ふむ、艦娘とは不思議な存在だ。言語を超越するのだから。ただ、レーベレヒトは護衛に置いておこう。軍人とは血の気が多いものが多いからな。これは実体験だ。突撃隊の連中は私の静止を聞かずに戦闘行為を繰り返していたしな。
そんなことを思っていると、ノックとともに2人の青紫の髪の女性が2人入ってきた。
「オレ様は天龍!オレもついて行くぜ!」
「私は天龍ちゃんについて行くだけですからぁ」
「〈お、おい。レーベレヒト、このコンビはなんだ?〉」
「あぁ、軽巡洋艦天龍型の天龍さんと龍田さんです」
「〈なるほど・・・君たち、志願した理由は?〉」
「あれだな!演説がよ、スゲェカッコよかったんだよ!感動しちまってさぁ」
「〈そ、そうなのか。ありがとう。それで龍田君、君は?〉」
「天龍ちゃんが残りたいって言ったからかなぁ」
「〈そ、そうか。〉」
直感で天龍という女性がどういう人間かがわかった。馬鹿だ。純粋な馬鹿。操る大衆にはもってこいの人物ではあるが、部下としては少々やりにくい馬鹿だ。反対に龍田はわからん。だが、あの目は見たことがある。狂気的なあの目は見たことがある。龍田は欲しい人材であったから、渋々天龍を認可する流れになってしまうが、戦力の保有という観点ではどちらも必要だ。
「〈共に頑張ろう。天龍、龍田。〉」
「うっしゃー!」
「ありがとうございます」
「〈天龍は帰っていいぞ。龍田は残れ。レーベレヒトも席を外してくれ。〉」
龍田とは話がしたい。何としてでもあの狂気の眼差しをどういうものなのかをハッキリさせたかった。
「お、おい!」
天龍が急に反応した。龍田ばかりを贔屓するなということか。
「龍田に変なことしたら承知しないからな!じゃあな」
そう言って彼女は出て行った。
「〈・・・良い姉だな。〉」
「えぇ、素敵な姉です。それで、話とは?」
「〈ふむ、君の目が気に入った。淡い青色の瞳と対称的な真っ赤な血を求める狂気。だが、心部は何かを見据えているかのように真っ黒だ。まるで金髪の野獣、ラインハルト・ハイドリヒのような。冷酷と憎悪、憤怒が乱れ、交わり、まさしくゲシュタポのような人間だよ。〉」
「うふふふ、褒め言葉だと受け取っておきます~」
「〈が、君の冷徹には欠点がある。天龍だ。違うか?〉」
「うふふ、どうでしょうね~」
「〈まぁ、いい。君のその欠点は今は良きエネルギーとなることだろう。だが気をつけろ。それはいつか陽性の癌となり君の命を奪うだろう。そして君は気づくのだよ。本当の強さを手に入れるためには孤独であることこそが重要だと。〉」
「ふぅ~ん、それだけ話って」
「〈あぁ、君がまだ正常である、いや、狂気を振る舞えているだけだとわかったよ。天龍が消えた時、死んだ時に君はどうなってしまうのだろうな。〉」
「天龍ちゃんを殺したらタダじゃ済ましませんからね~」
「〈愛とは脆いくせにデカいから困ったものだよな。〉」
「・・・えぇ、そうね」
話が一段落して、沈黙が続く時、外からノックが聞こえた。次の艦娘が来た合図だろう。私は龍田に別れを告げ、次の艦娘に期待を寄せながら待った。
ラインハルト・ハイドリヒ:親衛隊諜報部長官、ゲシュタポ長官、保安警察長官などを任されたエリート。金髪の野獣と呼ばれた。暗殺された。
ゲシュタポ:ゲハイメ・シュターツポリツァイ。国家保安本部に組み込まれた秘密警察。