僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood   作:マーベルチョコ

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File.14 少女の決意

敵連合の襲撃の翌日は臨時休校となり、その翌日に通常の授業が開かれた。

皆が気が休まらないなか朝のホームルームの時間となる。

 

「皆ーー!!朝のホームルームが始まる!席につけーー!!」

 

「ついてるよ。ついてねーのおめーだけだ」

 

いつものように委員長として振る舞う飯田に瀬呂がツッコむ。

いつものような光景だが耳郎は後ろを振り向き、八百万の後ろの席が空いているのを見て不安そうな表情になる。

 

「お早う」

 

「相澤先生復帰早えーー!!」

 

チャイムと同時に現れたのは包帯をグルグル巻きになった相澤だ。

 

「動けるのね。よかったわ」

 

「あんだけボロボロにされて動けるとか……」

 

「てか、包帯の量やばくね?」

 

相澤の状態を生徒たちは見て口々に感想を言うと、相澤は少し鬱陶しそうにする。

 

「バァさんが大袈裟すぎなんだ……俺のことはどうでもいい。まだ戦いは終わっていない」

 

突然の相澤の雰囲気の変わりように全員が背筋を伸ばす。

 

「戦いが終わってないって……」

 

「まだヴィランがー!!?」

 

峰田が恐れた声でそう叫び、全員に緊張が走る。

相澤は一呼吸置き真剣な目で告げる。

 

「雄英体育祭が迫ってる!」

 

『クソ学校っぽいの来たあああ!!』

 

 

相澤から雄英体育祭の重要性、体育祭では全国のプロヒーローが見ており、それによってスカウトされたりするのだ。

有名なヒーローにアピールできる場であり、まさにヒーローを志すなら絶対に外せないイベントなのだ。

そして相澤の連絡事項が終わり1限目に入ろうとする前に耳郎が教室から出て行く相澤に話しかけた。

 

「あの先生、少しいいですか?」

 

「どうした?」

 

「血界……容態どうなんですか?」

 

「ラインヘルツは今ブラッドベリ総合病院に入院している。アイツは俺より重傷だったらしい」

 

それを聞いた耳郎は不安そうな顔をし、相澤は包帯の間から見える目から生徒を守れなかった自分に悔しそうだとわかった。

 

「見舞いに行ってもいいが行くなら少数にしておけ、他の迷惑になる」

 

相澤の話を聞いていた他の生徒たちに聞こえるように注意し、教室を出ていった。

 

「響香さん。大丈夫ですか?」

 

「ヤオモモ……うん、大丈夫」

 

八百万が心配して耳郎に声をかけ、耳郎は大丈夫だと言うが声のトーンは低く、落ち込んでいる様子だった。

 

「でも血界のやつ本当に大丈夫なのかよ?あんなにボロボロになってたしよう」

 

「峰田ちゃん。空気読みましょ」

 

峰田がさらに不安になるようなことを言ったので蛙水が舌で殴って黙らせる。

皆が血界が入院していることに黙ってしまい暗い雰囲気が流れる。

特に血界と一緒に戦った者たちはそれが顕著で、爆豪でさえも面白くなさそうにしていた。

そこで委員長である飯田が皆に呼びかける。

 

「皆!入院している血界くんにお見舞いの品を送るのはどうだろうか!?」

 

大きな声で皆に聞こえるように提案する。

皆もそれに賛成し1人500円程度のお金を集め(爆豪も知らないうちに出した)、耳郎に渡した。

 

「飯田。これって……」

 

「本当はクラスの皆で行くのが一番いいのだが相澤先生の言う通り病院の方々に迷惑になってしまう。本来は委員長である俺が行くべきだが、気心知れている耳郎くんが行った方がいいと思う。だから代表として行ってきてくれまいか?」

 

「……ありがとう」

 

「クラスメイトが入院しているんだ。当然さ!」

 

飯田は耳郎を気遣っての提案に耳郎は皆に礼を言った。

 

 

放課後、耳郎は足早に血界が入院している病院に向かい皆が帰り支度しながら体育祭の話をしているとふと朝の出来事を思い出した。

 

「でも耳郎って意外だよなぁ」

 

「何がだ?」

 

上鳴がそう呟くと切島が尋ねる。

 

「いやさ、耳郎って結構さばさばしてるっていうかクールっていうか……そんな感じだったからさ。血界が入院したってなってアイツあんな落ち込むとは思わなかった」

 

上鳴は耳郎と隣の席なのでそれなりに話す仲だったので耳郎のあの一面は意外だったのだろう。

 

「この前、響香ちゃんと話すことがあったのだけど耳郎ちゃんがヒーローを目指す理由が血界ちゃんらしいのよ」

 

蛙水はこの前の女子だけのお茶会で耳郎と話していたことを思い出していた。

 

『ウチさ、中学の時に血界に何度も助けられているんだよね。こんな性格だから敵も作りやすかったし。そんなウチを助けてくれた血界の姿を見てきたからウチもヒーローになろうと思ったんだ』

 

それを聞いていた緑谷も耳郎の不安になる気持ちがわかった。

 

(僕にとってオールマイトがそうだったように、耳郎さんにとっては血界くんがヒーローだったんだ)

 

自分ももし自分をヒーローになれると信じてくれたオールマイトが重傷になったりすると心配になるのがわかった。

 

(血界くん元気だといいな……)

 

緑谷は夕焼けになった空を見ながら血界の無事を祈った。

 

 

耳郎はスマホの地図を見ながら血界が入院している病院の前に着いた。

 

「ここがブラッドベリ総合病院……」

 

耳郎は都心からだいぶと離れた所に来ており、彼女の目の先には大きな病院が建っているが草木が生い茂り、夕暮れ時で薄暗くどこかホラーに出てくる心霊病院を思い起こさせた。

 

「………」

 

ホラー系が全般的に苦手な耳郎にとっては出来るだけ踏み込みたくない場所だが血界に会うために病院の敷地内に一歩踏み込むと同時にカラスが数匹鳴き声を上げながら飛び立った。

 

「ひいっ!」

 

普段の彼女からは想像もつかないほど女の子らしい悲鳴をあげてその場にしゃがみ込んでしまう。

すると彼女の後ろから手が伸び彼女の肩を叩いた。

 

「あの……」

 

「うわああぁっ!」

 

また驚いた耳郎が若干涙目になりながら後ろを向くとそこには高垣 楓がキョトンとした表情で立っていた。

 

「あ、ごめんない!」

 

「いえ、大丈夫ですよ」

 

恥ずかしいところを見られた耳郎は顔を赤くして楓に謝る。

楓は怒っておらず耳郎の様子を見て微笑ましいそうにしている。

互いに自己紹介をするが耳郎は一方的にテレビでは見ない日がないくらいの日本のトップアイドルである高垣を知っている。

 

(この人、高垣 楓さんだ……綺麗……)

 

どこか現実離れしたその美しさに耳郎は息を飲む。

 

「耳郎さんは誰かのお見舞いに来たの?」

 

「は、はい……高垣さんもですか?」

 

「ええ、手のかかる弟みたいな子なの」

 

そういう彼女は楽しそうに微笑むが、少し悲しそうに眉をひそめる。

 

「だけど、ときどき無茶をしすぎる時があるから見てて心配になるの……大丈夫って言うけどいっつも傷ついてくる。私が何を言っても走って行ってしまう」

 

楓の言葉を聞いていると自分も血界のことをそういう風に思っているためよくわかった。

 

「ごめんなさいね。愚痴みたいになってしまって」

 

「いえ、ウチ…私の友達もそうですから」

 

「フフッ、お互い大変ね」

 

「はい」

 

会ってすぐなのに何故か耳郎は楓に心を許しており、自分の不安なことを話していた。

 

「ウチの友達も強いんですけどいつもボロボロになって戻ってきて、心配なんです。どこか手の届かないところに行きそうで」

 

「耳郎さんはその子のことが大切なのね」

 

「………はい」

 

耳郎は少し照れながらそう答える。

 

「私なら大切な人がどこか手の届かないところに行きそうなら、走って追いかけて、手を掴むわ。ダッシュして奪取する……フフッ」

 

「へ?いや、物理的なことじゃなくて」

 

突然ダジャレを混ぜてきた楓に一瞬呆然としてしまう。

 

「変わらないわ。遠いところに行くなら迎えにいけばいいの。こっちから行ってあげないと無茶する人ってわからないものなのよ」

 

楓にそう言われ耳郎は何故かストンと納得できた。

するとさっきまで血界のことなどがあって苦しかった心が楽になっている。

耳郎自身、自分の実力が血界に追いついていないことなど百も承知だが、どうせればいいのかわからなかった。

それを大人である楓が指し示してくれたお陰でそれがはっきりと見えたり

 

「そう……ですね。ありがとうございま。ウチやってみます」

 

「うん。よかったわ」

 

耳郎のやる気に満ちた顔でそう告げ、楓も嬉しそうだった。

 

 

病院に入ると待合室には多くの人がおり、入院患者なのか怪我をして包帯など巻いている人たちも多くいた。

 

「それじゃあ、私は先に先生に用があるから、これで」

 

「はい……あの、今日はありがとうございました!」

 

楓のは笑顔で手を振って耳郎と別れ、やたらとガタイが良い看護婦に血界が入院している部屋の前に立つ。

 

(今の血界がどんな状態でもウチはウチが目指すべきところが見えた。今はそれを血界に伝えよう!)

 

耳郎が扉を開けるとそこには多くのチューブに繋がれた昏睡状態の痛々しい血界の姿が……ではなく、上半身ハダカで丁度下を着替えようとして、半ケツ状態の血界が後ろで扉が開くのに気づき振り向いていた姿だった。

しばし2人の間に沈黙が流れ、耳郎の顔が段々と赤くなっていく。

 

「きゃああああぁぁぁぁっ!!!?」

 

「うおおぅっ!?」

 

「うるさいですよ!!病院では静かに!!」

 

 

その後、ガタイの良い看護婦さんにこってり絞られた血界と耳郎は、血界がベットに座り、耳郎がすぐ横で丸イスに座っていた。

 

「いやー見舞いに来てくれるなら連絡してくれればよかったのに……

あの看護婦さんめっちゃ怖いんだよ」

 

「う、うん……そう……」

 

血界はいつもの調子で話しかけるが耳郎はさっきの光景を思い出して、顔を赤くしていた。

熱くなった顔を元に戻し、血界に真剣な顔で話しかける。

 

「ね、血界。聞きたいことがあるんだ」

 

「なんだ?」

 

「なんで血界はいっつも無茶すんの?」

 

それを聞かれた血界は少し困った表情になる。

 

「中学の時も、USJの時も血界は自分から向かって行って、ボロボロになって帰ってきた」

 

「それは……「男にはやらなきゃいけないときがある」……」

 

「でしょ?中学の時も言ってたし」

 

耳郎が出会う切っ掛けとなった時に言われた言葉を耳郎は忘れてはいなかった。

 

「だけどウチは傷だらけになってくる血界を見るのはイヤ。心配になるし」

 

「………悪い」

 

血界はバツが悪そうにする。

 

「謝っても血界は多分止まらないよね?」

 

「………」

 

血界は何も答えないがそれは肯定とじろうは捉えた。

そして今回最も言いたいことを言う。

 

「だから!……ウチが血界を守る」

 

「は……?」

 

「血界が傷つかないように、血界を守れるようにウチが強くなる」

 

大切な人に憧れて、ヒーローを目指した。

次は大切な人を守れるようなヒーローになるために強くなる。

 

「ウチ決めたから」

 

「え?は?訳がわからないだけど……」

 

「そういうこと…ってだけ言いたかったの」

 

「は、はぁ……そうか」

 

耳郎が血界を守りたいと思う理由は自分でも理解している。

しかし、血界はその理由に気づくことがないと耳郎も理解している。

いつかは気づいて欲しいとも思うが、今はこれだけ言えればよかった。

 

「それより何であんなにボロボロだったのにもう治ったの?リカバリーガールのおかげ?」

 

「ここの医者のおかげだ。めちゃくちゃ腕かいいんだぜ」

 

耳郎は話を変えると、それと同時に病室の扉が開かれた。

 

「検診の時間ですよー」

 

現れたのはガタイの良い看護婦と小学生くらいの黒髪短髪のメガネをかけた女の子だった。

 

「え?女の子?」

 

「む?アナタ、私のこと馬鹿にしたでしょ?」

 

「え、いや、ちょっと驚いちゃって……」

 

「耳郎、その人が俺が言ってた腕のいい医者」

 

「ええ!?」

 

どう見ても子供にしか見えないのに医者だということに驚く。

 

「やっぱり馬鹿にしてるじゃない!」

 

「先生、ここは病院です。お静かに……」

 

「わかってるわ。それじゃお薬を打ちますね」

 

「なあ、先生。俺もどこも痛くないから退院してもいいだろ?体が鈍って仕方ないよ」

 

「何言ってるのよ!アナタ血が失血死寸前までなくなっていたのよ!?逆に何でそんなに回復が早いのよ……」

 

先生が呆れたように言うのを聞いた耳郎はやはりあの時血界は死ぬ寸前だったのかと、思い出す背筋が冷たくなった。

そうならないように強くなろうと改めて気合を入れると横で看護婦が準備が終わり、用具を先生に渡した。

 

「それじゃお注射しますねー」

 

そう言って先生が構えたのは抱えるほどの大きさもある巨大な注射器だった。

 

「はぁっ!?そんな打たれたら死んじまう!!」

 

「大丈夫よー、最初だけブスッとするだけだから」

 

「擬音が違う!!」

 

血界が慌てて逃げようとするとその手を掴んだのは2人に増えた先生だった。

 

「2人に増えた!?」

 

「こら!逃げないの!」

 

それでも逃げようとする血界に更に先生の数は1人2人と増えていく。

彼女、ルシアナ・エステヴェスの個性は『幻界剥離』、自身を幻の世界に追いやり自分自身が幻のような存在になる個性だ。

これはそれの応用で幻で複数人に増えているのだ。

ルシアナが7〜8人になっても逃げようとする。

 

「メジェナ!手伝って!」

 

ルシアナの1人がガタイの良い看護婦メジェナに言うとため息を吐いた。

 

「先生……相手は患者なんですよ。あまり乱暴にしてはいけません。優しく……フンッ!!」

 

突然メジェナの腕部分の服が膨張した筋肉によって弾け飛び、体がふた回りも大きくなった。

 

「包み込んであげないと……」

 

メジェナ・パーキンソンの個性『ラブマッスル』は相手に愛おしさを抱くとその相手に対して筋肉が膨張する個性である。

 

「いや、包み込んでるっていうか鯖折りィィッ!!」

 

「ナイスだわメジェナ!そのままにして!お尻に刺すから!」

 

「ちょっと!どこに刺そうとしてるんですか!!」

 

流石の耳郎も助けに入り、てんやわんやになってしまう。

すると病室の扉がまた開かれた。

 

「チーくん〜お見舞いに来ましたよー……ってあら?耳郎さん?」

 

「えぇっ!?楓さん!?ってことは弟みたいな子って血界のこと!?」

 

「耳郎さんが言ってた大切な人って……あらあら?」

 

「今はそんなこと良いから助けてくれェェ!!アッーーー!!!」

 

その時ブラッドベリ総合病院中に血界の叫び声が響いた。

 

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