もなく、スムーズに応接間に到着した。ビスマルクはノックをして入室する。
「ハィ…。司令官、客人をお連れしました」
「ありがとう」
ヒトラーは頭の軍帽を机に置き、客人に椅子に座るよう手を指した。ビスマルクは客人が入室したのを確認し、扉を閉める。そして、扉の前で腕を組み、客人の行動を目で追った。
「失礼します」
「どうぞ。して、なんの用ですかな?」
「ここにヒトラー総統が復活したと推測されたので、確認をと思いまして」
「どうしてそんな推測を?」
「私は、我々はヒトラーイズムの研究者にすぎません。そして、偉大なるヒトラー総統の信奉者であり、下僕にすぎません。そんな我々ですが、ついぞ最近、twitterに不思議なアカウントを発見しまして、うちの諜報部が調査したところ、なんでもかのヒトラー総統が復活なされたのではないかという結論を出しました。そこで、その事実確認を行うべく、参じたというわけです」
「ふむ」
「ぜひ、お答えをお聞かせください。あなた様はヒトラー総統であられますか?」
ヒトラーは顎に手を当て、少し俯いた。数秒の沈黙。
「いかにも。私こそアドルフ・ヒトラーである」
「なんと!やはり本当だったのですね!」
中西は喜び、涙した。
「しかし、だ。私がそうだと言って、何をもって信用する?」
「我々には会っただけで本物かどうかなどわかりますとも。イエスが復活したとして、それに気付けないキリスト教徒などいるでしょうか」
「そうか」
ヒトラーもゆっくりと喜びを感じるようになっていた。
「ヒトラー総統もお忙しいでしょう。私はそろそろ退散いたします」
「そうか」
「また会える日を楽しみにしております」
「私もだ」
そういってヒトラーは微笑んだ。