「しれぇ、失礼するのです!」
礼儀正しいのか正しくないのかわからんが、幼さ残る茶髪の少女がレーベレヒトと一緒に入ってきた。
「彼女は雪風、駆逐艦だよ」
「〈そうか。〉」
「駆逐艦の雪風です!しれぇ、よろしくお願いします!」
なんだこれ、癒される。ヤバいな、これ。どんどん語彙力が吸い取られていく。辛いことを何もかも吸収してくれるような。すごい癒しだ。
「しれぇ?」
「〈はっ!すまないな。それで志願の理由は?〉」
「雪風は大本営が嫌いなんです・・・」
「〈それはまた何故?〉」
「大本営の司令官はみんな雪風のことを死神だって言うんです」
「〈ん?〉」
「雪風は不沈艦だったんです。そのせいで他の艦を、仲間を目の前で無くすことが多くて・・・。それで、雪風は周りから命を奪う死神だって」
「〈ん?どこに悪口が?死神は悪口じゃないだろ。私なんて国の頂点なのに部下から変人とか狂人とか黒髪をいじられたりとか。しかも、死神なら私の方が勝ってる自信がある。〉」
「へ?どういうことですか?」
「〈私はな、過去に多くの人間を殺したのだよ。ユダヤ人、ロマ人、レジスタンス、それから旧友も。〉」
「殺したって・・・、見殺しって意味ですよね?」
「〈そんなわけあるか。いや、ある意味そうなのか?私が命令を出した、それだけだ。〉」
「へ?」
何を言っているのだと言わんばかりのとぼけ顔。
「あ!軍人さんだったからみたいな?」
なんとかして納得しようとするが、それは勘違いである。
「〈確かに軍人の時に敵兵を殺したが、政治家となった時の方がよほど殺した。〉」
「わ、悪者さんなんですか?」
「〈ドイツの英雄だ。〉」
雪風の思考は迷宮入りし始める。困惑する雪風にレーベレヒトが助け舟をだした、
「総統はね、凄い英雄なんだよ!ドイツをユダヤ人や共産主義者の手から救って、それどころかユダヤ人の血を絶やそうと片っ端から無きものにしていったんだよ!他にも領土奪還の為に、ドイツ民族の平和の為に世界を敵に回した大戦争を始めたんだよ!ね!凄いと思わない?」
が、雪風の思考はその助け舟の衝突によって轟沈した。
「〈雪風?大丈夫か、雪風?〉」
「ふへ?」
私は雪風の目をマジマジと見つめて、はっきりと伝えた。
「〈雪風、たとえ君が死神であろうと我々は、私は気にしない。しかもどちらかといえば私の方が死神だ。だがな、私はこれっぽっちも反省していない。否、必要なことだったのだと確信を持っている。君も自信を持て。君の行ったことは悪なのか?それとも正義なのか?他人の戯言など耳を貸すだけ無駄だ。わかったな?〉」
「は、はい!」
その後採用だと伝え、部屋を後にさせた。