レーベがtwitterを始めて一ヶ月が過ぎたころ、フォロワーは47人になっていた。そろそろかと思い、レーベは呉鎮守府近くの貸し会議室に志願者を集めたのだった。
そこには11人が集まっていた。
「本日は集まってもらってありがとうございます!僕の名前はレーベレヒト・マース。銀色突撃隊の総統です!では、みなさんの自己紹介お願いします」
そう言ってから順に自己紹介が進んでいき、最後の男になった。男は筆ひげを蓄えた中肉中背の中年であった。
「〈ドイツ語は通じますかな?〉」
「〈えぇ〉」
「〈私はオーストリアから参りました、アーブラハム・ウーリヒと申します〉」
「〈志願の理由は?〉」
「〈理由は簡単で、彼の地にてアドルフ・ヒトラー総統が復活されたと聞き及びましたので、参上したしだいでございます〉」
レーベは怪訝な顔を浮かべる。
「〈…そのことはどこで?〉」
「〈それを説明するにはまず私のより深い自己紹介が必要でしょう。私はヒトラーイズムの信奉者であり、その思想に付き従う同志が8941人おります。その同志で組織されたHitlers Befehlの総帥をしております。その組織の諜報部が調べ上げたわけです。〉」
「〈ヒトラーイズム?〉」
「〈えぇ、ヒトラーイズムであります。昨今のナチズム、ひいてはネオナチの思想は時代を経るにつれ、歪曲しています。それは必然ではあるのでしょうが、悪であります。そこで我々はナチズムと分け隔てる存在として、ヒトラーイズムの信奉者であるということとしているのです〉」
「〈ヒトラーの思想そのままと言うわけなの?〉」
「〈えぇ。それと、先程も言いましたが、私含め同朋は8942人おります。つまり、ここに集った者は10人と8942人、というわけです〉」
「〈わかった、ありがとう〉」
レーベは一息置いて、他の10人に向き直った。
「この銀色突撃隊の総統は僕ですが、僕にはここの指揮を命じた上官がいるんだ。その人こそ、みなさん知ってると思うけど、アドルフ・ヒトラー総統だよ」
会場がざわつく。
「それは本気で言っているんですか?ヒトラーはすでに死んでますよ?」
「正真正銘アドルフ・ヒトラー総統だよ」
彼らは疑惑の目をレーベに向けた。それを見て、レーベはニコリと笑った。
「呉鎮守府に行きましょう。そうすればすべて理解できるはずだよ」
ぞろぞろと会議室を後にし、徒歩で呉鎮守府に向かう。
呉鎮守府に着くと、一万人近くの群勢が集結していた。
「〈総員、傾注!〉」
ウーリヒは苦笑した。
「〈すみません、レーベ殿。私の部下たちです。待ちきれずに来てしまったのでしょう〉」
「〈大丈夫!総統もお喜びになると思うよ!〉」
「〈そう言っていただけて幸いです〉」
そうして、9000に及ぶ群衆が呉鎮守府に収容されていった。
グラウンドにぎゅうぎゅうに並ぶ銀色突撃隊。レーベはヒトラーを呼び出した。数分後、ヒトラーは悠々と歩きながら登場した。
「おほん。私こそがアドルフ・ヒトラーである」
おぉと歓声や困惑の声が響いた。それが静まるまでヒトラーはじっと待った。
「諸君、本日はお集まりいただき感謝する。
これだけの人数が集まることは想定外であったが、これほどまで集まったことは、嬉しく思う。
諸君はきっとナチズムの信奉者であると思う。そして、私の目的は日本の掌握と世界に新秩序もたらすことである。きっとそれを多くの者は望んでいるのだろう。
約束しよう。必ず私は世界を懲罰し、支配すると。その約束が達成されることは、世論が考えるよりもはやく行われることも強調したい。
経済格差、社会階級、学歴主義が日本を、世界を分断している。しかし、どこの国の政府も偏った政策しか打ち出せない。しかし、万人よ。富める者、貧しい者、学のある者、学のない者よ。私は指導者として、大義を果たす存在である。そのことを然と考えておけ。私の指導の先にユートピアは存在し得るのだ。
今にでも革命がはじまる。再び闘争がはじまる。国家主義運動がはじまる。心しておけ。我々は常に闘争の最中で進軍するのだ。
きっと有事のときには諸君らの力が存分に発揮されることだろう。私は諸君らに期待をしようと思っている。
最後に。私は諸君に、国家に尽くすと約束しよう」
ヒトラーはめいいっぱい空気を肺に取り入れ、右手をあげて叫ぶ。
「ジーク・ハイル!」
それに銀色突撃隊が右手をあげて続く。
「「「ジーク・ハイル!!!」」」
その大合唱は荒々しくも美しく、青い海にこだました。